USスチール株は買いかどうかと「日本は邪悪」発言がアメリカにとって正しい理由
新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。
今回はUSスチールの件で、今買い向かうのはどうかということと、米鉄鋼大手CEOの「日本は邪悪」発言は正しいかどうかについてです。
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日本は邪悪?
こんなご質問をいただきました。
「USスチールの件ですが、株価下落が続いていますが、日鉄の代わりに米鉄鋼大手のクリフスが買収に向かいそうです。短期投資的に買い向かうことによってチャンスを拾うことはできそうでしょうか?
それとクリフスのゴンカルベスCEOが「日本は中国よりも邪悪」と批判したことについてどう思いますか?
日本の多くの方は、USスチール買収阻止は非合理だと考えていますが、私は、むしろ日本人も日産など日本の大企業が買収されそうになれば阻止してくるので、どっこいどっこいだと思っています。
またゴンカルベスCEOがこのような発言をしたのは、自分たちの企業にとって日鉄とUSスチールがくっつくことを避けたい狙いもあるのではないかとは思います。
この辺りの見解についてお聞かせください。」
とのことです。
まず短期投資的にUSスチール株を買うことですが、これについてはどうなるかわからないといったところです。そもそも短期投資で、しかも政治的な思惑が絡んでいる場合は読みようがないです。
それで買収検討している米鉄鋼大手のクリフスですが、提示価格が30ドル後半になっています。現在のUSスチールの株価は36ドル程度なので、これが実行されても大した利益にはなりそうにないとは思います。リスクの方が高い気がしますね。
日本製鉄が提示した買収価格が1株55ドルなので、30ドル後半だとかなり安く買いたたかれていることにもなります。クリフスはこれを狙って、あえて日本製鉄のUSスチール買収を阻止して日本批判をすることで、自分たちの行動を正当化しているという見方もできないこともないですね。
当然USスチール側としては55ドルで買い取ってもらった方がいいですから、違法阻止だということで、日本製鉄とともにクリフス側を訴えています。そりゃそうですねよ。
仮に今後日本製鉄による買収が可能になれば、株価は上がるとは思います、現状は政治的に無理な気はします。そのため、USスチールに買い向かうのは、リスクとリターンがあまり合っていないとは思います。そもそもそんなリスクを冒してまで買うほどのものでもない気はしますね。
それでクリフスのゴンカルベスCEOが「日本は中国よりも邪悪」と発言したことについてですが、自分たちが安値で買収することを正当化するために、米国民に向けての戦略的な発言だとしたら、クリフスにとっては間違いなく「正しい発言」になるでしょう。それで米国民から批判を受けずに、ライバル社を弱体化させて安く買いたたけますしね。
そもそも多くの人が勘違いしているのが、欧米人の大多数の人にとっては、日本も中国も韓国も「同じような国」としか思っていないことです。
日本と中国の差なんて彼らにはわかっていないわけですし、向こうの映画とかゲームとかアニメとかで出てくる日本人とか中国人を見ればわかるとは思います。
これは我々日本人も同じで、フランスとドイツとベルギーの違いなんてわかってないわけですし、スペインとポルトガルの違いなんてわかってないわけです。
そんな感じで、欧米人にとっては日本も中国も「だいたい一緒の国」としか思っていません。日本人感覚で「中国は独裁国家、日本人は民主主義国家」なんて思わない方が良いです。どっちも似たような君主制国家だと思われています。
実際、2013年にスイスで開かれた国連拷問禁止委員会でモーリシャスの代表から「日本の司法制度は中世レベル」との批判を受けたこともありますし、それに対して上田大使が「日本は決して中世の時代ではない。
刑事司法分野では世界で最も進んだ国の一つだ」と反論して失笑を買い、それに対して上田大使はさらに「笑うんじゃない!何で笑うんだ?シャラップ!シャラップ!」と恫喝したことでさらに日本に対する軽蔑を買ったという経緯があります。動画もネットをあされば残っていますね。
