FIRE後の年金受給は何歳が適切?繰り上げ・繰り下げ

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新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。

今回は、FIRE後の年金受給年齢は何歳が適切なのかについてです。

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FIRE後の年金受給年齢

さて、FIRE後の年金受給年齢についてです。

年金は現在65歳で受け取るのが標準になっていますが、繰り上げることで60歳からの受け取り、繰り下げることで75歳からの受け取りができます。

それで繰り上げた場合、毎月0.4%減額されますので、60歳まで繰り上げたとすると、60か月×0.4=24%の減額となります。

一方で繰り上げると、毎月0.7%加算されますので、70歳まで繰り上げたら60か月×0.7=42%、75歳まで繰り上げれば120か月×0.7=84%となります。年金は複利ではなくて単利で計算する形になっていますね。

数字だけで考えた場合

それで投資的な視点から考えて、10年で+84%が多いのか少ないかについてですが、年利4%で10年まわした場合、複利計算ではおよそ+48%になります。

年金が10年で+84%であれば、複利だと年利6.3%となるので、金融商品としては悪くはありません。S&P500が現在のところ平均年利10%ぐらいありますが、10年後の元本がどうなっているかの保証はありませんので、安全性で考えれば年金の方がいいでしょう。

ただこれは寿命を無視して、単に数字だけで考えた場合の話です。

損益分岐点の計算

残念なのか幸運なのか、人間には寿命というものがあります。

人生後半の年金受給に関しては、この寿命の存在を無視することはできません。

永遠に生きられる神のような方であれば75歳受給をおすすめしますが、一般人はそういうわけにはいかないので、ここで損益分岐点を考える必要があります。

仮に繰り下げで60歳から受け取った場合と、65歳から受け取った場合で損益分岐点がどうなるか計算してみます。65歳の受取金額を100%とすると、60歳の受取金額はー24%なので76%になります。すると、

60歳からt歳までの累積額:0.76×(t−60)

65歳からt歳までの累積額:1×(t−65)

となるので、この2つが釣り合うt歳を求めればいいわけです。すると、

0.76×(t−60)=1×(t−65)

なので、t=80.83333・・歳になります。だいたい80歳10か月ぐらいですね。81歳で考えておきましょう。

それで日本人の平均寿命は、男性が約81歳、女性が約87歳なので、ちょうど男性の平均寿命あたりが損益分岐点になります。すると統計的には男性は60歳で受け取ったほうがお得な場合が多いということになります。

さらに言えば65歳以降で受け取ると損になる可能性が大きいため、国としては65歳以降に受け取ってほしいわけです。まあ、国もしっかり計算しているわけです。

さらにいうと、未婚男性の死亡年齢の中央値が約67歳なので、とくに未婚男性は受け取らないと損ということにもなります。60歳で受け取っても7年間だけですしね。

女性の場合は、平均寿命は87歳、未婚の場合でも約82歳なので、損益分岐点の81歳より上のため、ここは悩みどころになります。

じゃあ70歳や75歳受け取りになると損益分岐点はどうなるかと言えば、単利なのでどちらの場合でも+11.9年後が損益分岐点となるので、

70歳受取の場合、81.9歳(約82歳)
75歳受取の場合、85.9歳(約86歳)

となりますので、70歳受取は、男性の平均寿命が81歳であることを考えると損する可能性は大きいわけです。75歳受取は女性は平均寿命87歳なのでまだセーフ、男性は完全にアウトになる場合が多いですね。ここもやっぱりちゃんと計算されているわけで、国としては65歳以降、できれば70歳以降に受け取っていただいた方が、統計的には国が得する形になります。

そんなわけで、男性の平均寿命を考えると60~65歳で受け取ったほうがお金を使える期間も長いため統計的には合理的、女性の場合は70歳で受け取ってもまあ大丈夫、75歳はちょっとギリギリといったところです。

FIRE後の年金受取について

ここまでは統計の話でしたが、次はFIREした人が年金を受け取るのは何歳が合理的かついてです。

あくまでQ太郎の考えですが、そもそもFIRE状態なので年金に依存する必要性がないため、早く受け取っても65歳で受け取っても正直どちらでもいいのですが、投資家的な考えからすれば早く受け取ったほうがいいですね。

