米国高配当株「AT&T」20年来最大の暴落!買い場?ー暴落理由をわかりやすく解説
QYLD全力太郎ことQ太郎です。
米国市場は3日連続の続伸です。
S&P500は前日比で+0.99%と、ほぼ1%の大きな上げです。年初来で-16.63%と、4000に届きそうな感じですね。前回の三尊天井を目指す形になっています。
NASDAQも大きく上げ、前日比で+1.36%、年初来では-23.83%です。こちらも三尊天井を目指す形になっていますね。
また前日まで反応が薄かったテスラ株ですが、昨夜は大きく上げて+9.78%となりました。
ドル円のほうですが、日銀の金融緩和継続報道で一時は138円台後半まで上がっていましたが、バイデン大統領の新型コロナウイルス感染報道と10年債利回りが3%を切って急落したことで、一気に137円前半まで落ち込みました。ボラティリティの大きな展開になっていますね。
10年債利回りのほうですが、現在は2.9%も切ってしまってますね。2年債との逆イールドはまったく解消されていません。逆イールドについてはこちらを参照してください。
今回の10年債利回り低下は、発表された7月のフィラデルフィア連銀製造業指数が-12.3と予想を下回ったことで景気悪化観測からの債券買いが進んだというのもあります。
フィラデルフィア連銀製造業指数とは、ざっくりいうと製造業の景況感を示す経済指標で、マイナスなら景況感が悪いということですね。ようするに景気が悪いという状況です。
それで今回の数字がどれだけ悪いかというと、2020年5月以来の低水準、つまりコロナショックの底値レベルの景況感ということです。
さらに米新規失業保険申請件数は3週連続で増加しており、ようは失業者が増えています。GAFAMが率先して採用絞っていますしね。
急速な利上げでのリセッション(景気後退)懸念が、かなり現実化してきているとは思います。逆イールドも伊達じゃないということですね。
今回は決算のあった、みんな大好き高配当株「AT&T」が暴落した話題です。一時10%以上落ちましたね。高配当株が暴落したので、配当金利回りは上がり、むしろ買い場なのでないかとの意見もあります。
今回はAT&Tが暴落した理由と、買い場なのかどうかをわかりやすく解説していきます。本記事をYouTube動画で観たい方はこちらのリンクから。
AT&Tの暴落と利回り上昇
さて、高配当投資家が大好きな銘柄であるAT&Tです。
ティッカーシンボルが「T」という潔さがかっこいいですね。
アメリカの超大手老舗通信会社で、日本でいうところのNTTですね。電話を発明したグラハム・ベルのベル電話会社が前身になっています。
その超大手のAT&Tですが、昨夜ズドンいきましたね。一時10%を超える下げになっています。そのあと反発で盛り返し、最終的には前日比-7.62%となりました。このズドンは過去20年で最大の下げです。
配当利回りは5.4%ぐらいになりました。競合相手である通信大手のベライゾンも釣られ安で-3%ぐらい落ちていますね。こちらの配当金利回りは5.2%ぐらいあります。
AT&Tは昨日決算発表がありましたが、売上とかはまったく悪くなく、市場予想を超えていましたね。
売上は296億ドルで、予想の295.7億ドルを微妙に超えましたし、調整後1株益も0.65ドルと、予想の0.62ドルを超えてきました。
携帯加入増加数も+81.3万件と、予想の+55.4万件を大きく超えてきています。
じゃあなんでズドンするのかといえば、フリーキャッシュフローですね。ようするに純現金収入です。
フリーキャッシュフローとは?
