FIREの種類をわかりやすく解説【コーストFIRE/リーンFIRE/バリスタFIRE/サイドFIRE/ファットFIRE】
新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。
今回はFIREの種類についてわかりやすく解説していきます。
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FIREの種類
さて、「サイドFIRE」や「リーンFIRE」など、FIREにいろいろな種類があるので解説してほしいとのご質問があったので、簡単に解説していきます。
まずFIREそのものですが、これは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとったものですね。「経済的独立と早期退職」という意味です。
Q太郎的には、経済的独立さえ達成していればいいわけで、早期退職の部分はいらん気もしますが、現代社会では「やりたくない仕事をやっているのでさっさとやめたい」という人が急増していることから、そこを逆に利用してFIREを目的にさせた投資詐欺なども近年は増えてきています。この手の詐欺案件は新NISA使えませんし、仮に儲かったとしても雑所得になるので、税金的にはそんなにうまみがなったりしますね。
またいったんFIREしたものの、バケツ戦略での生活防衛費の確保とかしていなかったことから、株式のズドンで生活費がショートし、けっきょくまた働くしかなくなったというケースもあったりします。「株式絶対主義」で、甘い見通しでFIREしてしまうと起こりがちです。
そもそも4%ルールを広めた著書『FIRE 最強の早期リタイア術』も、ちゃんと読めば「6年分の生活費(直近1年分+下落時用の5年分)を確保したうえで、株式下落時は取り崩さない」というルールになっているうえに、「リバランスもしなくてはならない」ルールなのですが、どうもその部分が無視されて、「インデックス投資で、毎年4%取り崩せばFIREできる」という部分だけが独り歩きしてしまったことから、この手の「FIRE後に資金ショートで再就職」みたいな事態に陥ってしまっているのではないかとは思います。
一方で、「完全に仕事をしないFIREじゃなくて、仕事量を減らしながら自分の時間を確保する」といったFIREも登場し、それらがサイドFIREとかバリスタFIREとか名前を増やしていく原因にもなっています。
今回はそんな複雑化していくFIREの種類をわかりやすく紹介していきます。
コーストFIRE
まずは「コーストFIRE」についてです。FIRE用語の中で、これが一番新しいFIRE用語ですね。
コースト(Coast)は英語で「海岸」のことですが、「のんびりやる」という意味もあります。日本語にしたら「のんびりFIRE」ですね。無理のないFIREのことを指します。FIREの中では一番難易度が低いFIREとも言われています。
どれぐらいのんびりなのかと言えば、「60~65歳の定年まで働く」ぐらいのんびりです。
「いや、定年まで働いたらFIREじゃないじゃん」と思うかもしれませんし、FIREの定義からはかなり外れているとは思いますが、ここで重要なのは「定年後には働かなくてもいいぐらいの資金を貯めておく」ということです。
いまの時代、65歳すぎても働く人は少なくありません。
先日(2024年9月15日)、総務省統計局が発表したデータでは、65歳以上の人口が3625万人、日本の総人口に占める割合は29.3%と、過去最多となりました。日本人の3割が65歳以上なのですね。この割合は、よいのか悪いのかわかりませんが、世界一位となっています。
ちなみに男女別の比率で観ますと、女性100人に対して15~64歳までは男性は103.2人と女性よりも多いのですが、65歳以上になると男性は76.6人と一気に男女比が逆転します。他国と比べて日本は男女の平均寿命の差が大きいのも特徴です。
そして65歳以上での就労人口は914万人と、こちらも過去最多となっています。就業者全体に占める割合は13.5%で、就業者の7人に1人が65歳以上というのが現状です。
そんな状況なので、60歳で退職して悠々自適な老後生活も難しくなってきているわけです。逆に言えば、60歳で定年退職してから悠々自適な生活をできることは、いまの時代だと経済的にめぐまれた状態とも言えます。
「コーストFIRE」の定義に戻りますが、「定年前に、定年後のための資産形成をしなくていい状態」がつくれていることです。ようするに「定年後に完全引退するためのFIRE」ですね。年金+資産で悠々と暮らしていくためのFIREです。
たとえば定年後に3000万円必要だとしたら、60歳になるまでに3000万円の資産を築けば「コーストFIRE達成」になります。あとはこの3000万円と年金で暮らしていくというスタイルです。「普通じゃん」と思う人もいるとは思いますが、今の時代はこれが普通ではなくなってきているのです。
