S&P500を売ってオルカンに乗り換えた方が良い?【新NISA】
新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。
今回は、S&P500を売却してオルカンに乗り換えたほうがいいのかどうかについてです。
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S&P500からオルカンへの乗り換え
こんなご質問をいただきました。
「私は以前まではS&P500派だったのですが、今年に入ってからのトラのやりたい放題で、大統領次第ではアメリカも没落する可能性があると思い知りました。
それと最近、山崎元の本を読んで、S&P500よりオルカンの方が良いように思えてきました。
以前、オルカンよりS&P500派だったのは、S&P500を推奨するインフルエンサーの影響を受けていたことと、実際の過去のデータからすると、S&P500の方がオルカンよりボラが少ない一方、リターンが大きいため、シャープレシオとして見ればS&P500のほうが低リスク高リターンの構造になっていました。
企業の強さや効率性は、やはりアメリカが強いとは思うのですが、今回のことで政治リスクが顕著化してしまったことで、アメリカ一国に投資するのも危険だと考えています。
S&P500が優勢だった理由は、マイクロソフトやApple、Amazon、マクドナルドなど、アメリカ企業は世界企業なので、アメリカへの投資=世界への投資となっていました。ケロッグなどもアメリカですし、iphoneやipadなど身の回りのものがアメリカ製品で溢れているのですね。(アメ車は省くw)
これまでアメリカは国際分業によってコストを落とし、合理的な価格で消費者に届けてきました。iphoneがその代表ですね。
しかしアメリカが高関税の鎖国政策を始めようとすると、アメリカ製品の高騰で価格に合理性が無くなり、むしろトラが防ぎたかった中国の台頭を許すことになってしまいかねません。何だかんだで、やはり消費者は安い物を買うのです。こうなると本末転倒と言えます。
S&P500は回復基調とは言え、アメリカの信用が下がってしまったことから、今後の企業活動が危ぶまれます。来年の新NISAではオルカンを買うとしても、これまで買ってきた分のS&P500は売却して、オルカンに乗り換えた方がいいでしょうか?また乗り換える場合の判断方法は何なのでしょうか?宜しくお願い致します。」
とのことです。
異常なまでの高関税政策など、トランプ大統領がそこまでするとは思っていなかった人が多かったので、今年は本当に波乱の年になりました。
ドル円に関して言えば、円高基調になってきたので、日銀としては利上げを避ける言い訳ができたことから一安心みたいなところもあったりします。一方で、円安だと上がる、円高だと下がるみたいな、もはや企業業績関係なしでコモディティー化してしまった日経平均ですが、リバウンドで3万8千円を超えたあたりからまただらだらと落ち始めていますね。
S&P500についてですが、 米中の関税引き下げによって現在のところ戻り基調になっていますが、問題はトランプ政権による影響が、まだ経済指標や企業決算などに明確に現れていない状況での、期待回復になっている部分ですね。
今は期待とか感情とかで回復している感じなので、今後の企業決算でリアルな数字が出てきたときにどうなるかが問題になってくるとは思います。
ブルームバーグによると、ヘッジファンドの動きとしては1-3月の第1四半期では、Appleやマイクロソフトなどのマグニフィセント7の株式保有を減らしている一方で、米国市場に上場している中国企業の株式保有量を増やしている動きになっています。
ディープシークなどの登場により、テック企業のアメリカ一強の時代が終わり、今後はコストを落とせる中国企業の台頭が顕著化するんじゃないかという読みがあるようですね。高関税だとアメリカ企業は部品調達でのコストを落としようがなくなりますし、世界へ売るのも難しくなりますしね。
そうなってくると、「べつにiphoneじゃなくてもいいじゃん。べつにipadじゃなくてもいいじゃん」みたいな流れになってくるので、ブランド力も世界競争力もどんどん落ちていきます。こうなると、これまでの「アメリカ企業=世界企業」がどんどん崩れていく可能性も出てきます。
これまでリーマンショックとかあっても政治の問題ではなかったのでどうにかなったのですが、政治の問題になると、企業努力だけではどうにもならなくなりますね。
現在アメリカ企業が高関税をマージン圧縮して吸収し、消費者への価格転嫁を抑えるという努力を始めていますが、これがあまり長期に続くと企業利益が抑えられることになるので、新規投資を控えたりで、どんどん成長からは遠ざかっていってしまいます。
ただトランプ大統領も、最初の威勢のよさはだんだんトーンダウンしてきているので、かき回すだけかき回して、けっきょく元に戻るみたいな状況にもなりそうです。
それでS&P500を売ってオルカンを買うかについてですが、今後オルカンしか買わないというのであればそれも一つの方法とは思いますが、どの口座で買っているかで変わってくるとは思います。
新NISA口座で買っているS&P500を売却するという話でしたら、4年後の2029年まで枠が空くわけでもないですし、金額的にも大きいわけではないとは思いますので、わざわざ売る必要もない気はします。
2028年の年末にS&P500を売って、その資金をすぐに2029年用のオルカンに投資するならまだ資金の連続性があるのでOKとは思いますが、単に今売っただけだと、現金で2029年までキープすることになるので、インフレの観点からするとどうなんだろうという気もします。売るにしても、つなぎ投資のできる2028年の年末まで待ったほうがいいですね。
特定口座にあるS&P500を売るという話であれば、含み益なら売ると税金を取られますし、今後上がるかもしれませんので、そのまま持っていればいいとは思います。含み損になれば税金払わなくていいので、売ってすぐにオルカンに乗り換えれば、その年に損失計上できますし、いわゆる損出ししているだけなので、そのほうが合理的とは思います。
まとめ
そんなわけでまとめると、
・今年に入ってからアメリカのカントリーリスクが顕著化。(大統領次第で国や政治体制が変わってしまうという不安定感ですね)
・現在のS&P500は期待による回復。トランプ政策の影響が、実際の企業決算に出てきてからが本番。
・1~3月のヘッジファンドはM7売り、中国企業買いの動き。
・高関税をマージン圧縮による企業努力で何とかカバーしている現状。長期で続くと企業利益や成長が圧迫される危険性。
・高関税によってアメリカ商品のコストが上がり、世界競争力・ブランド力の低下につながる可能性。一方で、低コストで提供できる中国テック企業の台頭。
・ただトランプ大統領はどんどんトーンダウンしてきているので、今後どうなるかはわからない。
・新NISAで買ったS&P500なら、売却しても枠が空くのは最短2029年以降なので、売るなら2028年の年末に売ってオルカンに乗り換えた方が合理的。現金のまま2029年まで持ち続けるのは、インフレ負けする可能性もある。
・特定口座であれば、含み益なら乗り換えで税金分損するのでそのままキープ。含み損なら売却後すぐにオルカンに乗り換えることで、損失計上での乗り換え(損出し)をすることができる。
となります。
そんなわけで、今後もS&P500とオルカンのどっちが優勢になるかはわかりませんが、アメリカのカントリーリスクが怖いのであればオルカンの方が安心できるとは思います。
長期投資は、突き詰めれば安心感なので、長期ホールドできるものを持っておくのがいいでしょう。FANG+でもそれを買って安心感があるなら長期ホールドできますしね。このあたりは個人の問題であって、何が正解かという問題ではないとは思います。
そんなわけで、質問者様がオルカンの方が安心できて、長期投資できるのであれば、今後はオルカンで運用していけばいいとは思います。今あるS&P500については、先ほどの述べた方法で乗り換えればよいでしょう。