
取り崩し投資運用中のQ太郎です。
今回はウォーレン・バフェット氏の「インフレ時代に重要なもの」についての発言と、それが日本でも通用するのかについてです。
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いただいたご質問
こんなご質問をいただきました。
「バフェットの発言に『インフレに対する最良の防御策は金へ投資するよりも、あなた自身の個人の稼ぐ力に投資しろ』というのがあります。
これをやたらと持ち上げる記事がありますが、労働よりも投資の方が資産増加速度が速いことはピケティが証明しています。
また日本では、賃金がインフレに追いついていないうえに税金なども重いので、可処分所得はほとんどありません。これをどう解釈すればよいでしょうか」
とのことです。
バフェット氏の発言とは
まずバフェット氏の発言を整理します。
2022年のバークシャー・ハサウェイ年次株主総会で、バフェット氏はこう語っています。「インフレはいつまで続くか誰にもわからない。インフレに対する最良の防御策は、依然としてあなた自身の『個人の稼ぐ力』にある」というものです。
さらにこう続けています。「あなたがバイオリンをとても上手に弾けるなら、インフレ下でも稼ぐことができる。他の人より上手に弾けば、人々は喜んでお金を払う。あなたのスキルは奪われることはないが、お金は奪われるかもしれない」。
言っていること自体は間違っていません。物価が2倍になれば給料もそれに合わせて上がるという、普通の国であれば成立する話です。
アメリカでは正しい話
ミシガン大学のデータを使ったブラックロックの研究によると、過去40年でアメリカでは各年代の収入の伸びがインフレ率を上回っています。
つまりアメリカではバフェット氏の話はおおむね正しいと言えます。またバフェット氏の考えとして、金は企業と違って成長しないので、長期的に資産を増やすなら株式に投資した方がいいというのも間違っていません。
ピケティが指摘したように、資本収益率は経済成長率を上回る傾向があり、長期投資であればインフレ資産と言われる金よりも株式の方が有利というわけです。
元本の大きさが前提になる
ただし重要な前提条件があります。
ピケティのr>g、つまり資本収益率が経済成長率を上回るという話は、「生活費に回さなくてもいい十分な資産がある」ことが前提です。
数百万円を投資に回してもインパクトは限られます。100万円を投資して2倍になっても200万円。それだったら労働でしっかり稼いだ方が早いわけです。
逆に言えば、年収300万円稼げる人は、1億円を年3%で運用するのと同じ価値のある「人的資本」を持っているとも言えます。
巨大な元本がないかぎりは、労働で稼ぐ方が上なのは間違いありません。
稼ぐ力には限りがある
さらに「稼ぐ力」には限りがあります。基本的に稼ぐ力が使えるのは現役世代の間だけで、一般的には50歳ごろをピークに収入は落ちていきます。
つまりいつまでも「稼ぐ力」だけに頼ることはできません。それにお金が稼げるかどうかは、運やタイミングもありますし、健康であることも重要です。
仕事しすぎてつぶれてしまう人もいますし、みんながみんな、バフェット氏のように幸せに働けているわけではないわけです。
バフェット氏の生存バイアス
これは成功者にありがちな「生存バイアス」の話でもあります。
バフェット氏は94歳になっても健康で、肉体労働でもないので「年をとっても働けばいいじゃん」という発想になりがちです。ホリエモンさんなどを見ているとだいたいこのパターンですね。
しかし現実には、健康を崩す人もいれば、スキルが時代に合わなくなる人もいる。成功者の「稼げばいい」という発言は、それが再現できた人だけが生き残って発言しているわけで、再現できなかった人の声は聞こえてこないわけです。
日本特有の問題
もうひとつ大事な点として、バフェット氏の発言はアメリカを前提にしています。
日本では長らく賃金がインフレに追いついておらず、税負担も重く、可処分所得が増えにくい構造があります。
ミシガン大学の研究結果やバフェット氏の発言をそのまま日本に当てはめるわけにはいきません。
アメリカと日本では、賃金とインフレの関係がそもそも違うのです。
まとめ
まとめです。バフェット氏の「稼ぐ力がインフレに強い」という発言は、アメリカという文脈では間違っていません。
しかし人生何があるかわかりませんし、稼ぐ力だけに頼ってインフレを乗り越えるには限度があります。日本ではとくにそうです。
Q太郎としては、生活防衛資金をしっかり確保しつつ、インデックス投資も続けつつ、節約もしつつ、三本柱でバランスよくやっていくのが現実的な答えだとは思います。どれかひとつに頼りすぎるのが一番リスクが高いわけです。
