
前回、「人生の目的は破産しないことではない」という話をしました。
すべてを賭けたイーロン・マスクのような生き方は、成功すれば格好いい。でも、失敗した人は雑誌の表紙には載りません。
では、生活を壊すほどの危険は取らずに、新しい可能性へ少しだけ賭ける方法はないのか。
そこで出てくるのが、20%ルールです。
仕事や生活のすべてを変えるのではなく、時間の20%だけを、将来につながる新しいことへ使う。
これなら現実的に見えますよね。
ただ、実際にやろうとすると、妙なことが起こります。
20%の新しい時間を作ったはずなのに、なぜか生活全体は120%になるんです。
そんなわけで、ようこそ、Q太郎のお金の哲学へ。お金に飲み込まれないための生存戦略を独自の視点で解説します。今回は「20%ルールが120%労働になる理由」を深掘りしていきます。
・Googleの有名な20%ルール
20%ルールで有名なのはGoogleです。
Googleの創業者は、2004年の株主向け書簡で、社員が通常の仕事とは別に、自分がGoogleのためになると考えるプロジェクトへ、時間の20%を使うことを奨励していると説明しました。
一週間のうち、一日くらいは自分が情熱を持てる仕事をしてよい。
とても夢のある制度です。
Googleは、AdSenseやGoogleニュースなどが、この20%の時間から生まれた例だと紹介していました。
会社から与えられた仕事を100%こなすだけでは、現在の延長線上にあるものしか生まれにくい。だから、仕事の一部を少し遠回りに使う。
全部を賭ける必要はありません。
80%は今の仕事を続け、20%だけ未来へ賭ける。
前回話した「破滅するほどのリスクは取らない。でも、何も賭けない人生にもしない」という考えにも、よく合います。
ただし、ここには一つ問題があります。
20%ルールは、20%の仕事を増やす制度ではありません。
本来は、現在の仕事を80%に減らして、空いた20%を別のことへ使う制度です。
ところが、現実には、この引き算がなかなか起きません。
・100%の仕事は、そのまま残る
Googleの元幹部だったマリッサ・メイヤーさんは、20%ルールについて、実際には120%の時間だという趣旨の発言をしたことで知られています。
つまり、本業を80%で終わらせて、残りを自由に使うのではない。
まず、期待されている仕事を100%終わらせる。
そのうえで、夜や週末を使って20%のプロジェクトを進める。
合計120%です。結構、エグい現実です。
これでは、会社が自由な時間をくれたというより、やりたい人だけが追加で働いている状態ですよね。
もちろん、実際の使い方は部署や上司、時期によって違ったようです。Googleの元人事責任者も、全社員へ機械的に一日を配る正式な制度というより、哲学に近いものだったと説明しています。
だから、「毎週金曜日は誰でも自由研究をしていた」と考えると、少しきれいに描きすぎなのだと思います。
制度として「使っていい」と言われることと、実際に使える時間が空いていることは、まったく別なんですね。
たとえば上司から、「金曜日は自由なプロジェクトをやっていいですよ」と言われたとします。
ところが、木曜日までに終わらなかった仕事が机に残っている。月曜日の会議で、その仕事の進み具合を報告しなければならない。人事評価で見られるのも、自由なプロジェクトではなく、本来の担当業務です。
それでも金曜日を自由に使えるでしょうか。
制度の上では使えます。
でも、多くの人は先に本来の仕事を片づけると思います。
使うことを許可されていても、その時間を使った結果として本業が遅れたら、自分で責任を負う。これでは自由時間というより、自分の判断で引き受ける追加業務に近くなります。
本当に20%を渡すなら、会社の側も、本業の成果が一時的に80%になる可能性を引き受けなければなりません。
余白には、誰かが負担するコストがあるんですね。
・私たちも同じことをしている
これはGoogleだけの話ではありません。
たとえば、会社員が将来のために資格の勉強を始める。
