【新NISA】「いったん売って、下値で買い戻す」は可能?

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nisa kainaoshi

新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。

今回は、だれもが一度は考える「いったん売って、下値で買い戻す」についてです。

本記事をYouTube動画で観たい方はこちらのリンクから。

いったん売って、底値で買いなおす

昨日、「新NISAの損切り、メリットはあるの?」という動画を出したところ、このようなご質問をいただきました。

初心者です。今回の暴落騒ぎ直前に100万円のオルカンと野村半を購入し含み損を抱えました。(野村半とは野村の出している世界半導体投資信託のことですね)。

それでも損切りにメリットは少ないでしょうか?

前々から積み立ててた人は今まで積み上げてきた利益を考えて損切りにメリットはないんだと思いますが、 始めたばかりであれば、損切りしてある程度下がるのを待ってから、購入した方が税金を考慮しても得という事は無いのでしょうか?

5年スパンで考えればオルカンはホールドしようと思いますが、半導体はバブル崩壊の懸念から悩んでおります。

とのことです。

これはQ太郎が投資を始めたばかりのときにも陥っていた疑問がいろいろ含まれているよい質問なので、一つひとつ見ていきます。

まず内容を整理すると、

・オルカンと野村半導体投資信託を100万円分購入。

・現在含み損になっているので、いったん損切りして、下値で拾いなおしたい。

・オルカンはホールドできるが、半導体の方はバブル崩壊の懸念があるので悩んでいる。

とのことになります。これを見ていきます。

新NISAでの損切り

まず「オルカンと野村半導体投資信託を100万円分購入」とのことですが、合わせて100万円分なのか、それぞれ100万円分なのかがわかりませんが、仮にそれぞれ100万円ずつを新NISAの成長投資枠(240万円の枠)で買った場合、合わせて200万円になりますので、枠の残りは40万円になります。

そうなると、いったん200万円分売却した場合、これの買いなおしができるのは来年ということになります。

仮に今年中に底値が来たとしても、買いなおそうにも枠はあいてませんから、買うとすると特定口座になってしまいます。

それでしょうがないから特定口座で買いなおしたら、翌年の入る前に株価が回復。こうなると売却しなかったほうが得だったということになります。

もう一つのケースとして、合わせて100万円だった場合、枠の残りは140万円なので、1回だけ買いなおしはできるでしょう。そうなると、運よく今年中に底値あたりで拾うこともできるかもしれません。

ただ拾ったあとに、じつはそこは底値ではなく、さらに下がるということもあります。

つまるところ、これはどのようなケースも結果論でしかないのですね。

損切りして正しかったのか、底値あたりで拾えたかどうかは、当たり前ですがあとになってみないとわからないのです。その場ではわかりません。底値の判断なんかリアルタイムでできるわけがありません。

結果はつねに未来にあります。あとで「あとのとき底値だった」というのはわかりますが、売ったり買ったりしたその場で、結果がわかるわけはないのです。つまるところ、運よく成功した、運悪く失敗したという話でしかないのですね。

ぶっちゃけ株式は上がるか下がるかの2つしかないので、確率的には2分の1です。どんなにデータをひねくりまわしてすごい予想をしようと、チンパンジーがダーツを投げて決めようと、すべて結果論なのですね。

その場であっているか間違っているかなんてわかりませんし、みんなそれっぽい予想をして言いたいことを言うだけです。

ずるい予想方法としては、預言でもよくある「日付を決めない方法」ですね。

たとえば「日経平均はいつか暴落する」「S&P500は暴落する」と言い続けていれば、何年かごとに暴落はあるので、当然いつかは暴落するでしょう。

最近ずるいなと思ったのがさわかみ投信で有名な澤上さんの本で、2021年に「大暴落」、2022年に「暴落相場とインフレ」「インフレ不可避の世界」、2024年には「暴落ドミノ」「この上昇相場にだまされるな」と毎年のように出しているわけです。出し続ければいつかは当たりますし、当たった年に「この本の予想は当たった」と宣伝すればいいだけです。

そもそも2021年からずっと上昇相場だったじゃん、その時点で外れてるじゃん、むしろこの期間に買ってなかったら損してるじゃんとは思うのですが、「いつ」を決めさえしなければ、言い続けることでいつかは当たるわけです。暴落自体は何年かごとに周期的に来るものです。言い続ければ当たるに決まっているのです。

