トランプ関税、もはや株価操作?S&P500リバウンドも一時的か
新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。
今回は、トランプ大統領の「買い時はいまだ」発言からの関税90日停止とS&P500のリバウンドについてです。
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トランプ関税、もはや株価操作?
こんなご質問をいただきました。
「取り崩し投資、今後もよろしくお願いします。
株価の下落が続いており、このまま株価が戻らなければ、さすがのトランプ大統領も関税を見直すしかないとは思います。
それでトランプが「今が買い時だ」と言い出しましたが、苦しまぎれの発言だと思いきや、それからすぐに相互関税の90日間停止。
これはもはや大統領による株式操作ではないでしょうか?こんなめちゃくちゃなことしていいのでしょうか?あまりにも堂々としたインサイダー取引とも言えます。
本当にやることがコロコロ変わるので、次また急に何が起こるかわかったものではありません。
どうせまたなにかあってズドン行く気がするので私はこのリバウンドにのっかるつもりはありませんが、この件をどうお思いでしょうか?一時的なものでしょうか?」
とのことです。
本当にすごいですね。トランプ大統領の身内が昨日のニューヨーク市場の寄り付きにS&P500を買っておいたら、一日で10%ぐらい利益取れてしまいますしね。インサイダー問われてもおかしくない事案とは思います。
正直このニュース聞いて、「それはやっちゃだめだろ」と思いました。本当に大統領による株価操作といってもいいですね。風説の流布どころの騒ぎではありません。
さすがにどうかとは思いますし、普通にトランプ大統領の周辺を調査したほうがいいような案件です。これはさすがに、株式市場的にはルール違反です。権力をつかった口先での株価操作ですしね。
今回の件がまずいのは、今後トランプ大統領がまた「今が買い時だ」と言い出したら、みんなが買い出して、それで株価が上がってしまうことです。これはもはや市場原理もくそもない状況です。
トランプ大統領が関税かけると言ったり、関税停止と言ったりで、いくらでも株価操作できることになってしまうわけです。実際やるかやらないかは関係がなくなってしまうわけですね。株式市場としてはあまり健全な状況ではありません。
それでこのリバウンドが一時的なものなのかどうかについてですが、現状一時的なものだとは思います。
下落相場だとリバウンドがあって、ある程度上がったら売るタイミングを逃した人たちが売り出してまた戻ってみたいな繰り返しをしつつ、上下しながら順調に株価を下げるムーブになる可能性があります。ドットコムバブルもリーマンショックもこういう動きしていましたね。根本的な解決がないと、たんにトランプ大統領の発言に振り回されているだけみたいな状況になってしまいます。
今回の株価操作レベルの相互関税90日間停止ですが、この影響で暗号資産のビットコインやイーサリアムも上がっていますね。
それで今回の相互関税90日間停止についてちゃんと見ていきますと、まずそもそもの米国への全輸入品に対する一律10%の関税は維持された状態になっています。
そして一番問題なのが、中国に対する関税ですね。中国は今回の相互関税停止の対象外で、中国に対する追加関税は125%に引き上げるとの方針です。
数字もむちゃくちゃですが、これはある意味、中国以外の国へのプレッシャーにもなっています。中国に加担するやつも関税を上げるという脅しですね。もはや中国以上のジャイアニズムを爆発させています。
一方の中国ですが、アメリカもやるならこっちもやると、引く様子を見せません。これは中国文化であるメンツ問題もあるので、もはや経済的合理性がどうとかは関係なくなってしまってますね。意地の張り合いになっています。
一番喜んでいるのはニュースサイトとかじゃないでしょうか。トランプ大統領のおかげで連日ニュースに事欠かないですしね。いま台北にいますが、ニュースはトランプ大統領のことばかりです。台湾市場の株価も乱高下していますしね。中国軍が台湾海峡をうろついているとか、正直どうでもよくなっているレベルです。
トランプ大統領が急に相互関税90日間停止を言い出したのは、株価の下落が止まらないと、企業からも投資家からもそっぽを向かれてしまいますしね。口先だけで「今が買い時だ」といっても無駄なわけで、実際に株価を上げるしかないわけです。
それで短期的に株価を上げる方法はと言えば、今回の相互関税停止ですね。
相互関税が理由で株価が下がっている以上、株価を上げるには相互関税を停止するしかありません。下がっている理由が明白なのです。
トランプ大統領としては「今が買い時だ」と言ってしまった以上、さらに下がり続けてずっと回復しないという事態になれば、これはもう完全に嘘をいったことになってしまいますので、さすがに現実を目の当たりにした支持者からは見放されてしまいます。いくら口先でいろいろいっても、現実が変わらなかったら単に嘘ついているだけになりますしね。
トランプ大統領を支持していたイーロン・マスク氏やメタのマーク・ザッカーバーグ氏、アップルのティム・クック氏、グーグルのスンダー・ピチャイ氏、Amazonのジェフ・ベゾス氏など主要ハイテクの方々も、今回の株価下落で260兆円以上の資産を吹き飛ばされています。
