
前回に引き続き、インデックス投資についていただいたご質問に答えていきます。
今回は二つ目のご質問です。
「個別株の配当再投資と、インデックス投信の自動再投資には、決定的なズレがあるように感じます。
例えば、元本100が120になって、20の配当が出て、その20でまた100の価値の株を安く買い足していく。株数が純粋にネズミ算式に増えていく世界であれば、枚数が増える実感が湧くし、得をしている気がします。
しかし、インデックス投信の場合、配当が内部で勝手に再投資されて、基準価額そのものが120に膨れ上がってしまい、私たちはその高くなった価格のものを現金で買わされています。
株価が変わらないまま、配当で株数がモリモリ増えていく世界と違って、インデックスの積立は、実は最初に大量に買って放置できる人、一括投資組のためのものであって、後から現金を削る人間には仕組み的に不利なのではないかと感じます。
数学的には、どちらも同じ結果になる、複利効果は一緒と説明されることが多いのですが、どうもこの、高くなったものを現金で買い足し続けるジレンマの感覚が腑に落ちません」
とのことです。ありがとうございます。
このモヤモヤの中心には、一つの思い込みがあります。
配当を20受け取っても、株価120はそのまま残る。
そして、その20を使って、価格100の株を安く買い足せる。
もし本当にそうなら、たしかに配当を出す個別株のほうが圧倒的に得です。
120の資産を持ったまま、別に20が湧いてくるからです。
でも、実際には、その20は株価の外側から湧いてきません。
会社の中にあった20が、会社の外にいる株主へ移動します。
ここを見落とすと、配当再投資が、お金を生み出す永久機関のように見えてしまいます。
そんなわけで、ようこそ、Q太郎のお金の哲学へ。お金に飲み込まれないための生存戦略を独自の視点で解説します。
今回は「配当再投資で口数が増えないのは損なのか」を深掘りしていきます。
今日は大きく三つ話します。
一つ目、配当が出ると、株価には何が起きるのか。
二つ目、なぜ個別株では、配当をもらっても株価が減っていないように見えるのか。
三つ目、口数が増える再投資と、基準価額が上がる内部再投資は、本当に違うのかです。
最後に、複利で本当に見るべきものは枚数なのか、Q太郎なりの見立てを置いて終わります。
・一つ目・配当は外から湧いてこない
それでは一つ目、配当が出ると、株価には何が起きるのかです。
話を単純にするため、税金や手数料、市場の値動きはいったん無視します。
一株の価値が120円の会社があるとします。これは前回説明した投資信託の口数の話とおなじように、株価というのは、会社の価値を株数で割ったものです。
この会社が、一株あたり20円を配当として株主へ渡します。
配当の前には、会社の中に20円の現金があります。
配当の後には、その20円が会社の外へ出ています。
会社から20円がなくなったのに、会社の価値だけが120円のままなら、おかしなことになります。
そのため、理論上の株価は、120円から20円を差し引いた100円になります。
株主が持っているものは、100円の株と、受け取る20円です。
合計は120円です。総量は変わりません。
配当を受け取ったことで、120円が140円になったわけではありません。
財布の右側にあった20円を、左側へ移したようなものです。
投資信託の分配金なら、この動きは比較的分かりやすく見えます。
なぜなら投資信託は、原則として一日に一度、基準価額が計算されます。
基準価額が一万二千円の投資信託から二千円の分配金が出れば、その分だけ純資産が外へ出るため、ほかに値動きがなければ、分配落ち後の基準価額は一万円になります。
一万二千円の投信と、別にもらえる二千円の分配金が存在するわけではありません。
一万円の投信と、二千円の現金に分かれただけです。
ところが個別株では、この減少が見えにくくなります。
それが、今回の勘違いが生まれる場所です。
・二つ目・午前8時50分に消えるもの
二つ目、なぜ個別株では、配当をもらっても株価が減っていないように見えるのかです。あくまでそう感じてしまうだけですね。
例えば、権利付き最終日の終値が、一株千円だったとします。
予想配当は、一株30円です。
この株を権利付き最終日まで持っていれば、配当を受け取る権利があります。
しかし、翌日の配当落ち日に買う人には、その配当を受け取る権利がありません。
