
こんなご質問をいただきました。
「原点に戻ってWCM世界厳選の分配型の投資信託の分析を聞いてみたいです!」
とのことです。ありがとうございます。
結論から言えば、Q太郎はこの投資信託を買わないです。信託報酬が2%近いですし、あと今後のことを考えると、そもそも分配型というスタイルが厳しくなってくるとは思います。分配型というか配当金全般もそうですね。
すでに「住民税申告不要制度」が無くなった時点で、米国株などの高配当投資も厳しいことになっていますし、2028年度の金融所得改正が実現されると、特定口座の配当金が自動で社会保険料の対象になってしまう可能性があるのですね。
会社勤めの方は、配当金を確定申告しても、社会保険料のほうは会社で払っているので、いわゆる「別腹」になって計算には入らないのですが、Q太郎のような個人事業主とか、FIREした人とか、退職した人は国民健康保険なので、そういうわけにもいかなくなるわけです。
どちらにしろ、会社員も、将来退職したら、国民健康保険を払うことになります。老後にかかわってくることですね。
・マイクロ法人
これを回避するために、マイクロ法人を作って、そこで社会保険に加入し、最低限の給料をもらって社会保険料を低く抑えるというセコい方法があります。
日本の法律では、会社員が会社ですでに社会保険料を払っていれば、それ以外の副業とか配当とかの収入に関しては、健康保険料の対象外になるという、冷静に考えるととんでもない法律があるわけです。
つまりマイクロ法人でしょぼい給料をもらって、しょぼい金額の社会保険料を払っていれば、配当で何億円もらおうと、個人事業で何億円稼ごうと、国民健康保険料の対象外にできるのですね。いわゆるマイクロ法人スキームです。
維新の地方議員もこれを使って、国保逃れをしていました。地方議員の年収は約1,400万円ぐらいです。まともに国民健康保険料を払えば、だいたい110万円ぐらい払わないといけないことになります。
ところが、「一般社団法人」という名のマイクロ法人の理事に就任して、最低限の給料を受け取って、しょぼい金額の社会保険料を払っていれば、国保の110万円は払わなくていいのですね。なにがすごいかっていうと、これを一般人じゃなくて、議員がやっていることですね。
ある意味、たった110万円をケチるために、こういうことを平気でやる精神構造がよくわかりません。セコいにもほどがあるわけです。
そんな感じで、まずはこのマイクロ法人スキームを潰してほしいところですが、こちらはまったく手を付けず、まずは金融所得課税の強化です。特定口座の配当や分配金が、自動的に国民健康保険料に加算されるという案です。
・金融所得課税強化案
きっかけは、2025年11月に上野厚生労働大臣が、社会保障審議会医療保険部会で示した検討方針です。医療・介護保険料の算定に、配当や利子、株の売却益といった金融所得を反映させる新しい仕組みを検討する、というもので、骨太の方針2025にも明記されました。施行の目処は2028年度とされていますが、報道によっては2029年度、2030年度という声もあり、まだ制度設計そのものが固まっているわけではありません。
以前までFIRE界隈では、配当金で生活する「配当金生活」がずいぶん人気のテーマになっていました。毎月、口座に配当が振り込まれる通知を見せて、「不労所得です」と紹介する動画も、よく見かけました。
ただ、今後はその配当という仕組み自体が、これから少し立場を変えるかもしれないのですね。
そんなわけで、ようこそ、Q太郎のお金の哲学へ。お金に振り回されないための生存戦略を日々発信しています。
今回は「高配当投資はオワコンになるのか」を深掘りしていきます。
・現行制度の歪みと、なぜ変わろうとしているのか
まず、いまの制度がどうなっているかを整理させてください。
皆さんもご存じのとおり、特定口座だと、株式の配当や売却益は、源泉徴収だけで課税が完結する仕組みになっています。確定申告しないかぎりは、社会保険料には計算されません。
一方、確定申告をしてしまうと、配当も売却益も、市町村税の課税所得に含まれて、保険料算定の対象になります。
ここで生まれているのが、同じ金融所得を得ていても、確定申告をしたかどうかだけで、保険料が変わってしまうという歪みです。頑張って確定申告して、損益通算や繰越控除を時間をかけて記入して、結果的に保険料が上がったという、なんとも皮肉な構造になったりします。努力した結果、支払う税金を増やしたのですね。意味が分からない。
とくに米国株の配当金は厳しいことになっています。外国税額控除を申告して、税金が減ったと思ったら、国民健康保険が増えて、トータルでは増えていたという話になります。
