FIRE/老後、ハイパーインフレになったら投資信託はどうなる?
新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。
今回はFIRE後/老後にハイパーインフレになったら、日本の投資信託はどうなるのかについての話です。
本記事をYouTube動画で観たい方はこちらのリンクから。
ハイパーインフレが起こったら?
このようなご質問をいただきました。
「SBI証券で投資しています。
起きる確率は低いですが、日本で極端なハイパーインフレが起きた場合、資産防衛の観点ではeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)とVOOだと、どちらのほうが安全とかありますか?
例えばロシアのデノミネーションのように、全国民の資産が1000分の1となる状況が万が一日本で起こった場合、運用会社が日本の会社だと、運用会社の倒産のリスク、償還のリスクがあるのではないかと思いました。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の運用会社は三菱UFJアセットマネジメント(日本の会社)なので、運用会社がバンガード(アメリカの会社)であるVOOに投資したほうが、ハイパーインフレ時の資産防衛の点で優れているのではと考えました。」
とのことです。
ハイパーインフレ
まず日本でハイパーインフレが起こるかどうかについてですが、起こる確率は低いけど、起こらないとはかぎらないといったところかと思います。
というか、投資はつねに不測の事態であるブラックスワンを考える必要があります。これまで起きなかったからといって、確率は低いとはいえこれから起こらないともかぎらないのですね。
それで仮にハイパーインフレが起こったとき、まず大打撃を受けるのが銀行預金しかしていない人、それと働いていない人ですね。
働いていればハイパーインフレに合わせて給料も上がるとは思いますので、働くことは効果的なインフレヘッジにはなります。
それと年金のほうですが、働いている若い世代から徴収する賦課方式で運用されていますので、表面的にはインフレには強い作りになっています。
ただその一方で、年金が増えすぎないよう、マクロ経済スライドが設定されています。これは現役世代の人口減少や平均寿命の伸びを鑑みて年金額が計算されるというもので、すごく簡単に言えば、
・物価や賃金が上昇しても、年金の増額幅はそれよりも小さく抑えられる。
・物価や賃金が下落しても、年金の減額幅はそれほど大きくならない。
というように、年金の変動を小さくして安定させるというものです。
そのため、ハイパーインフレが起こった場合、仕組み上、マクロ経済スライドが追いつかないので、政府が別に政策を打つ必要があります。
そんなわけでハイパーインフレは、労働世代はまだ対応できますが、貯金の多い年金世代には大打撃になる可能性は高いでしょう。
それで日本でハイパーインフレが起こるかどうかですが、まずハイパーインフレの条件となるのが、政府の過剰な通貨供給です。財政赤字を補填するために、国の中央銀行、日本でいうところの日銀が、お金をバンバンすりまくることが主要因になります。
「お金刷っても大丈夫じゃん。これまでにも問題なかったし」と思っていると、ある一定の量を超えたとたんに通貨の価値が急激に下がり、物価が急上昇するということが起こります。
よくあるたとえでいうと、もうかっているレストランが「少しぐらい材料費削ってもわからんやろ」と思ってちょっと費用を削る。でも客も減らないし、売り上げもこれまでのまま。「もうちょっといけるやろ」とさらに費用を削る。でも客が減らない。
ということを繰り返していると、どこかの段階で急に客足が途絶えて売り上げが一気にズドンと落ちてしまうというやつですね。これまで大丈夫だったのに、ある一定値を超えたとたんにズドンというやつです。
いまはバンバン日本円を刷っていて、とくに問題がないような感じですが、実際急激な円安が起こっている以上、一定値の第一段階は超えた感があります。そのため、今後この調子でやっていくと、ある時期を境にさらなるズドンが起こらないとも言い切れないわけです。
ただ通貨流通量以外にも、国内生産の低下が原因で結果的にハイパーインフレになる場合もあります。
最近では日本円のことを「ジンバブ円」と呼ぶようになったみたいな話を聞きますが、ハイパーインフレのメッカでもあるジンバブエは、国内生産の低下が原因となっています。
