「103万円の壁」撤廃でFIREは損をする?

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新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。

今回は「103万円の壁」が撤廃されることで、FIRE者にどのような影響が出てくるかです。

本記事をYouTube動画で観たい方はこちらのリンクから。

「103万円の壁」撤廃でFIRE者は損をする?

こんなご質問をいただきました。

「103万円の壁」を手放しで受け入れている人が多いようですが、実際に実行された場合に、日本経済への負の影響が大きいようにも感じます。

とくに大きな影響になりそうなのがインフレです。減税によって現在のインフレが加速してしまい、なかなか利上げのできない日銀がこれを抑え込めなくなってしまうのではないでしょうか。

そうなれば円安がさらに加速して、物価もさらに上がってしまうことになります。

仮に「103万円の壁」撤廃で手取りが増えたとしても、インフレを加味した実質賃金で考えた場合は、実質的な手取りは減ってしまうように感じます。

またFIRE者にとっては、物価上昇によって、予定していた年間金額では足りなくなってしまうとは思います。「103万円の壁」についてQ太郎さんはどうお思いでしょうか

とのことです。

これは以前から言っていますが、FIREして個人事業主的な立場になった場合、仮に103万円の壁が撤廃されたとしても、国民健康保険料の基礎控除43万円を超えた場合にえげつないぐらいに取られます。

以前の動画でも試算しましたが、例えば江戸川区のケースだと、投資で143万円の配当金を得た場合、これを確定申告すると基礎控除43万円を超えた分が100万円で、ここから健康保険料が取られます。どれぐらい取られるかというと、以前の試算では23万8800円です。これだけではなく、住民税の10%もかかってきます。

住民税の場合は社会保険料控除が使えるのでもうちょっと減らすことができますが、仮に前年の社会保険料が24万円だとすると、100万円から引くと76万円になりますから、これの10%で7.6万円です。住民税の計算だと、ここから配当控除など税額控除額を引くことができますが、米国株だと配当控除は使えませんし、外国税額控除もスズメの涙程度にしかならないので、基本的に143万円の配当に30万円ぐらいの税金がかかってくると考えたほうがいいでしょう。ここへさらに所得税の5%もありますので、だいたい25~26%ぐらいになるので、源泉徴収の20.315%ままのほうがお得ということにもなります。

しかもこれは、配当以外の収入がいっさいない状態での計算なので、サイドFIREのように収入がすでにあって基礎控除43万円を突破している状態で、配当金も確定申告してしまうと、配当金全体に住民税や社会保険料がフルにかかってきてしまうため、場合によっては所得税も合わせて税率40%近くみたいな感じになってきます。というか、たった143万円の配当に対して40%持ってくとかそうとうえぐいですね。これに国民健康保険料を加えたら5公5民なわけです。

所得税は103万円を超えても194万9,000円まではせいぜい5%なので、そこまで大きな影響はありません。特定口座の源泉だと15%取られるので、それに比べればだいぶやすいです。ただその一方で社会保険料がのしかかってきますし、いくら取られるかは自分で計算するまでわからないというのがかなりえげつないです。国税庁の確定申告コーナーでは自動計算してくれません。とにかく手取りをわかりづらくさせているというか、あえてわかりづらくしているのが社会保険料です。

それで「103万円の壁」ですが、仮にこれが撤廃されて178万円まで上がったところで、健康保険料の基礎控除43万円を超えたらがっつりとられるだけです。先ほどの基礎控除超えた分の配当に40%かかるのが35%になる程度の話で、けっきょく源泉徴収有りのままのほうがええやんみたいな感じになったりします。とにかくこのあたりは自分で計算しないとわからないようになっています。だから社会保険料はいくら引き上げても国民から文句が出づらいのですね。

それで「103万円の壁」引き上げによるインフレ加速ですが、えぐい社会保険料があるのでそもそもの手取りはそんなに増えないため、インフレと言えるほどインフレになるかなという気もします。そもそも日本人はすぐに貯蓄にまわしてしまいますしね。これは逆に言えば、103万円の壁が無くなることによる経済効果も言うほど期待できないのではということにもなります。

さらに言えば、日本のインフレは、国民がお金を使うことによってインフレになっているわけではなくて、円安によるコストプッシュ型のインフレです。こういうのは日銀の金利の問題や、そもそもの日本の産業の構造上の問題になってくるとは思います。いまインフレを加速させる要因は、円安の進行になりますね。

そのため、103万円の壁を引き上げたぐらいで、円安以外の理由で急激にインフレになるかといえば、微妙なところかなとは思います。103万の壁より、日銀や産業構造の問題のほうをなんとかした方がいいとは思いますね。

しかしこういうのは、実際にやってみないとどうなるかわからないというのがありますし、103万円という基準が古すぎるので修正は必要とは思います。経済はいろいろな要素が絡み合っているので、「AをやったらBという結果が出る」という単純なものではないのですね。

財源の問題ですが、そもそも政府は税金が増えるたびに支出を増やしていくので、そのあたりの見直しが必要かなとは思いますね。いまの支出をベースに考えるのではなくて、そもそも必要ないものとか無駄なものを省いていくことが必要になってくるとは思います。

 

まとめ

そんなわけでまとめると、

・103万円の壁を越えても、所得税は194万9,000円までせいぜい5%。国民健康保険料の基礎控除43万円を超えることでの保険料増加の方がえげつない。

・サイドFIREの収入で基礎控除43万円を超えている場合、配当金を確定申告すると健康保険料がフルにかかってくる(下手したら所得税・保険料・住民税合わせて40%)。仮に103万円から178万円まで壁が引き上げられても40%が35%になる程度なので、特定口座・源泉徴収有りのままの方が良いケースも。

・現在のインフレは円安による輸入品価格上昇のコストプッシュ型。103万円の壁が撤廃されたとしても、インフレが急激に進んだり、日本人の消費が急激に上がるかどうかは微妙なところ。

・社会保険料がいくらかかるかは確定申告だけではわからない。自分で計算する必要があるので、政府としては増額しやすい。

・現在のインフレは円安起因なので、日銀や産業構造を変えることのほうが重要。

・経済はいろいろな要素が絡み合っている。「AをやったらBという結果が出る」という単純なものではない。

となります。

そんなわけで、103万円の壁を撤廃することでインフレが起こるかどうかは実際やってみないとわかりませんし、そもそも現在のインフレは円安の問題が大きいので、日本人の消費が単純に増えるかといえば微妙なところもあります。アメリカとは違って貯蓄大好きな国民性ですしね。アメリカなんかドル高で高金利なのにインフレになっていますしね。

そんなわけでやってみないとわからない部分は多いので、安全を考えるのであれば、ハレーションを引き起こさないていどの金額で壁を上げていくのがいいんじゃないかとは思います。

まあ、本当にこういうのはいくらでも賛成や反対の理論はつくれますので、現実がどう動くかは実際にやらないかぎりはわからないですね。