トランプ関税で早くも900人解雇ーS&P500さらなる下落予想も

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trump kaiko

新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。

今回は、トランプ関税の影響で、米自動車メーカーが従業員900人を一時解雇したことについてです。

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自動車メーカーが従業員900人解雇

こんなご質問をいただきました。

アメリカ在住の者です。トランプ関税についてですが、すでにクライスラーが従業員の首斬りと、カナダ工場閉鎖の発表をしました。

ただ現地の実感としては、日本で言うほどには大騒ぎにはなっていません。一部でデモが行われている地域もありますが、基本的にはいつも通りです。みんなあまり気にしていないようです。

ただ私は、今回の関税政策によってアメリカの雇用が増えるとは思っていません。

製造業など生産性の低い仕事を与えても、高コスト化してしまった労働者の賃金に見合わなくなります。

思うにトランプは、関税でMake America Great Againをするのが目的ではなく、現在のアメリカの格差問題を、「外国がアメリカを虐げている」という事に論点をすり替えることで、政府批判をそらそうとしているのではないかと見ています。

福祉予算を切り捨てていけば、低所得者層の政府に対する反感が強まるため、その不満を外国のせいにしてしまって矛先をそらそうとしているのですね。政権に目が向かないように、「アメリカVS世界」の対立構造を作ろうとしているのです。

実際の所、トランプはアメリカの事は何も考えておらず、自分の政権維持しか考えていません。ひたすら対立煽りばかりしており、うんざりしています。Q太郎さんはこのトランプの行動をどう見ているでしょうか?長文失礼しました

とのことです。

ちょうど日本のYahooニュースなどでも、クライスラーのことは報道されましたね。

クライスラーはアメリカの老舗自動車会社ですが、2008年のリーマンショックのころに経営破綻しています。その後にフィアットがクライスラーを子会社化してフィアット・クライスラー・オートモービルズを設立しています。

さらにその後の2020年に、さらにフランスの自動車企業PSAと経営統合してステランティスにグループ名を変えました。日本の報道だとステランティスの名で報道されていますね。

いま台北にいるので日本のテレビは観られませんが、ヤフーニュースだとステランティスが4月3日、トランプ大統領の関税措置の発表を受けて、5つの工場で900人を一時解雇し、メキシコとカナダの組み立て工場を1つずつ操業停止すると発表したそうです。

それ以外にも、イギリスのジャガーが米国への輸出を一時停止しました。ジャガーは年間約40万台の新車を販売し、そのうち約4分の1を米国向けに輸出していたので、けっこう打撃は大きいと思います。

ちなみに地味なところでは「ニンテンドースイッチ2」のアメリカの予約開始時期が、関税の影響で延長されてしまいました。米国市場のニンテンドー株はこの影響で-9%ほど下落しましたね。

それでトランプ大統領の狙いですが、対立構造を作って国民の目を外に向けるというのはトランプ大統領だけでなく、政治家がよくやる方法です。トランプ大統領のやり方はかなり露骨ですね。

イーロン・マスクが政府効率化省をつくっていろいろな予算削減をしましたが、無駄だったら切ってもいいのですが、福祉予算自体の縮小は、むしろトランプ大統領を支持する低所得者層にはマイナスの影響をあたえます。

金持ちは福祉の必要性はなく、自分の金をつかえばいいだけの話なので、他人の福祉のために金を出したくないというのが本音のところでしょう。そのため、小さな政府を目指せば目指すほど格差は広がっていきます。小さな政府というのは、ようは国民に「自分でなんとかしろ」ということですしね。金持ちは自分でなんとかできますし、税金も安くなるのでハッピーですが、そうでない人にはきびしい国になるとは思います。

というか、アメリカは現時点でもすでに格差問題がひどいことになっていますので、小さな政府をめざすことで格差がさらに拡大することになります。金持ちにとってはいいことですが、そうじゃない人は大変になりますね。アメリカは救急車に乗るだけで5百ドルとか取られてしまいますしね。保険に入っていなかったら地獄です。

アメリカのリセッション

話を戻しまして、アメリカの自動車労働組合のUAWですが、そもそも彼らはトランプ大統領を全面的に支持しているわけではありません。そもそも民主党を支持していましたし、昨年の8月ごろに、UAWがトランプ大統領とイーロンマスクを告発しています。というのも、ストライキ中の労働者に対して、トランプ大統領がイーロンマスクに「従業員がストライキを起こしたら「全員クビだ」と言えばいい」などの発言をしており、それに対する告発ですね。

