投資でFIREできる時代はもう終わり?「逃げ切り組」と「これから組」の格差

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fire owari

新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。

今回は、アメリカの政治変容によって、投資でのFIREは望みが薄くなるのではないかについてです。

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投資でFIREはもう無理?

こんなご質問をいただきました。

現在のトランプ政権のアメリカは、リーマンショックやコロナショックの時とは違い、産業構造自体が変わろうとしています。

アメリカが以前のままの政治体制なら、ショック後のリバウンドも期待できたのですが、現在はアメリカ自体の変貌があり、高関税によって利益率の低い製造業へとシフトしようとしています。

今のアメリカ人の賃金で成り立つわけがなく、無理にやれば高コストの物をアメリカ人が買わされるだけになり、消費は落ち込みまくるでしょう。Q太郎さんの言っていた、すべての物を自国で作ろうとする旧共産圏的な貧乏国家化もありえるとは思います。

最強と言われていたS&P500も、あくまでアメリカの政治体制が開かれたものであったらならばの話です。アメリカがアメリカで無くなれば、以前の常識は通用しなくなります。次の選挙までアメリカが持つのか、例え民主党が勝ったとしてもめちゃくちゃになった産業を立て直せるのかが問題になってきます。

これまでのアメリカの好景気を背景に、S&P500に投資していればFIREができるという、いわゆる「FIRE神話」がありましたが、個人的にはもう望み薄なのではないかと思います。

昔はインターネットの登場やAIの登場など、世界を変えるイノベーションによって極端に伸びてきた側面があります。

しかし今はもうそんな話もなくなってきて、しかも製造業という利益率の悪いものをアメリカに戻そうとしています。

これからの株式投資は、せいぜいインフレ分を補う程度の利益しか出せず、昔のように30年で何倍みたいな話にはなりにくいのではないかという気がします。

FIREにおいて、日本の年金問題のように、これまでのアメリカの成長に運よく乗っかることのできた「逃げ切り組」と、これからFIREしようとする「これから組」で大きな格差が出てくるのではないでしょうか?

また、これから投資でFIREはもはや夢物語になるのではないでしょうか?これについてどう思われますか?」

とのことです。

今回の株式下落がリーマンショック時と大きく違うのは、アメリカ自体の問題で落ちているということですね。

「政策に売りなし」という言葉がありますが、それだけ政策の影響というのは株式市場にとって大きなものになります。

その政策がマイナス方向へ行く場合は、企業がどんなに頑張ってもどうしようもなくなります。逆に「政策に買いなし」という話になってしまいますね。

リーマンショックのときは金融の問題であって、アメリカがしっかりしているから立ち直れたのですが、今回はアメリカ自体の問題なので、立ち直れるかどうかはアメリカの政策次第となります。企業努力ではどうにもならないというかどうしようもないのですね。関税かけられたらどうにもなりません。

現在トランプ政権のやっていることがメタ的に見ると何なのかといえば、緊縮財政です。輸入品に関税をかけるというのは、言い方を変えれば輸入品に消費税をかけているのとおなじことです。関税が10%上がるということは、言い換えれば消費税が10%上がることにもなります。そしてこの消費税を払うのはアメリカ国民です。

この消費税分だけ、アメリカ国民の購買力が下がるということになります。消費税で購買力が下がるのは、これからのアメリカを見るまでもなく、今の日本を見ればよくわかるとは思います。

トランプ大統領は高関税と、イーロンマスク氏の政府効率化で税収を増やすことで、今後の減税に充てるとの考えの様ですが、すでに前政権よりも支出が増えているとの報告もあります。

例えば第一次トランプ政権のときですが、トランプ政権末期(2020年)では約6.5兆ドルで、それ以前のオバマ政権末期(2016年)の約3.9兆ドルと比べると、およそ66%増となっており、とても小さな政府とは言えないわけです。数字として見ると、言ってることとやってることが違うのですね。

この原因ですが、コロナの影響という人もいますが、そもそもそれ以前から赤字状況でした。トランプ政権は2017年に大型減税(税制改革法)を実施したことで、法人税や所得税が減収しました。減収なのに軍事費やインフラ支出は増加したというのがあります。これとおなじことがまた繰り返されようとしているわけです。

一般的なイメージでは、「共和党=小さな政府、民主党=大きな政府」となっていますが、数字を見ると全然話は変わって来て、オバマ政権ではリーマンショック後の支出はあったものの、2010年代後半は支出抑制傾向になりました。

逆にトランプ政権ではコロナ以前から減税と軍事費・インフラ支出によって、赤字拡大傾向にありました。

支出だけで見れば、トランプ政権のほうがだいぶ大きな政府だったりします。

それで現在の政権では、イーロン・マスク氏がの支出削減に取り組んでいますが、実際のところ、医療や退職関連のプログラム費用、利払いが増加しており、これらの支出増加は、外国援助や連邦職員の削減による節約効果を上回っている状況です。

