
取り崩し投資継続中のQ太郎です。
今回は、一部のアナリストが打ち出している「10年後に日経平均は10万円になる」という予測についてです。
Youtubeで観たい方は以下のリンクから。
10万円予測は本当か
こんなご質問をいただきました。
「アナリストにはエミン氏や広木氏などの、いわゆる「日経平均強気派」がいます。
商売としてのポジショントークの面も大きいとは思いますが、10年後に日経平均10万円は可能だと思いますか?
Q太郎さんのご意見お聞かせください」
とのことです。
可能性の話であれば、可能かどうかなら「可能」としか言いようがないとは思います。それと、そもそも10年前に誰が何を話したかなんて誰も覚えていないでしょうし、そのころに誰かが答え合わせるするようなこともないので、10年後にどうなるかはあまり意味のある議論ではないかなとは思います。
ただ現在の日経平均が5万円台後半で推移していることを考えると、10年でおよそ倍になるという話でしたら、結構可能性はあるとは思います。10年で2倍なら、年平均7%増えればいい訳なので、現実味がないわけでもありません。
ちなみに、アベノミクスが始まった2012年末ごろの日経平均が約1万円ぐらいなので、現在5万円ということは5倍まで膨らんだということにもなります。実際に10年で5倍ぐらい行ってますので、10年スパンで2倍だったら、可能性としては全然ありえるとは思いますね。
ただ問題としては、その10万円という数字の「中身」についてです。数字だけを見て喜ぶのは、少し危険かもしれません。
そもそもの日本円の価値が落ちているのですね。たとえばさっき5倍と言いましたが、これをドルベースで計算した場合は、アベノミクス当時は 1ドル = 約86円ぐらいでしたから、ドルベースだと2.6倍程度と一気に半分に落ちます。
2.6倍もあれば十分という考えもありますが、こういうふうにして日本円の価値自体が落ちているのですね。
円安・インフレの落とし穴
それで、仮に10年後に日経平均が10万円になっていたとしても、その時の「1円の価値」が今と同じである保証はどこにもありません。
インフレを考えずに日経平均だけで語ってもあまり意味が無いのですね。
現在のように、日本円がじわじわと安くなり、モノの値段が上がっていくインフレ環境が続くのであれば、株価という数字だけが膨らむのは、ある意味で当然の結果とも言えます。企業が同じ量のモノを売っていても、モノの値段が上がれば売上高は増えます。売上が増えれば利益も増え、株価も上がります。
これはインフレが生み出す「名目上の成長」であって、企業が本当に強くなったわけではない、という場合もあるわけです。
極端な話をすれば、通貨の価値が半分になれば、企業の実力が何も変わらなくても株価は2倍になるわけです。
つまり、10万円という大台は、日本経済の爆発的な成長を意味するのではなく、単なる「円の価値の下落」を映し出した鏡に過ぎない可能性があるわけです。
実際、マネックス証券の広木氏も「インフレ経済が定着し、物価と株価が同時に上がる構造が続く」という見方を示しています。これは強気な予測の根拠として語られているわけですが、裏を返せば「株価が上がっても、それはインフレのせいかもしれない」という話でもあります。株価の上昇とインフレは、コインの表と裏のような関係なのです。
大切なのは「購買力」
私たち投資家にとって本当に大切なのは、資産の「数字」が増えることではなく、その資産で「何が買えるか」という購買力を維持する、あるいは向上させることです。
日経平均10万円を無邪気に喜ぶのではなく、その時に牛丼一杯がいくらになっているのか、ガソリン1リットルがいくらになっているのか。スーパーで買う野菜の値段はどうなっているのか。そういったことを一緒に考えておく必要があります。
たとえば今から10年後、日経平均が10万円になっていたとして、同じ期間に物価が今の2倍になっていたとしたら、株価が上がっても生活は楽になっていません。むしろ現金や預金だけを持っていた人は、資産の実質価値が半分に目減りしているわけです。
ここで重要なのが「実質リターン」という考え方です。投資の世界では、名目の数字だけでなく、インフレ率を差し引いた「実質的な利益」を見ることが基本です。株価が年に5パーセント上がっていても、物価も同じように5パーセント上がっていれば、実質のリターンはゼロということになります。
4%ルールについても、これはS&P500の成長を7%、インフレ率を3%と見ていて、その差し引きで4%崩しても大丈夫だろうという計算になっています。長期的なパフォーマンスは、インフレを考慮せずに数字だけで見てどうこう論じてもあまり意味はないのですね。
円建ての数字の魔力に惑わされず、外貨や実物資産との比較で、自分の資産の実質的な価値を常に測っておく必要があるとは思います。
まとめ
まとめると、日経平均10万円という予測は、根拠がないわけではありません。企業の利益成長や株主重視の経営への転換など、日本株にとって追い風となる材料は確かに存在します。ただし、その数字をそのまま「日本経済の本物の成長」だと受け取るのは早計ということです。
インフレや円安が続く環境では、株価の数字が膨らむのはある意味で当たり前のことです。10年後に日経平均が10万円になっていたとして、その時の円の購買力が今の半分になっていたとしたら、「円建てで2倍になった」という事実は、ほとんど意味をなさなくなるわけです。
重要なのは、「日経平均10万円」とかの数字に踊らされず、自分の資産が実際にどれだけの購買力を持っているかを冷静に見ることが重要になってくるとは思います。
けっきょくのところ、分散してどう転んでもいいようにしないといけないわけで、外貨資産も視野に入れながら、円建ての数字だけに一喜一憂しない投資スタンスを持ち続けることが、長期投資家としての本当の強さではないかとは思います。お金の価値はどんどん落ちていきますしね。

