「プラチナNISA」で毎月分配型投信は危険?
新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。
今回は、新しく導入される予定の「プラチナNISA」についてです。
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高齢者限定「プラチナNISA」
こんなご質問をいただきました。
「キッシーによる「プラチナNISA」と「こども支援NISA」が始まるようですが、これについてどう思われますか?
「プラチナNISA」では毎月分配型の購入が可能になりますが、多くの高齢者が損失を抱える未来しか見えません。
そもそも毎月分配型は危険ということ新NISAでは排除されたのに、高齢者の資産を狙ってこのようなことをするのはどうなのかと思います。ご意見お聞かせください」
とのことです。
まだ予定の段階ですが、岸田元首相が、高齢者に限定して対象となる金融商品を拡大できる制度として「プラチナNISA」と、18歳未満でもNISAが使用できるという実質年齢制限撤廃した「こども支援NISA」を、石破首相に提言したとのことです。
未成年でもつかえる「こども支援NISA」のほうは積立投資限定のようですね。現在の新NISAの積立投資枠とおなじ感じになるとは思います。実際子供が投資するというか、親が子供のために投資する枠であって、2023年12月31日に終了したジュニアNISAの代わりとしての導入とは思います。
それで「プラチナNISA」のほうですが、そもそも高齢者は新NISAが使えますので、そこへさらに枠拡張という話になりますね。
高齢者の毎月分配型へのニーズがかなり高いというのもあって、現在の新NISAではそれに対応できないというのがあります。
「プラチナNISA」の条件を見てみると、
・65歳以上
・毎月分配型投資信託購入可能
・毎月分配型投資信託へのスイッチング可能
と、なんか毎月分配型投資信託を買わせたい圧がすごいことになっていますね。
今も昔も高齢者は毎月分配型が好きなようで、Q太郎が投資を始めたころは毎月分配型投資信託がすごい流行っていましたが、いまはかなり下火になっていますね。
「毎月お小遣いがもらえる」みたいな宣伝文句で、高齢者から手数料をぼったくっていたというのが実情で、しかも償還期限付きのものが多かったことから、最初から手数料だけとって逃げる気満々みたいな商品がたくさんありました。
購入するだけで手数料5%、毎年の経費率が3~5%、解約するときも5%、償還期限は数年後とか、とにかく凶悪な商品が多かったイメージです。やってることはほぼポンジスキームです。
さすがにそれはあかんやろということでいろいろ注意が入ったり、投資家もだんだん賢くなってきたので手数料を気にしてきたりで、だんだん衰退していったというのがあります。
最近はインデックス投資の無期限のものが主流なので、最近投資を始めた方は「投資信託に償還期限なんてあるの?」みたいに思う方も多いとは思いますが、昔はけっこう償還期限設けていた投資信託が多かったです。「好調だったら償還期限延長します」みたいに書いてる場合が多いですね。
なぜ毎月分配型がだめなのか?
