インフレ時代に年金繰り下げは損?投資家目線から見る単利と複利の差

インフレ時代に年金繰り下げは損?投資家目線から見る単利と複利の差
年金繰り下げは投資的に損じゃないかというご質問に対する動画です。録音できない環境なのでゆっくり実況形式(セルフボイス)でお送りします。チャンネル紹介ゆっくり実況形式(セルフボイス)について

こんなご質問をいただきました。

「年金繰り下げですが、橘玲さんやひろゆきさんが、あきらかに損だという話をしています。インフレに追いつけません。メリットが無いように思えます。」

とのことです。ありがとうございます。

このチャンネルで年金についてのアンケートをとったところ、

60歳から64歳、いわゆる繰り上げ受給で、早くもらって運用や今を楽しむという方が52パーセント。

65歳、原則のタイミングで、まずは標準的に受け取るという方が30パーセント。

66歳から70歳、繰り下げて、バランスを見て少し増やすという方が10パーセント。

71歳から75歳、最大繰り下げで、長生きリスクへの最強の保険として考えるという方が8パーセントという結果でした。

このチャンネルの視聴者は投資家が多いので、圧倒的に多いのは繰り上げで、半数を超えています。一方で、繰り下げのほうは、66歳以降を合わせて18%という結果になりました。全体の2割弱ですね。

ちなみに日本年金機構の出している、世間一般の受給開始年齢の割合ですが、ざっくり言うと、繰り上げ受給が約3割、標準が約6割、繰り下げ受給が約1割未満といった感じです。世間一般でも、繰り下げ受給は圧倒的に人気がありません。

多くの人は、75歳までの繰り下げ受給を考えていたとしても、65歳ぐらいになれば、「あと10年も待つんかーい」みたいな気持ちになって、さっさと受給してしまうんじゃないかとは思います。体のあっちこっちも痛み出す年齢ですし、「いや、これ、あと何年も待つの無理やろ」みたいな気持ちになってくるとは思います。

それで、繰り下げ受給は長生き保険という面がありますが、今回は損得で考えてみましょう。

そんなわけで、ようこそ、Q太郎のお金の哲学へ。お金に悩まされないための生存戦略を日々発信しています。

今回は投資目線から見る年金繰り下げ受給です。

まずインフレに追いつけないというのは、現時点での年金がすでにインフレに追いつけていないは、皆さんもよくご存じとは思います。

それで年金繰り下げと投資の違いなんですが、年金繰り下げは単利で増えるのですね。投資のほうは複利です。この差はけっこう大きかったりします。

質問者様の情報元と思われる、橘玲さんのブログを調べてみると。このことについて説明があります。

例えば65歳で年間100万円受け取れるとします。繰り下げると毎月0.7%、年間ではこの12倍なので、8.4%になります。

すると70歳まで繰り下げた場合、42%増額なので、年間で受け取れる金額は142万円にアップします。

75歳まで繰り下げれば、84%アップなので、年間184万円。けっこう多い感じはあります。

ただここで、平均余命と受け取り総額ということを考えていくと、ちょっと違う景色が見えてきます。

65歳になった男性が、あと何年生きられるかの平均余命が19.47年。すると、65歳で毎年100万円の年金を受け取った場合、平均余命までに総額1,947万円受け取れることになります。

つぎに70歳で年金を受け取ることを考えます。70歳の平均余命は15.6年です。42%アップで毎年142万円受け取れるとすると、平均余命までに総額約2215万円受け取れることになります。

先程の65歳受け取りと比較すると、2215万円から1,947万円をひいて、65歳受給より、総額で268万円多くもらえることになります。これはまだいいです。

ところが、75歳受け取りにすると、バグが起こります。75歳の平均余命は12.08年です。受け取り金額は年間184万円にアップしているのですが、平均余命までに受け取れる金額は約2223万円です。

70歳で受け取れる総額が2215万円、75歳で受け取れる総額は2223万円。引き算するといくらでしょうか?2223万円から2215万円を引くと8万円です。5年間も待って、総額がたったの8万円しか増えていないことになるのです。

65歳から70歳まで5年間待って、総額でプラス268万円。これはまだわかる。Q太郎的には少ない気もしますけど、まあ、まだわかる。

ただ70歳から75歳まで5年待って、総額でたったのプラス8万円。これは投資判断からすればありえない。

こういうバグが起こってしまうのは、年金が単利運用だからです。

例えば、年金を債券として考えます。複利の利回りで考えると、違う世界が見えてきます。

70歳の繰り下げ受給の総額を、65歳から5年間、年間100万円を年金という債券に積み立てていって、70歳以降の平均余命15.6年は42万円分の増額分のようなものをもらえると考えれば、複利での投資利回りは年2.72%になります。まあ、そこまで悪くない。年2.72%なら、銀行預金よりは全然まし。