仕事を辞めずに挑戦できるので、安全です。
ただし、会社の仕事は一分も減りません。通勤も家事も睡眠もそのままです。そこへ勉強時間だけが追加されます。
副業も同じです。
いきなり会社を辞めて独立するより、本業を続けながら小さく始めるほうが安全です。
でも、本業が100%のままなら、副業の20%は夜と休日に置くしかありません。
投資の勉強、運動、YouTube、読書、新しい人との交流。
どれも将来のためになることです。
そして、どれも現在の予定を一つも消してくれません。
ここが20%ルールの少し意地悪なところです。
新しいことを小さく始めよう、という言葉は、とても優しく聞こえます。
しかし現実には、小さく始めたものが、今の生活の上へそのまま積み上がります。
小さいから大丈夫だと思って、一つ、また一つと載せていく。
気づいたときには、人生全体が120%どころか、140%くらいになっています。
・Q太郎の20%も、勝手には生まれない
Q太郎にも、これはかなり身に覚えがあります。
YouTubeで、いつもの動画とは違うことを試してみたいと思うことがあります。
ゲームの話をしてみたい。時事をもっと軽く話してみたい。原稿をラジオのようにしてみたい。
どれも、いわばQ太郎の20%です。
では、その20%はどこから出てくるのか。
毎日の動画を作り終えたあとです。
企画を考えて、原稿を作って、音声や画像を用意して、投稿の準備をする。そこまでの仕事は、別のことを試したからといって消えてくれません。
新しい形式を試すための時間は、いつもの作業の外側に生まれます。
これ、ゲームでいうと、毎日のクエストを全部終えた人だけが、自由な冒険へ出られるようなものです。
しかし毎日のクエストは、次の日になると、また復活します。
いつになったら冒険へ行けるんでしょうか。
時間が余ったらやろうと思っている限り、20%はたぶん永遠に余りません。
・20%を作るには、80%で止めなければならない
20%ルールが難しいのは、私たちに向上心がないからではありません。
すでに100%使っているところへ、さらに20%を入れようとするからです。
一日は24時間です。
これはGoogleの社員でも、Q太郎でも変わりません。
ですから、本当に20%を確保するなら、先に何かを80%で止める必要があります。
仕事の完成度を少し下げるのか。
予定を一つ断るのか。
毎日続けている何かを、週に何回か休むのか。
あるいは、今は新しいことを始めないと決めるのか。
ここから先は、簡単に正解を出せる話ではありません。
仕事を80%にすれば、周囲から手を抜いていると思われるかもしれません。家事や人間関係には、数字どおり削れないものもあります。
だから多くの人は、引き算をせずに足し算を選びます。
そのほうが誰にも迷惑をかけず、説明もしやすいからです。
そして、自分の時間だけが減っていきます。
20%ルールで本当に難しいのは、新しいことを始める勇気ではないのかもしれません。
今やっていることを、100%やらない勇気なのかもしれません。
・まとめ
Googleの20%ルールは、現在の生活を守りながら、未来へ小さく賭ける方法として、とても魅力的です。
ただし、100%の仕事を残したまま20%を追加すれば、それは20%ルールではなく、120%労働になります。
20%の余白は、忙しい毎日のどこかに隠れていて、見つけてもらうのを待っているわけではありません。
何かを80%で止めたとき、初めて生まれます。
では、自分の生活の何を80%にするのか。
Q太郎も、まだきれいな答えは持っていません。
皆さんには、時間ができたら始めたいと思いながら、ずっと始められていないことがありますか。その20%を作るなら、今の生活から何を少し減らせそうでしょうか。よければコメントで教えてください。全部読ませていただいています。
数字を味方に。そして、誰の欲望でもない自分の人生を、自分の手で耕していきましょう。
ではまた、Q太郎でした。この動画を気に入っていただけましたら、高評価・チャンネル登録をよろしくお願いいたします。
