
こんなコメントをいただきました。
「専業主婦です。特定口座で買った個別銘柄を少しずつ売って、新NISAでインデックス投信を買い直しています。基礎控除内におさめたくて、株式分割した銘柄からチマチマ売却。税金を払ってでも早く整理したほうが効率が良く、精神的にもすっきりするのかと思ったりしますが、やっぱり税金を払いたくないのです」
とのことです。ありがとうございます。
この気持ち、よく分かります。
個別株を整理して、インデックス投信へまとめたい。
新NISAへ移せば、その後の値上がり益は非課税になります。
頭では、早く移したほうがすっきりすると分かっている。
でも、売却ボタンを押すと、利益の約20%が税金として消える。
ただ今回、Q太郎が気になったのは、そこではなく、コメントにある「基礎控除内におさめたい」という部分です。
この基礎控除は、何の基礎控除なのでしょうか。
所得税の話なのか。
それとも、国民健康保険料の話なのか。
この二つを一緒にすると、途端に分かりにくくなります。
「基礎控除で収めたい」という金額で注意しなければいけないのは、所得税よりもむしろ国保料になります。国保料は基礎控除を越えたとたんに、均等割り・平等割りの軽減割合が減るので、一気に負担が増えていきます。具体的には7割減額だったものが、基礎控除を越えたとたんに5割減額、2割減額、減額無しとなっていきます。
どれだけ違うかと言えば、例えば奈良市の均等割り・平等割りを合わせると、8万6,100円になります。ところが基礎控除以下だと、これが7割減の2万5,830円となります。6万円ぐらい違うわけですね。さらに基礎控除を越えると、所得に応じた所得割りも出てきます。
そう考えると、見るべき数字は所得税の基礎控除は104万円ではなく、国保料の43万円です。
会社員だと会社で保険料を払っているので、マイクロ法人スキームのように、株式や副業でいくら稼ごうが、保険料は増えません。すでに会社で払っているからですね。
しかしFIRE後や退職後は、話が違ってきます。先ほども述べたように、金融所得課税以外に、国保料というエグい税金がかかってきます。
そんなわけで、ようこそ、Q太郎のお金の哲学へ。お金に飲み込まれないための生存戦略を独自の視点で解説します。今回は「株の利益43万円と国保」を深掘りしていきます。
・今回の論点
今日は大きく三つ話します。
一つ目、専業主婦なら43万円を気にすればよい、とは限らない理由。
二つ目、同じ株の利益でも、申告するかどうかで国保の扱いが変わること。
三つ目、国保における43万円は、何を意味する数字なのかです。
最後に、質問者さんのチマチマ売却に意味があるのか、Q太郎なりの見立てを置いて終わります。
・一つ目・専業主婦というだけでは分からない
それでは一つ目、専業主婦なら43万円を気にすればよい、とは限らない理由です。
専業主婦という言葉だけでは、加入している健康保険は分かりません。
配偶者が会社員なら、その会社の健康保険で扶養に入っている可能性があります。
配偶者が自営業者なら、夫婦で国保に入っている可能性があります。
あるいは、本人が何らかの形で別の健康保険へ入っていることもあります。
この違いは、かなり大きいんですね。
国保に入っていない人へ、国保の43万円を説明しても、その数字は直接の判断基準にはなりません。
配偶者の会社の健康保険で扶養に入っているなら、確認すべきなのは、その健康保険が株の利益を扶養判定でどう扱うかです。
ここは健康保険組合などによって確認が必要です。
ただ今回の動画では、そこまでは広げません。
今回は、自分で国民健康保険に入っている人の話だけをします。
ですから、最初に確認することは、株の利益でも売却額でもありません。
自分の健康保険証、あるいは資格情報を見て、自分が本当に国保へ入っているのかを確認することです。
国保でなければ、今回の43万円の話はいったん脇へ置いてください。
ただ会社員も含め、退職後は国保料を払うことになるので、国保の知識は持っておいたほうがいいでしょう。
FIREした人や退職者は、ここは本当に気を付けたいところです。会社が代わりに社会保険料を払ってくれていて、ある意味、疑似マイクロ法人スキームになっていた部分を、退職後は自分で払わないといけないからです。それが国民健康保険料です。
政治家ですらこれを払いたくなくて、どこかの法人に所属してしょぼい給料をもらって、それでしょぼい保険料を払うということをしています。法人で払っているので、実際の数千万円の収入に関しては、いっさい国保料を払わなくていいのですね。これがマイクロ法人スキームというせこい節税方法です。
会社員の方は、退職後に、このせこい方法が使えなくなることは理解しておいたほうがいいでしょう。あなたの持っている株式の配当金には、退職後に確定申告した場合、国民健康保険料がのっかってきます。その基礎控除が43万円です。所得税の基礎控除で考えてはいけないわけです。
そんなわけで、株式とか副業で稼ぎたいなら、国保料を払わなくていい会社員のうちにやったほうがいいとも言えますね。何千万円稼ごうが、法人に所属している某政治家とおなじく、国保料を払わなくていいですしね。
・二つ目・申告すると国保へ入ってくる
二つ目、同じ株の利益でも、申告するかどうかで国保の扱いが変わることです。
ここが今回、一番大切なところです。
特定口座が「源泉徴収あり」なら、株を売ったときに約20%の税金が差し引かれます。
そして、その利益について、確定申告をしないことを選べます。
確定申告をしなければ、その特定口座の利益は、原則として国保の保険料を計算する所得には入りません。
