年金が少ないと毎月5千円もらえる「年金生活者支援給付金」【2024年度】
新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。
今回は年金が少ないと、なぜか毎月5000円ほどもらえる「年金生活者支援給付金」についてです。
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年金生活者支援給付金について
こんなご質問をいただきました。
「年金の繰り上げ受給についてですが、額面が減ることにより「年金生活者支援給付金」がもらえます。それを加味すると、実際の損益分岐点はもっと後ろ倒しになるのではないでしょうか。このあたりを解説してほしいです」
とのことです。
さて、この「年金生活者支援給付金」ですが、これ自体は2019年から始まっています。対象となるのは国民年金で、ようは「国民年金が少なかったら支援金追加してあげますよ」という、なぜか国民に対して妙に優しい制度です。
最大で毎月5,310円ほどもらえます。国民年金をフルでもらえるばあい、現在は一か月68,000円なので、その額から考えると5310円はけっこう大きい金額です。
ちなみに年金を払わずに、保険料免除期間がある人は、その期間に応じてなぜか最大毎月11,333円もらえるという制度です。単に年金払ってないだけというのもらえません。あくまで免除申請している人に対してですね。
ただ注意してほしいのは、これが受け取れるのは65歳からでして、60歳からもらえるわけではありません。繰り上げ受給をした場合、年金生活者支援給付金を受け取るには65歳まで待つ必要があります。繰り上げ受給ですぐに受け取れるわけではないので注意してください。
逆に繰り下げ受給をする人ですが、繰り下げている期間ももらえません。70歳まで繰り下げる予定の場合、70歳まで年金生活者支援給付金はもらえません。あくまで65歳以降で、年金支給が始まってからです。
さらにいうと、繰り下げしてる間に、急にお金が必要になって一括で年金をもらった場合でも、それまでの年金生活者支援給付金はもらえません。例えば70歳繰り下げ予定が、68歳で一括でもらうことになった場合、3年間分の支援給付金はもらえないということになります。ここも注意してください。もらえないリスク的には、繰り下げの方がリスクが大きいです。
条件
それでは条件を見ていきましょう。第1条件としては、まず先ほど述べたように65歳以降で、年金の受け取りが始まってからですね。そのため繰り上げ受給している人は65歳まで待つ必要があり、繰り下げしている人は、年金を受け取る年になるまではもらえないので注意してください。
第2条件ですが、
前年の年金等を含む所得金額などの合計額が78万9,300円以下(昭和31年4月1日以前に生まれは78万7,700円以下)(障害年金・遺族年金等は非課税なのでこの計算に含まれない)
ただし+10万円の範囲(889,300円以下)であれば、「補足的老齢年金生活者支援給付金」という名目で、減額されますがいちおう支援給付金を受け取ることができます。これは支援金を受け取っている人のほうが、ちょっとオーバーして受け取れない人との所得の逆転が生じないようにする措置ですね。
さらに注意していただきたいのは、この金額は毎年見直されますので、減ったり増えたりします。ちなみに2022年だと78万1,200円だったので、現在は増加傾向ですね。インフレ分が加味されているわけです。
この78万9,300円という金額ですが、現在のフルの国民年金68,000円を12か月受け取ると81万6,000円になるので、ギリギリ超えるように設定されています。このあたりの調整をしたければ繰り上げも考えた方が良いでしょう。
ちなみに60歳まで繰り上げると-24%なので、81万6,000円が62万0,160円となるので、支援金の範囲内となります。適当なバイトをして、給与所得控除も使ってぎりぎりまでせめるという手もありますが、上限額は毎年変わる可能性があるので、ギリギリを攻めすぎた結果オーバーする可能性もあるので注意してください。
当然株式の利益や配当などを確定申告してしまうと、一気に上限金額を超える可能性があるのでこれも注意が必要です。あくまで収入全部含んでの78万9,300円です。NISA口座や特定口座の源泉徴収ありなら確定申告しなくていいので、このあたりでやりくりすればいいでしょう。
そして条件3つ目ですが、「同一世帯の全員が市町村民税非課税である」ことです。年金を受け取る人だけでなく、同一世帯全員が非課税世帯である必要があるのですね。
非課税世帯の条件ですが、これは市町村で変わりますが、単身世帯だと基礎控除が45万円以下ぐらいですね。給与所得控除が55万円なので、だいたい100万円以下と考えておけばいいでしょう。ただ国民健康保険料の基礎控除が43万円なので、できれば健康保険料の方に合わせて98万円以下にしておきたいところです。
実は第4条件もあって、「日本国内に住所があること」です。海外移住して住民票を引き上げてしまっている方はもらえません。海外移住を考えている方は注意してください。
実際にいくらもらえるのか
いくらもらえるかの計算ですが、
5,310円 × 保険料納付済期間 /480か月
+
11,333円 × 保険料免除期間 / 480か月
(ただし4分の1免除期間は5,666円)
