
Q太郎のお金の哲学です。
今回は、年金を75歳に繰り下げて、その間に資産を使っていくプランについてです。
YouTube動画で観たい方はこちらのリンクから。
75歳まで年金を繰下げて、資産を使い切るのはアリか?
こんなコメントをいただきました。
「以前の動画の話になってしまいますが、Die with zeroについて考えました。
仮に現時点での65歳から受け取る年金額が250万円として、75歳まで繰下げて、自身の金融資産は75歳までに使い切る気持ちで過ごすというのはありかと思いますが、いかがでしょうか。
75歳まで繰下げれば450万円プラス物価スライド分となり、税引き後でも十分生きていけると。
75歳という期限ができれば準備する資金も計算しやすくなります。
資産をいっぱい持っているより、年金の権利をいっぱい持ってるおじいちゃんの方が、妻も子も孫も大切にしてくれるかもしれません(笑)
ただし政府に命を預けることになりますが」
とのことです。ありがとうございます。
損得か、保険か
これはかなり面白い質問です。
単なる年金繰下げの損得ではなく、『Die with zero』、つまり死ぬときにお金を残しすぎないという考え方と、年金繰下げをどう組み合わせるかという話ですね。
結論から言えば、考え方としてはかなりアリだと思います。
ただし、ここで最初にはっきりした方がいいことがあります。以前の年金関連の動画でも言ったことですが、年金を「損得」で考えるのか、それとも「保険」として考えるのかですね。ここをごちゃ混ぜにすると、自分が欲しいものが、お金なのか、安心なのか、わからなくなります。
今回は、75歳まで年金を繰下げて、資産を使い切るのはアリかというテーマについて、制度面も確認しながら、Q太郎なりに考えていきます。
そんなわけで、ようこそ。Q太郎のお金の哲学チャンネルへ。賢く資産形成をしつつ、お金に悩まされないための生存戦略を日々発信しています。
今回は、75歳まで年金を繰下げて、資産を使い切るのはアリか。Die with zeroと年金繰下げについて、独自の視点で深掘りしていきます。
まず制度を確認する
まず、制度面を少し丁寧に確認しておきます。ここをちゃんと理解してないと、「こんなはずじゃなかった!」みたいなことになりかねませんし、かなり致命的に取り返しがつかないことにもなりかねません。制度はしっかり理解しておきましょう。
まず年金の繰下げ受給ですが、原則として75歳まで繰り下げることができます。
増額率は、一ヶ月繰下げるごとに0.7%。投資で考えると結構でかいですね。75歳まで繰下げると、10年分、つまり120か月なので、最大84%増額になります。
たとえば、65歳から受け取る年金額が年250万円だった場合、単純計算では84%増えるので、年460万円ぐらいの年金を受け取れることになります。コメントでは450万円とありましたが、だいたいそのくらいのイメージですね。
もちろん、実際には税金や社会保険料がありますし、物価スライドや個人の年金構成もありますので、手取りがそのまま84%増えるわけではありません。ここは注意が必要です。
現在の税制や保険料率でざっくり計算してみたところ、年金460万円だと、所得税は10万円前後、住民税は23万円前後になります。
あと医療保険は、75歳以降は後期高齢者医療保険になりますので、これが約36万円。さらに介護保険料が約14万円ですね。
合計で、だいたい85万円前後引かれるイメージです。
これを460万円から引くと、手取りは約375万円ぐらいになります。月額にすると、約31万円ぐらいですね。
もちろん、住んでいる自治体や世帯構成、各種控除によって変わりますし、かなりざっくりした計算ですが、だいたいこんなところだと思います。まあ、月30万円あれば悪くはないと思いますね。
さかのぼって請求できる
それから、もう一つ大事なのは、年金繰下げは完全な片道切符ではないということです。ここはいざというときのお守りになるので、よく知っておいたほうがいいでしょう。
