インフレはFIREの天敵か?物価高でも資産を守り抜く「ハイブリッド出口戦略 」

infre fire

Q太郎のお金の哲学です。

今回は、FIREはインフレに弱いのかについてです。

Youtubeで観たい方は以下のリンクから。

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インフレはFIREの天敵か?

こんなご質問をいただきました。

「FIREの問題点は、やはりインフレ対策だと思います。資産だけだと、場合によっては太刀打ちできません。この辺りをどうお考えでしょうか?」

とのことです。ありがとうございます。

フルFIREだと、リスク資産だけで生活しなければならないので、インフレに弱いという問題はありますね。リスク資産が上がればいいのですが、そうでなければダメージが大きいです。そのあたりは運もあります。企業業績が落ちると、インフレ下で株価がさらに落ちたり、配当も減ったりというのはありますしね。現金もインフレで価値が落ちますしね。

インフレが進む世界

ここ数年、世界的な地政学リスクや物流の混乱、通貨の価値低下によって、私たちの身の回りのあらゆるものの価格が跳ね上がっています。かつて100円で買えたものが150円になり、200円になっていく。この現実を目の当たりにしたとき、人間の脳はある強烈な恐怖に支配されます。

「もし、資産5000万円でFIREしたとして、その後に物価が2倍になったらどうなるのか?」 「せっかく貯めた5000万円の実質的な価値が、2500万円に半減してしまうのではないか?」

そんな不安が、今、多くのリタイア志望者や、すでにリタイアした人の心を深く蝕んでいます。せっかく「もっと数字を増やさなければならない」という成長の呪縛から命からがら降りようとしていたのに、今度はインフレという新しい恐怖に怯え、「やっぱり5000万円じゃ足りない、1億円必要だ、いや2億円なければ安心できない」。「結局、元の場所へ戻って、一生稼ぎ続けなければならないんだ」と、元の絶望的なレースへと引き戻されそうになります。

今回は、インフレという嵐から、あなたのFIRE後、退職後の人生を守る方法についての、「ハイブリッド出口戦略」の道筋を、Q太郎的に深堀りしていきます。

数字の罠と、出口戦略におけるギャンブルの正体

多くの人は、インフレというニュースを耳にした瞬間、人によっては極端な行動に走り始めます。 「物価が上がるなら、おカネの増えるスピードをそれ以上に速くすればいい。もっと高い利回りを狙えるリスク資産に投資しよう」。

そこで何をするかと言えば、レバレッジをかけた投資、ボラティリティの激しい個別株、あるいはインフレに強いとされるゴールドや暗号資産への過度な傾倒。しかし、ここで猛烈な矛盾が発生していることに気付かなければなりません。

私たちがFIREを目指した本当の目的は何だったでしょうか。それは、他人に時間を切り売りする生活から解放され、穏やかで自由な人生を取り戻すためだったはずです。にもかかわらず、出口戦略、つまり「資産を取り崩して生きていくフェーズ」に入ってから、さらに過度なリスクに頼るということは、せっかく手に入れた自由な人生を、再び「市場」という名の巨大なギャンブル場に投げ出すことと同義です。

夜な夜なスマホを開き、インフレ率の発表やFRBの金利政策、世界株価のパニックに一喜一憂し、胃を痛めながら資産の増減を監視する。これは、会社の上司の顔色を伺う生活から、マーケットという実体のない神様の顔色を伺う生活へと、隷属の対象がすり替わっただけです。自由でも何でもありません。結局、投資という「仕事」をしているだけなのですね。しかも、やたらとストレスが高いわけです。

一方で、リスクを恐れるあまり、「やっぱり現金が一番安全だ」と5000万円をすべて銀行口座に眠らせたままリタイア生活に突入するのも、同じように致命的です。 以前の動画でもお話しした通り、おカネの本質は「流動性」、つまり物やサービスと交換できる「期限なしの商品券」です。

しかし、インフレの世界において、現金をそのまま固定しておくということは、その商品券の「交換できる枚数」が、目に見えないシロアリによって毎日少しずつ食いつぶされている状態を意味します。昨日までパンが10個買えた商品券で、今日は8個しか買えない。これは、現金を奪われていないように見えて、実質的にはおカネが目減りしている「静かなる暴落」なのです。

