「103万円の壁」撤廃で米国株の税金は安くなる?
新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。
今回は、米国株投資の税金が「103万円の壁」撤廃で安くなるかどうかについてです。
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103万円の壁
こんなご質問をいただきました。
「今回の選挙で国民民主党が躍進しました。私は国民民主党に投票したので103万円の壁が撤廃されることを期待しています。
それで103万円の壁撤廃というのは、言い方を変えれば基礎控除が増えることにもなります。玉木代表は178万円まで引き上げると言っていましたが、これは基礎控除が123万円になるという意味でしょうか。
それだったら、米国株の確定申告をしても123万円までの利益に所得税がかからないということになるのでしょうか。住民税申告不要制度があったことで米国株は確定申告がしにくくなりましたが、これだけ拡大されると申告しても有利に働く場合が多くなるんじゃないかと思います。お考えをお聞かせください」
とのことです。
今回の選挙では、国民民主党が議席を大きく増やして、かなり存在感を出してきましたね。とくに現役世代を優先させる政策はこれまでの日本政治とは違っていますので、ちょっと期待が持てます。
それで国民民主党の考えている178万円案の詳細ですが、先に現状をいったんまとめてみます。
まず現在の103万円の壁ですが、これは給与所得控除55万円と、基礎控除48万円を足した金額になります。個人事業主で青色申告の場合は、青色申告特別控除として最大で65万円の控除がありますね。
これを超えてしまうと所得税が発生してしまいます。ただ日本は累進課税なので、194万9,000円までのオーバーは5%ですみます。
それで株式での利益ですが、基本的には雑所得的なものなので、基礎控除の48万円の部分しか使えません。
そのためFIRE後、まったく働かずに投資の利益だけで食っていく場合、使える税金の控除は48万円だけです。
それで国民民主党の案ですが、178万円までというのは、基礎控除のほうを123万円にするのか、基礎控除は据え置きで、給与所得控除を130万円にするのか、どっちかになります。それで労働者を優先させるのであれば、通常は給与所得控除を130万円にするんじゃないかという気もします。
そうなった場合は、基礎控除の48万円はそのまま据え置きということですね。そのため現状とは変わらないんじゃないかとは思います。
ただ仮に基礎控除のほうが48万円から123万円になったとしても、確定申告で問題になるのは住民税と国民健康保険料です。この二つのほうがえげつないです。とくに国民健康保険料はえげつないです。
今年の確定申告で住民税申告不要制度が無くなりましたので、確定申告をしてしまうと、住民税と国民健康保険料も払わなくてはなりません。
そのため、配当控除の使えない米国株は税金を多く払うケースのほうが増えてしまう場合が多いのですね。
わざわざ確定申告したうえに、税金を多く払うという罰ゲームが待っています。
住民税と国民健康保険料
所得税自体がそんなに怖くないのは、基礎控除の48万円以外にも、支払った国民健康保険料や年金保険料、iDeCoなども控除対象に入るからです。
ただ国民健康保険料と住民税はそういうわけにはいきません。とくに国民健康保険料はえげつないです。
どれだけえげつないかといえば、たとえば、仮に投資で143万円の利益が出たとします。国民健康保険料の基礎控除の48万円ではなくて43万円なので、これを引くと、税金がかかる部分は100万円になります。
この100万円の国民健康保険料がいくらになるかですが、国民健康保険料には所得割・均等割り・平等割の3つがあります。均等割り・平等割は所得にかかわらず、かならず取られるお金ですね。平等割がない地域もありますが、だいたい均等割りで平等割の分もコミコミになっていたります。
医療費の所得割は地域によって違いますが、東京のケースを考えてみましょう。
検索して江戸川区が一番先頭に来たので、そのデータを使うと、
医療費の所得割は9.40%で94000円。これに均等割りの51600円のを足して、合計14万5600円になります。この時点で100万円の14%以上取られているのですが、まだまだ終わりません。
次は後期高齢者支援金ですが、所得割は3.15%で31500円。これに均等割りの17400円を足して48900円。さきほどの14万5600円と足すと19万4500円になります。100万円の20%近くになりました。まだ終わりません。
