
取り崩し投資運用中のQ太郎です。
今回は社会保険料の合法的搾取から資産を守る新常識というテーマでお話ししたいと思います。
Youtubeで観たい方は以下のリンクから。

会社員時代の「節税常識」を捨てる
こんなご質問をいただきました。
「現在米国株で配当金を貰っています。現在会社で社保を払っていますが、確定申告での住民税申告不要制度が無くなってしまったことで、定年後に国保料が乗っかってくることから、外国税額控除の意味が無くなってしまう気がします。今から投資信託にスイッチした方がいいでしょうか」
とのことです。ありがとうございます。
投資をしていると、ネットやマネー本で「外国税額控除を使えば、米国株の配当にかかる税金を取り戻せる!確定申告はお得!」という言葉をよく目にしますよね。たしかに、少しでも税金を取り戻したいという気持ちはよくわかります。
しかし、ここで非常に重要な警告があります。この「確定申告でお得になる」というのは、あくまで「会社員」だからこそ言える常識なんです。FIREや早期リタイアをして会社を辞めた人にとって、安易な確定申告は、自分の資産をゴリゴリ削り取る「自爆スイッチ」になりかねないという恐ろしい現実があります。
会社員時代の節税の常識をそのままFIRE後に持ち込むと、取り返しのつかない大損をすることになります。今回は、なぜそんなことが起きるのか、そして私たちの資産を守るための「出口戦略の最適解」についてじっくり解説していきます。
会社員とFIRE後の「決定的な違い」
なぜ、会社員とFIRE後で確定申告の意味合いが180度変わってしまうのでしょうか。それは、私たちが毎月払っている「社会保険料」の決まり方に、決定的な違いがあるからです。
会社員が加入している健康保険や厚生年金は、基本的に「毎月の給料」をベースに計算されます。ですから、会社員が株の配当金や売却益をどれだけ確定申告しようが、基本的には給料自体が上がらない限り、社会保険料が跳ね上がることはありません。もちろん扶養に入っている場合などの例外は除きますが、基本的には給料ベースです。
ところが、FIREをして会社を辞めると、加入する保険は「国民健康保険」に切り替わります。この国民健康保険の保険料は、「前年の合計所得」をベースに計算されるんです。つまり、株の利益や配当金を確定申告して「自分の所得」として国に報告してしまうと、それが1円残らず翌年の保険料の計算にダイレクトに乗っかってくることになります。
個人事業主や自営業の方ならわかりますが、この国民健康保険料がかなりエグい金額を取ってくるのですね。基礎控除が43万円とかなり低いので、それ以上の所得は国民健康保険料に乗っかってくるわけです。これが本当にエグいです。所得割以外に均等割もありますし、医療分だけでなく支援分、介護分もありますので、低所得者にも全然容赦がありません。「農民は生かさず殺さず」の「五公五民の世界」へようこそです。
最近、日本維新の会の所属議員が、一般社団法人の理事に就くことで、国民健康保険の高額な支払いを回避する「国保逃れ」をしていたニュースで話題になりましたが、そういうことをしたくなるぐらい国民健康保険料というのは高いわけです。
どういうスキームかと言えば、「役員報酬」を極端に低く設定して、社会保険料を安く抑えているというスキームです。会社や一般社団法人で社保を払っていれば、会社以外の収入に関しては保険料を払わなくていいという抜け穴があるわけです。
マイクロ法人を使った節税もこの方法ですね。マイクロ法人をつくって、そこでの給料安くして少ない保険料を払えば、別収入がいくら多くてもそれが国民健康保険料に加算されないわけです。「もう会社の方で払ってるし」というわけで、国民健康保険料を払わなくていいという、まさに合法的な抜け道なわけです。
これを聞いて「ずるい!」と憤る方は多いと思いますが、実はこれ、根底にある仕組みは私たちが直面している問題と全く同じなんです。「社会保険料は、申告された表向きの所得に連動して決まる」。国会議員や富裕層はこのルールを熟知して「所得を抑える」対策をしているのに、会社勤めではない一般の投資家は数百円の税金を取り戻すためにわざわざ「所得を増やして申告」してしまっている。そして社会保険料をその分、持っていかれてしまう。これが社会保険料の罠の正体です。
Q太郎的には、会社員も個人事業主も、年間のすべての所得を合算して保険料を払う形にした方が、このような国保逃れスキームが蔓延しなくてすみますし、公平感があるとは思いますが、日本は会社社会なのでなかなかそううまくいかないのですね。
ちなみにアメリカはどうやっているかと言えば、そもそもアメリカでの保険は「商品」なので、同じ50歳で同じプランを選べば、年収が300万円の人も3,000万円の人も、請求される値段は全く同じです。
つまり、日本のマイクロ法人のように『報酬を操作して保険料を下げる』という発想そのものが、アメリカの医療保険システムには入り込む余地がないのです。
ただこれだと低所得層が困りますので、オバマケアなどの仕組みでは、所得に応じて政府から『補助金』が出ます。高所得者は定価を全額払い、低所得者は所得に応じて割引を受ける。アメリカの公平性は、負担額を決める時ではなく、この「補助金の出し方」で調整されているのが特徴です。
アメリカは医療費が高いですが、不公平感という面では日本の方がかなり不公平感があります。個人事業主がまともに全額払っている裏で、マイクロ法人やら社団法人やら使って国保逃れをしている人たちがいますしね。しかも議員までやっているのですから、正直日本は不公平感がすごい国だなとは思います。
