FIREした人への嫉妬・ねたみを無くしたい【FIRE/退職/人生】

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新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。

今回は嫉妬・ねたみをやめる方法についてです。

本記事をYouTube動画で観たい方はこちらのリンクから。

嫉妬・ねたみをやめる方法

こんなご質問をいただきました。

「初投稿させていただきます。

私は現在FIREを目指して貯金・投資をしていますが、今回の大暴落で含み損を抱えてしまいました(eMaxis Slimのオルカンです)。

怖くなっていったん売って底値で拾おうと思ったところ、「いったん売って下値で買い戻すは可能か」という動画を観て思いとどまりました。現在は値を戻しつつあり、結果的には正解だったとは思います。あのとき売っていたら、買い戻しの方が高くつきました。

(これに関してはいちおう補足しておくと、動画の中でも言っているように、正解かどうかは今の時点ではわかりません。1~2年後になって、「あのときが底だった」とか、リーマンショックのときみたいに「2番底、3番底があった」みたいなケースもあるので、正解かどうかを今の時点で決めることはできません。が、世界インデックスの長期投資なら損切りタイミングは「将来的に世界の経済成長が見込めなくなったとき」なので、核戦争があってモヒカンがあたりをうろつくレベルぐらいにならないかぎりは、短期の動きに一喜一憂しないことが重要とは思います。あくまでインフレ対策の資産ですしね。個別株はその企業の業績や決算次第になります)。

それで「FIRE後、夢や目標を持たない=幸福な人生」を観て、目標が遠いほど苦も長くなるとの言葉を聞いて、貯金も現実的な金額(10万円ずつ)を積み重ねる方法に切り替えてから心理的にも楽になりました。達成感もありますし、千里の道も一歩からですね。

それで今回の質問なのですが、やはりFIREを目指していることからか、お金持ちや「FIREしました」という人たちに嫉妬することが多くなりました。

他人がどうしようが他人の話なので無視すればいいとは理屈でわかっているのですが、SNSなどで流れてくる情報を見るとどうしても嫉妬やねたみが起こってしまいます。

またkindleアンリミテッドにも、素人が書いたようなFIRE本がたくさんあり、それを見ててもイライラしてきます。

見なければいいだけの話なのですが、やはりおすすめなどで出てくるため、目に入ってしまうのです。

Q太郎さんのチャンネルは「FIREしてよかった」「FIRE万歳」みたいなキラキラした肯定的なとらえ方はしていなくて、どちらかと言えばFIREのデメリットへの対処に関する動画が多いように見受けられます。そのため私でも見やすいです。

嫉妬は精神的にもよくないとはわかっていますが、自然発生してしまうものなので、何か現実的な対処方法があれば教えていただければ幸いです。」

とのことです。

これについてはFIRE云々よりも、嫉妬が起こる原因から理解していった方がいいでしょう。

嫉妬が起こる原因

自分の幸福にとって嫉妬がなぜよくないかといえば、アランやラッセルなど「幸福論」で有名な哲学者たちが指摘しているように、「嫉妬とは、自分の持っているものから楽しみを引き出すのではなく、他人の持っているものから苦しみを引き出す行為」になるからです。

自分の持っているものを観て、そこから幸福を引き出すのではなく、わざわざ他人の持ち物から不幸を引き出して、勝手に自分で苦しんでいるという、言語化するとかなり非生産的なことをやっているわけです。自分だけが一方的に損して不幸になっているのですね。

前回、「足るを知る」をテーマに取り上げましたが、「足る」というのは「満足」や「充足」のことで、どんなモノやコトに対しても満足・充足を知ることのできる境地のことを指します。何かを楽しむためには知識や知恵が必要になってくるので、そのためにはつねに学び続ける必要があります。「足るを知る」は今日明日でできるような簡単なことではないのですね。

それで嫉妬というのは、この「足るを知る」とは完全に真逆なことをやっています。つまりわざわざ他人の持ち物から楽しみではなく、能動的に苦しみを引き出しているのですね。あえて苦しみを取りに行くという行為です。

ただ嫉妬は古代より存在する人間の原罪のようなもので、歴史は人の嫉妬で動かされてきたとも言えます。嫉妬は行動にまで移ってしまうような大きなエネルギーなので、嫉妬によって争いが起こり、大きな戦争にまで発展してしまうこともあります。ある意味、嫉妬は人間の生存本能とも言えます。「嫉妬の世界史」という本まであるので、興味がある方は読んでみてください。手軽に読める感じの本です。

フランス革命や共産主義革命もある意味民衆の嫉妬心で引き起こされており、ようは「権力者はけしからんから権力を奪え」「金持ちはけしからんから富を奪え」というものですね。中国やカンボジアで知識分子が粛清されていったのも、根本にあるものは「頭のいいやつはけしからんから粛清せよ」です。それに民衆が乗っかってしまうのですね。