似たようなのに森永卓郎氏も「暴落」を言い続けていて、息子に「昔からずっと言ってる」と突っ込まれていました。ちなみに森永氏は2022年の年末に日経平均は1万5000円になっているといってました。結果的には上昇して2万5000円以上になって、さらにそこから伸びて4万円超えるまでになりましたね。買ってなかったら損してたわけです。

まあ、世の中そんなものです。未来などわかるわけありませんが、暴落自体は何年かごとに来ますので、言い続ければいつかはあたります。当たってなかった期間は全部無視されます。

そんなときに「それみたことか。おれの予言はあたった」というのはずるいというか、ある意味頭がいい方法とは思います。

1999年に地球が滅びるとか期間限定で予言したノストラダムスの方がまだいさぎよい感じです。当たりませんでしたが。

ちなみに2021年からの期間に買わなかった方が、日本円の価値がどんどん下がっていたのですから、アセット全体で見れば損していたわけです。抱えていた現金は価値が目減りしていたのですしね。

そんなわけで、世の中はどんどん変化していくわけで、未来はわかるわけがないというが実情です。

インデックスで長期投資をするのは、もうけるというよりも、使わないお金を現金のままおいておくとインフレで目減りしてしまうので、リスク資産に分散しておくことでインフレ対策をしておくという使い方が正しいとは思います。

直近で使うお金は、バケツ戦略のように、やはり現金か元本保証のもので持っておく必要があります。フルベットしてはいけないのですね。

我々のできることは、どう転んでもいいようにすることです。「暴落して株価が減っても大丈夫」「インフレしてお金の価値が落ちても大丈夫」なように備えておくことですね。「ここで売って、ここで買って」とかそういうことではないのです。そういうの専門でやっている人もいますが、多くの人は生活防衛のための投資です。

株式を全部売却して現金化してしまうと、アセット的には全部現金になってしまいます。こうなるとインフレ対応ができなくなります。リバランス的には、むしろ株式を現金で買いにいかないといけないのですね。

たとえばオルカン100万円が年末に80万円になっていたのであれば、長期投資としては売却ではなく20万円を追加投資して100万円に戻すというほうが、「いったん売って、底値あたりで買いなおして」よりは合理的な判断になります。やらなければならないことは売るのではなくて、追加投資ですね。

いったん売って、下値で買いなおす

「いったん売って、下値で買いなおす」をもう少し掘り下げていきましょう。

まずこれの大きな問題点は、「損しているかどうかは個人の買値の問題」になるからです。

たとえば1000円で買って、800円になったら、200円損しています。

一方、おなじ株を600円で買った人にとっては、200円得しているわけです。

ここで問題になるのは、「人は自分の買値を基準に考えてしまう」ことです。

株の方は、あなたがいくらで買ったかなど、知ったことではないのです。株は株で、あなたを無視して勝手に動いています。あなたが1000円で買おうが、600円で買おうが知ったことではないのです。

そのため、自分の株価を基準にして「高い・低い」を論じるのは意味のない行為と言えます。

たとえば「決算が悪かったから売る」とか、ある程度の根拠みたいなものがないと売却には意味がありません。「半導体は今後もだめそうだから半導体インデックスを売る」とか、そういう根拠ですね。

自分の買った値段に対していくら下がったかとかは関係ないのです。あなたがいくらで買ったかなど、市場からすれば知ったことではないのです。

前回の動画で、「パーセントで損切りしてはいけない」というのも、自分の買値を基準にすることに根拠がないからです。損切り理由が必要なのです。そうでないと、ただ「自分の買った値段」という主観と感情で取引しているだけになります。

ここでの考え方ですが、オルカンの長期投資でしたら「今後も世界経済は右肩上がりが続く」と思うのであれば、売る必要はないわけです。第三次世界大戦でも勃発して「世界経済はもうだめだ。オルカン売った金で肩パットと釘バット買ってくる」と思えば、売ればいいわけです。自分の買値は関係ないわけです。それで決めると主観的になってしまいます。

質問の中で、「5年スパンで考えればオルカンはホールドしようと思いますが、半導体はバブル崩壊の懸念から悩んでおります。」とありますが、これも考え方はおなじで、まずなぜ半導体セクターを買ったのか、その理由から考えていかなくてはなりません。

