FIRE後のiDeCoは意味が無い?
新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。
今回はFIRE後にiDeCoをすることについて意味が無いのではないかというご質問です。
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FIRE後のiDeCoは意味が無い?
こんなご質問をいただきました。
「iDeCoについて質問があります。
iDeCoの強みは掛け金を所得税の控除に使えるという部分ですが、すでにFIREして所得が低かったり収入が無い場合は意味が無いのではないでしょうか。
そもそも所得税の控除が増えても、健康保険料の基礎控除43万円は変わらないため、下手に特定口座の利益を確定申告してしまうと逆に多く税金を払う結果にもなります。
それにiDeCoは出口で場合によっては税金を払うことにもなります。節税以外の意味ではあまり意味が無いのではないかと思います。
投資家でiDeCoをやっていないという方も多くいるようです。某学長さんもiDeCoをやっていないという話を以前に聞きました。またiDeCoをやっても掛け金を少なくしているという方もいます。この辺りQ太郎さんはどうなのでしょうか、iDeCoをやっていますでしょうか。返信いただければ幸いです」
とのことです。
iDeCoですが、基本的には節税目的に使うものなので、稼いでいない人ががっつりiDeCoにお金を投入してもあまり意味がないんじゃないかとは思います。
投資家でiDeCoをやっていない人もいるとの話ですが、べつにやりたくなければやらなければいいですし、ここは人それぞれの考え方の違いだとは思います。60歳からじゃないと引き出せないことにリスクを感じたり、節税的にあまり意味ないと考える人はやらないという選択肢も全然ありだとは思います。
iDeCoをやるメリットですが、掛け金の全額を社会保険料控除として利用できます。所得税の節税にはなりますが、逆にいえばあくまで所得税の控除なので、取られるお金では一番エゲツのない国民健康保険料が安くなるわけではありません。ここはかなり注意したほうがいいでしょう。利益が健康保険料の基礎控除43万円以上だったら注意した方が良いですね。
例えばフルFIREして、税金は特定口座の源泉徴収ありで収めているのであれば、下手に確定申告をすることで健康保険料を含めた税金をがっつり増やしてしまう可能性もあります。というか、住民税申告不要制度が無くなった以上、米国株の配当金の場合は、利益が基礎控除43万円以上を超えた場合で確定申告するとかなりの確率で税金というか健康保険料が増えますし、外国税もそんなに戻ってきません。そんなわけで、このあたりはお得なのかどうかちゃんと計算しておいた方が良いでしょう。
所得税なんて、 所得194万9,000円以下は5%なんで、正直そこまで大したことないんですね。えげつないのは国民健康保険料です。こいつにがっつり持っていかれます。米国株は日本株と違って配当控除が使えないので、特定口座の源泉徴収ありのままにしておいた方が、外国税額控除を差し引いてもお得な場合が多いです。外国税額控除自体がそんなに控除してくれませんし、やはり鬼門が国民健康保険料ですね。詳しくはこちらを参照してください。
何にしろ、フルFIREをして、特定口座源泉徴収ありで確定申告をしない状態で、それ以外に収入が無いのであれば、節税効果も当然ありませんので、iDeCoのメリットも薄れてしまうとは思います。iDeCoの強みは収入に対する節税なので、そのあたりはちゃんとメリットを活かした使い方を考えたほうがいいでしょう。
給与所得の方でコーストFIREしたという方は、定年までは働き続けるため、iDeCoをした方が節税メリットがありますね。自分のシチュエーションに合わせて考えた方が良いとは思います。
収入のない人でも、月1~2万円とか非課税枠を超えない程度の掛け金にしておくなど、金額調整しておくのであればメリットはあります。ただ受け取りは60歳以降ですけどね。
iDeCoの出口戦略
それでiDeCoの問題点としては、出口戦略の問題もあります。
iDeCoはNISAと違って60歳以降からしか引き出せません。しかもNISAは利益分がすべて無税なのに対して、iDeCoは自分の掛け金も含めた金額を利益とみなし、退職所得控除額を超えると税金を取られるというシステムになっています。
どれぐらいの税金がかかるかと言えば、仮に自営業で退職金がなかったとすれば、iDeCoを始めた年から60歳までの年数が控除年数になります。
それで20年までは1年につき40万円の控除、20年を超えた分は1年につき70万円を控除してくれます。
たとえば50歳からスタートして、60歳までの10年だけiDeCoをやっていたのであれば、40万円×10年で400万円まで控除があることになりますね。
30歳からスタートした方は30年間なので、40万円×20年+70万円×10年=1500万円になります。この額以下であれば無税にできます。
それ以上の分については、オーバーした金額の2分の1が所得になり、それに税金がかかってきます。NISAと違い、しっかり税金が発生してしまうのですね。
問題は会社の退職金がある場合です。同時に受け取った場合はiDeCoと合算されます。金額が控除額をオーバーしてしまうのであれば、一定期間をあけて受取り時期をずらす必要があります。
方法としては、
1,先にiDeCoを受け取った場合、5年以上後に退職金を受け取る。
もしくは
2,先に退職金を受け取った場合、20年以上後にiDeCoを受け取る。
とすれば、退職所得控除枠が復活します。1でも2でも年単位で待たされるので、ちょっと考えものですね。
例えば40歳でFIREして退職金を受け取った場合、20年後の60歳でiDeCoを受け取れば控除枠が復活していることになります。
