
Q太郎、以前YouTubeを見ていて、ちょっと気持ち悪い広告に何度も遭遇したことがありまして。ホリエモンさんが出てきたと思ったら、次は高橋洋一さん、その次は投資家のテスタさん。毎回違う有名人が出てくるんですが、しゃべっている内容が、なぜかまったく同じなんですね。AIで作った映像とAI音声を使って、本人がしゃべっているように見せかけているわけです。口パクもあっているわけです。
ただそこまでクオリティが高くないので、見慣れたかたなら「あ、これ偽物だ」とすぐわかるレベルだと思います。
ただ、こういう広告、実は氷山の一角でして。SNS型の投資詐欺・ロマンス詐欺の被害額、2025年の1年間で約1,827億円にのぼっていまして、2024年の約800億円から、わずか1年で2倍以上に膨れ上がっているんです。毎日、5億円ぐらいのお金が、こうした詐欺グループの手を通じて海外に流出している計算になりまして。
台湾なんかもっとひどい状況で、詐欺の被害総額がGDPの1%ぐらいになっているとか。先日も台湾の知人が、フェイスブックで「アボガドを仕入しすぎたので助けてください」みたいなのを見て、アボガドを買ったのですが、商品が届かない。しかもなんか取引時に口座を教えたりしたので、お金が20万元ぐらい引き出されているわけです。日本円で100万円ぐらいですね。
なんか台湾に、支払い時を簡単にするカードみたいなのがあって、それが一日に上限10万元、一回の引き出し額が5万元というのがあるらしいです。そのカードも正直どうなんだとは思うんですけど、それでその詐欺は夜10時ごろに取引していたのですね。つまり、日をまたげばまた10万元の枠が復活するので、12時前までの2時間で10万元を引き出して、日をまたいでまたすぐに10万元を取るという方法です。2時間しかないので、気づいて警察に通報しても間に合わないわけです。
そのかたは、途中でおかしいと思って、夜中に警察に通報して、5万元は取り返せたみたいなんですが、残りはどうなったのかはよくわかりません。
そのかたは注意深い人なんですけど、フェイスブックで、アボガドを仕入れすぎて泣いている人の動画を観て、かわいそうだと思って買ったんだそうです。
正直、ニュースでこの手の話を聞くことはあっても、身内みたいな人がひっかかるとは思いませんでした。
Q太郎的には「どんな理由にせよ、信用が担保できないSNSで個人取り引きするなよ」とは思うのですが、今の時代はSNSで個人取り引きするのも当たり前になってきているのですね。安く買える場合もありますが、そのぶんリスクもあります。しかもそのリスクがやたらとでかい。取られる金額がでかい。小銭ケチって大金取られるケースです。闇バイトとかも、このSNS取引の一種ですね。
そんなわけで、ようこそ、Q太郎のお金の哲学へ。お金に振り回されないための生存戦略を日々発信しています。
今回は「AIとSNSを使った投資詐欺」に飛びつく人が陥る罠、というテーマを深掘りしていきます。
・AI詐欺は「工場生産」になった
さきほどのホリエモンさん・高橋洋一さん・テスタさんの広告、あれ、詐欺としてはむしろ「わかりやすい部類」なんです。出てくる人物は毎回違うのに、セリフはコピー&ペーストしたみたいに同じ。これはつまり、同じ台本に、AIで生成した別の有名人の顔と声を、機械的に貼り付けているだけということでして。
騙されるやついるのか、と思う視聴者のかたも多いとは思いますが、しかし実際、この手の被害は洒落にならない金額まで広がっています。関西テレビの報道によりますと、AIで作ったフェイク動画・音声でホリエモンさんになりすまして投資勧誘をした結果、SNS投資被害で5,260万円をだまし取られた事例があったそうです。
別のケースでは、生成AIで著名人になりすました画像を使って信頼を得たうえで、1億3,000万円をだまし取られた事例も報告されています。
以前の詐欺というのは、台本を練って、演技のうまい人を用意して、時間をかけて信頼関係を作る、いわば職人芸だったんです。いや、べつに褒めていませんが、なんにしろ演技力は必要でした。
でも今は、生成AIで有名人の映像や音声を大量に、しかも安く複製できるようになりました。台本を1本作れば、あとは顔と声を差し替えるだけで、何十パターンもの広告が量産できてしまう。2026年の投資詐欺は、職人芸から工場生産へと進化した、という指摘もあるぐらいでして。企業化しているわけですね。