短期での値上がりを狙って買った順張りの短期取引であれば、自分の想定と違ったのでしたら売って手じまいしてもいいですし、長期投資として長期的には上がると思えばホールドすればいいわけです。

短期投資を途中から長期投資に切り替えたり、その逆をやったりは、気分と感情でやっているだけなのでやめたほうがいいでしょう。

「下がったところで買いなおす」というのも、いろいろ矛盾をはらんでいます。

「下がったところで買いなおす」というのは、今後上がるかもしれないと思っているから、下がったところで買うのでしょう。

でも売却したあとに下がらない可能性もありますし、今後上がると思うのでしたら、そもそもロジック的にはホールドのままでいいわけです。

今後上がると思うなら下がったところで買いなおす必要性がありませんし、そもそも買いなおせるともかぎらないのです。

もし本当にそれができると思うのであれば、世の中金持ちだらけです。そもそも売却して買いなおすよりは、空売りをしてもうけたほうがいいでしょう。

まず自分がなぜそれを買ったのか、長期投資なのか短期投資なのか、どういうときに売ろうと思っているのかなどから考えたほうがいいとは思います。

「あなたがいくらで買ったか」はまったく関係ありません。そして「下がったときに買いなおす」はあなたの未来予想でしかないので、それがあたるともかぎりません。あたると思うのでしたら、いまから空売りを仕掛けたほうがもうかります。本当に予想ができるのであれば、あっという間に大金持ちになれます。

 

まとめ

そんなわけでまとめると、

・そもそも上限金額のある新NISAは短期取引に向いてない。

・予想はすべて結果論。暴落は定期的にやってくるので、言い続ければいつかはあたる。

・その場で株価が底値か頂点かは判断できない。結果はすべて未来でわかる(あとになって、「あのときは底値だった」とわかるわけで、当然リアルタイムではわかりません。結果は未来でやっとわかるのです。もっと下がるかもしれませんし、下がらずにあがり続けるかもしれません。すべては結果論です)

・「いったん売って、底値で買い戻す」は予想であって、確定ではない。売ったあとに下がらなかったり、買い戻したらもっと下がったりなど、思い通りにならないことがある。(当たると思うのでしたら、空売りでもうけることをすすめます。大金持ちになれます)

・「自分の買ったときの株価」を判断基準にしない。主観的な判断になってしまう。株からすれば、あなたがいくらで買ったかは知ったことではない。

・なんのために自分がその投資信託を買ったのか、どういうときに売るのかを前もって考える(長期投資なのか、短期投資なのか、今後世界経済は右肩上がりが続くと予想して買ったのかなど)。

・買った理由が崩れたときに売る(世界経済がもう右肩上がりにはならないと思うならオルカンを売る)。

・長期投資と短期投資を気分次第で入れ替えない。気分や感情、主観で投資をしない。

・リバランス的には、下落したときは「いったん売る」のではなく、追加投資してバランスをとる(売るという行為は、現金を増やすことになり、アセットバランスを崩すことになります)。

・バケツ戦略など、どう転んでもいいような投資態勢をつくっておく。

となります。

そんなわけで投資は主観的・感情的におこなわず、「なぜそれをするのか」という合理性・客観性に基づいておこなうのがいいでしょう。

リスク資産を買うのは、基本的にはインフレ対策です。アセット全部が現金だと、現金の価値が目減りすれば資産全体が減ってしまうことになります。それを防ぐために、アセットの一部をリスク資産にしておくのです。

バケツ戦略においても、直近でつかうお金は短期バケツ・中期バケツに入れておき、使わないお金は長期バケツでリスク資産に変換しておくことで、暴落があってもインフレがあっても円安・円高があっても、大損しにくい体制がつくれます。

「いったん売って、底値で買い戻す」は、そもそも自分の買った株価をもとにした主観ですし、予想でしかないため、ぶっちゃけ当たるか外れるかのばくちをやるようなものです。

しかもリバランス的には、下落時は株を増やさないといけない時期なのに、むしろ現金を増やすという逆のことを感情的にやってしまう結果にもなります。

そんなわけで、なんでオルカンや半導体を買ったのか、長期投資なのか短期投資なのか、どういう状態になったら手じまいなのか、基本的な部分を考えておけば、それに従って客観的に取引することができるようになるとは思います。