つまり、75歳まで繰下げるつもりで待っていたけれど、途中でお金が必要になった。そういう場合に、必ず75歳まで待たないといけないわけではありません。さかのぼって一括請求できるわけです。
ただし、さかのぼって受け取る場合は、繰下げによる増額分をすべてもらえるわけではありません。70歳前に一括請求した場合は、65歳のときの年金受給額が基準になります。
たとえば68歳で、「やっぱり75歳まで待てないからもらっとくわ」となった場合、65歳のときに年100万円もらえるんだったら、3年分の300万円を一括でもらえるということですね。
70歳以降については、「特例的な 繰下げみなし増額制度」というものもあります。請求の5年前に繰下げ申出をしたものとみなして、増額された年金の5年分を一括で受け取れる仕組みです。
例えば72歳で「やっぱ今すぐ受け取るわい」となった場合、5年前の67歳の時点で年金を受け取ったということにして、5年分を一括で受け取ることになります。この場合は、65歳から受け取るより、年金が17%ほど増えた金額になりますね。
この「繰下げみなし増額制度」を受けられる条件としては、昭和27年4月2日以後に生まれた方、または平成29年4月1日以後に受給権が発生した方が対象です。
基本的には、70歳以降80歳未満であれば、条件を満たす場合に、特例的な繰下げみなし増額制度が使えます。
ただし、80歳以降に請求する場合、この特例は使えません。その場合、繰下げ申出をしていなかったら、65歳にさかのぼった本来の年金額での請求になります。ここはかなり注意が必要です。
つまり、80歳を超えてから「やっぱり一括でもらおう」とすると、かなり扱いが変わるので注意が必要です。 できるかぎり80歳までに受け取るようにしてください。
障害年金・遺族年金受給者は注意
さらに繰り下げ受給で注意したいのが、障害年金や遺族年金を受け取った場合です。
雑に説明すると、基本原則として、障害年金や遺族年金を受け取ったら、その時点で年金を受け取ったことになりますので、繰り下げはできなくなります。その時点での増額率が固定されるのですね。
ただし、障害基礎年金、または旧国民年金法による障害年金のみ受け取る権利がある方は、二階建てのほうの厚生年金の繰下げ受給は可能です。
年金繰下げは柔軟な制度ではありますし、途中でお金が必要になったときの選択肢もあります。ただし、万能ではありません。自分の状況、配偶者の状況、障害年金や遺族年金との関係によって変わる部分があります。
なので、実際に繰下げを選ぶ場合は、必ず年金事務所などで自分のケースを確認してください。先ほども言った通り、「こんなはずじゃなかった!」と叫ぶことになりかねません。
この動画では考え方を話しますが、最終判断は制度を確認してからにしてください。というか、日本は制度がコロコロ変わるので、今の時点で正しいことも、将来正しいとは限りません。
損得で見ると話がややこしくなる
それで本題です。以前の動画でも言いましたが、年金を考えるときは「損得」で考えるか、「保険」で考えるかで判断が変わってきます。
「損得」で考えるというのは、ようするに何歳まで生きれば元が取れるのかということですね。繰り下げや繰り上げでの損益分岐点を出して、自分に適切な受給年齢を決めるというやり方です。
人によっては60歳で繰り上げ受給して、健康な内にお金を使って楽しもうという考え方もあります。逆に75歳まで繰り下げて、ぶっとい年金を作ろうという考えもあります。このあたりは人それぞれです。
でも、この考え方をすると、年金繰下げは常に「自分の寿命をあてるゲーム」になります。そして外したら、損します。つまり、受け取る前に亡くなってしまうケースですね。そうなると、ぶっとい年金を受け取れるどころか、一円も受け取れなかったという結果になる。
基本的に、自分が何歳まで生きるかがわかる人はいません。毎日健康に暮らしていたのに、突然空から飛行機が落ちてきて巻き込まれたとか、人間の一生は本当にわかりません。
Q太郎のもうすぐ80歳になる父が、「もうすぐお迎えが来る」みたいなことをたまに言いますが、これに関しては全員一緒です。生まれたばかりの赤ちゃんでも、何に巻き込まれるかわかりません。Q太郎だって、明日生きているかはわかりません。これに関しては、若者からお年寄りまで、みんな平等です。メメント・モリです。