フリーキャッシュフローは企業が本業で稼いだお金から、設備投資などの経費を引いた残りの現金です。ようするに手元に残ったお金ですね。どれだけ現金を稼いだかということにもなります。
売上がいくら良くても、投資でお金をつかいまくって手元のキャッシュが少ないと、投資家に配る配当金も少なくなるということになります。手元に現金が無ければ、配当金を払うこともできませんしね。高配当投資にとっては命取りの部分です。
グロース系の配当が低いのは、手元に現金があってもどんどん投資するので、株主に配れるほどの現金がないというのもあります。株主は「配当金払うお金があったら投資しろ」という話なので、企業自体の成長に賭けた投資になります。
一方で高配当投資の場合、すでに設備投資を終えたような老舗の会社が中心になります。コカコーラとかエクソンモービルみたいな石油会社とか、アルトリアグループみたいなたばこ会社とかですね。
積極的に投資する必要はないので、手元にたっぷり残った現金は投資家に還元されます。これが高配当株ですね。成長しきった企業なので、投資にお金をあまりつかわない代わりに、残った現金はみんなでわけましょうという話です。
高配当投資がもうからないというのもこれが理由です。何倍と成長していく株ではないのですね。
つまり高配当株にとっては、フリーキャッシュフロー(FCF)、つまり現金がどれだけ残っているのかはかなり重要になってきます。現金がなければ配当金を配れませんしね。
暴落した理由
今回のズドンですが、高配当投資家にとって一番重要なフリーキャッシュフローの通期見通しを、AT&Tは従来の160億ドルから140億ドルと、20億ドル引き下げています。
手元の現金が少なくなるということは、つまり配るお金も少なくなるということ、つまり将来的な減配ですね。
AT&Tの株を買っている理由のほとんどが「高配当だから」という理由だと思いますが、その高配当の部分がだめになったら、投資する意味もなくなります。いまさら急成長するような会社でもありませんしね。
それでキャッシュフローが減った理由ですが、「顧客の支払が遅れている」という、やたらと世知辛い理由です。
高インフレで生活費が上がっているため、支払いに遅れが出ているのですね。
帳簿を付けたことがある人はわかると思いますが、帳簿上の収益は、現金回収前にとりあえず売掛金という形で計上しておきます。そのため、リアルの現金の流れであるフリーキャッシュフローをチェックしておかないと、本当にその売掛金が回収されているかどうかがわからないのですね。
売上だけ大きくても、売掛金ばかりで現金が回収されてなかったら、実際のところはお金を稼いでいないことになります。
今後アメリカが不景気になって、「携帯料金払えません」みたいな人が増えていくと、現金が回収できないのですから、フリーキャッシュフローも一気に悪化する可能性があります。
手元の現金が少なくなれば、配当も減らすしかないわけです。無い袖は振れませんしね。世知辛い世の中です。
AT&TのCEO、ジョン・スタンキー氏によると、「顧客による支払いの遅れは今後も続くと予想」とのことです。
顧客は現在のところ、支払自体は行っていますが、期日を守る頻度は低下しているとのことですね。平均で2日遅れているとのことです。
まとめとQ太郎の見解
それでズドンしたAT&Tですが、現在の配当金利回りは5.4%ぐらいです。
そもそもスピンオフで、配当金が2.08ドルから1.11ドルと半額近くになっていますが、今後フリーキャッシュフロー悪化による、将来的なさらなる減配も心配されるところです。
売上や加入者数増加が予想を超えたことなど、高配当株でなければポジティブな指標が多いのですが、高配当目的で買っている人がほとんどとは思いますので、フリーキャッシュフローの悪化は将来的な減配リスクをかかえることになります。
ちなみにQ太郎はAT&T株をもっていましたが、スピンオフがあったので全部売却してしまいました。スピンオフをまたぐと、特定口座にある株が一般口座に移されてしまい、確定申告が面倒になるというのがありますね。
その後、そのまま存在を忘れて、買い戻したりしていないため、手元には1株もありません。
ただ、大企業と言うのはやはり強さがあります。
というのも、通信会社ということで、参入障壁の大きさがありますね。
日本と同じように、アメリカもAT&Tを含む一部の通信会社による独占状態になっています。そのため今後大きく業績が崩れる確率も低いとは思います。
今回の決算も売上自体は悪くないですし、ユーザーも拡大していますしね。支払いが遅れている問題もありますが。
ただ、通信業界内で激しいシェアの奪い合いがありますので、それに負けた場合、大きく収益を減らすことにもなります。
スピンオフでワーナーブラザーズを追い出してしまったので、いまは通信一本化という状態になってしまっています。通信にすべてをかけているような状況です。
通信大手のベライゾンも買って、ヘッジしておくという方法も無くはないですけどね。配当金利回りも似たようなものですし。
ここまでをまとめると、
・売上、1株益、増加加入者数は予想を上回る。
・ただフリーキャッシュフローは悪化。通期見通しを従来の160億ドルから140億ドルに修正。
・そもそもスピンオフで配当金は従来の半額状態。それでも現在配当金利回りは5.4%。
・通信業界ということで参入障壁が高いというメリット。
・ただスピンオフでワーナーブラザーズを追い出し、通信一本化したため、今後の通信業界のシェア争いに敗れると、一気に縮小する可能性もあり。
ということになります。
スピンオフで減配したとはいえ、まだ5.4%という高配当を保っています。ここから減配があって4%ぐらいになってもまだじゅうぶん高配当とも考えられます。
ただ今後のキャッシュフロー悪化もあるので、決算は毎回がっつり見張っておいたほうがいいですね。
基本的に個別株は、決算はかならず見た方がいいとは思います。捨てないといけない場合もありますしね。