ポル・ポト政権だと眼鏡をかけているだけで粛清されていたりします。そんな反知識分子な政府が国を運営するので、ろくなことにはならないわけです。

中国は毛沢東の大躍進によって、推定2000万人から5500万人の餓死者を出しています。なんの大躍進やねんという話です。データや知識ではなく、思い付きで政治をやってしまうのですね。これは日本もあまり他国のことを言えないので、どっこいどっこいみたいなところもあります。

そんなわけで、歴史上も嫉妬はろくなことになっていないわけですが、アホなことを最後まで突っ走ることができるほど、エネルギーだけはやたらとあるわけです。

秋葉原通り魔事件や京都アニメーション放火事件、地下鉄サリン事件などのような陰惨な事件も、世間への嫉妬をエネルギーにして動いています。嫉妬は、エネルギーだけはやたらとあるわけです。このエネルギーが良い方向に使われればいいのですが、多くの場合が悪い方向に使われます。とにかく自分が嫉妬するやつらは粛清しろみたいな発想になってくるのですね。

そのため、嫉妬を抑えるというのは、ある意味重要なことになるとは思います。

嫉妬の起こりやすい人の特徴

人によって嫉妬の起こりやすい人、起こりにくい人がいます。

嫉妬の起こりやすい人の特徴その1として、ラッセル=アインシュタイン宣言で有名な数学者であり哲学者のラッセルが言うには「不必要な謙遜をする人」があげられます。「謙遜も嫉妬の一部」だと言うのですね。

謙遜は、日本では美徳とされています。実際、馬鹿な人ほど自分を大きく見せるという心理学実験もありますし、逆に頭のいい人ほど自分を小さく見せるという傾向があります。

これは人間の防衛本能で、群れのなかで無能な者は足手まといなので群れから追い出されるため、無能なほど自分を大きく見せて群れに踏みとどまろうとします。

逆に有能すぎても嫉妬されて被害にあうので、賢い人は自分を小さく見せるわけです。どちらも防衛本能なのですね。

これはこれでいいとして、ただ度を越した謙遜や不必要な謙遜は、自分自身で自分を無駄に貶めてしまうことになります。そうなると、「自分は我慢してこんだけ謙遜しているのに、他のやつらは謙遜もせずに幸せそうに何をのうのうとしているんだ」みたいな思考回路になってきます。「他のやつらも、自分と同じ謙遜レベルまで落ちろ」という話ですね。

そうなってくると、世間で活躍している人や幸せそうな人がうらやましくなってくるわけです。「俺が我慢して謙遜しているのに、おまえらは謙遜もせずにー」みたいな感じになってくるのですね。

ラッセルはこれについてクジャクの例を挙げていて、「仮に謙遜を知るクジャクがいれば、彼は美しい羽根を臆面もなく広げる仲間たちのことを憎み、やがてそれらの羽根をむしりとってやろうと思ったり、粛清しようとしたりするだろう」のようなことを述べています。

そして嫉妬の起こりやすい人の特徴その2は、モノを考えるときに比較して考えてしまうことですね。

たとえば貯金するときに、「2年以内に100万円貯めよう」と思ったら、100万円をどうやって貯めるかだけ考えればいいわけです。そのもの単体だけで考えるのですね。

ここで「友達のA君はすでに200万円持っている」とか「あのインフルエンサーは4億円ぐらい持っている」とか、無意識に比較対象が思考の中に入ってきてしまう場合、比較によって嫉妬が引き起こされます。

ここで重要なのは「無意識」という部分ですね。モノを考えるときに、無意識に比較していないかどうか、自分自身で意識する必要があります。

たとえば自分の給料も、20万円だったらそれ単体で考えればいいだけです。そこに「あの人は30万円」とか無意識の比較が入ってしまうと嫉妬を起こし、勝手に不幸な思考回路になります。

そのため、無意識に比較していないかどうか、これをつねに意識する必要があります。

比較が起こるのは、自分と関係のある分野・自分に近い分野についてです。

例えばテニスが好きなら、テニスのうまい人に嫉妬したりするわけです。ここでいううまい人は、自分よりちょっと上ですね。世界一とか、実力が大きく離れている相手に対しては嫉妬しないとは思います。あくまで横並びに近い人たちに対してですね。

作家や音楽家など、創作活動をする人たちは嫉妬しやすいと言われています。作品が売れるかどうかは作品のできよりも運用素が大きいですし、単純比較がしにくいぶん、売れている人を見て「なんであいつが」みたいな感じで嫉妬しやすいのですね。その嫉妬のエネルギーが創作活動につながっていくという面があるとも言えなくもないです。

一方で、興味のない分野・かかわりのない分野に対して、人は嫉妬しません。たとえばセパタクローのうまい人に対して、嫉妬する理由もありませんし、「そもそもセパタクローって何?」って話になります。

