高ボラな米国市場でJEPIの価値上昇?【JEPI/JEPQ/QYLD/XYLD】
新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。
今回は、昨今の高ボラ環境の米国市場だと、JEPIなどのオプション系ETFが有効なのではないかとのことについてです。
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高ボラ環境でオプション系ETFは有効?
こんなご質問をいただきました。
「質問ですが、このボラが激しい環境の中で、株価の上下に伴うオプション料での高利回りが取れそうなJEPQやJEPIのようなETFはどうでしょうか?
元のJEPQなどのコンセプトがボラティリティの最小化だったので、こういうわけの分からない時代にはオプション系ETFの価値が相対的に上がってくるようにも思いました。」
とのことです。
実際、2021年あたりから米国市場ではオプションETFが急速にブームになっていますね。
JEPIは、厳密にはガチオプションではなくて、ポートフォリオの一部をオプションにし、それ以外はディフェンシブな現物銘柄でアクティブにポートフォリオを組むハイブリッド型のものになっています。ディフェンシブ銘柄で全体のボラティリティを抑える形になっていますね。
下落時の大きなズドンを避ける一方、上昇もある程度は捨ててしまっているという形になっています。とにかく低ボラ運用をメインにしている形です。そのため、JEPIが好評なために新たにつくられたNasdaq銘柄のJEPQは、本来の理念である低ボラのコンセプトから外れてしまっているため、個人的にはちょっとどうかなという気がします。ボラが高い分、上昇時にはJEPIより上がりやすいというのがありますけどね。
でも上昇を狙うのでしたら、オプション系ETFを買うよりは直接QQQとかNASDAQインデックスを買ってしまったほうがいいようにも思えます。そのため、JEPIとJEPQはコンセプトがそもそも違っていて、JEPQはJEPIの人気にあやかって派生的に出てきたJPモルガンの小遣い稼ぎ用ETFという感じはあります。
近年は、米国のインフルエンサーとかがこういう超高配当系のオプションETFをすすめたりとかで人気が出てきていることもあり、いろいろな運用会社が新しいETFをどんどん出してきていますね。ようするにオプションだと、ゴールドやら配当貴族やらどうにでも新商品をひねくりだせますし、そこに保険もつけていくと経費率をバカ高くできるわけです。
JEPIは経費率は0.35%とまだ良心的ですが、それ以外のオプションETFに関してはQYLDやXYLDの0.6%が最安値みたいな感じです。
配当貴族銘柄のオプションETFの「KNG」だと経費率0.75%ぐらいしますね。正直名前もふざけてますね。ゴールドのオプションETFのIGLDだと0.85%と1%近い経費率になっています。
こういう金融派生商品はいくらでも作り出せますので、こういう投資初心者だましの超高配当の小遣い稼ぎ商品が米国市場に出回っていて結構問題になっていたりします。
なにが問題になっているかというと、資金が膨らみすぎているのですね。具体的にはオプション商品が2021年では250億ドルきぼだったのに対して、現在では1000億ドルと4倍ほどまで膨らんでしまっています。日本円だと1ドル144円だと約14兆円ぐらいでしょうか。けっこうな値段です。
それでこの1000億ドルの中の370億ドルと、4割近くを占めているのがJEPIです。資金がかなり集まりすぎている状態なのですね。
それでオプション取引で資金が多すぎることのなにがまずいかと言えば、オプションを売って利益を出すためには当然買い手が必要になります。
4年以上前までの環境であれば、オプションの売る量が少なかったので、それなりの価格で売ることができますし、そのぶんリターンも多かったのですね。
ただ近年、こういうオプション商品に資金が集中してしまうとなると、それだけ多くのオプションが売り出されることになります。つまり供給過多状態なのですね。
みんなが競争して売りますから、資金が集まれば集まるほど、売り出されるオプションの量も増えていって、それに反比例してどんどんオプションの価格が下がっていくわけです。
このままどんどん資金が膨らみ続けると、その分オプションを売ることによる利益も減っていきますので、どんどんオプション取引のうまみがなくなっていくわけです。
そのため、この手のETFは、人気が出れば出るほど資金が集まってオプションはどんどん安くなっていきますので、将来的にはあまりパフォーマンスを出せなくなるのではないかとの懸念が出てきています。
オプション専門家であるスコット・メイデル氏のインタビュー記事がブルームバーグにありましたが、「コールオプションを機械的に売る取引は集中し過ぎており、今後は大きなリターンをもたらさないだろうと確信している。ボラティリティーリスクプレミアムとして知られる潜在的利益の指標は、一時に比べ半分に減少し、S&P500に連動するものではマイナスになる場合もあったことをデータが示している」と述べています。
つまり今後、JEPIの純資産が成長すればするほどパフォーマンスがどんどん落ちていくという話ですね。これはQYLDやXYLDもおなじことで、オプションの供給過多によって長期的にはパフォーマンスがどんどん落ちていく可能性があります。買う方にも限度はありますし、それを超えた量のオプションを供給し続けても誰が買うんだという話になりますしね。
実際カバードコールオンリーのQYLD、XYLDはかなりパフォーマンスが悪くなっていて下落時のボラもS&P500を超えているのですね。
そんなわけでオプションETFの人気が出ている一方で、資産が膨らみすぎている問題からパフォーマンス自体はどんどん悪くなっていく可能性があるため、数年前と比べればオプションETFのうまみはどんどん減っていくとは思います。株式と違って、資金を会社のための投資に使うとかができませんしね。
こういうのが嫌であれば、やはりインデックスの現物取り崩しが一番健全で安全かなという気はします。
まとめ
そんなわけでまとめると、
・2021年あたりから、米国市場でオプション商品が急速にブームになっている。
・高配当・高経費率のオプション商品が乱発され、資金が2021年から4倍の1000億ドル規模にまで膨らんでいる。業者の小遣い稼ぎに使われているものも多い。(JEPQとかも低ボラのコンセプトを無視した小遣い稼ぎ商品ですね。とにかく経費率を他のETFに比べて高く設定できるのが、業者側からすると魅力なわけです)。
・資金が多すぎることから、売りに出されるオプションが供給過多。オプション価格が下がる要因になり、オプション商品の人気が出れば出る程今後大きな利益をもたらさない可能性がある。
・ボラティリティーリスクプレミアム(潜在的利益)の指標は、一時に比べ半分に減少。S&P500に連動するものではマイナスになる場面も。
・金融派生商品リスクが気になるのであれば、インデックスを取り崩しした方が健全で安全かと。
となります。
そんなわけで、JEPI自体は現物のポートフォリオも持っているのでまだましな部分もありますが、オプション商品自体の資産が膨らみすぎることによって、今後のパフォーマンスが悪くなっていく可能性はあります。
商品によってはたこ足してごまかしつつ、適当な時期に償還して解散させてしまうという、かつて日本の毎月分配型がやっていた必殺技を使えばいいだけなので、業者側の損失はないのですね。高い経費率もらってますしね。
そんなわけで、人気が出るほどパフォーマンスは落ちていきますので、オプション商品自体が長期的にはどうなるかなといったところです。