それでなぜ毎月分配型投資信託がだめなのかについてですが、これは原資を削って配っているからです。しかも高い手数料をとって配っているという、非常に非合理的なことをやっているのですね。
よくある勘違いとして「配当金」と「分配金」をごっちゃにして考えるというのがあります。
配当金というのは、いわゆる高配当株とかを買うと定期的にもらえるインカムですね。これがどこからきているかといえば、企業の収益からきています。配当金を配っているのは企業なのですね。ようするに利益を投資家に還元していることになります。
利益のどれだけを配っているかを配当性向といいますが、配当金が多いということは、その企業は投資にまわすぶんを減らして投資家に還元しているということになります。そのため高配当の企業の多くは、あまり成長の余地のなくて既得権益なオールド企業ということになります。
逆にテック系とか高成長の企業は、利益をどんどん投資にまわしてさらに成長していきます。そうなると配当は少なくなりますが、代わりに株価がどんどん伸びていくことで、投資家はキャピタルゲインをとることができるわけです。
なんにしろ、配当金というのはそのお金が生み出される根拠があるわけですね。突然どこからか湧き出てきているわけではないのです。存在する利益を配っているのです。
それで毎月分配型投資信託の分配金のほうですが、こちらはちょっと話が変わってきます。
これは投資信託の運営会社が純資産を取り崩して、投資家に還元しています。損していようがどうだろうが、配ることはできるわけです。そして配った分だけ基準価額が下がります。100円配ったら、きっちり100円下がるのですね。
損している状態で配ることを「特別分配金」といって、これに対しては税金がかかりません。損失になっているのであたりまえですね。
配当のように確保された利益から配っているわけではなく、損している状態であればみんなから集めたお金を配っているだけというポンジスキーム的な状態になります。しかも償還期限がある場合、合法的に逃げることもできます。
または運用が続けられる無くなるまで基準価額が落ちてしまえば、早期償還するという手もあります。
償還時に「損ちゃってるけど、残ったお金をみんなでわけてね」というだけの話ですしね。
手数料だけは先にきっちり持って行っているので、運用会社にリスクはないというか十分もうけているわけです。
そんなわけで、もうかろうと損していようと、分配金は純資産を削って配ってるだけです。過去に高い分配金を宣伝して、けっきょくずっと特別分配金状態だったみたいな投資信託はいくらでもあるわけで、そういうのは集めたものを配っているだけのポンジスキームとやっていることはあまり変わらないわけです。
それでそういう毎月分配型が欲しいのであれば、いまQ太郎がやっているように手数料の安いインデックス投資信託を毎月取り崩せばいいだけです。例えばS&P500やオルカンを毎月0.3%取り崩すよう設定すればいいだけですね。高配当がよければ毎月1%とか自分で調整すればいいだけの話です。
楽天証券やSBI証券には自動売却機能があるのに、わざわざ他人に運用をまかせて高い手数料を取られる意味がわかりません。しかも毎月分配型はだいたいアクティブ投資なので、手数料がバカ高いわけです。
無料で使える自動売却機能がある以上、なんだかよくわからない手数料の高いアクティブ投信を買って、不明瞭な形で純資産を削られるぐらいなら、メジャーなインデックスを自分で取り崩したほうが手数料が安くてわかりやすいですし、S&P500とかオルカンなら早期償還の危険性もほぼありません。
そんなわけでNISAの枠を拡張すること自体は悪くないのですが、毎月分配型を買う場合はちゃんとデメリットを知っておいたほうがいいでしょう。というか、証券会社がそれを説明する義務があるとは思いますね。
まとめ
そんなわけでまとめると、
・65歳以上を対象とした「プラチナNISA」と、未成年を対象とした「こども支援NISA」が始動予定。
・「プラチナNISA」では毎月分配型投資信託の購入が可能。
・毎月分配型の分配金は配当とは違い、純資産からの取り崩しでおこなわれる。
・過去には高分配で客を集め、高い手数料(+償還期限あり)で逃げる気満々なものも。
・そもそも自動売却機能があるので、自分で主要インデックスを取り崩した方が安いし確実。他人のつくった謎のアクティブファンドにバカ高い手数料を払う意味がよくわからない。
となります。
そんなわけでNISA枠の拡大自体はよいこととは思いますが、高齢者に毎月分配型を買わせる場合はしっかりした説明が必要とは思います。
そもそも0.1%単位で取り崩せる自動売却機能があったり、米国ETFを手軽買えるような時代に、もうこの手の毎月分配型は意味がないんじゃないかという気はしてきますね。投資家の金融リテラシーも上がって来てますしね。
実際、野村総合研究所の調査で、投信の購入理由を「定期的に分配金を受け取れるから」が2015年のときは、65歳以上で60%近くあったのですが、今は40%ほどまで下がっているので、日本人の金融リテラシーは上がっているとは思います。
とくに60歳から64歳に至っては、「分配金を受け取れるから」の理由が2015年の60%から現在は20%まで激減していることから、ちゃんと勉強しているなとは思います。