の足し算となります。簡単に言えば、480か月フルで国民年金保険料を払っていた場合は、5,310円を毎月フルにもらえるということです。年間だと63,720円となりますね。
240か月払って、240か月免除を受けていれば、5310円の半分足す、11333円の半分なので、毎月8322円ほどもらえます。ちなみに免除を受けていれば、実際にもらえる年金の半額はもらえますので、年金を払えない人はかならず免除申請をしたほうがいいでしょう。
480か月完全免除の場合、毎月もらえる金額は11,333円+68000/2=45,333円となります。65歳からの受け取りにはなりますが、フルに年金を払って60歳で繰り上げ受給した場合は6万8000円の24%減で51,680円になりますので、だいぶ近い金額になります。とにかく年金を払えない人は、そのまま放っておかずに免除申請をしてください。
それと年金や収入合わせて78万9,300円を超えてしまったけど、+10万円の889,300円以下だった場合にもらえる補足的老齢年金生活者支援給付金ですが、これは先ほどの計算結果に、
(88万9,300円ー収入合計)÷10万円
をかけて修正します。
たとえば国民年金をフルに受け取った場合の81万6,000円だったら、それ以外の収入が無いとすると、
(88万9,300円ー81万6,000円)÷10万円=0.733
となるので、
5,310円×0.733=約3,892円
が毎月の追加金額となります。年間にすると4万6,704円ほどのプラスですね。
90万円だと889,300円をオーバーしてしまうので1円ももらえないことになります。
損益分岐点
この金額で、インフレを考慮せずに損益分岐点を考えてみた場合、
60歳繰り上げ受給 62万0,160円+6万3,720円=68万3,880円
65歳受け取り 81万6,000円+4万6,704円=86万2,704円
この時点で年間の差額は17万8,824円となり、支援給付金のない場合の差額の19万5,840円より縮まってしまっているわけです。もともとは-24%減なのですが、支援給付金を加えると-20.7%減になるのですね。
それで損益分岐点ですが、この支援給付金は65歳からの受け取りになるので、
62万0,160円×5年+68万3,880円×t年=
86万2,704円×t年
のt年を求めると17.3年になります。65歳から17.3年後が損益分岐点なので、82.3歳になります。
支援給付金無しの場合は以前の動画でも述べたように80.8歳で、1.5年ほど損益分岐点が伸びますね。そこまで劇的に伸びるわけではありませんが、何にしろ後ろ倒しにはなります。
男性の平均寿命が81.09年、女性87.14年と考えると、男性の平均寿命を超えた数字になっていますね。女性の方はまだまだ余裕があるので、繰り上げるかどうかは悩みどころです。
健康寿命で考えると、男性72.6歳、女性75.5歳なので、健康なうちにお金を使うというのも一つの考え方ですね。
支援給付金の受け取り方
肝心の支援給付金の受け取り方ですが、該当者には日本年金機構から郵送で支援給付金の請求書が送られてきますので、それに必要事項を書き込んで送り返すだけです。
こちらが注意することは、先ほど述べた条件に合致しているかどうかと、請求書をちゃんと送り返すことの2点ですね。
なんにしろ、自動的に支援給付金が適応されるわけではないので注意が必要です。
ただ一回申請すれば2年目以降の手続きは原則不要となります。もし条件に合致しない場合、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届いて支給停止となります。
先ほども述べたように日本国内に住所が無いともらえませんので、海外移住を考えている方は注意してください。
まとめ
そんなわけでまとめると、年金支援給付金をもらえる条件は、
・65歳以降で、年金受給を開始している方(繰り下げの場合は受給がはじまるまでもらえません)
・前年の年金等を含む所得金額などの合計額が78万9,300円以下。
ただし+10万円の範囲(889,300円以下)であれば、「補足的老齢年金生活者支援給付金」で減額された金額がもらえる。
・同一世帯の全員が市町村民税非課税。
・日本国内に住所がある。
こととなります。
もらえる金額ですが、
5,310円 × 保険料納付済期間 /480か月
+
11,333円 × 保険料免除期間 / 480か月
(ただし4分の1免除期間は5,666円)
保険料納付期間と免除期間でもらえる金額の足し算になります。国民年金をフルで払っていれば5,310円が毎月もらえます。
78万9,300円を超えたけど、889,300円以下の場合は、「補足的老齢年金生活者支援給付金」がもらえます。先ほどの金額に、
(88万9,300円ー所得合計)÷10万円
の補正をかけた金額になりますね。国民年金をフルで払って、65歳受け取りにしてそれ以外に収入が無い場合は81万6000円になるので、毎月約3,892円がもらえます。
60歳受給と65歳受給の損益分岐点ですが、
支援金無し 80.7歳
支援金あり 82.3歳
(平均寿命 男性81.09歳、女性87.14歳)
(健康寿命 男性72.6歳、女性75.5歳)
となります。損益分岐点自体はそこまで劇的には変わりませんので、あとは平均寿命や自分の健康状態との相談となります。
ただこれらの金額はあくまでいま現在での話なので、将来的にどうなるかはわかりません。