逆に60歳でiDeCoを受け取った場合は、65歳で退職金を受け取ることで控除枠を復活させられますが、ある意味65歳まで働かないといけないことにもなります。
そんなわけで思った以上にこのあたりのコントロールは難しいとは思います。
そんなに待てないという方は、控除枠内の金額で一時金をもらい、はみ出した部分に関しては年金控除(公的年金等控除)を使って分割でもらう形でもいいでしょう。
年金控除ですが、65歳までであれば年額60万円までが非課税、65歳以上は110万円までが非課税になります。年金をもらう場合は、iDeCoの受け取り分と合算になりますので、そこはちゃんと計算しておいてください。とくに厚生年金を受け取っていると簡単に非課税枠をオーバーしてしまうので、それなら普通にiDeCoを一時金で全部受け取ってしまった方が良いとは思います。
一時金受け取りなら、オーバーした分の金額の半分が所得になりますが、分割で受け取ると年金控除をオーバーした分は全額雑所得扱いになってしまいます。これだと、半額を控除されている一時金受け取りの方がお得になります。このあたりもちゃんと計算しておくといいでしょう。
FIREの意味
もう一つの問題としては、FIREした人というのは、すでに生活するのに資金が足りているという意味なのですから、これ以上無理にお金を増やす必要もないのですね。むしろ早期退職なのですから、退職後のようにお金を使う段階なのです。
そのため60歳までiDeCoをするということは、60歳までお金を貯蓄し続けるということにもなるので、「FIREしたのになんでまだ貯蓄続けてるの」みたいな話になってきます。
毎月1万円ぐらいならいいですが、毎月6.8万円がっつりいくとかみたいなのは、なんか本末転倒している感じでどうかなという気もします。そのお金を自分で使ったほうがよくないかという話ですね。60歳まで生きられない可能性もありますしね。
そんなわけでFIREしたのにさらに将来のためにiDeCoを頑張るというのも、なんか違和感はあるとは思います。そういうのが嫌なFIRE者がiDeCoやらないという話になってくるのでしょうね。
それと出口タイミングの問題もあります。iDeCoは最大で70歳までなので、出口の時点でズドンしてしまった場合、損失計上できない状態で受け取らないといけなくなります。それだったら損失計上できる特定口座の方がいいよねって話になりますね。
このあたりはほぼ運の問題ですね。あまり運任せにしたくない人は、特定口座で管理した方が気楽とは思います。Q太郎もこのタイプですね。基本的に投資は特定口座と新NISA口座をメインにやることにしています。
iDeCoのほうは実験的に毎月1万円ほど入っていますが、これ以上増やす気はあまりないですね。積み立てるなら自分のコントロールできる場所においておきたいですしね。自分のコントロールできないところに、引き出せない運用資金を置いておくというのが何かしっくりこないというのがあります。
iDeCoの掛け金を増やすにしても、退職所得控除を考えるとせいぜい2万円までが限度かなという気がします。このあたりは人それぞれ考え方があるとは思います。
まとめ
そんなわけでまとめると、
・iDeCoは基本的に所得に対する節税目的(あくまで所得のみの控除)。収入がないと効果も薄れる。給与所得者には悪くない制度。
・国民健康保険料の基礎控除が43万円なので、収入がない状態で、特定口座源泉徴収ありの利益を下手に確定申告するとえげつないぐらい健康保険料を取られる(雑所得などと合わせて43万円を超えたら注意。ちゃんと計算した方が良いでしょう)。
・iDeCoの出口では、自分の掛け金も含めたすべての金額が課税対象。
・退職所得控除は、20年までは1年につき40万円控除、20年を超えた分は1年につき70万円控除。これをオーバーした分は、その2分の1の金額が課税対象。
・分割受け取りの場合は年金控除(公的年金等控除)として、65歳未満は年間60万円まで、65歳以上は年間110万円まで非課税になる。これをオーバーした分は雑所得と同じ扱い。(年金が多い人はiDeCoを一括で受け取った方がいい場合があります)。
・そもそもFIREはお金を使う段階なので、60歳までお金を貯め続ける行動が合わない可能性も。
・コーストFIREなら60歳まで働くのでiDeCoもありかと。
・出口でズドンすると損失計上できないので、特定口座で管理した方が気が楽という考えも(Q太郎もこの考えですね)。
・自分のコントロールできないところに投資資金を預けるというのがしっくりこないという考えも。
となります。
そんなわけで、Q太郎的にはiDeCoに全力というのも微妙な気がしますし、コントロールできない場所にお金を置いておく運任せ感や人任せ感がちょっと自分の投資スタイルと違うなというのはあります。少なくとも60歳までは引き出せませんしね。FIREした人でiDeCoをあまり使いたくないという人は、このあたりのことが問題になっているんじゃないかと思います。
ただ給与所得の人に関しては、iDeCoは悪い制度ではないので、積極的に利用したほうがいいかなとも思います。掛け金入れすぎて、いまの生活が成り立たないまでいったらさすがに本末転倒なので、そこはちゃんとバランスをとった方が良いでしょう。
それと毎月の掛け金が大して入れられなかったら、それこそ新NISAでいいんじゃないかという気はしますね。毎年360万円の枠がありますし、これを埋めるだけでもけっこう大変とは思いますしね。それを埋めてないのに、わざわざiDeCoをやる必要性もあまり感じませんしね。節税効果があるにしても、出口のところで税金持っていかれる可能性もありますしね。
そんなわけで、自分の投資スタイルと相談して、iDeCoも新NISAもうまくつかっていくといいとは思います。