S&P500が崩れたらFIREはどうなる?リスクと対策
新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。
今回は、FIREしたいけどアメリカ経済とS&P500の先行きに不安があるとのご質問です。
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FIREしたいけどアメリカ経済が不安
こんなご質問をいただきました。
「現在40代です。FIREしようと考えていましたが、トランプ大統領になってから世界経済の先行きが悪くなり、日米ともに株価も落ち込んでしまっているため、不安に思っています。
これまでアメリカ一強で、S&P500に投資しておけばいいというような価値観も、トランプの関税政策や世界的なアメリカの立ち位置が低くなっていくことにより、これからは崩れてくるのではないかとの論調も目立ってきています。
世界中での報復関税によって、今後の世界経済自体の形が変わってしまい、成長率は大きく鈍化していくのではないかとの予測もたくさん出ています。
これまでアメリカの成長を支えてきたのは、アメリカの自由な思想や、移民を受け入れることによって単一民族では考えられなかった様々な発想のもとで企業が育ってきたというのがあります。GAFAMの経営者も移民がほとんどです。
ところがトランプ政権下だと移民の排除や、高い関税による国内企業の保護政策によって、これからどんどん世界的な競争力を失っていってしまうのではないかと考えられます。
するとトランプの指揮するこれからのアメリカは、これまでのアメリカとは違ったものになってしまい、「S&P500に投資しておけばよい」といった価値観も過去のものになる可能性があります。
4%ルールもS&P500を頼りにしたものなので、そもそものFIREの大前提が崩れてしまうのではないでしょうか。
今の環境でFIREをするのは危険な気がしますが、見解をお聞かせください。」
とのことです。
基本的に、投資に絶対はありません。過去がこうだったから、未来もそのまま続いていくというわけではありませんので、S&P500が過去に高パフォーマンスを出していたからといって、今後もその高パフォーマンスが続くとは限りません。
それでかなり以前に話したことですが、S&P500とオルカンのゲームオーバーの時期をQ太郎は2050年と見積もっています。なんで2050年かといえば、このころあたりで世界人口が減少方向に進むので、インデックス投資というか市場平均で稼げる限界点がこのあたりではないかと考えています。現在2025年なのであと25年ですね。
世界的な人口減少が進む2050年以降はインデックスでは稼ぎにくくなるか右肩下がりになっていくと予想されるので、個別株をうまく選んでうねりを取るような投資が必要になってくるとは思います。人口が減るという事は売る相手が減るということですので、つまるところ世界的に需要が減ってしまうのですね。すると、当たり前の話ですが、市場平均自体が下がっていく可能性があります。そのため、オルカンやS&P500のインデックス投資もせいぜいあと25年ぐらいが限度かなという話になります。
今50歳であれば、75歳あたりでインデックス投資の寿命がなくなるということですね。どんなものにも寿命はあります。
このこと自体は以前から言われていることなので別段新しい話ではないのですが、今回の問題としてはトランプ政権によってアメリカのシステム、ついては世界のシステムが変わってしまう可能性があるので、S&P500やオルカンの寿命も縮んでしまう可能性があるということを質問者様は危惧しているのだと思います。
トランプ政権では、国内産業を守るという名目で、高関税政策をとろうとしています。とくに自動車への関税は、自動車産業一本足打法になっている日本にとっては大きな打撃になるでしょう。世界の時価総額ランキング100位以内の日本の企業はトヨタ一社のみですしね。
ただトランプ大統領というかアメリカ国民自体が勘違いしていることとして、アメリカの車が売れないのは関税の問題だということですね。そもそもアメ車は燃費も悪いし、日本人の生活に合わないしで、関税なくてもそもそもがたくさん売れるようなものでもありません。日本車乗ってると、アメ車の燃費の悪さはびびるレベルですしね。「え、もうこんなにガソリン減ってるの?」みたいな感じです。そりゃみんな燃費のいい日本車買いたくなるわけです。
そんなわけで、そもそもの競争力のない産業を高関税で保護したところで、国際競争力はどんどん低下していくばかりです。短期的にはアメリカの雇用を守ることになるかもしれませんが、長期的に見ればアメリカ経済衰退の可能性にもつながっていきます。
しかも移民規制など極度に排外的になると、イノベーションが生まれやすかったこれまでの開放的な環境も崩れ去ってしまい、これまでのアメリカと違ってきてしまうという懸念もあります。
