「178万の壁」で株価爆上がり&国民は貧しくなる?
新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。
今回は国民民主党の178万円の壁が実現した場合、インフレで株が爆上がりする一方、国民は貧しくなるのではないかという話についてです。
本記事をYouTube動画で観たい方はこちらのリンクから。
「178万の壁」で株価爆上がり?
こんなご質問をいただきました。
「103万の壁撤廃され、178万の壁が実現した場合、可処分所得が増えることにより、世の中に供給されるお金の量が増えることになります。
そうなると現在のインフレがさらに加速してしまうのではないでしょうか。インフレが加速すれば、相対的にお金の価値も下がるため、株価が爆上がりすることにもなります。
短期的には恩恵も大きいとは思いますが、ただインフレが進むことは物価の高騰にもつながるため、我々の生活にも大きな打撃を与えます。
某経済学者は国民民主の案について、ただのバラマキ政策と変わらないと述べています。というのも、日本の根本的な問題である産業構造を変えることが増収にとって一番重要なことで、例えばライドシェアの導入や労働市場改革などを優先的にするべきだと述べています。
また178万の壁が実現すると、減税効果は8兆円にもなるとされ、その財源をどこから持ってくるのかが問題になります。今年の4万円定額減税ですでに5兆円規模の減税になってしまっているので、そこへさらに178万の壁による減税が来ると、財政的に厳しくなるとは思います。しかも毎年8兆円の不足になります。
しかもこの案は、高所得者ほど減税幅が大きくなります。高所得者優遇との批判もあります。
これらの批判についてQ太郎さんはどうお思いでしょうか?」
とのことです。
まず言っておきたいのは、Q太郎は別に特定の政治団体を支持したりとかはしていません。国民民主党を支持しているわけでもなくて、あくまで法案がどうかというだけの話ですね。
それで今回の「103万の壁」撤廃ですが、前回の動画でも述べたように所得税よりも国民健康保険料の方がえげつないので、仮に103万の壁が撤廃されても、健康保険料の控除が43万円のままだったら、米国株の利益を下手に確定申告をしてしまうと逆に税金を増やすことになります。
ただこれはあくまで個人的な話でして、国全体として考えると税収が減ることは確実でしょう。試算だと8兆円ほど減るらしいです。ただこれによって可処分所得が増え、企業の売り上げも上がっていくのであれば、結果的に税金も増えるんじゃないかという考えもあります。
そのため、こういうのは正直、やってみないとわからないというところもありますね。経済の動きにはいろいろな要素がありますので、これをやればOKという話にはなりにくいとは思います。日本国内の問題だけでなく、海外の経済の動向もありますし、ファクターが多すぎるのですね。だから為替を当てるとかも無理なわけです。予想外になにが起こるかわかりませんしね。
それでインフレが進むという話ですが、国内に供給されるお金の量が増えますので、一般的に考えればインフレは進むでしょう。ご質問に書かれているとおり、物価が上がる可能性もありますし、株が爆上げする可能性もあります。株が上がるのは、相対的にお金の価値が下がっているからであって、べつに企業価値が上がっているわけではないのでそこは注意が必要です。円安で株価が上がるのとおなじですね。
お金の量が増えれば、円安が進む可能性もありますので、輸入品も高くなります。普通ならアメリカなど他の国のように利上げをすることでインフレを抑えなければならないのですが、日本はなかなかそれができません。低金利のまま市場のお金が増えてしまうと、インフレがどんどん加速する可能性はあります。
幸いというかなんというか、アメリカと違って日本人は貯金が大好きであまりお金を使わない民族なので、ひたすら稼いでは貯金をするというセルフテーパリングを国民全体で実行して、市場に出回るお金を回収して抑えているような状況です。これによって低金利でもデフレを可能にしてきましたが、だんだんそういうわけにもいかなくなってきました。
日本国内だけで石油も食料もまかなえるのであれば、お金や国債をバンバン発行してしまうのも一つの手ですが、そのあたりを輸入に頼ってしまっているため、日本国内のお金の供給量が増えれば海外との差で円安になって、輸入品の価格は上がってしまいます。日本一国だけでコントロールできるような状況ではないのですね。
以前ドイツのハイパーインフレの動画を出しましたが、輸入品を買うためにさらにお金を刷って、さらに円安が進んでという、ドイツと同じようなハイパーインフレループに入りかねません。そうなると我々の生活にも大きな打撃になるでしょう。ちなみに動画でいったように、ハイパーインフレ時のドイツの国内株は爆上がりでした。ただそれでもインフレに追いつけなかったのですね。
