【FIRE/老後】国家がFIREしてる?シンガポールの税金の安さと財源について

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新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。

今回は、FIREしてる国家といわれるシンガポールの税制と財源についてです。

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シンガポールの税金の安さについて

税金が安いことから金持ちの海外移住先として人気のあるシンガポールですが、財源どうなっているのかというご質問があったので、それについてです。日本はことあるごとに財源財源言いますが、だったらなんで税金安いシンガポールが黒字運営できているのかということですね。

まず大前提として、シンガポールは民主主義国家のように思われていますが、独裁国家です。1959年の自治政府成立以来、一度も政権交代したことがありません。

ただ世間一般の独裁国家のイメージとは異なり、優秀な人たちが結果を出す形で運営しているので、結果を出す独裁国家とも言われています。明るい北朝鮮みたいな言われ方もされていますね。

けれどやはり独裁国家は独裁国家で、メディアや集会の自由は制限されていて、政府批判には厳しい姿勢で臨んでいます。一応選挙はありますが、与党が有利なように設計されており、国会の9割以上が与党議員という状態が続いています。もう独裁以外の何物でもありません。

ただ独裁国家は、上が私利私欲の無能だと国民が困窮することになりますが、そうはならなかったというのがシンガポールの奇跡ともいう点です。

独裁国家なのに生活水準が高く、治安が非常に良く、汚職もほとんどないという、ある意味異常な状態になっています。

独裁国家のくせに「能力主義」「腐敗ゼロ」「厳格な統治」を掲げ、自由より秩序を重視する国民性を形づくっていったという、やっぱり独裁国家も有能な人が運営したらこんだけ違うんだなという異常事態になっているわけです。

例えば今日本で問題になっている外国人問題ですが、シンガポールは金持ちの移住先として人気がある以上、地元民とのトラブルが多いんじゃないかと思われがちですが、そんなことも全然なかったりします。

なぜかと言えば、シンガポールだと外国人は土地付き一戸建ての家の取得ができませんし、公営住宅の購入も賃貸も原則不可となっているため、日本であるような、外国人が住宅市場を押し上げて地元民が困るという問題がほぼ発生しないわけです。

外国人はコンドミニアム(マンション)や商業物件(オフィスや店舗など)を買う事はできますが、その場合も印紙税として購入価格の60%を払う必要があります。1億円の物件を買ったら、1.6億円払わないといけないということですね。これで投機目的での購入も減るわけです。

さらに言えば、外国人向けの居住エリアというのがあって、その中でしか不動産取得ができません。外国人は「観光・富裕層エリア」に限定されており、地元民の生活圏とは物理的に分かれています。エリアで完全に区切っているので、日本のように無制限にどこでも買えるみたいな状態ではありません。そのため、現地民とのトラブルが起こりにくいのですね。

なんでこういうことができるかと言えば、シンガポールの土地の90%が国有だからですね。そのため、土地は国から借りるという形になっています。

さらに言えば、外国人労働者問題についてですが、シンガポールにも外国人労働者はいますが、一時滞在ビザのみで、永住権取得は極めて難しい状況です。国家として「移民の選別」が徹底されていて、取得は高所得・高スキル人材に限定されています。

こういうふうに厳格な取り締まりをおこなっているため、外国人排斥の動きは起こりにくい環境にあります。このあたりがゆるいと逆に地元民の外国人に対するヘイトも増えてしまうので、外国人を無制限に擁護することが逆に外国人ヘイトにつながってしまうという真逆の結果を招いている気はします。

ちなみにシンガポールとしての外国人の立場というのは、 「外国人は「経済のための労働力」であって「国民ではない」」と鮮明に打ち出しています。このあたりは完全に区別しているのですね。

そんな独裁国家のシンガポールですが、独裁国家にもかかわらず海外移住先として人気がある理由としては、やはり税金の安さです。

どんだけ安いかと言えば、まず相続税や贈与税がありません。金融所得課税もありません。株を買って利益が出ても、税金として20.315%を払わなくていいということですね。そりゃ金持ちはシンガポールに財産を移したくなるわけです。今いる台湾の知り合いも、シンガポールに財産を移した人がいます。

そんなわけで、シンガポールはなにもしなくても新NISA状態なわけです。

シンガポールの税金のおもな収入源と言われている消費税ですが、昔は7%ぐらいでしたが、現在だと9%まで上がっていますね。これがあることで所得税の累進課税が最大で22%までに抑えられています。法人税は一律17%ですが、中小企業とか新規企業は免税・減税の制度があります。

こんな税金安くて財源は大丈夫なのかという話ですが、シンガポールには世界最大級の政府系ファンドがあって、国家予算の約20〜25% がこの運用益によってまかなわれています。

さらに言えば、超わかりやすい税制によって公務員制度が効率的になっており、行政コストが非常に低くなっています。金融所得課税ないのですから、管理する必要性がないのですね。

あと国債についてですが、独裁国家のくせに、日本やアメリカのように財源赤字を埋めるための国債発行は憲法で禁止されています。政府支出は「税収+運用益」でまかなうことが原則となっているのですね。