「リスク資産のギャンブルに祈るか」、それとも「現金のままシロアリに食い潰されるか」。 この二極化された思考の中にいる限り、私たちはインフレの恐怖から一生逃れることはできません。おカネという「数字」だけを信仰の対象にしているからこそ、その数字の価値が揺らいだ瞬間に、私たちのアイデンティティまでが崩壊してしまうのです。

労働は「最強のインフレ連動資産」であるという盲点

では、私たちはどうすればいいのか。ここで、資本主義の本質をハックするために、劇的に視点を変えてみましょう。

株、債券、ゴールド、不動産。世の中には様々な投資対象がありますが、実はインフレに対して最も強烈な、そして完璧な耐性を持っている「最強の資産」が、私たちのすぐ目の前に存在します。 それは、他の誰でもない、あなた自身の「働くという選択肢」、すなわち「労働力」です。

多くの投資家は、「労働」を悪、あるいは「一刻も早く決別すべき苦役」として捉えがちです。毎日、満員電車に揺られ、理不尽な人間関係や過酷なノルマに耐え、自分の貴重な時間と精神をすり減らして仕事をしているのですから、そう思うのも無理はありません。「働いたら負け」、「おカネを貯めて1秒でも早くこの地獄から抜け出したい」と願うのは、至極真っ当な生存本能です。 

しかし、純粋なマクロ経済のロジックとして見たとき、労働力ほど優れたインフレヘッジ資産は他にありません。

以前、経済とは「ヒト、モノ、カネ」の三要素でできており、この中でもっとも貴重なものの価値が上がるという話をしました。

そして、インフレの本質とは、「おカネの価値が下がり、モノやサービスの価値が上がること」です。

これまでは、「ヒト」と「モノ」が十分にあったから、「カネ」に価値がありました。

ただこれからの時代は、「ヒト」が減っていき、「モノ」も減っていきますので、相対的にそれらの価値が上がります。

パンの価値が上がり、電車の運賃が上がり、誰かの技術の価値が上がる。ということは、そのサービスや技術を生み出す源泉である「人間の労働の対価」、つまり「賃金」もまた、長期的には必ず物価の上昇に合わせてスライドし、上がっていく性質を持っています。

物価が2倍になれば、社会全体のサービス価格も2倍になり、結果としてその社会で働く人の時給や報酬も、時間差を伴いながら実質的に上がっていきます。

つまり、あなたが「いつでも社会に価値を提供して、数万円のおカネに換えることができる能力」を手元に残している限り、あなたの労働力というアセットは、物価の上昇に合わせて自動的に価値が調整される、「インフレ連動債」として機能するのです。

画面の向こう側の5000万円という数字は、世界の経済状況や通貨安によって、その実質的な価値が激しく揺れ動きます。

しかし、「あなたが誰かの困りごとを解決し、その対価としておカネを受け取る能力」は、インフレによって価値が目減りすることはありません。むしろ、物価高の時代においてこそ、その能力の希少性と価値は高まっていきます。

お金という「他人が作った道具の数字」だけに全幅の信頼を寄せるから不安になる。そうではなく、自分の中に眠る「価値を生み出す力」という、誰にも奪われない、インフレにも負けない本物の資産に気付くことが、この時代の知的な資産防衛の第一歩になります。

二択を排した「ハイブリッドな出口戦略」の具体システム

とは言っても、「働きたくないからFIREした」、「これからの時代、AIによって労働が奪われる。労働が無意味になる」と思われる方もいるでしょう。ただ「働きたくない」というのは、勤め先に問題があることも多いので、職場を変えたら働くのが楽しくなったというケースもあります。あまり「労働」と、ひとくくりにしない方がいいかなとは思います。

Q太郎がここで提案したいのは、「すべての仕事を完全に辞めて、資産からの取り崩しだけで一生食い繋ぐか」、それとも「不安だからといって、心身をすり減らしながら元の組織で必死に働き続けるか」という、多くの人がおちいりがちな極端な二者択一を綺麗さっぱり捨てることです。

目指すべきは、その中間地点にある中庸な生き方、すなわち「ハイブリッドな出口戦略」です。

この戦略のシステムは極めてシンプルかつ強固です。 基本の生活のベースは、これまで通り「5000万円の資産バケツ」から淡々とルールに従って取り崩して賄います。S&P500やオルカンといったインデックス資産は、長期的には世界経済の成長とインフレを織り込んで右肩上がりに成長していくため、平時においてはこれだけで十分に生活を維持できます。