千円で配当付きの株を買った人と、千円で配当なしの株を買う人が同じでは、不公平です。
そこで配当落ち日には、取引が始まる前に、前日の終値から予想配当分を差し引いて、基準値段が調整されます。
この例なら、千円から30円を引いた970円になります。
SBI証券では、午前8時50分になると、画面上の株価表示が、この配当落ち後の基準値段へ切り替わります。
つまり前日に千円と表示されていた株価が、970円になるのですね。
ここが大切です。
市場の開く午前9時前に、970円を基準に寄り付きが始まり、午前9時に寄り付き価格が決まります。前日の株価である1000円を基準にして寄り付きが始まっているわけではないことに注意してください。30円減った970円から始まっているのです。
投資信託は一日一回の取り引きなので、分配金ぶんが引かれているのはわかりやすいですが、株式は一日に何回も取り引きされます。
そのため、970円に落ちた株価が、寄り付き前に買い注文が多い場合、始値が1000円を超えることもあります。たとえば、8時50分の時点で970円でも、寄り付きで買い注文を入れている人が多かったら、9時に始まったときの株価が1,000円になったりするわけですね。
投資家の目には、前日の終値が千円、今日の株価も千円と見えます。これを見て、「配当分の金額が減っていない」と勘違いしてしまうわけです。
仮に株式も一日一回の取り引きだったら、投資信託と同じようにその日の株価は970円で終わるわけです。
つまり投資信託も株式も取り引きの方法が違うだけで、払い出された配当分はしっかり引かれているのですね。
株式は配当落ちによって、取引の出発点が千円から970円へ調整された。
そのあと、寄り付きの買い注文が多い場合、970円から千円へ30円値上がりした。
配当で30円下がらなかったのではありません。
配当で30円調整されたあと、市場で新たに30円上がったのです。配当分はしっかりその前に下がっているのですね。
株は一日に何度も取引されます。
配当落ちと、その日の値動きが同じ画面の中で重なるため、最初の30円が見えなくなります。
一日に一度しか基準価額が出ない投資信託では、分配金による下落が切り分けて見えやすい。
一日中動く個別株では、配当落ち後の値上がりが、その下落を覆い隠すことがある。ここで勘違いが起こります。
この表示の違いが、配当を出す個別株だけは、価値を減らさずに現金を生み出しているような錯覚を作ります。
けっきょく自分で取り崩しているか、人に取り崩してもらっているかの違いなのですね。株価は配当分、しっかり減っているわけです。
・三つ目・枚数と中身の違い
三つ目、口数が増える再投資と、基準価額が上がる内部再投資は、本当に違うのかです。
もう一度、120円の資産で考えます。
一つ目の方法では、20円を配当として外へ出します。
配当落ち後の価格は100円です。
受け取った20円で、同じ株や投資信託を買い足します。
100円のものを0.2口買えますので、最初の一口と合わせて、1.2口です。
一口100円かける1.2口で、合計は120円です。
たしかに、口数は増えました。
二つ目の方法では、20円を外へ出さず、ファンドの中で再投資します。
投資家が持つ口数は、一口のままです。
ただし、一口の中にある資産は120円です。
一口120円かける一口で、合計は120円です。
一方は、100円のものを1.2口。合計は120円。
もう一方は、120円のものを一口。合計は120円。
表示は違いますが、「価値」は同じです。
前回の動画でも「枚数は意味がない」という話をしましたが、枚数や株価なんかは、発行体がどうにでも設定できるのですね。単に純資産をどう分割するかの話だけです。
前者は、配当を外へ出してから買い戻すため、枚数が増えます。枚数は増えますが、価値はおなじです。
後者は、ファンドの中から出さずに再投資するため、一口あたりの中身が増えます。枚数は増えませんが、価値はおなじです。
口数が増えないから、再投資されていないわけではありません。
再投資の場所が、自分の口座に見えるか、ファンドの中にあるかの違いです。
むしろ、税金や売買費用まで考えると、完全に同じとは限りません。
配当をいったん受け取る方法では、課税口座なら配当へ税金がかかり、再投資できる金額が減る場合があります。