土地改革で白人追い出して、黒人の農民に分配したのですが、そもそも経営知識のない人たちに土地を渡してもうまくいくわけもなく、当然のように生産量激減となり、さらには食料不足となりました。
しかも政府が腐敗しているわ、欧米諸国からも経済制裁受けるわで経済がボロボロの状態になっており、この財政赤字を補うために通貨刷りまくったら月間インフレ率が約800億%とわけのわからない事態になってしまいました
当然、銀行預金や年金の価値は消滅し、「やってられるか」で労働者は海外へと流出していきます。
けっきょく政府は通貨を廃止して、ドル化政策をすすめていくことで安定化をはかりました。
そんなわけで、国内生産の低下も結果的には財政補填でハイパーインフレを招く可能性があるため、日本もそこまで安心していられない感じもあります。
運用会社がつぶれるケース
ハイパーインフレが起こって運用会社がつぶれた場合、ここだと三菱UFJアセットマネジメントになりますね、そうなったら投資信託がどうなってしまうのかという話ですが、まず投資信託の仕組み自体についてから解説します。
投資信託は、それを運用する運用会社ではなくて、信託銀行が管理することになっています。つまり運用と管理は別々になっているのですね。
そのため、投資信託は、運用会社の資産とは分離されているため、運用会社が倒産しても、投資信託は信託銀行があずかっているので、保護されることになります。
それで投資信託がどうなるかといえば、一般的には信託銀行が他の運用会社に運用をひきついでもらうという措置になります。
これは昔、Q太郎自身が似たような目にあっています。
昔、たしかメルリンチの運用していた投資信託を持っていたのですが、ある日突然電話がかかってきて、「運用会社が日本撤退するから、投資信託を別の運用会社にまかせるので、移管手続きに来てくれませんか」みたいなことを言われて、交通費払ってわざわざ移管手続きをしに行ったことがあります。ちなみにその投資信託、めっちゃ含み損しまくってたので、さっさと売り飛ばしました。
そんなわけで運用会社がつぶれても、投資信託をあずかっているのは信託銀行なので、べつの運用会社に引き継がれるだけになります。
そんなわけでハイパーインフレになって運用会社がつぶれても、投資信託をあずかっている信託銀行が別の運用会社に任せることになるだけなので、投資信託自体の消滅や早期償還はそんなに心配しなくていいとは思います。
ETFも似たような仕組みになっており、ETFの運用会社は指定参加者から現物株の詰め合わせである株式バスケットを預かり、それに応じたETFを配布します。運用会社が預かった株式バスケットは信託銀行に預けられるので、仮に運用会社が倒産しても、投資信託のケースとおなじように別の運用会社に運用を続けてもらうという形で継続していきます。
そんなわけで、運用会社が倒産しても、投資信託や株を預かっているのは信託銀行なので、別の運用会社に引き継がれますので心配しなくていいとは思います。
ちなみに「信託銀行がつぶれたらどうすんねん」という話ですが、信託銀行の財産と、預かっている投資信託や株式は別々で管理されているので、それらを別の信託銀行が引き継ぐことになるでしょう。
そのため、運用会社や信託銀行の倒産リスクはそんなに気にしなくていいとは思います。
まとめ
そんなわけでまとめると、
・運用会社は投資信託の運用をしているだけで、投資信託自体は信託銀行があずかっている。ETFも仕組みはおなじ。
・運用会社が倒産しても、信託銀行が別の運用会社を見つけて引き続き運用してくれる。
・信託銀行がつぶれても投資信託や株式は別で保管されているので、別の信託銀行が引き継ぐことになる。
となり、仮にハイパーインフレで運用会社がつぶれても、投資信託自体は信託銀行が手をつけずに預かっているため、ほかの運用会社に引き継がれるだけとなります。ETFも同じですね。
「でも日本中の運用会社や信託銀行がつぶれたらどうすんねん」という極端な話でしたら、その場合は海外の運用会社や信託銀行が引き継ぐんじゃないかと思います。
というか、そのレベルの事態になったら、日本国自体が消滅して北斗の拳の世界になっているとは思います。町中モヒカンだらけの世界ですね。投資信託より肩パットとか釘バットを購入したほうが実用的でしょう。
そんなわけで、運用会社がつぶれても投資信託自体は守られますし、他の運用会社に引き継がれます。実際、Q太郎の投資信託も別の運用会社に引き継がれました。
そんなわけで投資信託やETFの運用会社がつぶれること自体は気にしなくていいとは思います。そこのリスクヘッジには力を入れなくていいでしょう。