『年金繰り上げ』をやっていいのか?判断基準と後悔しないための生存戦略

『年金繰り上げ』をやっていいのか?判断基準と後悔しないための生存戦略
年金60歳繰り上げをやっていいのかどうかの判断基準について動画です。録音できない環境なのでゆっくり実況形式(セルフボイス)でお送りします。チャンネル紹介ゆっくり実況形式(セルフボイス)について

こんなご質問をいただきました。

「現在53歳、会社員です。60歳以降はできるだけ労働したくないと考えています。自前の資産の取り崩し率を小さくできますし、また、住民税非課税世帯になれる可能性があるので、年金は繰り上げ受給が有力だと思っています。たしかに、繰り下げのメリットは、長生きリスクのヘッジと、ダイ・ウィズ・ゼロを実践できることかと思います。ですが、死ぬときに大きなお金が残ってしまってもよいのであれば、繰り上げでも、4パーセントルールの成功率アップと、税金・社会保険料の低減で、長生きリスクに十分対処できるのではないかと考えているのですが、いかがでしょうか。未熟な考えで恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。」

とのことです。ありがとうございます。

・導入・チャンネル紹介

以前は年金繰り下げの話をしましたが、今回は逆の年金繰り上げですね。

まず最初に言っておきたいんですが、この質問、かなり筋が通っていると思います。繰り上げ受給というと、なんとなく「損な選択」というイメージで語られがちなんですが、取り崩し率と税金・社会保険料の両方に効いてくるという整理のしかたは、ちゃんと数字で考えているかたの発想だなと感じました。

そんなわけで、ようこそ、Q太郎のお金の哲学へ。お金に振り回されないための生存戦略を日々発信しています。

今回は「年金の繰り上げ受給は本当にアリなのか」を、いただいたご質問をもとに深掘りしていきます。

・論点を整理する

まず、質問してくださったかたの主張を、Q太郎なりに整理させてください。

質問者さんの言う繰り上げ受給のメリットは、大きく二つあります。

一つ目は、年金を早くもらいはじめることで、自分の資産から取り崩す割合を小さくできること。いわゆる4パーセントルールの成功率が上がるという話です。

二つ目は、年金額そのものを抑えることで、住民税非課税世帯に入れる可能性があり、税金や社会保険料の負担も下がるということですね。

とくに会社を辞めると、多くの場合は国民健康保険に切り替わりますので、会社が負担していた半分の保険料も払わなくてはならなくなります。さらに言えば、副業とかしたり、配当金をもらっていたりといったケースでも、「会社で加入しているから払わなくていい」みたいな別腹にはできないので、確定申告で保険料は上乗せされていきます。

配当が強制的に国民健康保険料の対象になってしまうと、場合によっては、かなり大きなダメージを受けることにもなりますね。会社を辞めたあとの国民健康保険料は舐めないほうがいいです。会社で払っていたから許されていたあれこれを、全部払うことになるわけです。とくに副業したり、配当金を受け取っていたりしている人は注意ですね。

それで繰り下げのメリットとしては、長生きリスクへの備えと、資産を計画的に使い切る、いわゆるダイ・ウィズ・ゼロの実践がしやすくなることを、質問者さんは挙げてくださっています。

それを踏まえたうえで、死ぬときに大きなお金が残ってもいいのであれば、繰り上げと、4パーセントルール、それに税金・社会保険料の低減を組み合わせれば、長生きリスクにも十分対処できるんじゃないか、という論理でした。

これ、かなり整理された、いい質問だと思います。

・そもそも、いくらもらえるかで話が変わる

それで、この議論でけっこう重要なのは、「年金をいくらもらえるか」ですね。

以前も言いましたが、Q太郎は国民年金のみで、月あたりだいたい7万円ぐらいの受給額になります。この金額だと、繰り上げても繰り下げても、そもそもの額が小さいので、結構どうでもいい感じなのですね。月に数千円から、多くても数万円の違いにしかなりません。最大まで繰り下げようが、どっちにしろ足りないみたいな感じです。むしろ繰り上げで金額を抑えて、いざというときに生活保護を取りやすくしておいたほうがいいんじゃないかというレベルです。

金額が小さいと、住民税非課税世帯まわりの節税効果もほとんど発生しません。もともと非課税ラインにいるので、繰り上げて年金額を抑えたところで、節税もクソも無いわけです。

ちなみに、この繰り上げの議論で良く出てくる障害基礎年金ですが、これも1級で年間約100万円、2級で年間約84万円という金額です。子供がいれば金額の追加はありますが、年金の種類が変わっても、ベースが国民年金だけだと、額の規模がだいたい同じところに落ち着いてしまうんですね。

一方で、会社員として厚生年金にも加入しているかたは、受給額の規模がまったく違います。こうなると、Q太郎のケースとは話が変わってきます。パーセンテージの増減が、実際の金額としてもっと重く効いてきますし、住民税非課税世帯の基準を超えるか超えないかという攻防も、現実的な戦略として意味を持ってきます。

つまり、繰り上げ・繰り下げのどちらが有利かという議論は、実は「自分の年金がどのくらいの規模なのか」という前提抜きには語れない話なんじゃないかと、Q太郎は思っています。