そうなると「「アメリカ」の市場平均」であったS&P500も、これからは「「アメリカのような何か」の市場平均」に変わってしまう可能性もあり、インデックスの性質自体が変わってくる可能性もあります。「これまでのアメリカのインデックス」ではなく、「新しいアメリカのインデックス」に成り代わる可能性もあるため、これまでと同じ感覚で投資するのは違うんじゃないかという考え方もできます。
極端な話をすれば、自由主義のアメリカが、突然独裁国家に変わったとしたら、S&P500のインデックスの性質自体が変わるわけです。別のインデックスになったと考えた方がいいですね。
そのため「S&P500最強伝説」も、「S&P500のような何か別のインデックス」になってしまうため、そもそもがどうなるかがわからないという話になります。
そんな感じで、政策変更によってアメリカの産業体制自体が変わって、それによってS&P500のインデックスの性質自体が変わりかねないとも考えられます。国家が変わってしまいますしね。
するとアメリカ経済が6割を占めるオルカンも当然影響を受けます。
この状況で、以前と違う「S&P500のような何か」に対して4%ルールが適応されるのかどうかは何とも言えないでしょう。そもそもこれまでのS&P500とは別物ですしね。FIREの大前提が崩れるという質問者様のご指摘も、場合によっては正しくなります。
この状況でFIREできるかどうかですが、そもそも4%ルールだけでFIREするのは不確定性が高すぎます。バケツ戦略と組み合わせて生活の安全を確保したうえで、場合によっては再就職をするなどのオプションを排除しないようにしなくてはなりません。
できれば簡単な仕事をして財産の目減りを防ぐなど、サイドFIREやバリスタFIREの方向を目指した方がいいかなとは思いますね。仮にお金が足りているとしても、働かないで生産性もなく遊び惚けるというのは、メンタル的にも結構難しいとは思います。
少なくともQ太郎には無理です。FIREのFIの経済的独立の部分はいいのですが、REの早期リタイヤは必要性がないとは思っています。
今の仕事が嫌でFIREしたいという話なら、それは仕事が合っていないだけなので、FIREではなく転職をまず考えた方が良いでしょう。
今の仕事が悪いからといって、ほかの仕事が悪いわけではありません。「転職したらすごい楽になった」「なんでこれまで転職を躊躇していたのか意味がわからん」みたいに言っている知り合いは結構いますので、まずは転職を考えてみたほうがいいでしょう。
投資だけに頼るというのは、財産や運命を全部他人にまかせるということにもなります。こちらがコントロールできることがあまりないのですね。とくにアメリカ経済とか世界経済は個人がコントロールしようがありませんので、完全にまかせるしかありません。
一方で、自分で収入を得るというのは、自分の力で自分を助けるということにもなります。自分でコントロールできるという感覚が得られるので、人にもよりますが、FIREするとしても、週一回とか簡単な仕事でいいので働いた方がメンタル的にはいいかなとは思います。
人任せの投資だけだと、ずっと不安のまま暮らすことになりますしね。
まとめ
そんなわけでまとめると、
・投資に絶対は無い。
・トランプ政権によって、アメリカ自体の構造が変わる可能性もある。
・高関税による国内産業の国際競争力の低下、移民排除によるイノベーション低下の懸念も。
・アメリカが変わることにより、S&P500もこれまでのS&P500と違う性質をもったインデックスになる可能性も。
・S&P500がこれまでと違う性質のインデックスになれば、4%ルールが適応されるかどうかは不明。
・そもそものインデックス投資にも寿命がある。世界人口が減少する2050年には、S&P500、オルカンのゲームオーバーの可能性も。
・そもそも4%ルールだけでFIREするのは不確定性が高い。
・投資だけに頼るというのは、財産や運命を全部他人にまかせるということにもなる。
・バケツ戦略などを駆使して生活を守りつつ、場合によっては再就職のオプションを持つ。
・自分で人生をコントロールしている感覚を得るためには、FIREするとしても簡単な仕事をした方がメンタル的にはよいかと(人によるけど)。
・今の仕事が嫌であれば、FIREよりもまず転職を考えた方が良い。
となります。
そんなわけでアメリカがあまりにも大きく変わって、イノベーションの生まれにくい環境になってしまったら、S&P500もこれまでのS&P500とは別物になってしまう可能性は高いです。
とくにアメリカ企業の多くは世界中に販売網を持っていることから、S&P500に投資しているようでも世界に投資しているのとおなじことになっていたのですが、報復関税の応酬でアメリカ企業の世界展開がうまくいかなくなってくると、システム自体が変わってくるということになるので、話が全然変わってきてしまいます。
トランプ大統領が本当にそこまで突っ走るのかどうかはわかりませんが、アメリカがこれまでのアメリカと別物の国家になって、イノベーションが起こりづらい環境になってしまったら、いろいろ話が変わってきてしまいます。バケツ戦略などを使いつつ、これまでのような投資全ツッパでFIREみたいな不安定なやり方は考え直した方がいいとは思いますね。