つまり、源泉徴収ありの特定口座で申告しないなら、国保のために利益を43万円以内へおさえる必要はないんですね。
利益が40万円でも、100万円でも、申告しなければ、原則としてその利益は国保の計算から外れます。
もちろん、約20%の税金は引かれたままです。
反対に、源泉徴収された税金を取り戻したい、ほかの口座の損失と相殺したい、損失を翌年以降へ繰り越したい。
そう考えて確定申告をすると、その申告した利益が国保の計算へ入ってきます。
税金が戻ってきたのに、翌年度の国保が上がる。
そんなことが起こり得ます。
税金だけを見れば、確定申告したほうが得だった。
でも国保まで合わせると、思ったほど得ではなかった。場合によっては、申告しないほうがよかった。
ここが、この制度の分かりにくいところです。あえて分かりにくくしているのだとは思います。
以前は、所得税では申告し、住民税では申告しないという選択ができました。
しかし現在は、所得税と住民税で異なる課税方式を選べません。
税金を取り戻すために申告する一方で、国保の計算からだけは外してもらう。
その都合のよい分け方は、現在はできないんですね。
だから、「いくら売るか」よりも先に決めることがあります。
この利益を申告するのか、申告しないのかです。そして申告しない方が、とくなケースが結構多いわけです。
ただ今後は、特定口座の利益に、自動的に国保料が乗っかってくるという制度変更があるかもしれません。ここは注意しておきたいところです。配当金がこれから不利になるというのも、この制度変更があるかもしれないからです。
配当金をもらっている人は、退職後は約20%の税金以外に、国保料として約15%ぐらい乗っかってくるイメージを持っておいたほうがいいでしょう。会社員のかたは、退職後を見据えた資産設計をしておいたほうがいいとは思います。
・三つ目・43万円は国保が無料になる線ではない
三つ目、国保における基礎控除43万円は、何を意味する数字なのかです。
国保の保険料には、自治体によって呼び方や計算方法に違いがありますが、所得に応じて増える「所得割」があります。
この所得割は、基本的に前年の所得から基礎控除を引いた金額をもとに計算します。
合計所得が一定以下の一般的なケースでは、この基礎控除が43万円です。
でも、「株の利益は43万円までなら国保に影響しない」と丸暗記するのは危険です。
副業やパートなど、ほかに所得があれば、それらも合算して考えます。ここは気を付けてください。
すでに別の所得があるなら、株の利益だけに43万円の控除をもう一度使えるわけではありません。
そして、43万円以下なら国保が無料になるわけでもありません。
先ほども言ったように、国保には、所得割とは別に、加入者の人数などに応じてかかる均等割りや平等割りがあります。自治体によって違いますが、これがだいたい約8万円ちょいです。そして先ほども言ったように、基礎控除以下だったら7割の軽減が受けられます。そうなると約2万円ちょいまで落とせるのですね。差額は6万円です。しかも所得割りを払わなくていい。結構大きいです。
ただ基礎控除以下でも、2万円ちょいは払わないといけない。
ですから43万円は、「ここまでなら何も起こらない魔法の非課税枠」ではありません。
しかもあくまで他の収入との合算なので、株式だけで考えてはいけないわけです。
・まとめ
最後に、質問者さんのチマチマ売却に意味があるのか。Q太郎の見立てを置いて終わります。
今回のコメントだけでは、意味があるとも、ないとも言い切れません。
加入している健康保険が分からないからですね。
もし配偶者の会社の健康保険で扶養に入っているなら、国保の43万円は直接の基準ではありません。
もし自分で国保に入っていても、源泉徴収ありの特定口座の利益を申告しないなら、その利益は原則として国保の計算へ入りません。この場合、国保のために43万円以内へチマチマ調整する意味はありません。いくら稼ごうが、約20%の税金を取られるだけです。
一方、自分で国保に入っていて、約20%の税金を取り戻すために確定申告するのであれば、話が変わります。
申告した利益は国保の計算へ入ります。
ほかに所得がほとんどなければ、43万円は所得割を考える一つの目盛りになります。
この条件なら、利益を少しずつ実現し、毎年43万円以下にする考え方には意味があります。
ただし、今回持ち帰っていただきたいのは、「43万円まで売ればよい」という答えではありません。
売却額を決める前に、自分が国保なのか、そして確定申告するのかを確認する。あと扶養であれば、収入が増えることで、扶養から外れてしまわないかも注意する必要がありますね。
順番はこちらが先です。
税金を取り戻すことばかり考えると、その先で増える国保が見えなくなります。
税金の還付はすぐに見えます。
国保の請求は、遅れてやってきます。
だからこそ、還付された金額だけを見て得をしたと思わないことです。国保料と合わせた場合、損しているケースが多いからです。苦労して確定申告した結果、よけいに多くのお金を払っていたというケースですね。
国保に加入しているかたは、株の利益を申告する前に、自分の自治体の国保料試算ページや窓口で、翌年度にどれくらい影響するか確認したほうがよいと思います。
皆さんは、確定申告で税金が戻ったあと、国保が上がった経験はありますか。あるいは、国保への影響を考えて申告しなかったことはあるでしょうか。よければコメントで教えてください。全部読ませていただいています。
数字を味方に。そして、誰の欲望でもない自分の人生を、自分の手で耕していきましょう。
ではまた、Q太郎でした。この動画を気に入っていただけましたら、高評価・チャンネル登録をよろしくお願いいたします。