そのため、根本的に解決するには、やはりご質問にあるように日本の産業構造自体を変えて、稼げる国にしないと、長期的には難しいとは思います。その点は、その某経済学者は間違っていないとは思います。
8兆円の財源の違和感
それで仮に178万円の壁が実現した場合、財源の8兆円はどこから来るのかという話ですが、これについてはちょっと違和感があります。
というのも、一度8兆円を集めてから配るわけではなく、集める前の8兆円の話なので、これは確定したお金ではないわけです。
個人で考えれば、いくら税金を納めるかは、いくら稼いだかによります。仮に来年働かなかった場合、払う税金も0円です。つまりいくら税金を払うかは個人の自由なのですね。財源も何も、そのお金が取れるかどうかは国民次第になります。
集めた8兆円を、働いていない人も含めて配るという話であればこれはバラマキになります。不公平感もあるでしょう。
しかし自分が頑張って稼いだお金に対して、税金を少なく取るというのはバラマキにはなりません。働かなければ税金もくそもないので、ばらまいたことにはならないのです。自分がどれだけ稼いだか次第なわけです。
そのため、その8兆円がいかにもかならずとれるように思って「財源」と言っている方がいますが、国民全員が働くことをボイコットしてしまえば、その8兆円は取れないわけです。これは財源になる前のお金です。
さらに言えば、この8兆円は国民の懐に入りますので、8兆円が国に行くか、それとも国民に行くかの問題とも言えます。
ちなみに国民への減税をしぶっている一方で、2011年度から始まった特定の企業や個人の税負担を優遇する「租税特別措置」によって、法人税の減収額は、2022年度は2.3兆円と過去最高になりました。
所得税などを含めた同年度の減収額は約8.7兆円にも達し、9年連続で8兆円超えしているという朝日新聞の記事もありましたので、財源というのであればこちらを削ったほうがいいんじゃないかという気がしますが、どういうわけかこちらにはまったく手を付ける気はないようです。財源財源いう割には、こっちにはまったく手を付けないのですね。
そんなわけで貧しい国民は「生かさず殺さず」で、来年からさらに国民年金保険料も値上げになって絞り取られるという搾取構造になっているため、「103万の壁」撤廃は、8兆円にも及ぶ巨額な法人税減税に対する国民の反抗とも言えます。法人税減税の8兆円を削除するか、国民の減税8兆円を削減するかの争いみたいなものとも言えますね。
まあ、なんにしろ、頭で考えた計画と現実はだいぶ違うこともあるので、本当にこればかりはやってみないとわかりません。そのため、軌道修正可能な形で減税をやっていくのがいいとは思いますね。103万から178万までは一気に70%も増えるのでハレーションを起こす可能性もあることから、段階的にやっていくのがいいかなとは思います。
まとめ
そんなわけでまとめると、
・減税で市場のお金が増えれば、インフレが進むことにもなる。
・お金の価値が減れば、相対的に株価は上がる(ドイツもハイパーインフレ時は株価爆上がりです)。
・経済は日本一国だけでなく、海外情勢も関係してくる。輸入に頼る日本は、お金の供給量を増やしてしまうと円安で物価高を招く。
・103万の壁撤廃で8兆円の税金が減るとのことだが、その8兆円が国に行くか、国民に行くかの問題とも言える。
・すでに集めた税金をばらまくのはバラマキだが、減税は税金を払う前のお金。いくら税金を払うかは国民の稼ぎ次第。集める前のお金を「財源」というのはちょっと違う気もする。(極論、国民全員が仕事をボイコットすれば、8兆円じゃすまないぐらい税収は減りますしね)。
・所得税などを含めた法人税減税がすでに9年連続で8兆円を超えているので、それを削ってもいいんじゃないか説。
・ただ急激な減税はハレーションを起こす可能性もあるので、修正可能な形で段階的にやったほうが安全。
・経済は要素が多いので、実際にやってみないとわからないことは多い。
となります。
そんなわけで市場のお金が増えればお金の価値は減りますので、相対的に株価は上がりますし、インフレも進むとは思います。
しかもいまの日本のインフレは、円安によるコストプッシュ型なので、円の供給量を増やせばさらに円安が進む可能性もあり、国民の生活にも支障が出ています。
ただ現状は税金取られ過ぎなのは間違いないので、財源という話であれば8兆円規模の法人税減税をやめればいいだけじゃないかという気もしますね。そっちの減税はOKで、国民の減税はだめというのは不公平感はあるとは思います。
そんなわけで今後どうなるかよくわかりませんが、このまま増税で押しつぶされる展開もあまりよろしくないので、国民民主が何をするかは注目していきたいとは思います。