
こんなコメントをいただきました。
「私の場合、当初は日本の個別株で運用していました。でも、やっぱり複利を生かした運用をしたいと思い、インデックスファンドでアセットアロケーション投資に切り替えることにしました。
新NISAが翌年から始まるのは分かっていたんですが、時間がもったいないと思って、特定口座で一括投資しました。
新NISAが始まってからは、つみたて投資枠には追加で積み立てをして、成長投資枠ではサテライト投資として米国個別株を使っています。もうごちゃ混ぜです。
ここから特定口座の商品を新NISAに切り替えていくのが、得なのか損なのか。アセットバランスを維持しながら、どのように取り崩していくのか。難題が山積でございます。」
とのことです。ありがとうございます。
これ、めちゃくちゃ分かるんですよね。
新NISAが始まるまで現金で待っているのも、時間がもったいない。だから特定口座で先に投資を始める。その後に新NISAが始まれば、今度は新しい資金をそちらへ入れる。途中で投資の考え方も変わる。個別株だけだったのが、インデックスファンドも持つようになる。気になる米国株も少し買う。
こうして口座も商品も、だんだんごちゃ混ぜになっていくわけです。
でもこれは、投資が下手だから起きる話ではありません。制度や自分の考え方が変わるたびに、そのときの最善を選んできた結果なんですね。
結婚で例えれば、結婚したあとで「こんな人だとは思わなかった」みたいなことが出てきて、離婚しようかどうか迷いだすこともあるでしょう。しかし結婚したときは、やっぱり結婚することがベストの判断だったのですね。人はあくまでそのとき、その状況の最善を選んでいるわけです。
ただ、状況が変わって、次の一手を決めようとすると急に難しくなる。
特定口座の商品を売って、新NISAに寄せていくべきなのか。含み益にかかる税金を払ってまでやる価値があるのか。アセットバランスを崩さず、将来の取り崩しまで考えるなら、何から手をつければいいのか。
そんなわけで、ようこそ、Q太郎のお金の哲学へ。お金に飲み込まれないための生存戦略を独自の視点で解説します。
今回は「特定口座から新NISAへ振り替える判断」を深掘りしていきます。
・税金を払いたくないから動けない
特定口座で含み益が出ている商品を売ると、利益には約20%の税金がかかります。
100万円の利益なら、税金は約20万円です。これは、惜しいですよね。Q太郎も証券口座に税額が表示されると、売却ボタンの上で指が一瞬止まります。
ここで人は、税金を払わないことを最優先にしがちです。含み益がある商品は、売らない。特定口座に置いたままにする。それ自体は、もちろん悪い判断ではありません。
ただし、ここで一度、問いを変えたいんです。
今、税金を払わないことと、これから先に増える利益を非課税にすること。どちらを優先したいのか。
特定口座に100万円、同じ商品を新NISAに100万円。この二つは今日の値動きだけ見れば同じに見えます。でも10年後に大きく値上がりしていたら、増えた部分に税金がかかるかどうかは違ってきます。
たとえば2倍になったら、特定口座では20万円の税金を払う必要がありますが、新NISAでは無税です。20万円分、とくするわけです。
ただ、だからといって「特定口座を全部売って、新NISAに乗り換えたほうがいい」という単純な話ではありません。含み損なのか、小さな含み益なのか、大きな含み益なのか。その三つで、考え方を分けてみたいと思います。
・含み損の商品は、口座の整理を始めやすい
まず一つ目は、特定口座で含み損になっている商品です。
その商品を今後も長く持ち続けたいと思っているなら、新NISAへ振り替える候補として、一番考えやすい場所です。
売却益が出ていないので、売ることによる税金はかかりません。そして、その年に特定口座で確定した利益があれば、損益通算に使える可能性もあります。マイナス分は、ほかのプラス分を相殺して節税に使えるのですね。
ここで大事なのは、「下がっているから売る」ではないことです。
その投資信託や株を、これからも持ち続けたいのか。答えがイエスなら、将来の値上がり分は、できれば新NISAの中で受け取った方がいいかもしれない。そういう話です。それなら売却して、新NISAで買い直せばいいでしょう。