つぎに介護分ですが、所得割は2.63%で26300円。均等割りが18000円の、合わせて44300円になります。全部足すと23万8800円と24%近くになってしまいます。金融所得課税より高くなってしまうのですね。
まだ話は終わってなくて、さらに住民税と所得税も加わってきます。
住民税は課税所得に対しておよそ10%で、さらに均等割りの5000円が加わります。ここでは他に何も控除がないと考えれば、100万円にかかるのはだいたい10万円ぐらいになります。
さらに所得税ですが、194万9,000円以下なので5%として、約5万円ですね。
そうなると税金は合わせて39万3,800円となり、所得の100万円に対して40万円近くが持っていかれてしまうというえげつない税金がかかるわけです。40%とられているわけです。
年金保険料も合わせれば、国民年金は年間約36万円なので100万円に対しては36%とすれば、半分どころか70%以上取られてますね。消費税も付け加えればさらに取られていることになります。
正直、先進国でもかなりの重税国家です。しかも子育て税やら何やらで、さらに税金は増えていきます。来年から年金保険料も上がりますしね。
こんな感じですでに半分以上取られている状況であり、日本は働けど働けど手取り収入は減っていくという状況にあります。なんでこの状況で暴動が起こらないのかがかなり謎ですが、正直こんな状況でいまの若い人がどうやって貯金すればいいのか本当によくわかりません。生活費払って終わりみたいな感じにしかならないとは思います。難易度ベリーハードのゲームをやらされているようなものです。
Q太郎の父の世代だと、酒飲みまくり、タバコ吸いまくりの無駄遣いしまくりでも全然問題なかったみたいな時代がありましたが、いまたばこ一箱500円ぐらいしますしね。昔、駅とかで高校生がタバコを吸っているみたいなのをよく見かけましたが、近年ではほぼ見なくなりました。ヤンキー的な人たちが減ったというよりも、経済的に無理になったんじゃないかとは思います。
Amazonプライムがひと月500円ぐらいで映画とも見放題なのに、タバコ一箱に500円とかはブルジョワジーなわけです。昭和的なタバコプカプカな世界は、もはや経済的にも無理がきている感じがありますね。
話を戻しまして、そんわけで100万円の所得にかかる国民健康保険料は23万8800円で、住民税と所得税も合わせると39万3,800円となり、だいたい40%とられるということにもなります。
143万円の金融所得課税は20.315%の約29万円になるので、確定申告した方が約10万円の損という話ですね。住民税と所得税は他に控除があればもうちょい安くできますが、国民健康保険料は使える控除が少ないのでほぼフルで食らうことになります。
そんなわけで米国株は配当控除も無いので、国民健康保険の基礎控除である43万円を超えると厳しい感じになってきます。
仮に所得税の基礎控除が123万円になったとしても、肝心の国民健康保険料の基礎控除が43万円で据え置きだったら大きな減税にはならないとは思いますね。
ちなみにeTAXで確定申告する人は、途中でセーブポイントを設けて、米国株分を加えた結果と加えない結果で税金の比較するのがいいでしょう。
まとめ
そんわけでまとめると、
・「103万円」の壁は給与所得控除の55万円と基礎控除の48万円を足したもの。株式の利益には基礎控除の48万円しか使えない。
・健康保険料の基礎控除は43万円。これの超過分が100万円だった場合、だいたい24%(24万円)が取られる。
・さらに住民税10%、所得税5%も取られるので、最大でだいたい40%近く取られる。
・配当控除の使えない米国株は、健康保険料の基礎控除43万円を超えた場合に確定申告すると、逆に税金が増えるケースが多い。
・そのため、仮に「178万円の壁」が実現したとしても、健康保険料の基礎控除が43万円のままだと恩恵は少ない。
ということになります。
たぶん「178万円の壁」は、給与所得控除を130万円にするんじゃないかという気はします。この方が、給与所得者に有利ですし、健康保険料を減らすことにもなります。
ただ何にしろ、仮に基礎控除の方が123万円になっても、肝心の健康保険料の基礎控除が43万円のままだったら、米国株投資にとってはあんまり意味がないかなとは思います。税率が大きいのは健康保険料ですしね。
そんなわけで、米国株投資にとって、住民税申告不要制度がなくなったのが本当に痛いなとは思いました。健康保険料が本当に重いですね。