というのも、現在の日本のインフレを考えると、遅く受け取るとちょっときびしいことになるかもしません。

2023年の日本のインフレ率は3.27%でして、これは言い換えれば、それだけ年間の現金の価値が減っているということにもなります。

現在の3.27%のインフレ率が続くとすれば、65歳で受け取る100万円というのは、単純計算で60歳で受け取る83.65万円と同等の価値ということになるのですね。

年金を早く受け取った場合の減額分が年間4.8%のため、インフレを考慮した実質の減額分は年間で1.53%ほどしかありません。そのため、5年早く受け取った場合の実質減額分は、単純計算で7.65%程度になるとも言えます。

あくまでいまのインフレが続いた場合の話ですが、これで65歳で年金を受け取った場合との損益分岐点を計算すると、約130歳になります。人間の限界寿命を突破するまで生きられれば65歳受取の方がお得とは思いますが、いまのインフレ率が仮に今後も続いたとしたら、Q太郎は130歳まで生きる自信がないので、謙虚に60歳で受け取ろうかと思います。

ただ年金の方もマクロ経済スライドというのがあって、インフレに合わせて引き上げがあります。今年4月に2.7%引き上げられましたので、3.27%のインフレから引き算すれば、年金の方は実質的に0.57%程度のインフレ率になります。それでもインフレ負けしているのですけどね。

そうなると損益分岐点は130歳から88.64歳と下がりますので、やっぱり平均寿命を超えてきていてきびしいものがあります。

そんなわけで、平均寿命的にも60歳で受け取ったほうが合理的とは思います。

ただ国も馬鹿ではないので、対策を打ってきそうな可能性は高いとは思います。

例えば「年金を65歳まで払うことの義務化」とか「年金の70歳受取」ですね。実際に動き始めているとは思います。

こういうことが起こりやすいので、できるだけ早く年金を受け取ってしまった方が、FIREした人にとっては資金が管理しやすいというのがあります。べつに一生懸命増やす必要性もないですしね。

ただ未来はどうなるかわからないので、いまの時点で決め打ちせず、受取時期にまた考えるのがいいかなとは思います。ルールがめっちゃ変わってるなんてこともありえますしね。

 

まとめ

そんなわけでまとめると、

・年金は繰り上げで最小60歳、繰り下げで最大75歳で受取ができる。

・繰り上げで毎月-0.4%、繰り下げで+0.7%。

・60歳と65歳の損益分岐点は約81歳。

・65歳以上の繰り上げの損益分岐点は、受取年齢+約12歳。70歳だと約82歳、75歳だと約87歳。

・日本人の平均寿命は、男性が約81歳、女性が約87歳。未婚の寿命中央値は男性約67歳、女性82歳。

・男性は60~65歳で受け取った方が統計的には合理的。特に未婚は60歳で受け取った方が、お金を使える時間が長い。

・女性は平均寿命が長いので考慮が必要だが、未婚の場合は統計的には60~65歳受取でもいいかと。

・インフレ率が上がると、将来の現金の価値は下がる。

・現在のインフレ率(3.27%)と、マクロ経済スライド(2.7%)を考慮すると、今後もこの状態が続くのであれば、60歳と65歳受取の実質損益分岐点は約88.64歳。

・60歳受取を防ぐため、年金を65歳まで払わないといけないルール、70歳からの受取になるルールができる可能性。

・年金のルールは変わる可能性があるので、もらえるときにもらっておいた方が資金管理がしやすい。FIREしている場合は、一生懸命増やす必要性がない。

・ただ未来はわからないので、いまの時点で決め打ちせず、受け取る時期にまた再考したほうがいい。

となります。

そんなわけで、インフレが激しくなっていくとそもそもの現金の価値が落ちてくるので、現在のお金の価値と、未来のお金の価値は違ってくるのですね。そのため、繰り上げ受給の減額分も、インフレ率に勝てないと、どんどんチャラになっていきます。

国としてできる対策としては、65歳まで年金を払うことや、70歳受け取りなどにして、できるだけ早めに受け取らせないということが重要になってくるとは思います。

近年は平均寿命の延びも鈍化してきていますし、日本の貧困化が進めば落ちる可能性もあるので、年金の65歳まで支払い・70歳受け取りは、国としては願ったりかなったりといったところもありますね。

そんなわけで、あくまでいまのルールでの話なので、60歳近くになったときにまた考えていくのがいいとは思います。ある程度基本的な考えを持っておいたうえで、そのときはそのときで考えるのが一番ですね。