ところが75歳まで繰り下げた場合、65歳から年間100万円を年金という債券に10年間積み立て、それ以降は平均余命の12.08年間に増額分の84万円を貰えるとすると、複利での投資利回りは年0.13%になってしまいます。いまの銀行の普通預金よりもひどい利回りです。というか、かなりひどい。三井住友銀行ですら、今は0.3%ありますしね。

この説明でわからないかたは、キャッシュフローで考えるとわかりやすいとは思います。

100万円を基準に考えれば、70歳繰り下げの場合、70歳までのキャッシュフローは、毎年マイナス100万円になります。それ以降はプラス42万円になりますね。平均余命まで受け取れる総額を、複利の利回りに直すと年2.72%になるわけです。

75歳の場合、65歳からの10年間は毎年マイナス100万円。それ以降はプラス84万円。平均余命まで受け取れる総額を、複利の利回りに直すと年0.13%になるわけです。これだったら65歳で受け取って、自分で投資したほうがいいわけです。株式投資までいかなくても、銀行の0.3%の普通預金に預けるだけでも、元本保証で年0.13%を大きく上回るわけです。

投資商品としては、75歳繰り下げは話にならないとは思います。銀行の普通預金以下の利回りなのですからね。

ただ、やはり考えたいのは長生きリスクですね。これはあくまで平均余命までの総額で計算しているので、それより長く生きた場合には利回りは上がります。

ざっくり計算してみましたが、75歳受け取りで90歳まで生存した場合、利回りは約1.5%ほどになります。95歳まで生存した場合は約3%ほど。100歳まで生存した場合は、約4.6%ほどになります。

まあ、90歳まで生存で1.5%、95歳までで3%だと、インデックス投資の利回りが4%としたら、65歳から毎年100万円ぶっこんでいったほうが得だったりしますが、100歳までいきれば4.5%なので、まあなんとかみたいな感じでしょう。

でもインデックスの実際の利回りは4%以上だとは思うので、正直、75歳繰り下げは、投資商品としてはどうかなという気もしなくはありません。しかもインフレが進んだら、この程度の利回りではなくなりますので、さらに差が大きくなるとは思います。

ただこれは投資目線の話なので、保険商品として考える場合や、国からもらえるお金という安心感を買いたいのであれば、75歳受け取りはありとは思います。

Q太郎の場合ですが、以前も言ったように個人事業主なので、国民年金しかありません。正直額が小さいので、繰り上げようと繰り下げようと、大して額が変わらないのですね。なのでさっさと受け取ろうとは思います。65歳受け取りで7万円ぐらい、60歳受け取りにしても5万円ぐらいで、月に2万しか違いませんしね。考える意味があんまりない。

・まとめ

そんなわけでまとめると、年金繰り下げが損かどうかは、「もらえる金額が増える」というところだけを見るとわかりにくい、という話でした。

年金繰り下げは単利で増えます。一方、投資は複利です。この違いのせいで、70歳までの繰り下げは複利換算で年2.72%とそこまで悪くないんですが、75歳まで伸ばした瞬間、年0.13%まで落ちてしまう。銀行の普通預金以下という、ちょっとしたバグみたいな現象が起きるんですね。65歳から毎年100万円を銀行に預けたほうがましな利回りという話になってきます。

なので、単純な投資商品として見るなら、75歳への繰り下げはあまりおすすめできる話ではないとは思います。ただ、平均余命より長生きした場合は話が変わってきて、90歳、95歳、100歳と生きるほど利回りは上がっていきます。長生きリスクへの保険として割り切れるかどうかが、繰り下げを選ぶかどうかの分かれ目になってくるんですね。とはいっても、95歳で利回り約3%、100歳でも利回り約4.6%ですけどね。インフレも考慮すると、インデックス投資のほうが全然上にはなります。ただ株式投資は下がる場合もありますので、安心感が欲しい人は年金繰り下げのほうがいいとは思います。

Q太郎自身は国民年金だけなので、繰り上げても繰り下げても月2万円ぐらいの差しかなく、正直あまり悩む必要がない立場です。ただ厚生年金があって金額が大きいかたは、繰り下げが単利で増える一方、投資は複利で増えるという差、税金が増えるリスク、それから長生きリスクとのバランスをちゃんと計算してから決めたほうがいいとは思います。

この話を踏まえたうえで、繰り下げがいいのか、繰り上げがいいのか。よかったらコメントで教えてください。全部読ませていただいています。

数字を味方に。そして、誰の欲望でもない自分の人生を、自分の手で耕していきましょう。

ではまた、Q太郎でした。

 

 

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