逆に、含み損だからといって、将来性に疑問を持っている商品まで新NISAへ入れる必要はありません。新NISAは、失敗した投資を隠す場所ではないんですね。長期で持ちたい主力商品を置く場所です。
だからそのまま損切りして、その資金でもっと良いものを新NISAで買ったほうがいいでしょう。やるなら年末にやったほうが、損益通算がコントロールしやすいですね。そして次の年に、すぐ新NISAに資金を投入できますしね。
Q太郎なら、まず特定口座の一覧を開いて、「今も同じ商品を買いたいと思えるか」で分けます。思えない商品は、新NISAに入れる前に、そもそも持ち続ける理由から考え直します。思える商品だけが、次の候補に残ります。
・小さな含み益なら、税金と残り時間を比べる
次は、小さな含み益が出ている商品です。
利益が10万円なら、税金は約2万円です。この2万円を払って新NISAへ寄せるのか。払わずに、特定口座でそのまま持つのか。ようするに税金は、「新NISAへの移動代金」とも言えますね。
ただ、ここは、税金の額だけで決めない方がいいと思います。
今年の新NISA枠は余っているのか。新しい給料や余剰資金だけで、その枠を埋められるのか。あと何年、その商品を持つつもりなのか。資産形成の途中なのか、それとも取り崩しが近いのか。とくに投資の残り時間は、ちゃんと考慮にいれたほうがいいでしょう。
たとえば、まだ10年以上は積み立てと運用を続ける。新規資金だけでは新NISA枠を使い切れない。特定口座にあるのも、これからずっと持ちたい低コストのインデックスファンド。この三つがそろっているなら、小さな税金、つまり移動代金を払ってでも、新NISAに寄せる考え方には筋があります。
反対に、新規資金だけで毎年の新NISA枠を十分に埋められるなら、特定口座の含み益をわざわざ確定させる必要は薄くなります。新しいお金は新NISAへ。昔から持っている特定口座の商品は、そのまま育てる。これも立派な答えです。「JUST KEEP BUYING」ですね。「買ったものは売るな、買い続けろ」です。
つまり、「新NISA枠が空いている」だけでは足りないんですね。その空いた枠を、新規資金で埋められるのかどうか。ここが判断をかなり分けます。
もう一つ、NISA枠が空いているからといって、生活防衛資金まで無理に投資へ回す必要はありません。
なんか最近、「NISA貧乏」に変わって、「現金枯渇民」みたいなパワーワードが出てきて、ちょっと笑ってしまったのですが、なんか新NISAに全力過ぎて手持ちの現金がないみたいな状態の人たちを指す言葉のようですね。
このチャンネルではバケツ戦略として、短期バケツに生活防衛資金、中期バケツに直近数年で使うまとまったお金、残りを長期バケツに入れてリスク資産を買うという話をしていますが、短期バケツ、中期バケツをガン無視して、長期バケツだけにしてしまうと、いざというときにお金がなくて、リスク資産を取り崩したり、借金したりみたいなことになってしまいます。
近いうちに使うお金を残したうえで、それでも投資に回せる余裕がある。その中で、特定口座をどう使うかを考える。順番としては、こちらの方が先です。人間は生きていかなければいけないので、短期バケツ、中期バケツが先なのですね。ちょっとぐらい長期バケツに入れてもいいですが、全力投入はちょっと違うとは思います。
・大きな含み益は、全額か放置かの二択にしない
三つ目は、大きな含み益がある商品です。
たとえば、利益が500万円なら、税金は100万円前後になります。新NISAで将来の利益が非課税になるからといって、これを一度に払うのが常に得とは、Q太郎は思いません。
ここでやりがちなのが、「全部売って寄せる」か、「税金が嫌だから何もしない」か、この二択です。でも投資は、そこまで白黒つけなくてもいい。
今年は成長投資枠の一部だけ使う。来年も枠が余ったら、もう一部を考える。あるいは特定口座はそのままにして、これからの積立だけを新NISAに集中させる。
大きな含み益は、過去の自分が長い時間をかけて作った資産です。税金を払う痛みも大きい。だから、口座をきれいにそろえるためだけに、大きな決断を急ぐ必要はないと思います。
ファイナルファンタジーで、エリクサーとか強い回復薬を全部ボス戦の一回目で使い切る必要はないですよね。だいたい変身を残していますし、戦いはまだ長い。最初から全力でいく必要はないわけです。
