旅行には「行ける期限」がある|「老後に行けばいい」は間に合わない

70代の約7割が「宿泊旅行ゼロ」|旅行には行ける期限がある
【毎日17時更新中!】たまに午前中にも追加投稿します。「退職したらゆっくり旅行しよう」と考えていても、時間ができるころには、家計・ペット・介護・自分の健康が新しい壁になることがあります。今回は、観光白書などの数字を手がかりに、老後の自由時間...

こんなコメントをいただきました。

「退職後や老後の楽しみに旅行しようと思っても、いざその時期になると、いろいろとやることがあって、案外旅行に行きにくかったりしますね」

とのことです。ありがとうございます。

旅行は、老後になってから行けばよい。

会社員のころは、そう考える人も多いと思います。

いまは仕事が忙しい。長い休みも取りにくい。旅行へ行っても、休み明けには仕事が待っている。

だったら退職して、時間に余裕ができてから、ゆっくり旅行すればよい。

お金も、そのころまでに貯めておく。

かなり合理的な計画に見えます。

しかし、最近の旅行に関する数字を見ると、少し違う景色が見えてきます。

観光庁の「令和7年版観光白書」によると、70代以上で、1年間に観光やレクリエーションを目的とした国内宿泊旅行へ一度も行かなかった人は、2014年には58.2%でした。