無分配型の投資信託が内部で配当を再投資すれば、投資家個人へ分配するたびに課税されることを避けられる場合があります。
もちろん、ファンドの費用や外国での課税などは別にあります。
ただ少なくとも、「口数が増えないから複利が弱い」ということではありません。
複利とは、枚数を増やす仕組みではありません。運用で得た「利益」を、次の運用へ回す仕組みです。あくまで「今の価値」をベースにして、パーセンテージを増やしていくというものですね。枚数をいくら増やしても、価値が変わっていなければ複利にはなりません。
ダメな株を何枚持っていても、その配当金で何回再投資しようが、合計した全体の価値が投資元本より下がっていたら、それは複利どころか、普通に損しているという話です。
ここは本当に注意してください。ここを理解しないと、高配当で釣ってくる投資詐欺に騙されます。一時流行っていて毎月分配型とかはこのタイプです。一見、分配金を再投資したらもっと増えるように見えますが、分配金ぶんは基準価額が減りますし、それを再投資したところで、口数は違っても、「全体の価値」はおなじなのですね。
つまり、120円の基準価額で、20円の分配金を受け取って、それを再投資しても、「全体の価値」は120円です。どうひねくりまわそうが、120円自体は変わらないのです。これは本当に理解しておいてください。
・まとめ
最後に、複利で本当に見るべきものは枚数なのか。Q太郎なりの見立てを置いて終わります。
配当を受け取って、安くなった株を買い足せば、枚数は増えます。
通帳や証券口座に口数が増えていくので、複利が働いている実感も得やすいと思います。
一方、無分配型の投資信託では、口数が増えません。
配当はファンドの中で再投資され、一口の中身に残ります。
だから、何も増えていないように見える。
しかし、投資で大切なのは、何枚持っているかではありません。
その枚数を掛け合わせた結果、自分がいくらの資産を持っているかです。
100円のものを1.2口持っていても、120円のものを一口持っていても、合計は120円です。
投資家が見なければいけないのは「全体の価値」なのです。枚数とか口数ではありません。「全体の価値」が減っていたら、意味がないわけです。枚数より、「トータルリターン」を見る癖をつけてください。
配当は、株価とは別に生まれるボーナスではありません。
会社の中にあったお金を、会社の外へ移しています。そして株価というのは、企業の価値を枚数で割ったものです。当然、配当でお金を外に出したら、そのぶん株価を減らさなければなりません。
個別株でその動きが見えにくいのは、配当分が引かれていないからではありません。しっかり引かれます。
そしてその引かれた株価を基準に寄り付き前の注文が始まり、午前9時に寄り付き株価が出てくるわけです。市場が開く前のやりとりが見えていないから、勘違いしてしまうわけです。
仮に株式が一日一回の取り引きなら、投資信託とおなじように、配当金分が引かれた価格が出てくるだけです。
配当が出たぶん、しっかり株の価値は減っています。そのあとの取り引きで増えたりすることがあるので、減っていないように見えるだけです。とくに株は一日に何度も取り引きしますしね。
枚数が増えたという気持ちよさと、資産が増えたという事実は、分けて考えたほうがいいでしょう。
複利が増やすのは、口数ではありません。「全体の価値」の大きさです。我々が見なければいけないのは、枚数や口数ではなく、全体の価値です。全体でいくら増えたかです。
そしてこの「全体の価値」が、これから先の未来の「元本」になっているわけです。
そんなわけで、証券口座で見なければいけないのは全体の価値である「トータルリターン」です。トータルリターンが減っていたら、いくら口数を持っていても、いくら配当を貰っても、意味がありません。全体が減っているのですからね。
そんなわけで、口数よりも、トータルリターンという現実をしっかり見たほうがいいとは思います。結局重要なのは、資産がいくら増えたのかですね。
皆さんは、配当を受け取った日に、株価は下がっていないのに現金だけが増えた、と感じたことがありますか。よければコメントで教えてください。全部読ませていただいています。
数字を味方に。そして、誰の欲望でもない自分の人生を、自分の手で耕していきましょう。
ではまた、Q太郎でした。この動画を気に入っていただけましたら、高評価・チャンネル登録をよろしくお願いいたします。
