ロシア、Swiftから排除!米国株への影響と景気循環をわかりやすく解説
QYLD全力太郎ことQ太郎です。
ロシアが国際銀行間の送金システムであるSwiftから排除されました。
それによって、経済にどんな影響が出るかをわかりやすく解説していきます。本記事をYouTube動画で観たい方はこちらのリンクから。
Swiftとは?
まずSwiftの仕組みについてざっくりと説明していきます。
Swiftは世界中の銀行の間で、資金の取引を仲介する、ベルギーにある協同組合です。
たとえば日本の銀行からアメリカの銀行に100円を送金したいばあい、Swiftを通して「100円送るよ」というメッセージをアメリカに送ることになります。
ただ、Swiftが仲介するのはあくまでメッセージだけです。じっさいにお金を送っているわけではありません。
じっさいの資金のやり取りは、銀行どうしが口座を持っている中継銀行で決済がおこなわれます。この銀行をCorrespondent Bank、一般的にコルレス銀行と呼ばれるものです。
有名なコルレス銀行としては、シティバンクやJPモルガン・チェース、日本では三菱UFJ銀行ですね。
銀行同士がおなじコルレス銀行に口座を持っているとはかぎらないので、場合によってはいくつかのコルレス銀行を中継する必要があります。
途中でお金がどこかへ行ってしまったり、目的にたどり着かなかったりする場合もあるので、安全に到着できるようにするためにSwiftが存在しています。
こういう保証がないと、国際送金は怖いのですね。あとで「送った、送ってない」みたいなもめごとになったりします。
ちょっと違うかもしれませんが、Swift無しでの取引をわかりやすくいうと、メルカリやヤフオクを使わずに個人間で取引をするような状況だと思ってください。
Swiftを使えば送金の証拠を残すことができます。
ロシアもSwiftに変わるSPFSという独自の決済網を構築していますが、外国の銀行がほとんど加わっていないので、けっきょくはSwiftを頼らなければなりません。
Swiftからロシアが排除されるということは、ロシアが送金したとしても、それがちゃんと目的地にたどり着く保証がないわけです。
そうすると、「ロシアと取引するのは怖い」という話になりますので、ロシアと取引する相手が減ってしまい、ロシア経済は打撃を受けることになります。
じっさいに中国の銀行がロシアに対する融資制限をおこなっています。
「Swiftから排除されたロシアに金貸したらヤバいだろ」という冷静な判断がなされています。こういうところは、中国はシビアですね。資本主義国家以上に資本主義です。たとえ仲のいいロシアでも、金の話になるとべつです。
ちなみにロシアの経済規模は、中国の広東省レベルと言われています。経済規模自体がそんなに大きくないですし、中国もそこまで重視する必要がないのですね。
ちなみに現在、世界のGDP10位が韓国で、その次がロシアですね。12位がブラジルですが、それよりちょっとだけ多いという規模です。
(百万US$)
10 韓国 1,638,260
11 ロシア 1,478,570
12 ブラジル 1,444,720
一人当たりGDPに関しては世界66位で、マレーシアの次です。
(百万US$)
64 中国 10,511
65 マレーシア 10,231
66 ロシア 10,115
67 ブルガリア 10,006
ロシアは大国感がありますが、実際はこの程度の経済レベルの国です。
Swiftから排除されたところで、世界経済への影響は限定的かと思われます。
日経平均のほうも普通に上がってますね。
かなり楽観主義になっています。
ただすごく下落したものがあります。
我らが高配当銘柄の日本たばこ(JT)です。加熱式たばこをロシアで販売する計画があるので、今回そのあおりを受けてしまっていますね。
しかしそのぶん、配当金利回りは7%を超えておいしい水準にはなりました。
経済への影響
さて、ロシアとの取引が難しくなると、原油価格などが上がる可能性があります。
それで経済後退で、利上げの話は遠のき、またもや「よっしゃ!利上げ遠のいてグロース爆上げ!」みたいな話になってくる可能性があります。
ロシアのウクライナ侵攻後がまさにこれでしたね。その翌日に、「利上げ普通にあるんじゃね?」でグロース失速、バリュー上げでしたが、今度はまたバリュー失速、グロース上げになるかもしれません。
市場は本当にコロコロ変わるので注意が必要です。
ウクライナ侵攻前から侵攻後2日までの米国ETFの動きを追った記事がありますので、こちらも参照してください。
エネルギーとコモディティ
さて、ロシア問題で危惧されるのは、エネルギーとコモディティの高騰ですね。
原油・コモディティ、ともに上昇傾向です。原油は7.5%、小麦先物が9%急騰といったところですね。欧州の天然ガス先物は+36%の高騰です。