一般的なFIREはできるだけ早く仕事を辞めることが目的になっていますが、「コーストFIRE」の場合は目標額に達成しても定年まで働き続けるというのが違いますね。
たとえば年金を含めた計算上、老後に3000万円が必要だったとして、それを投資などを駆使して50歳までに貯めてしまった場合、そこで「コーストFIRE達成」となります。資産は築けましたので、残った10年はのんびりと定年まで働き、日々の生活費は会社からのお給料でまかなっていくというスタイルです。定年退職後は、築いた財産と年金で暮らしていくということですね。日本の場合は年金受給年齢が65歳なので、人によっては65齢まで働くというのもあるでしょう。
コーストFIREの良いところですが、会社員向けのやり方としては現実的ということです。無理にあせってFIREをすると、これまで積み重ねてきたキャリアを捨ててしまうことになりますし、何かあったときに生活スタイルが崩れてしまいます。
そうではなく、定年まできっちり働き、生活費は給料でまかない、完全リタイアできる資産を築いておくというものです。「仕事を辞める不安」からも解放されますし、リタイア後の資金は貯まっているのでのんびり働くことができるということですね。
ここでのポイントとしては、早め早めに投資をしておけば、実際の金額よりも少ない金額で目標額が達成できるということです。
たとえば60歳までに2000万円欲しい場合、42歳まで1000万円貯めて投資すれば、年利4%の福利計算だと60歳で2000万円になります。3000万円だったら42歳までに1500万円貯めて投資すればよいですね。実際このとおりに行くかはわかりませんが、投資を含めれば増える速度は上がりますし、そもそも定期的な賃金収入があるので投資オンリーの人や自営業の人に比べれば不安は少ないです。会社員に適したFIRE方法とは思います。
コーストFIREの良い点としては、可処分所得が増えることです。
たとえば毎月の給料の20%を貯蓄や投資にまわしている場合、コーストFIREを達成しているのであればもうこれ以上貯蓄する必要はないので、この20%を自由に使うことができるということです。
つまりこの浮いた20%を使って、老後ではなく、いまを楽しむことができるということです。ここはけっこう重要な点だとは思います。
FIREの達成をめざしている人たちは、今を犠牲にして将来のための貯蓄を続けています。
しかし人間はいつ死ぬかわかりませんし、そもそも病気で動けなくなるなど、将来のために頑張っても無駄だったみたいな結果になることもあります。
それと会社員の場合、ある程度資金が貯まったところでいきなり会社をやめて自営業的なことをやっても、うまくいく確率は低いとは思います。これまで当たり前だった「毎月給料がもらえる」というメリットがなくなり、毎日毎日お金が減っていく恐怖におびえつづけなければならなくなるのが精神的な負担になるのですね。
コーストFIREの場合、あくまで老後を目指しての貯蓄・投資なので、現在を犠牲にした無理な貯金や投資をする必要はありません。言葉どおり、定年までのんびりやっていけばいいわけです。
そして定年までに目標額を達成すれば、それ以降は貯蓄する必要はなくなるので、貯蓄に振り分けていた給料分を自分の好きなことに使えます。いまを楽しみつつ、定年までのんびり働いていくということですね。
サイドFIRE
次にサイドFIREです。これはよく聞くとは思います。
軽い仕事をしつつFIREするといった形態ですね。よくあるのは会社を辞めて、副業やフリーランスなど個人事業主的な形で自分の好きなことをやっていくというものです。
生活費はFIRE資金からまかない、娯楽費などは個人事業主的な仕事からまかなうという方法です。
フルFIREするよりはハードルは低く、また生活費はFIRE資金でまかなうため、生活ができないということにはなりにくいスタイルです。
ただ個人事業主は収入が安定していませんので、FIRE資金の計算を甘く見すぎていたり、株式のズドンがあったりすると立ちいかなくなる可能性もあります。
収入不安定な個人事業主になるのであれば、このあたりはしっかり計算したり、戦略を練っておいたほうがいいでしょう。
バリスタFIRE
次にバリスタFIREですが、これもサイドFIREとは変わりません。資金の一部を労働によって確保するというものですね。
ただバリスタFIREというのは、パートやアルバイトで資金をまかなっていくという形になります。アメリカだと退職後に健康保険の権利を得るために、スターバックスのバリスタ店員のパートをする人が多いことが由来なようです。
サイドFIREの場合は個人事業主的な仕事になるので収入が不安定で、そもそも収入が入らない可能性もあるのですが、バリスタFIREの場合は定期的な賃金を得られますので、心理的な安心度は高いとは思います。