米国投資をトランプ大統領に告げたソフトバンクの孫正義氏も、今回の件で散々な目にあわされたことになりますしね。
さらに株価だけでなく、今後のトランプ大統領の財源不明の減税政策をおそれて、債券も下落しています。米国債が信用ならないという状況ですね。米国債の格付けが落ちる状況になってしまうと、トランプ大統領のやりたかった利下げすらできなくなってしまいます。
現実によって、もう追い詰められるところまで追い詰められた状況です。
それでトランプ大統領のいいわけですが、「国債の市場はとても厄介だ。私は注視していた。昨日の夜は少し不安に思う人もいた」とのことです。なんか他人のせいにしていますが、実際のところは自分が不安に思って一時停止したという状況でしょう。
さらには「75カ国以上の国々が米国と関税問題を交渉したいと思っている。私は報復しなかった人々のために90日間猶予した」と言い出し、まるでもともとそう決めていたかのように言っているわけです。
まあ、どう考えても、株価も債券も下がって自分の政策が間違っていることが鮮明になってヤバいと思ったのが本当の原因とは思います。
しかし問題は、これが一時的なリバウンドにしかならない可能性はけっこう高いです。
そもそもの関税問題が解決していませんし、中国に対して追加関税125%に引き上げるといって状況をエスカレートさせてしまっていますしね。メンツ問題で中国側がひくというシナリオも難しい気がしますし、どんどん世界経済がまずい状況になっていく可能性はあります。
今回の株価下落で資産を吹っ飛ばされたアメリカの大手ハイテク企業ですが、そもそも彼らは中国の労働力を頼って売り上げを伸ばしてきています。
以前も言った比較生産費説の話ですが、アメリカの労働力をつかって生産しても生産性が低くなるだけなので、比較優位の中国の労働力をつかって生産したほうが、国際分業の観点からすれば効率的です。
そもそものアメリカは、外食業の従業員すら足りなくて賃金インフレが激しくなっているような状況です。日本もそうですが、労働力があまっているような状況ではないのですね。
しかも移民に対しても厳しくなっていますし、そんな状況のアメリカに製造業も戻しても、働いてくれる人がいないか、働いてくれるとしても賃金がバカ高くなるかにしかなりようがありません。そんな状況でできあがったバカ高い製品を誰が買うのか問題が出てきます。国際競争力もどんどん失われていく可能性があります。
さらに中国との高関税応酬の状況が続けば、ハイテク産業はダメージを受け続けることになります。今後ハイテク産業は25%ほど利益を減らすとの試算もあります。NASDAQへの打撃が強いですね。
アメリカの保守の人たちは、高い関税をかけてアメリカに製造業をもどし、空洞化したアメリカの産業構造を変えることが重要と考えていますが、そもそも労働力不足問題や給料高すぎ問題があって、そう簡単にはいかないとは思います。無理にやろうとすれば、それこそ生産性が低くて国民が貧乏になる旧共産圏化してしまう恐れもあるのですね。
一方で中国ですが、むしろ今回のことが追い風になってしまう可能性があります。高関税によって、中国もアメリカに依存しない状況をつくりだそうとしてしまうことから、技術開発が進む可能性があります。
さらには世界中がアメリカに対して反感を持っている状態なので、高関税のアメリカを除いた経済圏ができあがってしまうということも起こる可能性があり、ぼくの考えた最強の保守政治をやろうとして、メイク・アメリカ・グレート・アゲインどころか国力がどんどん弱くなってしまうのですね。
まとめ
そんなわけでまとめると、
・トランプ大統領の「今が買い時」からの、相互関税90日間停止でS&P500暴騰。
・そもそも株価操作にならないのか問題。
・中国に対する追加関税を125%に引き上げることは据え置き。
・トランプ支持の米主要ハイテク企業の株価下落の損失は260兆円以上。(何のために支持したのかわからない感じですね)
・今回の一時停止は関税問題の根本的な解決になっていないので、株価も一時的なリバウンドになる可能性。
・Appleなど中国の労働力を使って成長してきた米ハイテク企業は、今後25%ほど利益を減らす可能性。
・人件費が高騰しているのに自国に製造業を戻すことにより、労働力不足と生産性の低下で国際競争力が低下してしまう。(なんでもかんでも自国でつくろうとすれば、場合によっては旧共産圏のような貧乏国家化してしまいます)。
・アメリカを除いた国々での新たな経済圏の誕生の可能性。
となります。
グローバル主義でいろいろと割を食っていると思う人も多いですが、そもそも誰もかれもスマホを持てるような生活ができているのもグローバルによる国際分業で、よいものが安く手に入るという状態になっているからです。我々一般生活者が一番恩恵を受けているのですね。
全部自国でやることになると、生産性の低い質の悪い物を使わされることになり、それこそ昔の共産圏みたいな状態になるわけです。偉大なアメリカをつくろうとすればするほど、生活者へのメリットはどんどん失われてしまうのですね。そもそも「偉大」なんてキャッチフレーズを使うのは共産主義国家のやることですね。
そんなわけでこの一時停止をずっと一時停止のままにしておくのか、それとも90日後に解除するのか、市場が振り回されまくっている状況も含めて見守っていきたいとは思います。