「コーストFIRE」は本当にFIREなのか検証

人生・FIRE関連FIRE

coast fire

新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。

今回は、定年まで働くコーストFIREは、そもそもFIREといっていいのかどうかについてです。前回の動画の補足的な内容になります。

本記事をYouTube動画で観たい方はこちらのリンクから。

コーストFIREはFIREと言えるのか

さて、前回「FIREの種類」という動画上げましたが、その中で出てきた定年まで働く「コーストFIRE」について、定義的にFIREと言っていいのかどうかというモヤモヤがあるとは思います。FIREの種類については前回の動画を参照してください。

コーストFIREについて軽く説明すると、コーストというのは「海岸」のことですが、「のんびりやる」という意味もあります。定年後に完全リタイアできるよう、現役時代に資産をたくわえるというものです。

仮に60歳の定年後に3000万円必要であれば、その金額を50歳までに貯められれば、あとは定年になる10年間をのんびりと働きつつ、毎月貯蓄にまわしていた資金を自分の好きなことに使うというものです。

たぶん多くの人がこれを聞いたら、「いや、定年まで働いたらFIREちゃうやん。早期退職しとらんやん」「というか、現役時代に老後資金貯蓄するとか普通やん」と思うでしょう。

軽い仕事をしながらFIREする「サイドFIRE」や「バリスタFIRE」はある程度市民権がありますし、まだFIREとして許されるとしても、最も新しいFIRE概念であるコーストFIREはそもそも定年まで働いてしまうため、「なんか違う感」がすごいとは思います。

しかも昭和の時代に日本の大企業とかで働いていた方たちは、コーストFIREやらを目指さなくても貯蓄はしているはずですし、定年退職後は働かずに、年金と貯金で暮らしているという人も多いとは思います。その人たちはべつにコーストFIREなどという概念を知っていたわけではありませんし、普通に会社に勤めていれば普通にそんな感じになっているとは思います。

ただ現状、65歳以上の人口が3625万人で、そのうちの就労人口は914万人なので、およそ25%の人が65歳以降も働き続けていることになります。経済的にきびしい日本では、今後、この割合はどんどん大きくなっていくのでしょう。そのため、定年退職後に年金と貯金で悠々生活というのも、だんだんと厳しくなってくるとは思います。

そんなわけで、早期退職後どころか、定年退職後に完全リタイアできるだけでも十分早期という考え方もできなくもありません。

とはいっても、現状でも75%の人が年金と貯金をやりくりして、働かなくてすんでいるわけなので、「コーストFIRE」という言葉には違和感が伴ってしまうわけです。

そこでこのコーストFIREと、日本人がこれまでおこなってきた「定年まで働く→老後は年金と貯金で過ごす」の何が違うのかについてです。

日本との違い

これまで日本で普通におこなわれていた「定年まで働く→老後は年金と貯金で過ごす」というスタイルですが、海外ではそこまで普通ではありません。

とくにアメリカとか、貯金もろくにしていない人が多いです。アメリカだと45%の人が、貯金が1,000ドル以下(日本円で14万円)だったりします。国民のおよそ半数は、ほとんど貯金が無い状態ですね。

しかも成人の73%が学生ローンや自動車ローンなど、何かしらの借金を負っているような状況です。

クレジットカード社会であり、約60%のアメリカ人がクレジットカードの借金を抱えており、約37%の人がクレジットカードの借金が退職金の金額を超えているようなやばい状況です。

毎月の給料が多くて貯金があるように見えても、毎月の支払いで実はマイナス収支だったりします。これは貧しい人だけではなく、大きな家に住んでいる会社役員とかでも、会社がクビになったなど何かあったとたんに家計がまわらなかったりするなど、国も国民も借金大国です。

この旺盛な消費がアメリカ経済を支えているともいえるのですが、とにかくそんな感じで借金しながら家計をまわしていくスタイルになっています。

「定年まで働く→老後は年金と貯金で過ごす」みたいな日本の堅実なスタイルは、アメリカではそんなに当たり前ではないのですね。

そんな状況なので、「定年退職までに、定年後に働かなくていいぐらい資産を貯めよう。貯まったら、あとは毎月貯蓄にまわしていた分を好きに使っていいよ」となれば、「その発想はなかった」「天才か」となってしまうわけです。