会社員からFIREした場合は、サイドFIREよりもバリスタFIREで安定収入を得た方が、心理的な抵抗は少ないんじゃないかとは思います。
たとえば週3日だけ働くとか、一日3時間だけ働くとか、時間調整で労働自体は少なくできますね。しかも確実に収入がはいっていきます。開いた時間に好きな副業でもすればよいでしょう。
安定収入で見通しの立つFIREをしたい人は、いきなりサイドFIREより、まずはバリスタFIREを目指したほうがいいとは思います。副業で稼げるようになってからサイドFIREに移行したほうがいいでしょう。
すでに高いキャリアがあるのなら、コーストFIREのほうが給料も高いですから、良い気もしますね。
リーンFIRE
次にリーンFIREですが、これは質素な生活をして、必要最低限の資金でFIREする方法です。
リーン(Lean)というのはスリムとか無駄がないとかの意味ですね。そもそもお金をたくさん使わなければFIRE資金も少なくて済みますので、そのぶんFIREも早くなります。ミニマリスト向きなFIREですね。
たとえば年間120万円あれば十分という人は、4%ルールだと3000万円あればFIREできることになります。それでもけっこう大きなお金ですが、1億円とか大きな金額を稼ぐよりはまだ現実的な金額と言えます。
実際のところ、このリーンFIREに、サイドFIREやバリスタFIREを組み合わせる形にした方が安心感は高くなります。生活費が少ない分、バイトやパートで稼ぐお金はありがたみが大きくなってくるため、資産もさらに増えるんじゃないかとは思います。
ファットFIRE
最後にファットFIREですが、先ほどのスリムなリーンFIREとは逆で、ファットという名前どおり太っちょです。
仕事を完全に辞めて、好きな国へ旅行したり、好きなものを食べたり、欲しいものを買ったりして優雅な生活を送るという、一般的に妄想される理想的なFIREの形式ですね。
資産がたくさんある人ならこれになるとは思いますが、そもそもビル・ゲイツだろうとお金は無限ではないので、何も考えずにお金をつかっていれば、やはりどこかでストップがかかるとは思います。
それに、一通り楽しんだあとは、人間にとって不幸である「退屈」がおとずれてしまいますので、それはそれで不幸だとは思います。
けっきょく仕事を始めたり、ボランティアをやったり、とくにお金のかからない趣味をはじめたりなど、最終的には全然ファットじゃないところに落ち着いたりします。急にミニマリストに目覚めたりもしますね。お金をつかわない方向での幸福の模索というやつです。
ちなみに知人が資産管理をしている某会長さんの趣味は、Youtubeを見ることとテレビゲームを遊ぶことです。ゲームも遊んでいるのは1種類だけですね。食事も普通ですし、世の中そんなものです。
まとめ
そんなわけでまとめると、
・コーストFIREは定年まで働きつつ、定年後に働かなくてすむ資金を貯えておくのんびりFIRE。会社員向け。
・定年前にコーストFIRE達成したら、あとは貯蓄をせずに「いま」を楽しむ。
・サイドFIREは、生活費をFIRE資金でまかないつつ、娯楽費を副業やフリーランスで稼ぐ個人事業主的なプチFIRE。
・バリスタFIREは、生活費をFIRE資金でまかないつつ、パートやアルバイトで定期収入を得るプチFIRE。
・会社員からFIREする場合は、まずバリスタFIREで定期収入を得ながら、副業で稼げるようになってからサイドFIREへ移行した方が安心感はある。
・すでに高いキャリアがあるならコーストFIREの方がいい気も。
・リーンFIREは、必要最低限の資金でFIREするミニマリスト型FIRE。バリスタFIRE、サイドFIREと組み合わせた方が安定感がある。
・ファットFIREは仕事もやめて好きなことをしまくるFIRE。ただ一通りやりつくすと「退屈」がおとずれ、お金を使わない方向で幸福を模索する場合が多い。
となります。
いろいろなFIREがありますが、基本的には「やりたくない仕事をやらなくてすむ」「たくさん稼いで豪華な生活がしたいわけじゃない」というような、世のなかの個人主義化・ミニマリスト化がFIREブームを後押ししているとは思います。
それでしばらくして、完全FIREというのが現実的ではなくなってきたことが世間的にも理解されてきたため、コーストFIREとかバリスタFIREとかが出てきた感じですね。
とくに「遊んでいるだけ」というのは、けっこう精神的に厳しいものがあるので、やはり仕事とかボランティアとかして世の中とのつながりは欲しくなるわけです。遊んでいるだけで暮らせる人は、それはそれで才能があるとは思いますね。「自分のため」というのは、どうしてもモチベーションが低くなってしまいますしね。
そんなわけで無理なFIREはせずに、自分の生活スタイルに合わせた形での資産形成をするのがいいとは思いますね。