ここでひとつだけ、Q太郎から補足しておきたいことがありまして。「セリフが同じだから見分けられる」というのは、あくまで今の精度の話です。
AIがさらに進化すれば、この「使い回し感」も、どんどん巧妙に消されていくはずなんですね。今は見分けやすくても、この先ずっと見分けやすいままだとは、正直Q太郎も思っていません。
とはいえ、今のうちに使える見分けかたもありまして。出てくる人物が本当に発言しているなら、本人の公式サイトやSNSの公式アカウントにも同じ告知があるはずです。そこに情報がなければ、まず疑ってかかったほうがいいと思います。
あとは、「絶対に儲かる」「必ず月収が何倍になる」というふうに、言い切りが強すぎる表現も要注意でして。まっとうな投資の話には、たいてい「リスクもあります」という一言がついてくるものなんですね。
「絶対」とか言っているやつは、絶対に信用しないほうがいいです。「絶対儲かるなら、自分でやれよ」という話ですね。
・オートメーションバイアスという罠
じゃあ、なぜこんな広告に引っかかってしまうかたがいるのか。ここには「オートメーションバイアス」という、ちゃんと名前のついた心理現象が関係しています。
オートメーションバイアスというのは、自動化されたシステムや権威ある情報の判断を無条件に正しいと思い込んでしまって、矛盾する情報を自分で検証しなくなる心理の傾向のことです。
たとえば、カーナビが明らかに変な道を案内しているのに、なんとなくそのまま従ってしまった経験、あるかたも多いんじゃないでしょうか。それでめちゃくちゃ大回りになっているみたいな。人間には、機械が出した答えのほうを、自分の直感より信じてしまう癖があるんですね。
生成AIは、とにかく文章や映像が流暢で、もっともらしく仕上がります。有名な投資家の顔で、堂々とした口調で「この銘柄が上がります」と言われると、人間の脳は「この人が言うなら間違いないだろう」と、思考を止めてしまいやすいんですね。
とくに日本や中国などアジア圏は、縦割り社会の権威主義文化なので、「偉い人が言うから正しい」みたいな価値観があります。権威とか学歴とかに、とにかく弱いのですね。「東京大学の教授が言っているから正しいんだろう」みたいな感じです。自分で情報の精査をしない。
それで、実際に金融庁も今年3月に改訂したAIディスカッションペーパーの中で、生成AIが顧客に直接金融商品を勧める行為も「勧誘」に該当しうる、という整理をしています。国の規制当局が、わざわざこういう整理を出さなければいけないぐらい、AIの推奨には人を動かす力があるということなんですね。
・「必勝法」というトリック
ここからが、今回Q太郎が一番言っておきたいところなんですけど。詐欺かどうかを抜きにしても、AIが出してくる「必勝投資法」そのものに、構造的な罠が隠れています。
AIが提示する必勝法というのは、たいてい過去のデータを分析して作られています。過去のデータで検証すること自体は悪いことじゃないんですが、問題は、過去のデータというのは、すでに結果がわかっている状態だということなんです。
たとえば、去年1年間の日経平均の値動きを全部知っている状態なら、「ここで買って、ここで売れば、年利50%でした」という必勝法は、実はそんなに難しくなく作れてしまいます。答えを知ってから問題を解いているようなものでして、これはもう必勝法というより、種明かしに近いんですね。というか、切り取る期間で、どうにでも、こじつけられます。
投資信託の宣伝でも、似たようなことが起きていまして。華々しい成功事例だけが表に出てくる一方で、同じような戦略で運用していたのに、途中で解散して消えていったファンドの話は、なかなか広告には出てきません。うまくいった一部だけを見せられると、その手法自体が万能に見えてしまう。これも、必勝法という言葉の危うさの一つだと思います。
たとえるなら、クリア済みのゲームで攻略チャートを作るようなものです。全部の展開をもう知っている状態なら、「ここでこの武器を買って、この順番で戦えば完璧にクリアできます」という必勝ルートは、いくらでも書けてしまいます。過去の話ですしね。