ただこれに乗っかってエネルギーセクターETFのVDEやコモディティETFのDBCを買い向かうと、前回の開戦時後のように寄り付きで大きく上げてからの大陰線になる可能性もあるので注意が必要です。詳しくは以前の記事を参照してください。
ルーブルとドル
ルーブルはドルに対して-30%になりました。
他の通貨に対しても、ドル高状態になってきています。
この状況で一番おいしい思いをしているのは、アメリカではないでしょうか。
というのも、経済が悪くなれば「利上げしなくてよくね?」という責任回避ができます。
そして購買力が落ちれば、インフレも勝手に鎮静化していきます。株も暴落せずに軟着陸できます。
何もやっていないのに、だいたいのことが解決できてしまうという、美味しい状況になりそうな気もします。
陰謀論的にはアメリカがロシアをはめたと考える人もいるかもしれませんね。
債券
次に債券を見ていきましょう。
この状況では安全資産として買われていることから、米国10年債利回りが下落して1.89%になりました。
しばらく債券ETFのBNDとかが微妙に上がるかもしれません。ボラティリティがそもそも小さいので、キャピタルでもうけようというものでもありませんけどね。
ただ今後また利上げという話になっていくと、また利回りが2%を超えるかもしれません。BND買うのであれば、毎月積み立てなどの時間分散で買ったほうがいいかなとQ太郎は思います。
金利と景気サイクル
けっきょくはロシア云々より、金利なんですね。これが株価や債券を操っているようなものです。
市場にとっては、利上げはロシアなんかより何倍も怖いです。
相場には4つのサイクルがあります。
「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」の4つです。この仕組みは覚えておいてください。株式市場というのはこれを繰り返しています。
金融相場
まず「金融相場」です。
不景気で企業の業績が悪化すると、政府は金利を下げたり、金融緩和をしたりして、市場にお金をじゃぶじゃぶと入れてきます。これは皆さんもコロナショックで体験しているかと思います。
世の中のお金が増えると、余剰資金は株式市場に注入されていきます。こうして普通の株以外に、ハイパーグロースなどどうでもいいような株まで買われ始めて、「不景気なのに株は高い」という状況ができあがります。これもみなさん、体験していますよね。
ようするに企業の業績が回復するのに先回りして、株価が上がっている状況なのです。
未来の業績を先取りしているのですね。
そのため業績を上げているわけでもないバイオとかSDGs的な企業にまで先回りの資金が注入され、全体の株価がガンガン上がっていきます。
業績相場と逆金融相場
このような、金融緩和や低金利による金融相場が終わりに近づくと、グロースの上げは鈍ってきて、経営が回復した実力のある企業の株が伸びてくる「業績相場」に移行します。
そして業績相場も拡大しすぎると、インフレ懸念から利上げがおこなわれます。これが「逆金融相場」です。
逆金融相場では金融相場において、将来期待だけで買われてきた業績のともなわいグロースやハイパーグロースが、利上げによって売られていきます。そして実力のある企業の株だけが生き残る状況となります。
逆業績相場
そして金融引き締めによって市場は不景気となり、企業業績も悪化して多くの企業の株価が落ちます。これが「逆業績相場」です。
ここからが本当の大きな下げになりますね。
それもある程度進めば、また政府の利下げや金融緩和によって「金融相場」がはじまります。この繰り返しですね。
現在の状況
現在どういう状況かといえば、本来であれば、資金注入の金融相場から、コロナ禍からの企業業績回復である業績相場に移行する時期なのですが、FRBがやらかしています。
FRBが昨年からずっとインフレを「一過性のもの」と言い続けて放置してきましたから、
「業績相場」に移行している間に、1月の消費者物価指数が7.5%にまで上がってしまいました。
それに対して、金利は0~0.25%という前代未聞の事態です。
そのため利上げをしなくてはいけないと状況になり、「金融相場」から「業績相場」への移行時期にもかかわらず、「逆金融相場」にも足を突っ込んでいるという、これまでに無いような状況になっています。
まだ「業績相場」への移行期なのに、インフレの話が出てくるという異常事態です。
今後、利上げがおこなわれれば、「業績相場」移行期にもかかわらず、「逆金融相場」が本格化するかもしれません。そうなると、グロースの多いナスダックの受難は今後何年か続く可能性もあります。
ただ今回のロシアのSwift排除で、利上げがしばらく遠のくという話になれば、しばらくナスダックが上がる可能性もあります。
とにかく金利の問題です。
市場は本当にコロコロ変わりますので、長期取引の場合は淡々と時間分散で積み立てるのがいいかと思います。
明日はロシアのSwift排除によって米国ETFがどう動いたかの記事をアップしたいと思います。