そんなわけで、いつなんどき、なにがあるかはわからない。自分に過失が無くても、何か事故に巻き込まれてしまうこともある。だから、損得だけで考えても、答えは出ません。リスクを感じるのであれば、繰り上げて早めに受け取るというのも一つの方法です。これは人それぞれ考え方があります。
年金は保険として見る
そこで、もう一つの見方があります。
これも以前の動画で言いましたが、年金を保険として見る考え方です。むしろこちらの方が年金保険の本筋です。
長生きリスクというのは、長生きすることによってお金が足りなくなるリスクです。年金はそれに対する保険ですね。終身で受け取れる公的年金が太いというのは、かなり強い安心材料になります。
将来、日本が滅びないかぎりは、たぶん大丈夫だとは思います。本当に大丈夫かは知りませんけど、多分大丈夫なような気がする今日この頃です。
これも以前言ったことですが、ここで大事なのは、保険というものは、本来は使わない方がいいものだということです。
ガン保険に加入して、ガンにならなかったから「損した」と思う人はまずいないでしょう。できれば使わない方がいいわけです。
火災保険や自動車保険もそうですね。家が燃えたり、事故ったりしない方がいいわけです。
年金繰下げも、保険として考えれば、これに近い見方ができます。75歳まで繰下げたけど、75歳まで生きられなかった。
損得で見ると損です。
でも保険として見るなら、75歳以降の長生きリスクが発生しなかったということです。
つまり、保険を使わずに済んだ。安心と引き換えにしていたわけです。保険としては大成功なのですね。
ここをごちゃ混ぜにすると、判断がぐちゃぐちゃになります。
自分が欲しいのは、お金としての得なのか。それとも、間違って長生きしたときの安心感、つまり保険なのか。
まずここを分けた方がいいです。
75歳まで資産を使う設計はアリか
では、コメントにあったように、75歳まで年金を繰下げて、金融資産は75歳までに使い切る気持ちで過ごすのはアリなのか。
Q太郎としては、ちゃんと計算していれば、考え方としてはアリだと思います。
理由は、75歳という「期限」ができるからです。
資産を使うのが苦手な人にとって、一番困るのは、いつまで生きるかわからないことです。
90歳まで生きるかもしれないし、100歳まで生きるかもしれない。だからお金が使えない。
こうなると、資産はあるのに、ずっと不安で使えません。
でも、75歳以降は増額された年金で最低限の生活を固めると考えれば、65歳から75歳までの資産はかなり使いやすくなります。期限が決まっていますので、どれぐらい使っていいのかの計算ができるのですね。
もちろん、完全にゼロにするのは現実的には少し怖いです。インフレでの物価高もありますし、想定外の出費とか、日本政府のオハコである制度変更もあります。しれっと、「年金、80歳受け取りにしました」とかなるかもしれません。
そんな感じで、いろいろあります。諸行無常です。むしろいろいろあることを前提にしたほうがいいです。
だから、文字通り75歳で金融資産をゼロにするというより、75歳以降は年金で最低生活を支えられる状態に支出を抑えて、そのレベルで金融資産を使う。
例えば75歳から年金が年460万円で、ざっくり計算の手取りが約375万円だとしたら、それまでは毎年375万円かそれ以下の金額を、資産から取り崩して生活する。ただし、375万円を超えないように注意が必要です。なぜなら、人間は一度上げた生活レベルを下げるのが難しいからです。
「使い切ってやるぜ! Die with Zero!」とか言って、年間一千万円とかで豪遊して使い切ったら、年金の手取り約375万円が入ってきたときに、かなりの高確率で生活がまわらなくなると思います。いきなり半額以下で生活しろとか、だいたいの人間はできません。
そんな感じで、使うにしても、年金額を超えないようにした方が、年金受給時に対応しやすいとは思います。