新NISAの枠も、毎年少しずつ使えます。資産の配置替えも、一回の決断で完成させなくていいわけです。
・アセットバランスは、口座ごとではなく全部を合算して見る
ここで、最初のコメントに戻ります。
特定口座にはインデックスファンド、新NISAのつみたて投資枠にもインデックスファンド、成長投資枠には米国個別株。この状態で特定口座から何かを売ると、アセットバランスが崩れるんじゃないか。これはその通りです。
ただ、見るべきなのは「どの口座に何があるか」より、全部を合算したときに何をどれだけ持っているかです。
特定口座に全世界株式が300万円、新NISAにも全世界株式が200万円、米国個別株が100万円あるなら、資産全体では全世界株式500万円と、米国個別株100万円を持っている。この全体像から考えます。
特定口座の全世界株式を一部売って、新NISAで同じ全世界株式を買うなら、資産配分そのものは変わりません。変わるのは、どの口座に置いているかだけです。
逆に、特定口座の全世界株式を売って、新NISAで米国個別株を買うなら、これは口座の振り替えではなく、資産配分の変更です。二つの判断を一緒にすると、頭の中が一気に混乱します。
Q太郎なら、まず「資産配分を変えたいのか」と「同じ資産をどの口座に置くか」を、別々の紙に書きます。前者は投資方針の話。後者は税金と非課税枠の話。この二つは似ていますが、別の問題なんですね。
資産配分を整えるなら、売却だけでなく、その後の積み立て先を変える方法もあります。米国個別株が増えすぎたと思うなら、慌てて全部を売る前に、新しい積み立てを全世界株式へ寄せて、時間をかけて比率を戻す。売る判断と、積み立てる判断も、分けて考えると少し楽になります。
・取り崩しの順番まで、今決めなくていい
そしてもう一つ、コメントにあった「将来どのように取り崩すのか」という不安です。
口座がごちゃ混ぜだと、老後にどこから売るかまで、今のうちに完璧に決めなければいけない気がしてきます。でも、Q太郎はそこまで背負わなくていいと思っています。
取り崩しが近づいたときには、資産額も、生活費も、税制も、健康状態も変わっています。今の時点で20年後の正解を固定するのは、天気予報を見ながら20年後の旅行の服装を決めるようなものです。
そもそもスマホが登場して、生活に浸透していったのも十年前ぐらいですしね。それまで誰もそんな世界は想像しなかった。
そんなわけで、今決めるべきなのは、もっと小さいことです。
新NISAには、これから長く持ちたい主力資産を優先して置く。特定口座にある商品は、含み損・小さな含み益・大きな含み益に分ける。そして、新規資金で新NISAを埋められるのかを確認する。
取り崩しの細かい順番は、資産を使い始める時期が近づいてから、もう一度考えればいい。未来の自分に選択肢を残すために、今は新NISAという非課税の箱を、無理のない範囲で育てていく。それで十分だと思います。
・まとめ
そんなわけでまとめると、特定口座から新NISAへ振り替えるかどうかは、「税金を払いたくない」という気持ちだけで決めない方がいいと思います。
今後も長く持ちたい含み損の商品は、税金なしで整理を始めやすい候補です。小さな含み益なら、今の税金と、これから先の非課税メリットを比べます。大きな含み益なら、全額を一気に動かすか、放置するかの二択にせず、年単位で考えればいい。
そして、アセットバランスは口座ごとではなく、全部を合算して見る。資産配分を変える判断と、同じ資産をどの口座に置くかという判断を、混ぜない。
保有し続けることも、税金を一円も払わないことも、投資の目的ではありません。
これから増えるお金をどこに置けば、自分の人生の選択肢が増えるのか。Q太郎は、そこから考えるのが一番いいと思っています。
皆さんは、新NISAの枠を新規資金だけで埋めていますか。それとも、特定口座の商品も少しずつ振り替えていますか。よければコメントで教えてください。
数字を味方に。そして、誰の欲望でもない自分の人生を、自分の手で耕していきましょう。ではまた、Q太郎でした。
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