ここからが、今回Q太郎が一番言いたいところなんですけど。

・「保険」の意味を掘り下げる

繰り下げが長生きリスクの保険だと言われる理由を、もう少し丁寧に見てみたいんですね。

4パーセントルールの成功率という話は、株式市場のズドンも含めた、突発的な市場リスクを含んでいます。リスクがあるかもしれないし、無いかもしれないという話です。

一方で、繰り上げによる年金の減額は、一度決まったら一生変わらない、恒久的なリスクなんですね。

完全にリスクが別物なので、この2つのリスクは分けて考えたほうがいいです。

取り崩し率が改善したとしても、それは「終身で保証されている部分」を「変動する自分の資産」に置き換えているとも言えるわけです。

安全な場所から、多少不確実な場所に、リスクを移動させている。つまり、リスクの種類を変えているという見かたもできるんじゃないかと。

RPGで例えると、パーティに僧侶とかの回復役がいる状態と、戦士や魔法使いだけで構成されている場合とでは、安定感がぜんぜん違うわけです。

戦士・魔法使いの攻撃力重視パーティは、ハマったら確かに強いです。ただし、ダメージを受けても回復してくれる人がいないわけです。戦士がダメージを受けて、魔法使いもダメージを受けてという状態になると、どんどんジリ貧になってくるわけです。

株式もそうで、ハマったらガンガンお金が増えるわけですね。ただし、年金とか、労働とかの、お金の回復役がいないと、ズドンしたときでも株式を取り崩さないといけないので、どんどんジリ貧になっていくわけです。

年金というのは、労働に変わる「回復役」に近い存在で、それを繰り上げて投資にまわすというのは、その回復役の一部を、攻撃力の高い戦士や魔法使いに置き換えるものなんじゃないかと思うんです。ハマれば強いですが、攻撃を受けたら回復力が弱いので、ジリ貧になる場合もあります。

・見落としやすい制度の落とし穴

税金・社会保険料の話にも、少し補足しておきたいことがあります。

生活を取り崩しや配当に頼る場合、当然、資産の売却益や配当も所得に加算されます。

年金額を繰り上げで抑えたつもりでも、取り崩しによる所得が大きければ、結局、住民税非課税世帯の基準を超えてしまうケースもあるんですね。

特定口座や新NISAなら、いまのところは「確定申告をしない」という方法で回避することができますが、今後はどうなるかわかりません。特定口座の利益も、社会保険料に自動的に算入されるという制度変更のリスクもあります。実際、そういう話が動いています。

もしそうなったら、高配当投資はもはやオワコンになって、分配金の出ないインデックス投資信託を必要に応じて取り崩すという戦略一択になりそうです。まあ、住民税申告不要制度が無くなった時点で、Q太郎的にはもう特定口座の高配当投資は厳しいと思っています。やるなら新NISAを使ってやったほうがいいですね。会社勤めだったら社会保険料を会社で払っているので、配当分の社会保険料は追加されませんが、個人事業主や退職者、FIREした人は、そういうわけにはいかないので、重い社会保険料を払う必要があります。

年金額だけを見るのではなく、取り崩し全体の所得設計とセットで考える必要がある部分だと思います。個人個人でケースが違うので、「これが正解」みたいなのが難しいのですね。

それで、資産に十分な余裕があるかたや、健康上の理由でご自身の長生きにあまり自信が持てないかたにとっては、繰り上げが合理的な選択になるケースは、十分にあり得ると思います。

ただ、株式と年金は、戦士と僧侶ぐらい役割が違うので、戦士多めでガンガン行こうぜにするのか、僧侶多めの安定したパーティにするのか、ここは自分のライフスタイルに合わせていくのがいいとは思いますね。

あとは、自分の年金の規模と、資産状況と、健康観を、自分なりに掛け合わせて出す答えなんじゃないかと思っています。

・まとめ

そんなわけでまとめると、繰り上げ受給には、取り崩し率の改善と、税金・社会保険料の低減という、たしかなメリットがあります。

ただそれは、年金というリスクの低い終身保証を、変動する自分の資産に置き換えているという側面も持っていて、しかもその選択は一生取り消せません。株式とはリスクの種類が違うのですね。市場は暴落するかどうかわかりませんが、年金は自分の決断によって確実にやってくるリスクです。

先程も言ったように、戦士多めの攻撃型パーティがいいのか、僧侶多めにして安定パーティでいくのか、自分のスタイルを作っていく必要があります。そして自分の年金がどのくらいの規模なのかによって、話も大きく変わってきますね。Q太郎の国民年金の規模だと、正直繰り上げても繰り下げても、月数千円とか、多くて数万円とかのレベルなので、インパクトはそんなにないわけです。

みなさんは、国民年金のみでしょうか、それとも厚生年金込みでしょうか。そして、繰り上げ派と繰り下げ派、どちらの考えに近いですか。よかったらコメントで教えてください。全部読ませていただいています。

数字を味方に。そして、誰の欲望でもない自分の人生を、自分の手で耕していきましょう。

ではまた、Q太郎でした。

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