議論することよりも上からの圧力や威嚇で押さえつけようという傲慢な態度がすでに中世感ありますが、これで上田大使についたあだ名が「シャラップ上田」という、なかなか不名誉な話があります。
そんなわけで欧米から見れば日本も中国もほとんど変わらない中世マインドの国家という認識で、しかも日本は大戦時はアメリカの敵国でしたし、いまだにエンペラーこと天皇を中心とした君主制国家だと思っている人もけっこう多いです。
知り合いのオーストラリア人は、剣道の写真を見て、日本にいまだに侍という職業があると本気で思っていました。欧米人にとっては、日本はそんな感じの認識です。
それで、かつてのアメリカの敵国で、いまだに自分たちよりも下の中世封建国家だと思われている日本なので、それは「USスチール」という国家の名前のついている企業を買い取るのはいかがなものかという愛国心が働いてしまうのもしょうがないところがあります。
これは日本人も、日本製鉄が中国の鋼鉄会社に買収されるみたいな話になったら、全力で阻止してくるとは思います。それと同じようなものです。
「中国は独裁国家だから日本とは違う。日本は民主主義国家だから安全」と思う方もいるかもしれませんが、欧米人から見れば日本も中国もおなじようなものなのです。日本が中国企業に日本製鉄を買収されたくないように、アメリカもかつての敵国の日本に、USの名前が付いたものを買収されたくないわけです。合理性とかそういう問題を超越した話です。
だから中国も日本も、アメリカ人にとって邪悪なのです。1970年代後半のジャパンバッシング時代のときも「ダンピングばかりするずるい日本」みたいに、アメリカは反日感情を高まらせていました。
今もそのあたりの考えは変わっていないわけで、中国も日本もアメリカにとっては「ダンピングばかりするずるい国家」なのですね。そして日本がその手法を中国に教えたという話になってくるわけです。
そんなわけでゴンカルベスCEOの日本バッシングは、USスチールを安く買収したいという意図もあるかもしれませんが、1970年代後半を生きていたアメリカ人にとっては「日本はずるい国」というのはけっこう今でも刷り込まれているので、けっこう本音な部分も多いんじゃないかとは思います。
まとめ
そんなわけでまとめると、
・USスチール株への投資は、短期投資ということと政治的要因によってリスクが大きい。
・日本製鉄が提示した1株55ドルでの買収に対して、米鉄鋼大手クリフスの買収提示額は30ドル後半。現在36ドルなので、リターンの面でもあまりうまみがなさそう。高リスク低リターンですね。
・ゴンカルベスCEOの日本批判には、自分たちの買収正当化の意図がある可能性もあるが、そもそも欧米人は日本と中国の区別がついていない人がほとんど。どちらも中世封建国家みたいなイメージになっている。
・USという名前が付いたものをかつての敵国に買収されたくないという愛国心。
・1970年代後半の日本バッシング時代を生きていた人たちにとっては、「日本はダンピングをするずるい国」という意識がいまだに根付いている。そのため中国も日本もやっていることは大して変わらない、日本がやっていたことを中国に教えたと思い込んでいる。
となります。
そんなわけで、我々が中国と日本は別の国と思っていても、向こうにとってみれば大差がないというかそもそも差がわからんみたいな感じです。どっちも封建国家で、議論よりも上からの恫喝、上の人は絶対みたいな価値観だと思われていますし、実際そのとおりの部分は多いです。政府や企業の不祥事とかもそうですが、日本人も、自分の正義よりも上からの違法な命令の方を重視して実行してしまいますしね。
そんなわけで、日本の欧米でのイメージはそんなによいものではなかったりしますので、今回の買収阻止も国民感情的にある程度は仕方ないかなとは思います。日本も中国企業が日本製鉄買収しようとしたら止めそうですしね。実際、日産が止められましたしね。
ちなみに中国鋼鉄という鋼鉄大手企業がありますが、中国とついてますが、台湾企業だったりします。台湾の高雄市にある台湾最大の製鉄会社ですね。