まあ、確定申告したかしてないかで、保険料が増えるのは、制度としてはたしかにおかしな話でももあります。苦労して確定申告した人が損をする。この不公平を「申告の有無に関わらず公平に」という方向で正そうとしているのが、今回の検討の出発点になっています。
この歪みを解消するために検討されているのが、マイナンバーと、金融機関から税務署に提出される法定調書を組み合わせて、確定申告の有無に関わらず、金融所得を全件把握する仕組みです。国民のふところ丸わかり計画ですね。
実現すれば、確定申告してもしなくても、配当や売却益は自動的に保険料算定に組み込まれることになります。
具体的には、20.315%の税金をとられたうえに、さらに10から15%の国民健康保険料が上乗せされるというイメージですね。
・配当という「勝手に実現してしまう益」
ここからが本題です。
配当というのは、株を持っているだけで、毎年、自動的に支払われてくるお金です。自分が今年その利益を使いたいかどうかに関係なく、決算のタイミングが来れば、勝手に口座に振り込まれてしまう。
もし将来、配当が申告不要でも保険料算定の対象になるとしたら、使うつもりのないお金にまで、毎年、保険料がかかってくる可能性があるわけです。
これ、水道の蛇口に例えるとわかりやすいかもしれません。配当というのは、蛇口が最初から全開で固定されているようなものなんですね。使い切れなくても、桶からあふれた水の分まで、水道料金だけは毎年きっちり請求されてしまう。資産を持っているだけで、望んでいない「今年の所得」が、勝手に発生し続けてしまうわけです。こちらでコントロールできない。
たとえば、今年はたまたま生活費に余裕があって、配当をまるまる再投資に回したいと思っているかたがいたとします。それでも配当は一度受け取ったこと自体が所得として記録されてしまうので、「使っていないから所得としてカウントしないでほしい」という主張は通りません。
再投資しようが、貯金しようが、口座に振り込まれた時点で、その年の実現益として扱われてしまうんですね。
・「蛇口を締められるか」という一点の違い
ここで一つ、大事な訂正を入れておきたいんですね。実は、株の売却益についても、いまの制度ですでに、確定申告をすれば配当と同じように保険料算定の対象に入ります。2028年度の改正案でも、配当・利子・譲渡所得がまとめて対象として検討されています。
つまり「株式の売却益なら分離課税だから逃げられる」という話ではないんです。現時点でも、確定申告すれば国民健康保険料の対象です。
じゃあ、配当とインデックス取り崩しの、本質的な違いはどこにあるのか。それは、実現するタイミングを、自分で選べるかどうかなんですね。自分でコントロールできるかどうかです。
配当を出す株や投資信託は、蛇口が常に全開で、毎年、否応なく水が出続けます。そのたびに国民健康保険料を払わないといけない。
一方、配当を出さない、無分配型の投資信託を必要な分だけ取り崩すスタイルなら、売るかどうか、いくら売るかを、自分の意思で決められます。使わない年は、売らなければいい。売らなければ、その年の実現益はゼロで、保険料への影響もゼロのままです。同じ資産という水を持っていても、蛇口を自分でひねれるかどうかが、決定的な違いになるわけです。
Q太郎のやっていた取り崩し実験は、毎月一定の利率で自動売却していましたが、生活費が余った月は取り崩す額を減らして、逆に大きな出費があった月は多めに取り崩す、みたいなコントロールもできるのですね。
判断を自分の手元に残せることが、地味なようで、けっこう大きな自由度になっているわけです。配当のように毎年決まった量が強制的に流れ込んでくる仕組みだと、この調整の余地そのものがなくなってしまいます。
それでここからが、今回Q太郎が一番言いたいところなんですけど。
保険料という制度がどう変わっていくにせよ、自分の所得を、自分の意思でコントロールできる状態を保っておくこと自体に、これからは価値が出てくるんじゃないかと、Q太郎は思っています。
現在の投資環境は、完全に数年前と変わっています。配当は本当に厳しい。
会社員は会社で社会保険料を払っているので、マイクロ法人スキームと同じく、まだ別腹なので実感はないかもしれませんが、退職後に、一気に配当金の国民健康保険料が乗っかってきます。そこは覚悟しておいたほうがいいでしょう。
そんなわけで、強制的に実現させられる利益と、自分で実現させる利益は、税率や保険料率が同じであっても、コントロールできるという一点で、まったく違う資産なんですね。