「30%の税金」より怖い「保険料の跳ね上がり」
では、具体的にどれくらい損をする可能性があるのかを見てみましょう。
たとえば、米国株や米国のETFから配当金をもらった場合、まずアメリカで約10%の税金が引かれ、さらに日本国内で約20%の税金が引かれます。いわゆる二重課税で、合計約30%も税金で持っていかれます。
「これはもったいない!外国税額控除の確定申告をして、アメリカで取られた10%を取り戻そう!」と考えるのが普通ですよね。
しかし、確定申告をして配当金を「自分の所得」として申告した瞬間、翌年の国民健康保険料の計算ベースが跳ね上がります。自治体によって料率は異なりますが、国民健康保険料は所得に対しておおよそ10%前後かかります。これに均等割りなども加わってくるので、実際はもっとエグい数字になります。
つまり、アメリカに取られた「10%の税金」を取り戻すために確定申告をした結果、日本の自治体から「10%以上の保険料」を上乗せして請求されるという、地獄のようなすれ違いが起きるわけです。
しかも、国民健康保険料には上限額がありますが、自治体によっては年間100万円を超えるケースもあります。たった数万円の税金を取り戻すために、数十万円単位で保険料が爆上がりする。まさに「合法的搾取」と言っても過言ではありません。
住民税申告不要制度の廃止がトドメを刺した
昔は株式の利益に対して住民税申告不要制度が使えました。「所得税は確定申告して還付金をもらい、住民税は申告不要を選択する」という、まさにいいとこ取りの制度があったんです。住民税を申告しなければ、国民健康保険料も上がりません。
しかし、残念ながらこの抜け道は完全に塞がれました。税制改正により、現在はこの「住民税申告不要制度」が実質的に廃止され、所得税と住民税の課税方式を一致させなければならなくなりました。
つまり、所得税の確定申告をすれば、自動的に住民税にも反映され、確実に国民健康保険料が上がるという「逃げ道のないルール」に変わってしまったのです。
環境が一気に変わってしまったので、昔までの「外国株を買って、外国税額控除で還付を貰う」というのが難しくなったのですね。逆に苦労して確定申告した結果、余計に国保という名の税金を払わなければいけない事態が多発しているわけです。
現在の環境下だと、この厳しいルールの中で資産を守るためには、「配当金」よりも「投資信託の取り崩し」の方が圧倒的に有利になります。
配当金は、自分がいくら欲しいかに関わらず、企業から強制的に支払われ、その都度税金がかかります。しかし、投資信託であれば、100円以上なら1円単位で自分の必要な金額だけを取り崩すことができます。「今月は現金が足りているから取り崩さない」という判断も自由です。
高配当株や分配金の出る投資信託を買うなら、税金も社会保険料も一切関係ない「新NISA」の枠内で買うのがいいでしょう。
賢い出口の結論:あえて「特定口座で源泉徴収」で終わらせる勇気
FIRE後の現代の出口戦略においての、現時点での最適解ですが、特定口座では取り崩しタイミングが決められる投資信託を買い、新NISAでは配当株か分配金の出る投資信託を買う形にするのが、今のところ合理的な判断と言えます。
こちらの意思に関係なく、自動的に払い出されてしまう配当金に関しては、税金のかからない新NISAで管理しておけば、翌年の国民健康保険料には1円も影響しないということです。
それで源泉徴収有りの特定口座では、自分のタイミングで取り崩しを行います。個人事業主や早期退職者は、今のところできる最大限の抵抗である「確定申告をしない」という選択肢で、社会保険料をむしり取られるリスクを遮断できます。
ただし、ここで一つ注意しておかなければならない未来の話があります。それは「マイナンバー制度」の存在です。
現在は「特定口座なら申告不要」というルールに守られていますが、政府はマイナンバーカードとあらゆる金融口座の紐付けを強力に推し進めています。将来的には、確定申告をする・しないに関わらず、「特定口座での利益がマイナンバー経由で自動的に合算され、国民健康保険料に加算される」というルール変更が起きるリスクも十分に考えられます。
確定申告しようがしまいが、勝手に国民健康保険料が増えてしまう可能性があるのですね。
だからこそ、自分の意思で1円単位で所得をコントロールできる「投資信託の取り崩し」というスキルを今のうちから身につけておくことが、国の方針転換から自分の資産を守る最大の自衛手段になるとは思います。配当は今後もどんどん不利になってくるとは思いますね。
まとめ
それでは、今回のまとめです。
その一は、会社員とFIRE後では、確定申告の意味合いが全く異なります。FIRE後に安易な確定申告をすると、国民健康保険料が跳ね上がり、取り戻した税金以上の大損をします。
その二は、住民税申告不要制度の廃止により、税金と保険料を切り離す逃げ道はなくなりました。配当系の投資は新NISAで行い、特定口座ではコントロールが効く投資信託を活用しましょう。
その三:は、出口戦略の最適解は、特定口座分は「あえて確定申告せず、源泉徴収で終わらせる」ことです。将来のマイナンバー制度によるルール変更のリスクも念頭に置き、自分で所得をコントロールする術を磨いていきましょう。配当は今後厳しくなってくるとは思います。とくに米国株ですね。
皆さんは、この「確定申告すると社会保険料が上がる問題」についてどうお考えですか?将来、特定口座の利益まで自動的に保険料の計算に入れられる時代が来たら、どんな対策をしようと考えていますか?ぜひコメント欄で皆さんのご意見を聞かせてくださいね。