それが2024年には69.3%へ増えています。

70代以上の約7割の人が、国内の宿泊旅行に一度も行っていないのですね。

50代から60代でも、2024年に国内宿泊旅行へ一度も行かなかった人が52.7%。すでに半数を超えています。

老後になれば、仕事から解放されます。

自由な時間も増えるはずです。

それなのに、年齢が上がるほど、旅行へ行く人が減っています。

理由を見ると、70代や80代以上では、「自分の健康上の理由」が大きくなります。

仕事がなくなり、ようやく時間ができた。

しかし、そのころには、今度は自分の身体が旅行を許さない。

旅行へ必要なのは、お金と時間だけではないのですね。

そんなわけで、ようこそ、Q太郎のお金の哲学へ。お金に飲み込まれないための生存戦略を独自の視点で解説します。

今回は「旅行には行ける期限がある」を深掘りしていきます。

・三つの話

今日は大きく三つ話します。

一つ目、老後になっても自由時間が完成しない理由。

二つ目、60代では家計・ペット・介護、70代以降では健康が壁になること。

三つ目、行けない時間が「行きたくない」気持ちへ変わることです。

最後に、旅行を老後まで先送りしてよいのか、Q太郎なりの見立てを置いて終わります。

・一つ目・老後に自由時間は完成しない

それでは一つ目、老後になっても自由時間が完成しない理由です。

若いころに旅行へ行けない理由は、分かりやすいです。ぶっちゃけ時間もお金もありません。

仕事がある。休暇が取れない。子どもの学校がある。住宅費や教育費もかかる。

そこで、いま旅行できない理由を、全部「仕事をしているから」と考えます。

仕事を辞めれば、この障害は消える。

月曜日から金曜日まで自由になる。混雑する休日を避けて、安い平日に旅行できる。

確かに、仕事の拘束はなくなります。

ただ、仕事が消えた場所が、そのまま何の予定もない自由時間になるとは限りません。

親の介護が始まるかもしれません。配偶者が病気になるかもしれません。ペットを長時間ひとりにできないかもしれません。

そして、最後には自分の通院が入ります。

会社の予定が消えたカレンダーへ、別の予定が入ってくるのですね。

以前、「仕事を辞めたあとも、なぜ忙しいのか」という動画で、退職後の空白を他人の用事へ配ってしまう話をしました。

今回は少し違います。

断ればよい頼みごとだけではありません。

介護や通院、ペットの世話など、本人が大切にしたいものや、簡単には断てない責任が入ってきます。

仕事を辞めれば、時間は空きます。

しかし、その時間を自由に使える条件まで、同時にそろうわけではありません。

旅行へ行くには、数日間家を空けられることが必要です。

自分がいないあいだも、家族や暮らしが回る。誰かへ世話を任せられる。そして、自分自身が問題なく歩ける。

老後になれば、この条件がそろうと思いがちです。

実際には、年を取るほど、一つずつ崩れていくことがあります。「老後の楽しみ」は、案外成立しないことが多いのですね。

・二つ目・60代と70代では壁が変わる

二つ目、60代では家計・ペット・介護、70代以降では健康が壁になることです。

日本交通公社の調査では、過去1年間に一度も旅行をしなかった60代へ、その理由を聞いています。

2024年の1位は、「家計の制約」で27.5%でした。

2位は「ペットがいる」で25%。3位は「介護しなければならない家族がいる」で22.5%です。

一方、「休暇が取れない」は、2014年の29.5%から2024年には16.3%へ下がっています。

時間がないわけではないのですね。むしろ時間は増えています。

しかし、その代わりに、家計、ペット、家族の介護が前へ出てきた。

自由になった時間へ、別の責任が入っています。

ペットについては、悪い話ではありません。

犬や猫と暮らす毎日のほうが、旅行より楽しい人もいるでしょう。

旅行へ行かず、家でペットと過ごすことを本人が選んでいるなら、それも立派な時間の使い方です。

ただ、「退職したら旅行三昧」という計画と、「家を長く空けられない暮らし」は、同時には成立しにくい。

介護も同じです。

旅行へ行きたい気持ちがあっても、数日間家を空けられません。自分だけ楽しみに行くことへ、後ろめたさを感じる場合もあります。

そして親の介護が終わるころには、今度は自分の身体が弱っているかもしれません。

観光白書では、70代や80代以上が旅行をしなかった理由として、「自分の健康上の理由」が顕著に高くなっています。

長い距離を歩けない。乗り換えがつらい。慣れない場所で眠れない。食事やトイレの心配がある。

若いころは旅行の一部だったものが、年を取ると旅行をためらう理由になります。

旅行費用は用意できた。時間もできた。

しかし、最後の体力だけが残っていない。

老後資金を一生懸命用意しても、そのお金を使う身体まで保存しておくことはできません。

・三つ目・行けないが、行きたくないへ変わる

三つ目、行けない時間が「行きたくない」気持ちへ変わることです。これが一番の問題ですね。

旅行へ行かない人が増えたという話をすると、すぐに「日本人が貧しくなったからだ」と説明されます。

家計の制約は、実際に大きな理由です。宿泊費や交通費が上がれば、旅行の優先順位を下げる人もいるでしょう。

ですから、お金の問題ではないと言い切ることもできません。

ただ、お金だけでも説明できません。

旅行には、予約、荷造り、移動、行列、知らない場所での判断、帰宅後の片づけがあります。

さらにペットの預け先を探し、介護の日程を調整し、自分の体調まで考える。

そこまでして旅行へ行くのか。

毎回この計算をしていると、最初は「行きたいけれど、行けない」だったものが、だんだん「そこまでして行きたくない」へ変わります。

旅行によって得られる楽しさより、出発までの手間や旅行中の不安が大きくなれば、本当に行きたくなくなります。

人の欲望は、身体や環境と無関係に保存されるわけではないのですね。

若いころに行きたかった場所へ、70代でも同じ熱量で行きたいとは限りません。

「いつか行きたい」と思っていたはずなのに、いつかが来たころには、欲望のほうがなくなっている。

これを聞いて、「旅行への興味を失ったから不幸だ」と決める必要もありません。

旅行に行かない人生が、貧しいわけではないからです。

家で本を読む。ゲームをする。近所を散歩する。ペットと過ごす。

本人がそれを望んでいるなら、無理に遠くへ行く必要はありません。

問題は、本当は行きたいのに、「老後に時間ができてから」と先送りしている場合です。

未来には、お金と時間だけでなく、現在と同じ体力と欲望まで残っている。

人間の脳は、いまの状況から未来を考えてしまうのですね。それで、現時点で目に見えない体力や欲望の衰えは、想像できないわけです。以前の動画でも言った、「無い」ものを想像するのは難しいのですね。

そんな感じで、現時点の状態だけで考えて計画を立てると、間に合わないことがあるわけです。

・まとめ・旅行には体力の予算がある

最後に、旅行を老後まで先送りしてよいのか、Q太郎なりの見立てを置きます。

旅行には、お金の予算だけでなく、体力の予算があります。

そして体力には、貯金ができません。

今年使わなかった体力を、10年後へ繰り越すことはできないのですね。

若いころにはお金がない。働いていると時間がない。退職すれば家族やペットの事情がある。さらに年を取れば、自分の健康が壁になる。

すべての条件が完璧にそろう日を待っていたら、その日は来ないかもしれません。

だからといって、無理して旅行へ行きましょうという話ではありません。

そもそも旅行が好きではない人は、行かなくてよいと思います。

旅行は、人生の必修科目ではありません。

ただ、本当に行きたい場所があるなら、「いつか」を老後と同じ意味で使わないほうがよい。

遠い海外旅行が難しければ、近い場所でもよいでしょう。例えば京都に住んでいる人なら、まわりは観光地だらけなので、日帰りで楽しめばいいだけです。奈良や大阪へのすぐにアクセスできる。神戸とかちょっと遠いところなら、一泊旅行をして帰ってくる。

旅行の規模を小さくして、まだ歩けるうちに行く。

Q太郎は、お金を十分に貯めてから旅行するという順序だけでなく、体力が残っている時期へ、お金の使い道を合わせるという順序も必要だと思います。

お金は、あとから増やせる場合があります。

予定も、調整できる場合があります。

しかし、今日の身体は、今日しか使えません。

旅行には「行きたい期限」だけでなく、「行ける期限」があります。「Die with Zero」でも書かれているように、人生のその時期にしか楽しめないものもありますしね。

老後に旅行すればよいと思っている人ほど、その期限を少し早めに見積もったほうがよいのかもしれません。

皆さんには、「いつか行きたい」と思ったまま、まだ行っていない場所がありますか。また、年齢や家族、ペットの事情で、旅行への気持ちが変わった経験はあるでしょうか。よろしければコメント欄で教えてください。全部読ませていただいています。

数字を味方に。そして、誰の欲望でもない自分の人生を、自分の手で耕していきましょう。

ではまた、Q太郎でした。この動画を気に入っていただけましたら、高評価・チャンネル登録をよろしくお願いいたします。

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