・NISA枠との関係
ここで、NISAとの関係も整理しておきます。
NISA口座内の配当や売却益は非課税ですので、今回の改正でも対象外として整理されています。影響を受けるのは、あくまでNISAの非課税枠を使い切った先、特定口座で運用している部分です。これはある意味、朗報ですね。
新NISAの生涯非課税保有限度額は1,800万円まで拡大されていますが、それを超えて資産を積み上げているかたにとっては、特定口座での運用スタイルが、これから重要な論点になってくると思います。
あと売却益にも自動で国民健康保険料が乗っかってくる場合は、デイトレードとかスイングトレードとかも厳しくなっていきます。
コツコツ積み立てているかたであれば、1,800万円という枠に到達するまでには、それなりの年数がかかります。
ただ、早期リタイアを目指して積極的に投資しているかたや、まとまった退職金を一括で運用に回すようなかたにとっては、NISA枠を早々に使い切って、その先を特定口座で運用するケースが十分に考えられます。
今回の改正の影響を大きく受けるのは、まさにこのゾーンにいるかたたちです。そして会社を辞めたとたんに、国民健康保険料が乗っかってくるわけです。
・Q太郎の立場
ここまでいろいろとお話ししてきましたが、Q太郎は高配当投資そのものを否定したいわけではありません。
配当を受け取る安心感や、値動きを気にせず生活できる感覚には、それ自体の価値があると思っています。売る判断をしなくても勝手にお金が入ってくるという心理的な楽さは、無分配型の取り崩しにはない魅力です。
ただ、NISA枠を超えて特定口座で高配当株を積み上げるスタイルは、タイミングをコントロールできないという弱点が、国民健康保険料という形で、じわじわ表に出てくる可能性があると考えています。しかも国保料は年々上がっていくわけです。
安心感というプラスと、コントロールできないというマイナスを、どう天秤にかけるか。これは正解が一つに決まる話ではなく、それぞれのかたの性格や資産状況によって、答えが変わってくる部分だと思います。
繰り返しになりますが、この制度はまだ検討段階です。施行目処も2028年度とされつつ、実際には後ろ倒しになる可能性も報じられていますし、対象範囲や具体的な計算方法も、これから詰められていく部分です。
今日話したことも、今後の議論しだいで前提が変わる可能性がある、ということは頭の片隅に置いておいてください。
ただ現時点ですでに住民税非課税が廃止されていますので、個人事業主や退職者など国民健康保険料を払っている人は、高配当投資はすでに不利な環境に置かれています。外国税額控除とか、おいそれとできません。逆に支払いが増えます。
会社員も、いずれ会社を去って、国保料を納めなければなりません。そのこともじゅうぶん踏まえて、戦略を考えていったほうがいいとは思います。
・まとめ
そんなわけでまとめると、配当や売却益を保険料算定に反映させる制度改正が、2028年度を目処に検討されています。現行制度では、確定申告をするかどうかで保険料が変わるという歪みがあり、それをマイナンバーと法定調書で是正しようとしているのが今回の動きです。言い方を変えれば、国民の資産丸わかり計画ですね。
株式の売却益も配当と同じように対象になる見込みなので、分離課税だからといって逃げられるわけではありません。現時点でもすでに逃げられません。確定申告したら、そのぶんの国民健康保険料は払わされます。
それで分配無しの投資信託を必要な分だけ取り崩すスタイルは、タイミングを自分でコントロールできるという、配当にはない強みがあります。蛇口が常に全開の資産と、自分でひねれる資産。どちらも同じ水量だとしても、この一点の違いが、これからの制度変更に対する耐性を大きく左右するんじゃないかと、Q太郎は思っています。
ただ投資というのは合理性よりも、安心感とか納得感みたいなものも重要なので、配当が好きな人が無理に取り崩し投資をすると、慣れていないぶん、逆によくない結果になる可能性もあります。ここは自分の性格に合わせた戦略を考えるのがいいでしょう。
まだ検討段階の話ではありますが、こういう制度の方向性を早めに知っておくだけでも、この先の資産運用の選びかたは変わってくるはずです。
みなさんは、高配当投資派ですか、それとも無分配型を取り崩す派ですか。この制度改正を聞いて、考えかたは変わりそうですか。よかったらコメントで教えてください。全部読ませていただいています。
数字を味方に。そして、誰の欲望でもない自分の人生を、自分の手で耕していきましょう。
ではまた、Q太郎でした。
