【配当7%超】AT&T・ベライゾンは投資して大丈夫?通信業界の構造的な問題について|2023年
QYLD全力太郎ことQ太郎です。
今回はリクエストのあった、すでにけっこう落ちている上に、週末でさらに4.10%も一日で落ちた、もはや「どこまで落ちるねん」というレベルの万年不成長株のAT&Tについてです。そもそも通信業界の構造的な問題があります。ついでにベライゾンについてもまとめてお届けします。
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AT&Tと通信業界の問題
さて、下げがびっくりするぐらい止まらないAT&Tについてです。
年初来で-22.63%と、S&P500銘柄ながらS&P500の逆をいくような動きになっています。5年で見たら38%ほどは落ちていますね。長期投資家をあざ笑うかのような動きです。
ただ問題は、AT&Tだけでなく、同様の大手通信会社ベライゾンも似たようなものです。
ベライゾンのほうは年初来で-15.23%、5年で見ると-32.81%。AT&Tよりましとはいえ、状況的にはあまり変わりません。
一方、通信業界の3強の一角であるTモバイルですが、こちらは年初来で+0.46%とかろうじてプラマイゼロになっています。5年では+135.75%と2倍以上になっており、こちらはがんばっていますね。ただ配当金が出ないので、日本での人気はあまりありません。
なぜこういうことがおきているか、今回は通信業界の闇というかインターネットの構造的な問題について述べていきます。
ドットコムバブルから下落続き
そもそもAT&Tの没落はいまにはじまったことではなく、2000年のドットコムバブルから着々とその舞台がととのってきました。いまだにドットコムバブル時の株価を回復していないのですね。スピンオフとかいろいろありましたが、それをひっくるめても弱いです。
まず大きな問題として、通信業界のもうからない構造があります。
「インターネットはもうかる」みたいな感じで株価が吊り上がっていったドットコムバブルですが、そもそも技術革新が進むからといって、利益が上がるわけではないのです。
むしろ技術革新によって利益がどんどん縮小していく可能性というのがあります。
これは現在流行っているAIに関してもおなじことが言えます。
成長の罠
1社だけですごい技術を持っているのであれば、生産性が上がって他社を追い抜けます。
しかしすべての会社がおなじ技術を持ってしまうと、けっきょくは差がなくなってしまって、価格競争のすえ、売り上げは前とおなじになってしまうわけです。
『株式投資の未来』の著者であるジェレミー・シーゲル教授はこのことについて、
「パレードを観るためにひとりが背伸びをすれば、その者は他のものよりも身長が高くなるので優位に観ることができる。
しかし全員が背伸びをしてしまえば、全員が背伸びをしないときと同じ状態になる」
と述べています。
これは技術革新によって、「生産性」を手に入れてしまった各社は、けっきょく価格競争をおこなって以前とおなじ売り上げに落ち着いてしまうということですね。
苦労しても報われないということです。
じっさい、我々におきかえても、技術が発展して便利なものがたくさんあるのに、ぜんぜん生活が楽になってない、むしろ以前より忙しいみたいなことが多いとは思います。
メールチェックやらSNSチェックやら、生産性が上がったぶん、みんなもおなじことをやるので、それに追いつくためにさらに忙しくなるみたいな感じですね。
けっきょく技術革新が我々の生活を楽にしていない、むしろ忙しくしているという結果に落ち着いてしまうわけです。
Q太郎がAI投資に否定的なのもこれで、AIによって生産性があがることと、企業の売り上げが上がることはイコールではありません。
みんながAIを取り入れれば、全員が背伸びした状態になるため、けっきょくはもとの売り上げに戻ってしまうのです。
そうなると、期待だけで上がっていた株価は下落して、以前とおなじ水準まで戻ってしまうわけです。
期待でPER30倍とかになっていれば、標準の15倍に戻るだけで株価は半値になります。
短期でうまく売り抜ければいいですが、急激な上昇は長期投資だと失敗する可能性が高くなります。リスクの高い投資とは思います。
技術革新による暴落
ドットコムバブルのころ、「インターネットはもうかる」ということで、多くの投資家がネット関連企業に投資をしました。
当然、AT&Tも通信回線に多額の投資をしました。
しかしネットはいわゆる「技術革新」をしていきます。
インターネット黎明期は電話回線で通信をしていましたが、それが光ケーブルに変わったり、さらに高速回線になったり、携帯電話もどんどん高速化したりで、とにかく多額の投資が必要になります。