でも、これから旅に出るプレイヤーには、次に何が起きるかなんて誰にもわからないんですね。過去のデータから逆算して作られた投資の必勝法も、この攻略チャートの理屈と、まったく同じ構造でして。過去には確かに勝てていたかもしれませんが、それが未来も勝てることを保証するものでは、まったくないんです。
4パーセントルールもそんな感じで、過去はうまくいったけど、今後うまくいくかはわからない。だから取り崩しや配当金だけで生活というのは安定感がないので、短期バケツや中期バケツなど、生活を守るための余裕資金も用意する必要があるのです。
・なぜ人は必勝法を求めるのか
さて、ここまでの話を聞くと、そもそもなんで人は「必勝法」なんてものを、そんなに欲しがるんでしょうね。Q太郎、これ、判断すること自体の痛みから逃げたい、という心理が根っこにあるんじゃないかと思っていまして。
自分で銘柄を選んで、自分で損益に責任を持つというのは、地味にしんどい作業です。上がるか下がるか、誰にも確実なことは言えない中で判断を下し続けるのは、精神的にかなり消耗するんですね。そこに「AIが分析した必勝法です」と言われると、判断という重い荷物を、AIに預けてラクになりたくなる気持ち、Q太郎も正直よくわかります。面倒なことは考えたくない、楽して儲けたいという話です。でもその「楽して」の裏には、しっかりリスクもあるのです。
以前このチャンネルでも話しましたが、人間には「もっと楽に、もっと確実に」を求め続けてしまう渇愛という性質があります。必勝法を求める心理も、この渇愛の一つの現れなんじゃないかと思うんですね。
そして詐欺師が一番うまく利用しているのが、まさにこの「楽に勝ちたい」という欲望でして。楽をしたい気持ちが強ければ強いほど、都合のいい話を疑わずに信じてしまう。オートメーションバイアスというのは、結局、この渇愛につけこまれた結果とも言えるんじゃないかと思います。
このチャンネルで話しているお金の哲学は、楽して儲かるみたいな即効性はないですが、介護問題とか、お金についてのとらえかたとか、リスクの考えかたとか、こういう哲学のほうが長い人生を生きていくうえでは重要だと思っています。
幸せになるために投資しているのに、お金にとらわれすぎると、もっと増やしたいという欲望から、変な投資詐欺にひっかかったり、リスクを考えずに変な投資をしたりしてしまうのですね。それで幸せからどんどん遠ざかってしまうわけです。「どうお金を増やすか」より、「どう生きていくか」を広い視点で考えていかないと、本当にろくなことにならないとは思います。
・まとめ
そんなわけでまとめると、AIを使った投資詐欺は、生成AIによって職人芸から工場生産へと進化していまして、SNS型投資詐欺の被害額は1年で2倍以上に急増しています。今はまだ「セリフの使い回し」で見分けやすい部分もありますが、AIが進化すればその粗もどんどん消えていくはずです。
その根っこにあるのが、AIの判断を無条件に正しいと思い込んでしまうオートメーションバイアスと、判断の痛みから逃れたいという願望でして。AIが出してくる「必勝法」自体も、過去のデータから逆算して作られている以上、未来の勝ちを保証するものではありません。FXの自動売買もおなじですね。
見分けるポイントをもう一度おさらいしておくと、出演者の発言が本人の公式な発信と一致しているか、言い切りが強すぎないか、そして提示されている実績が過去のデータに頼りすぎていないか。この3つを意識するだけでも、かなり詐欺のリスクは減らせるはずです。「絶対」とか言っていたら、絶対信用してはいけないわけです。
AIの分析結果は、あくまで参考情報であって、答えそのものではないんですね。判断の最終責任を自分の手から離さないことが、資産を守るための一番の防御なんじゃないかと、Q太郎は思っています。
皆さんは、AIや有名人が太鼓判を押す投資情報を見たとき、まず疑ってかかりますか。どうやって見分けますか。よかったらコメントで教えてください。全部読ませていただいています。
数字を味方に。そして、誰の欲望でもない自分の人生を、自分の手で耕していきましょう。
ではまた、Q太郎でした。この動画を気に入っていただけましたら、高評価・チャンネル登録をよろしくお願いいたします。