お金で嫉妬が起こりやすいのは、みんなが持っているからです。自分と関係のある分野だからですね。ただビル・ゲイツとか石油王とかのレベルになると、自分と離れすぎているため、嫉妬は起こりにくくなります。

質問者様が嫉妬を起こすのも、「FIREした人」という自分に近い分野だからでしょう。

FIREした人を見て嫉妬している場合、自分とその人を無意識で比べてしまっているのですね。

解決方法

地球上で人類が一人しかいなければ、嫉妬のしようがありません。

そのため、嫉妬が発生したときにまずやらなければいけないことは、「あ、いま比較しているな」と気づくことです。直すというよりも気づくことです。むしろ無理に直さなくてもいいです。というか、無理に直さないほうがいいかもしれません。何度も何度も気づいていれば、自然とだんだん馬鹿らしくなってくるとは思います。自然に解消されていく方がいいですね。

これは怒りを抑える方法ともおなじです。まず自分の感情の発生を客観的に、他人事のように見られるようになれば、無理に抑えなくても自然と収まります。自分のために他人が激しく怒ったり泣いたりしていると、逆に自分は冷静になってしまうというやつですね。自分の代わりに怒ってくれているのであれば、「まあまあまあまあ」みたいに止めに入るとは思います。

そんな感じで、自分の感情を別人だと思って冷静に観察できるようになればいいでしょう。これは筋トレとおなじで、客観力を鍛える必要があります。すぐに効果が出るものでもないので、毎日気づく練習をしていくといいでしょう。

ラッセルは比較の辞め方として、科学者らしく「宇宙をイメージする」ことをすすめています。広大な宇宙を頭の中でイメージすれば、地上のちっぽけな横の比較とかどうでもよくなるわけです。天文学にあまり関心がなければ、宇宙の写真を見てもいいでしょう。

これは宇宙でなくても、広大な景色を見たり、巨大な建築物を見たりでもいいですね。

とにかく自分を「全体の中の一つ」として客観的に観察することです。

もう一つの方法ですが、むしろ相手を賞賛することです。

嫉妬している対象を、これでもかというぐらい逆に褒めまくるのですね。

人は同時に相反する2つのことをできません。息を吸っているときは息を吐くことはできず、ぐーをしているときはパーができません。

賞賛しているときは貶したり嫉妬したりはできませんので、賞賛しまくることでその反対の感情の発生を防ぐということです。

ただリアルでほめるといろいろアレな人に見られるので、心の中でほめてください。嫉妬が発生した瞬間に、うそでもいいので、心のなかで飽きるまで相手を賞賛しまくればいいのです。

嫉妬した相手を賞賛するのは、心理的抵抗があって最初は難しいかもしれません。ただ、あくまで筋トレとおなじようなトレーニング的なものだと思ってやればいいでしょう。

そうするとどこかで客観的になり、冷静になってくるとは思います。

これらのことはすべて筋トレとおなじで、実際に実行して鍛えないと身に付きません。大谷選手にホームランの打ち方を教えてもらっても、実際に訓練しないとホームランが打てないのとおなじです。話を聞いただけでできるようなものではないのです。

そんなわけで、時間をかけて客観視を訓練していくのがよいでしょう。

ラッセルは「幸福とは自己没頭をやめ、自分を客観視し、外の世界に自由と広い興味を持っている人である」と述べています。このことについてはまた別の機会に取り上げようと思います。

 

まとめ

そんなわけでまとめると、

・嫉妬とは、自分の持っているものから楽しみを引き出すのではなく、他人の持っているものから苦しみを引き出す行為。

・嫉妬のエネルギーは大きく、歴史にも大きく影響してきた(だいたいろくな事件を起こしていない)。

・嫉妬を起こしやすい人の特徴として、
1:不必要な謙遜をする人。
2:ものを考えるときに自然に比較が入る人。

・嫉妬を防ぐ方法としては、
1:自然に比較していることに気づく(嫉妬を抑える必要はないので、「自分が比較しているな」と客観的に気づくことです)。
2:宇宙など広大なものを観たりイメージする(そうすると、ちっぽけな横の比較がどうでもよくなります)。
3:むしろ相手を賞賛する(息を吸うことと吐くことは同時にできません。最初は心理的抵抗があるとは思いますが、心の筋トレだと思ってやればいいでしょう)。

となります。

これらは理論で理解するのではなく、筋トレとおなじく実際にやらないと身につきません。とくに自分の客観視は訓練が必要なので、根気よくやるのがいいでしょう。

とにかく直そうとは思わず、まずは他人事のように「比較しているな」と気づくことです。何度も何度も気づけば、そのうち自然にどうでもよくなってきます。

とにかく訓練が必要です。前述したように、大谷選手にホームランの打ち方を教えてもらっても、実際に訓練しないとホームランが打てないのとおなじです。

心も筋肉とおなじですので、時間をかけて鍛えていくのがいいでしょう。