「シンガポールは国債あるじゃん」という人もいますが、目的が違って、政府の支出にあてるものではなく、投資資金を集めるための国債なのですね。

ようするに「国債を発行して国民の貯蓄を国家資産として運用している」状態です。そのため恒常的に黒字状態です。

社会保障どうなってるのという話ですが、社会保障には中央積立基金というのがあります。

これは雇用者(会社)と被雇用者(労働者)の双方が、毎月の給与から一定割合を「個人の積立口座」に強制的に拠出するという、強制貯金制度があるのですね。

つまり「税金で年金を賄う」のではなく、自分で積み立てないといけないという強制自己責任制度になっています。基本的に給料の3分の1ほどが強制的に積立口座にぶち込まれるわけです。貯金が苦手な人も無理やり貯金させられるということですね。

ちなみにこの強制積立口座ですが、運用利回り4~5%ほどを政府が保証しています。国が強制的に4%ルールをやってくれるのですね。

それで住宅を買いたいとか、医療を受けたいとかなったときに、この口座からお金を引き出していいことになっています。ちなみに医療に関しては「MediFund」という政府基金があり、医療費の自己負担を免除・補助するというのもあります。

年金もこの口座から出てくるので、政府が税金でお金配りすることがなく、財政への負担がほぼゼロという状況です。

しかしこの強制自己責任制度だと、働けない人とか低所得者とかどうするんだという話ですが、月収が一定額以下の労働者には、政府が現金+強制積立口座への補助金を支給するという形になっています。

完全に働けない人に対しては現金給付・住宅支援・食料補助などが提供されますが、ただし審査はかなり厳しく、家族や親戚がいたらそいつらに頼れという話になるので、国全体で生活保護に頼っている人はごく少数です。

ある意味、働かないといけないという厳しい社会になっています。このあたりは社会思想の違いで、日本は「平等」が社会思想になっていますが、シンガポールは「自立」が社会思想なのですね。シンガポールという国自体が、他国の援助なしにやっていっているという自立した国家ですしね。

そんな感じで働いてそこから強制積立で、そこから自分で自分の社会保障費ぐらい出せやという話なので、日本のように社会保障費で財政が押しつぶされることがないわけです。ある意味厳しい社会とは思います。

金持ちから中間所得層には税金安くて良い国ですが、低所得層や働かずにだらだらして暮らしたい人、生活保護をとったり税金もらって生きていきたい人は、平等重視の日本のほうが暮らしやすいんじゃないかとは思います。稼げる人はシンガポールのほうがいいですね。

まとめ

そんなわけでまとめると、

・シンガポールは独裁国家だけど、なぜか「能力主義」「腐敗ゼロ」「厳格な統治」を掲げ、自由より秩序を重視する国民性。

・独裁国家なのに生活水準が高く、治安が非常に良く、汚職もほとんどないという、ある意味異常状態。明るい北朝鮮。

・外国人は居住・不動産所有できるエリアが物理的に決まっているため、不動産価格が上がったり、現地民とのトラブルなどがが起こりにくい構造(現地民との区別化)。

・外国人は「経済のための労働力」であって「国民ではない」という立場。

・世界最大級の政府系ファンドがあり、国家予算の約20〜25% がこの運用益。

・政府支出は「税収+運用益」でまかなうことが原則。

赤字財政を補う国債発行は憲法で禁止。発行されている国債は投資資金を集めるためのもの。

・相続税、贈与税、金融所得課税無し。(常に新NISA状態)。

・消費税9%、累進課税は最大22%、法人税一律17%。

・わかりやすい税制による公務員制度の効率化(支出の低コスト化)。

・会社と労働者の双方が、毎月の給与から一定割合を「個人積立口座」に強制拠出。ここから医療費・住宅費・年金を出す自己責任社会保障なので政府の財源を圧迫しない。年率4~5%(政府保証)の強制4%ルール。

・低賃金・働けない人は政府の補助あり。ただ審査はかなり厳格で生活保護を受けている人は少ない。

・国家思想は、日本の「平等」に対して、シンガポールは「自立」。

・中間層~富裕層には税金が低くて住みやすいが、低所得層には厳しい世界。

となります。

そんなわけで、普通に働いている中間層以上に対しては、金融所得課税もなく、相続税も贈与税もないという天国みたいな状況なのですが、社会保障費が税金からではなく、個人の自分の積立口座から出す形になるので、低所得者や働けない人はけっこうきびしい仕様になっています。

あくまで政府含めての「自立」が国家の重要テーマになっているような国家なので、生活保護とってぬくぬくしたいとか、人間皆平等とか外国人も皆平等とか考えている人には厳しい社会とは思います。

ちなみにシンガポールの一人当たり名目GDPは9万ドルほどで、日本の4万ドルほどと比べると2倍以上はありますね。世界ランキングでも上位10位前後のレベルです。

そんな感じで働く人には税金安くて優しい、働かない人には厳しい社会なので、働いている人にはいい国ですが、そうでない人には厳しい世界とは思います。

そんなわけでメリットデメリットはありますが、お金持ちの方で相続税払いたくないという方は、シンガポールへの移住を考えてもいいんじゃないかとは思います。ただ近年は日本で出国税が設けられたので、金融資産を持っていると強制的にその20.315%払わされるようになりましたけどね。日本はどこまでも取りに来ますね。