しかし投資した分だけ回収できるかといえばそんなわけもなく、他社との競争によって料金はどんどん安くなっていきます。
おっさん世代なら「テレホーダイ」とか覚えている人がいるかもしれませんが、テレホーダイの時間以外は普通に電話代がかかっていたので、ネットの通信代で月3万円とかいく場合もあったりします。
それが光ケーブルに変わったら、ひと月5000円ぐらいで使いたい放題なわけです。「テレホーダイ」の時代に比べるとかなりのコストダウンです。
それで通信会社は投資だけがふくらんでしまい、株は軒並み低迷してしまいました。
投資は高いわ、契約価格は過当競争で安いわで、「自らの技術革新で、自らの体を焼いた」ような状況です。
今後も技術革新で通信速度が速くなるたびに、通信網への投資をしなければなりません。
しかも他社との競争によって価格もおさえないといけないという、どうあがいても苦難の道しかないような状況です。
とにかくこの業界は、投資が多いのにもかかわらず、過当競争利益が少ないという構造になってしまっています。楽天モバイルもこの状況に陥ってしまっていて、多額の投資に対するリターンが期待できない状況です。
楽天モバイル、基本料金だけで海外で使えるからつぶれないでほしいのですけどね。
Tモバイルの台頭
一時は業界一位でぶいぶいいわせていたAT&Tですが、現在の時価総額は1080億ドルほどで、ベライゾン(1456億ドル)どころかTモバイル(1688億ドル)にも抜かれてしまっています。
とくに時価総額でAT&Tとベライゾンを抜き去ったTモバイルは、他の2つと比べて大きく成長してきましたね。
これもコストの問題があって、AT&Tやベライゾンは全米をカバーしなければならないのに対して、Tモバイルは都市部中心なのでコスト的に有利です。そのため契約者数もTモバイルは低料金で提供できることから、AT&Tを抜いています。
地方は、インフラとしては必要ですが、企業の利益にはなりにくですしね。
さらにTモバイルの強みとしては、5G回線の人口カバー率が80%に達しており、AT&Tの60%を大きく引き離しています。ベライゾンはAT&T以下ですね。
そんな状況なので、AT&Tもベライゾンも5G回線に投資せざるを得ない状況になっており、さらにコストがかかるという状況です。これが技術革新の罠ですね。
業績
AT&Tの業績ですが、売上も営業利益も右肩下がりになっています。配当も減配予定であまりいいところがありません。
AT&Tの強みであったフリーキャッシュフローですが、こちらも借金返済できびしいことになっていますね。技術革新するたびに投資が必要になるので、本当に厳しい業界とは思います。ただいまのところはまだマイナス状態ではないですね。
ちなみに楽天モバイルというか楽天ですが、金融を除く連結フリーキャッシュフローが-7000億円超えました。本当に厳しいです。楽天モバイル、便利なんですけどね。楽天大丈夫なんでしょうかね。
それとベライゾンのほうは売り上げもいちおう伸びており、増配もまだストップしていないので、AT&Tに比べればましですね。フリーキャッシュフローもAT&Tより多いです。
鉛問題について
直近のケーブルの鉛問題ですが、問題がこれだけの場合はむしろ買いになると思っています。
というのも、こういうイベントは一時的なものなので、訴訟があろうがなんだろうが、営業利益がしっかりしていればどうにでもなる問題だからです。
それで株価が下がっているのなら、むしろおいしい状態ですね。
ただ根本的に営業利益が下がっているのが問題になっています。
まとめ
そんなわけで、いろいろと厳しいAT&Tです。
というか通信業界が過当競争すぎて厳しすぎます。日本の通信業界も談合したくなったり、海外に比べてぼったくり料金を取りたくなる気持ちもわからなくはありません。
とにかく競争が激しすぎます。低価格競争で投資分の回収も厳しいです。
楽天モバイルなんて1か月1000円ぐらいで、海外でも2Gまで無料で使えますしね。Q太郎は基本料金を超えないようにつかっているので、本当にもうしわけないです。
そんなわけで、どこまでがんばれるかといったところです。
現在はAT&T・ベライゾン・Tモバイルの三国志状態なので、そのうちAT&Tとベライゾンが合併してTモバイルに対抗みたいな図式になるかもしれませんね。
巨大企業なのですぐにつぶれることはありませんが、AT&Tは年々弱体化していく感じはあります。
4~6月決算の発表が今月の26日におこなわれますので、投資するにしてもそれを見てからのほうがいいでしょうね。Q太郎的にいま一番注目している決算です。
そんなわけで、本当に厳しい通信業界の話でした。楽天モバイルにもがんばってほしいと思います。