トランプ大統領がブルーカラーの味方でないことはこの発言から明確ですし、そもそも「FIRE、FIRE」言いまくってることで有名な人物をなぜ労働者層が支持しているのか、冷静に考えると意味不明なわけです。

ちなみに前日発表された、みんな大好きアメリカの雇用統計ですが、3月の非農業部門の雇用者数は予想の14万人増を大きく上回っての、22万8000人増となりました。

ただ労働市場に新たに参入したが職を見つけられない人の数は、8年ぶりの高水準になっています。また複数の仕事を掛け持ちする人が雇用者全体に占める割合は、リーマンショックのあった2009年以来の高い水準になっており、仕事の掛け持ちをする人が増え、新規参入が難しい状況になっていると見えます。

ただこれは関税政策の発動する前の3月の話なので、来月以降にどうなるかはわかりません。これはけっこう注目したいところですね。

前回、JPモルガン・チェースがアメリカのGDP成長をプラス1.3%からマイナス0.3%に下方修正した話をしましたが、アメリカのリセッションによって失業率が5.3%まで上がるとの予測もしています。

またシティグループやUBSグループのエコノミストも相次いでGDP予測を下方修正と失業率の上方修正をしていますね。

それとS&P500は現在5,074.08ですが、さらに落ち込んでの年末に4450になるとの予測も出ています。

ちなみに今年の年初、ブルームバーグが19人のストラテジストにインタビューしたときには、S&P500が6000を割り込むという予想はゼロでした。誰も現在の惨状を予測できなかったのですね。たぶん「いくらトランプでも本当に実行しないだろう。ディールのためのブラフだろう」と高をくくっていたのだとは思います。

これにともなって、需要の悪化で原油価格も現在の1バレル=約63ドルから50ドルまで落ちるとの予測が出ており、現状はリセッション不可避みたいな様相になっていますね。

米国10年債利回りですが、現在は4%まで利回りが落ちています。ただこのあと、トランプ大統領が減税を打ち出した場合、米国債利回りが跳ね上がる可能性もあり、株安に加えて債券安という最悪の状況が出来上がる可能性もあります。

FRBのパウエル議長は、高関税によるインフレの長期化を懸念していますので、金利を下げるのも難しい局面になってきているとは思います。

ちなみにトランプ大統領は支持者に対して「耐え抜け。簡単ではないが、最終的な結果は歴史的なものになる」と忍耐を迫っています。時間稼ぎの発言ですが、これがどこまで続けられるかですね。

まとめ

そんなわけでまとめると、

・ステランティス(クライスラー)は5つの工場で900人を一時解雇。メキシコとカナダの組み立て工場を1つずつ操業停止すると発表。

・関税の影響でジャガーは米国輸出停止、ニンテンドースイッチ2の予約時期延期。

・対立構造をつくって批判を外に向けるのは政治家の常とう手段。

・小さな政府を目指すことは、福祉へのお金を減らすことにもなり、金持ちにとってはよい方向。低所得者層には厳しい未来が待っている可能性。(金持ちにとっては自分のお金を誰か知らない人の福祉に使いたくありませんしね。)

・アメリカはすでに格差問題がひどいことになっている。福祉削減でさらに格差拡大のおそれも。

・「FIRE、FIRE」言いまくるトランプ大統領を低所得者が支持する違和感。

・昨年の8月に、トランプ氏とイーロンマスクは、ストライキに対する首切り発言で米自動車労組から告発されている。(そもそも彼らは労働者の味方ではないですね)。

・JPモルガンやシティバンクのストラテジスはGDP成長を下方修正、失業率を上方修正。

・需要低下により石油価格下落予想も。

・今後のトランプ政権での減税によって、債券価格下落の可能性も。

・トランプ大統領は支持者に「耐え抜け」と伝えて時間稼ぎ。

となります。

壮大な社会実験として外から見ている分には面白いのですが、現地で暮らす質問者様にはたまったものではない状況かもしれません。

なんにしろ、支持者たちの身に不利益が降りかかればさすがにいつまでもトランプ支持をしていられないとは思いますし、そもそもの米自動車労働組合もトランプ大統領を支持しているわけでもないので、今後どうなるかを見ていくしかないとは思いますね。