「Die with zero」は、お金を死ぬまで守り続けることより、ちゃんと適切な時期にお金を使って、思い出という資産を作った方が良いということを、ちょっと極端な言葉で言ってみましたというものです。「亡くなる前まで豪遊しろ」という話ではありません。
そんなわけで、やるにしても年間支出は、受け取り予定の年金額を超えないようにした方が、いざ受け取り時期になったときも、困ることはないと思います。生活レベルを上げると、あとで対応するのが難しくなりますしね。
ただし政府に命を預けることになる
ただし、コメントの最後にもあったように、これはある意味で政府に命を預ける設計です。
75歳以降は、公的年金にかなり頼ることになります。
もちろん、日本の公的年金は終身で受け取れる強い仕組みです。物価や賃金に応じた改定もあります。マクロ経済スライドもあります。現実には物価上昇に追いつけていませんが、そこは目をつぶって、そういう仕組みもあります。
ただし、一方で税金や社会保険料もあります。医療費や介護費の自己負担も増えるかもしれません。
つまり、増額された年金があるから絶対安心、という話ではありません。それ以上にインフレが進む可能性もあります。
ただ、ここでも重要なのは、リスクの置き場所です。
金融資産を多く残す安心を取るのか。
それとも、公的年金という終身の権利を太くする安心を取るのか。
どちらもリスクがあります。
金融資産を持っていても、相場下落やインフレのリスクがあります。
年金に頼っても、制度変更や税社保のリスクがあります。
どちらが絶対に正しいという話ではありません。
自分はどちらのリスクなら引き受けられるのか。
ここが大事だと思います。
まとめ
そんなわけで、今回の話をまとめます。
75歳まで年金を繰下げて、資産を使い切るのはアリか。
Q太郎としては、考え方としてはアリだと思います。
ただし、まず分けるべきなのは、年金繰下げを損得で見るのか、保険として見るのかです。
損得で見るなら、何歳まで生きれば元が取れるのか、早く死んだら損ではないか、税金や社会保険料を引いたらどうなのか、という話になります。
一方で、保険として見るなら、75歳以降も長生きしてしまったときに、終身で入ってくる年金を太くしておくという話になります。
保険は本来、使わない方がいいものです。
ガン保険も、火災保険も、自動車保険も、使わずに済むならその方がいい。
それと同じで、75歳まで生きられなかったら損というより、長生きリスクが発生しなかったと考えることもできます。
そして制度面では、年金繰下げは66歳以降75歳まで選べます。
1か月繰下げるごとに0.7%増額され、75歳まで繰下げると最大84%増額になります。
また、繰下げ待機中に途中でお金が必要になった場合、65歳にさかのぼって請求する選択肢もありますし、70歳以降には特例的な繰下げみなし増額制度もあります。
ただし、障害年金や遺族年金が絡む場合は、繰下げできないケースや、増額率が途中で固定されるケースがあります。
ここは人によって条件が変わるので、実際に選ぶ場合は必ず年金事務所で確認してください。制度変更もありますので、今の常識が将来の常識だと思わないほうが良いでしょう。
そして資産を取り崩すにしても、75歳で受け取る年金の手取り額を超えない金額で生活した方が良いでしょう。一度上げた生活レベルを戻すのは、想像するより難しいとは思います。下手すると生活がまわらなくなって、借金地獄になったりします。
「Die with Zero」は先ほども言ったように、お金を死ぬまで守り続けることより、ちゃんと適切な時期にお金を使って、思い出という資産を作った方が良いということがテーマなので、ガチでゼロにする必要はありません。あくまで必要なタイミングで、必要な分のお金を使ってください。「豪遊しろ」という話ではありません。
そんなわけで、皆さんは、年金繰下げを損得で考えますか。それとも、長生きリスクへの保険として考えますか。よかったらコメントで教えてください。全部読ませていただいています。
数字を味方に。そして、誰の欲望でもない自分の人生を、自分の手で耕していきましょう。