そんなわけで、貯金大好き・定年まで働くの当たり前な日本人からすると「普通じゃね?」と思うようなことも、「老後とか知ったこっちゃないストロングスタイル」でやってきた人たちにとっては、老後必要なお金をあらかじめ計算して貯蓄しておくということ自体に新しさがあるというわけです。

ただ日本人との違いですが、貯金ではなく投資を使って資金を増やすというところに違いがあります。少ない資金で達成できるというところですね。

たとえば60歳以降に2000万円必要だとすれば、1000万円を年4%でまわせば18年で2倍になりますので、42歳までに1000万円用意できればいいわけです。その後の18年間は貯蓄にまわしていたお金を好きに使っていいわけなので、42歳以降は人生を楽しみましょうということになります。

たとえば毎年100万円を貯蓄にまわしていたとしたら、42歳以降はその100万円を自分の娯楽に使えるということです。

42歳以降はそんなに仕事に力を入れなくていいので、疑似的なFIREという感じですね。まあ、FIREといっていいのかどうかはやはり疑問が残りますし、日本人だと毎年貯蓄にまわしていた100万円を、コーストFIRE達成したからといって娯楽にまわすのかといえば、やっぱりそのまま貯蓄にまわす人がほとんどじゃないかとは思います。「もう貯蓄しなくていいよ」と急に言われても、日本人の場合「なんかあったらいやじゃん」ということで、やっぱり不安で貯蓄してしまいますしね。

老後のためにお金を貯めなければいけないという精神的なプレッシャーからはかなり解放されているとは思います。お金や出世のために無理して働く必要がなくなっていたということで、メンタル的な気楽さではFIREといってもいいんじゃないかなといったところです。

「早めに仕事を辞める」という従来のFIREではなく、「仕事を減らす」ということですね。サイドFIREやバリスタFIREも「仕事を減らす」という点では一致しているので、これらの仲間と言えなくもありません。

また定年後は働かなくていいので、「経済的独立」自体は達成できているわけです。定年後にはなりますが、FIの部分自体は問題なく達成はできていますので、ここも嘘ではありません。

そんなわけで、「仕事を減らす」サイドFIREの亜種として登場したと考えた方がいいですね。

あとは、言葉の発生として考えられるのは、「とりあえずFIREつけておけば注目が集まるだろう」的な発想でコーストFIRE的な言葉が出てきた感じはありますね。

 

まとめ

そんなわけでまとめると、

・コーストFIREは、定年まで働き、定年後は完全リタイアするFIRE(定年後の経済的独立)。

・目標金額まで貯めれば、あとは蓄財しなくていい。貯蓄にまわしていたぶんを、自分の好きなことに使える。

・ただ日本人の場合、心配性なのでやっぱり貯蓄してしまう。

・日本では普通に思われている「定年退職→老後は年金・貯金で生活」は世界の普通ではない。

・そもそもアメリカではおよそ半数の国民が貯金1000ドル以下。約60%がクレジットカードの借金を抱えており、約37%の人が借金額が退職金を上回っている状況。

・コーストFIREの資金は投資で増やすことが前提。早めの投資により少ない金額で達成できる。

・「経済的独立(FI)」は「定年後」に実現。

・「早期退職(RE)」は「早期に仕事を辞める」のではなく、「早期に仕事を減らす」。サイドFIREの亜種と考えられる。

・「とりあえず「FIRE」つけとけば注目集まるだろう」で名づけられた感がある。

となります。

そんなわけで、経済的独立の部分は、定年後には実現しているので嘘ではありませんが、早期退職部分は「早期仕事削減」なのでここがちょっと苦しい感じがあります。

しかしこれを言い出すと、「サイドFIREもバリスタFIREも「早期仕事削減」じゃなくね?同類じゃなくね?じゃあコーストFIREもOKじゃん」と反論をもらいそうなので、まあ、サイドFIREの亜種的なものと考えておくのがよさそうです。ただ、やはりモヤモヤは残りますね。