しかもトランプ政権では軍事費を約12%増額している上に、高関税で企業収益が悪化し、税収が長期的に大きく減少する可能性も示唆されています。

この状況で財源もないのに減税とか始めたりすると、バイデン政権とは比べ物にならないぐらいの赤字垂れ流し状態になります。政府の職人をクビにしたぐらいでは全然足りないのですね。減税と歳出拡大の同時進行は、財政赤字を加速させる典型です。

債券市場は株式市場よりも頭いい人が多いので、当然そのことはわかっていますから、米国債投げ売りになってしまうわけです。いまの状況で減税なんかしたら税収減るのは確実ですし、そうなると国債乱発のリスクは十分に考えられます。

それで債券価格が下がって金利が上がってしまえば、政府の利払いが増えてしまいますので、さらに国債乱発して負のスパイラルが起こってしまうわけです。

昨年の時点で、アメリカの利払い費用は年1兆ドルを超えています。これは国防費を上回る規模で、しかも今後も増加見込みです。政府職員のクビを切ったぐらいじゃまったく足りないのですね。

税収のかなりの部分が利払いに消えている現状は、経済にとって非効率的とも言えます。

そのため、債券価格下落は利払いをさらに上げることなってしまうので、さすがのトランプ政権もそれは避けたいわけですね。それで90日間の関税猶予を言い渡したりするわけです。

そんなボロボロな状況になりかねないアメリカ政府で、さらに世界からの信用も失ってしまっている状況なので、これまでの人とモノが世界から集まる状況でもなくなっています。「アメリカ行きたくない」みたいな人も増えてますし、大学のバジェットカットで頭脳の海外流出も心配されていますしね。

それで、これまでのFIRE戦略は、S&P500にしろオルカンにしろ、けっきょくはアメリカの経済頼みの投資戦略だったわけです。

リーマンショック後も回復したというのも、金融の問題であって、アメリカの政治の問題ではなかったので、回復できたというのがあります。

今回はアメリカの政治の問題なので、政策が変わらないとどうにもならないというのがあります。

これまでのFIRE組はアメリカの政策に助けられている部分が大きかったのですが、今後このままアメリカ自体が没落していくと、オルカンにしろS&P500にしろパフォーマンスが出せなくなりますので、これまでに比べるとFIREが難しくなるとは思います。

しかもつい昨日にパウエル議長が「リスク資産がダメージを受けても、FRBはインフレ対策優先」という話をしたことから利下げの可能性はなくなり、株がまたもや大幅安になってしまいました。S&P500で-2.24%、NASDAQは-3.07%落ちましたね。先行きがあまりにも不透明な状況になっています。しかもその発生源が民間ではなくアメリカ政府そのものですしね。

そんなわけで、いまの状況が続くとすれば、かなり厳しいことになるとは思います。インターネットとかAIの流れにのって投資してきた逃げ切り組はまだ含み益がありますが、新NISAからはじめたこれから組はしばらくは厳しいことになりそうですね。

これを耐えたらまた株価が上がるというのは、正直アメリカ政府次第になってしまうので、4年後にどうなるかという話になってくるとは思います。

 

まとめ

そんなわけでまとめると、

・株価下落はリーマンショック時と違い、震源地がアメリカ政府そのもの。

・「政策に売り無し」の状況から「政策に買い無し」の状況へ。

・第一次トランプ政権時は、オバマ政権時よりも66%ほど支出が多かった。法人税減税と軍事費・インフラ増加によって、コロナ前から赤字垂れ流し状態。(数字で見れば、イメージにある小さな政府とはほど遠い状況)。

・今回、軍事費を約12%増額。高関税や減税による税収減も予測され、国債乱発を懸念して米国債投げ売り状態。政府効率化による職員削減でも全然足りない状況。(第一次トランプ政権のように、前バイデン政権以上の赤字垂れ流しが予想されています。そもそも関税でこんなに振り回している時点で、全然小さな政府じゃないのですね)。

・FRBはインフレ対策重視で、金利を下げる気は無い。株価は下落。

・アメリカ政府がこのままの状態を続ければ、これからの投資は厳しいものになる可能性。

・4年後にどうなるのか。立て直しはできるのかの問題。

となります。

そんなわけで、今後トランプ政権が減税を行えば赤字幅の拡大は避けられず、米国債利回り増加と高関税との悪循環でアメリカ経済が衰退していく可能性があるとは思います。それ以前に、アメリカの信用問題にもなっていきますしね。

現在、米国債を世界で一番持っている国は日本ですが、言い方を変えればアメリカの借金を日本が世界で一番肩代わりしているようなものです。もはやアメリカは集めた金で利子を配るというポンジスキーム的になってきた感じがあり、この状況で高関税+減税とかしたら本当にどうする気なんだろうという感じですね。

正直、FIREとか言ってられる環境でもなくなっていますね。

そんなわけで、4年後どうなるのか、そもそも4年後まで持つのかということを、社会実験的に見守っていきたいとは思います。