バケツ戦略では、短期バケツに生活防衛資金、中期バケツに直近数年で使うまとまったお金、長期バケツに残りのお金で買ったリスク資産を入れておきます。これだけでも、株式の暴落があったとしても、数年は生活を守れます。

しかし、人生には必ず「想定外の嵐」、「ブラックスワン」がやってきます。歴史的な大暴落によって資産が一時的に3割目減りするかもしれないし、突発的な地政学リスクで物価が急激に跳ね上がるかもしれない。そして、インフレによって、短期バケツ・中期バケツの現金にもダメージがあるかもしれない。

この状況で、長期バケツを取り崩さないために、中期バケツを取り崩しながら生活するのは、精神的にもきついでしょう。

ですが、ハイブリッド戦略をとる人は違います。嵐が来たら、ただ指をくわえて怯えるのではなく、クローゼットから「自分の働く力」という名の頑丈な傘を取り出し、そっと差すのです。短期バケツ、中期バケツをさらに「労働」で守るという、「バケツ戦略」+「労働」のハイブリッドですね。

例えば、月に数万円だけ、自分の得意なことや、ストレスのない範囲のパートタイム、あるいは個人ビジネスなど、社会の役に立つことで稼いでみる。

それだけだったら生活できない場合が多いですが、幸い、バケツ戦略で持っている資産と組み合わせれば、安全に乗り越えられる可能性は高まります。

4%ルールで生活費を算出している場合、月5万円を稼ぐということは、計算上、運用資産を「1500万円」上乗せしたのと全く同じ効果を生み出します。月10万円なら3000万円の上乗せですね。

インフレで生活費が少し逼迫したなら、いきなり中期バケツに手をつけるのではなく、その分だけ、ほんの少し労働のボリュームを増やして調整する。嵐が過ぎ去り、市場の株価が回復して物価が安定してきたら、また傘をたたんで、資産からの取り崩しメインのゆったりとした生活に戻る。

この「いつでも、自分の意志で、少しだけ現金を稼ぎ出すことができる」という調整弁を心と生活の中に持っておくだけで、あなたの資産の寿命は飛躍的に延びます。そして何より、「おカネがなくなったら終わりだ」という恐怖から完全に解放され、精神的な安定感は比較にならないほど高まるでしょう

お金の数字に命を預けない「個体としての成熟」

これは、私たちがかつて必死の思いで脱出した、「組織に魂を売り、他人の都合に振り回される奴隷的な労働」への回帰では決してありません。

「人生のすべてを支配する呪縛」としての労働からは降りつつ、自分を助け、人生の土壌を豊かにするための「武器」としての労働力は、しっかりと手元に残しておく。これこそが、本当の意味での賢い投資家であり、「個体としての成熟」です。

「働いた方が良い」という話では無くて、「働く」という選択肢を排除しないということですね。

現代の多くの投資家は、おカネを神様のように崇めるあまり、自分自身の価値を過小評価しています。「5000万円という数字がなければ自分は生きていけない」「インフレが来たら自分は破滅する」と、道具であるはずの数字に自分の生存権まで握らせてしまっている。これでは、どれだけ資産が増えようとも、心の中は常に飢餓感と恐怖で満たされたままです。

おカネという数字に依存するのやめ、世界がどれほどインフレの嵐に見舞われようとも、あなたには、自分の頭で考え、自分の手足を動かし、誰かの役に立っておカネを発生させる力が、大なり小なり備わっていることを思い出すのは大切です。

おカネは主人ではなく、あなたの人生を豊かに耕すためのただの「道具」に過ぎません。「スコップ」と同じです。そして、そのスコップを握って土を動かしているのは、他の誰でもない、あなた自身の両腕なのです。

皆さんは、インフレという未知の嵐が迫ってきたとき、恐怖に震えながら画面の数字を増やすゲームに戻りますか? それとも、自分の「個体としての力」を使い、ハイブリッドな戦略で嵐をやり過ごしますか?

ぜひ、コメント欄で皆さんの「インフレ時代の生存哲学」を教えてください。

数字を味方に。 そして、誰の欲望でもない自分の人生を、自分の手で耕していきましょう。

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