逆イールドをわかりやすく解説&3カ月物との比較も【米国株投資】
QYLD全力太郎ことQ太郎です。
2年債が10年債の利回りを上回る「逆イールド」は、リセッション(景気後退)のシグナルと言われています。
今年7月に入ってから、米国債の10年債と2年債の逆イールドが拡大しつづけ、昨日は2年債が10年債を10ベーシスポイント、パーセントでいうと0.1%を上回りました。
4月にいちど逆イールドが発生していますが、そのときはまだ0.1%に届いていませんでした。
この0.1%以上という数字は、2008年のリーマンショックの前年、2007年1月ごろに発生しています。
リーマンショックでS&P500がズドンしたのが2008年の9月末ごろなので、実際の景気後退まで1年半以上の遅れがあります。
逆イールドが発生しても、じっさいの景気後退は1年半とか2年後とか、そこそこ時間がかかりますね。
ただその前にも、S&P500はじわじわ落ちていました。
今回は逆イールドが何かをわかりやすく解説し、米連邦準備理事会(FRB)が使用している3カ月物と10年債の組み合わせだとどうなるのかを見ていきましょう。本記事をYouTube動画で観たい方はこちらのリンクから。
逆イールドとは何か?
さて、まず基本的なことです。
イールド、ようするに利回りですね。
2年債の利回りが10年債の利回りを超えることを、「逆イールド」といいます。
これが発生すると、だいたい2年前後ぐらいにリセッション(景気後退)が起こるといわれています。
「なんでやねん」という話ですが、まず2年債と10年債の違いから話をします。
2年債と10年債の違い
2年債というのは、「2年後に償還がおこなわれる債券」です。2年経ったら、利息と一緒に元本を返さなくてはならないのですね。
10年債は、「10年後に償還がおこなわれる債券」です。10年後に利息と元本を返す必要があります。
銀行預金で考えるとわかりやすいと思います。
「2年あずけるよりも、10年あずけた方が利息が高い」というのはわかると思います。
2年のほうが利息が高かったら、みんな2年のほうにあずけます。当たり前です。
なんで利息の安い方に10年もあずけないといけないのかという話になります。
10年間もあずけるのですから、それなりの利息を払わないと、だれも10年もあずけませんよね。だから10年債のほうが利息が高くなります。ここまでは当たり前の話です。
その当たり前のことが起きないていない異常状態が、逆イールドです。
2年あずけたほうが、10年あずけるよりも利回りが高いという謎状態になっているわけです。
逆イールドが起こる理由
なぜこういうことが起きるかといえば、国の中央銀行がインフレをおさえるために金利を上げるからですね。
現在進行形でアメリカがおこなっていることです。
金利は一気に上げるわけではなくて、通常は1~3年ぐらいかけて徐々に上げていきます。
一気に上げるとお金が返しきれなくなって、個人も企業も地獄のような状況になります。
そんなわけで、一気に上げるわけにはいかないので、1~3年ぐらいかけて徐々にやっていきます。
そのあいだにインフレが収まれば万々歳で、利上げをストップできますしね。これもいまアメリカが現在進行形でおこなっていることです。
この1~3年の利上げを、2年債が織り込むため、利回りが高くなるのです。
10年債のほうですが、インフレ退治がおわったあとに景気が悪くなることから、また金利を下げる可能性があります。それを織り込んでしまうのですね。
まとめると、
2年債 1~3年のインフレ退治の大きな利上げを織り込む。
10年債 1~3年のインフレ退治後、景気悪化で利下げの可能性もあるため、利下げを織り込む。
つまり直近で大きな利上げがあるのを2年債は織り込み、その後の景気悪化からの利下げを10年債は織り込んでしまうのですね。
結果、利上げを織り込んでいる2年債のほうが、1~3年の利上げ後の景気悪化からの利下げを織り込んでいる10年債より、利回りが高くなるわけですね。
つまり逆イールドは、利上げによって1~3年後に景気悪化する、そしてそのあとに景気対策として利下げするということをとらえたシグナルと言えます。
逆イールドの問題点
さて、一見便利な逆イールドシグナルですが、大きな問題があります。反応が速すぎることです。
「1~3年後に景気悪化っていわれても、それいつやねん」という話ですね。
反応が早いのは、中央銀行がインフレ退治の利上げを始めた時点から織り込みはじめるからです。
そこから1~3年かけて利上げをしていき、その影響が実社会に出てくるという、時間のかかる手順がそのあとに待っています。
そのため反応が早いのも当たり前なのです。
3カ月物と10年債の組み合わせ
ちなみに一般的には2年債と10年債の逆イールドを使いますが、米連邦準備理事会(FRB)は2年債ではなく、3カ月の短期国債と10年債の組み合わせを使います。
なぜかというと、1960年代後半から8回あったリセッションのすべてで、事前に3カ月物と10年債の利回りが逆転しているからです。的中率100%なので、3カ月物と10年債を使っています。
じゃあこの3カ月物と10年債の組み合わせで見てみたらどうなるかと言えば、けっこう余裕です。3カ月物は2.1〇%とかですから、まだまだ10年債の3%前後の利回りを追い越せるようなレベルではないですね。
FRB的には、リセッションが来るという判断はしなくていいという状況です。
ちなみにリーマンショック前はどうだったかといえば、しっかり3カ月物が10年債の利回りを追い抜いていますね。FRBの言うように、3カ月物での比較のほうが正確なのかもしれません。
まとめとQ太郎の見解
そんなわけでまとめると、
・2年債の利回りが10年債を追い抜くと、1~2年後ぐらい後にリセッション(景気後退)の可能性あり。
・理由は、2年債はインフレ退治のための1~3年の利上げを織り込み、10年債はその後のリセッションでの利下げを織り込むから。
・現在、2年債と10年債で逆イールドが発生。一時0.1%以上と、リーマンショック以来の高水準。
・FRBの使っている3カ月物と10年債の逆イールドは、1960年代後半以降の8回のリセッションすべて的中。
・現在、3カ月物と10年債では逆イールドは発生していない。FRB的にはリセッションは起こらないという判断。つまりもっと利上げしても大丈夫という判断。
ということです。
そんなわけで、2年債と10年債ではリーマンショック以来のレベルの逆イールドが発生していますが、FRBの使う3カ月物と10年債の組み合わせだと、まだまだ大丈夫といったところです。
今後、実際にリセッション入りするかどうかはわかりませんが、どちらにしろ金利の上がる時期は、株式はバリエーションが低くなってしまうので、どうしても弱くなります。
普通に考えて高金利だったら、リスクとって株を買うより、銀行に預けていたほうがいいですしね。バブル期の日本みたいに、銀行にあずけてほぼノーリスクで6%だったら、Q太郎も迷わずそっちを選びます。12年で倍になりますしね、ほぼノーリスクで。5000万円あずけるだけで、ほぼノーリスクで年間300万円という夢のある話ですよ。
そんなわけで、利上げは株にとってはあまりよろしくない環境なので、いまの時期はおそるおそる投資するぐらいでいいかと思います。7~8月の米国株の動向については前回の動画を参照してください。