
こんなコメントをいただきました。
「私は結構投資の失敗をひきずる方ですが、Q太郎さんは失敗をどうリセットしていますか? 失敗してない?」
とのことです。ありがとうございます。
いや、Q太郎も失敗しまくってます。そして、ひきずることもあります。
投資の判断を間違えたとか以外に、無駄な物を買ってしまったとか、昨日、余計なことを言ってしまったとかですね。
こういうとき、頭の中で何度も同じ場面を再生することがあります。
なぜ買ってしまったのか。
なぜ、あのとき売らなかったのか。
どうして、あんな言い方をしたのか。
以前の動画でも述べましたが、相手はそこまでアドバイスを求めていなかったりするのに、アドバイスしすぎるという問題もありますね。自分も疲れるし、相手との関係も悪くなる。
あと仕事でも、相手がやたらと安く買いたたこうとしてくるので、交渉に疲れて無言で連絡を取らなくなったということもありましたが、自分も相手もいい大人なので、もうちょっとやりかたがあったんじゃないかと思う事もあります。
そんな感じで、考えれば考えるほど、過去の自分に腹が立って、寝ているときにそういうことを考えてしまうと、なかなか眠れなかったりすることもあったわけです。
でも、どれだけ反省しても、過去の場面へ戻ることはできません。
買った物は、もう部屋にあります。
投資の損失も消えません。
言ってしまった言葉も、相手の記憶から削除できません。
基本的には、過ぎたことはどうにもなりませんね。
そこでQ太郎は、これらどうにもならないことに対して、「世界5分前仮説」を使って、これら後悔やサンクコストを無効化することを考えました。
「世界5分前仮説」というのは、うちのチャンネルの常連でもあり、「幸福論」の著者としても知られるイギリスの哲学者、バートランド・ラッセルによる有名な思考実験ですね。
この世界は、5分前に作られた。
そしてQ太郎も、5分前に初めて、この世界へ登場した。
頭の中にある過去の記憶は、最初から植え付けられていたものです。
昨日失敗した自分も、十年前に選択を間違えた自分も、本当は存在しません。
5分前に現れたQ太郎が、それらしい記憶と、失敗の結果だけを渡された。
そしてこの仮説を否定することのできるロジックは存在しないのです。
そう考えると、過去への見え方が少し変わります。
ゲームでいえば、他人が途中まで遊んだセーブデータを、突然渡されたようなものです。
所持金も、能力も、アイテムも、人間関係も、途中まで進んだクエストも、すでに決まっています。
セーブデータの内容は変えられません。
でも、ここから先をどう立ち回るかは、自分で決められます。
そんなわけで、ようこそ、Q太郎のお金の哲学へ。お金に飲み込まれないための生存戦略を独自の視点で解説します。
今回は「後悔をリセットする、5分前仮説」を深掘りしていきます。
・三つ話すこと
今日は大きく三つ話します。
一つ目、世界が5分前に作られたという、ラッセルの仮説。
二つ目、人生を、他人のセーブデータを引き継いだゲームとして考える方法。
三つ目、買い物、投資、失言の後悔を、現在からどう選び直すのかです。
最後に、過去の責任を引き受けながら、過去の自分から自由になることはできるのか、Q太郎なりの見立てを置いて終わります。
・一つ目・世界は5分前に作られた
それでは一つ目、世界が5分前に作られたという、ラッセルの仮説です。
ラッセルは、1921年の『心の分析』という本で、記憶について考える中で、こんな仮説を出しました。
「世界は、5分前に突然作られたのかもしれない。
建物も、化石も、古い本も、私たちの身体も、過去の記憶も、すべて今の状態で一度に作られた。
私たちは何十年も生きてきたと思っているけれど、その記憶自体が、5分前に世界と一緒に作られたのかもしれない。」
そんなことは、あり得ないと思うでしょう。
Q太郎も、本当に世界が5分前に作られたとは思っていません。
しかし、これを論理だけで完全に否定するのは難しい。難しいというか、不可能です。絶対に否定できません。
例えば、百年前の写真を見つけても、「その写真も5分前に作られた」と言われれば終わりです。5分前に作られたものじゃない証拠は出しようがないのです。
自分の子どものころの記憶を話しても、「その記憶は植え付けられたもの」と言われれば、反証にはなりません。
地層や化石を調べても、「それを含んだ状態で世界が作られた」と言われれば、やはり否定できません。
現在にある証拠はすべて、過去があったように見せるために、最初から配置されたものかもしれないからです。
これは私たちが「過去を知っている」というとき、実際は手元にあるのは「記憶」や「記録」、「物」に頼っているからです。現在において過去は存在せず、あくまで過去はそれら「記憶」や「記録」からの「推測」の領域を出ないのです。
だから、「過去」という「現在存在しないもの」は証明しようが無い。悪魔の証明ですね。
ただ、Q太郎が面白いと思ったのは、ここからです。
本当に世界が5分前に作られたかどうかは、実際のところはどうでもいい。
自分が5分前に登場したと仮定すれば、後悔やサンクコストを切る道具として使えるのではないか。Q太郎的にはここを利用したいわけです。
哲学の問題を、そのまま人生のリセットボタンにしてしまうわけですね。
・二つ目・他人のセーブデータ
二つ目、人生を、他人のセーブデータを引き継いだゲームとして考える方法です。
5分前に初めて登場した自分には、過去がありません。
頭の中には、過去らしい記憶があります。
しかし、それは自分が体験したものではなく、この世界へ来たときに一緒に渡された設定だと考えます。
ゲームでいえば、自分で最初から育てたキャラクターではありません。
他人が途中まで遊んだセーブデータを渡され、「さあ、ここからゲームを始めてください」と言われた状態です。
キャラクターのレベルは、すでに決まっています。
得意な能力も、苦手な能力もあります。
所持金、持ち物、借金、家、仕事、人間関係もあります。
前のプレイヤーが買った、使い道の分からないアイテムもあります。
途中で放置されたクエストもあります。
会話の選択肢を間違えて、好感度が下がった相手もいるかもしれません。
ずいぶん癖のあるセーブデータを渡されたものだと思うこともあるでしょう。
しかし、新しく操作を始めた自分が、前のプレイヤーの攻略方針を守る必要はありません。ここが重要なところです。
前の人が大金を使って手に入れた武器だから、弱くても最後まで装備しなければならない。
前の人がこの能力を育ててきたから、役に立たなくても同じ育て方を続けなければならない。
前の人が始めたクエストだから、面白くなくてもクリアしなければならない。
他人のセーブデータを引き継いだ自分には、そんなルールはどうでもいいわけです。今から自分の方針でやるだけです。
現在の攻略に必要なら使う。
必要がなければ、外す。売る。別のものに交換する。
過去に何を目指していたかではなく、現在の状態から、次に何をすればよいかを考えます。
これが、Q太郎の5分前仮説の利用の仕方です。
セーブデータの内容自体は変えられません。
ただし、そこから先をどう立ち回るかが、今のプレイヤーの腕の見せ所です。
ここで一つ、誤解してはいけないことがあります。
5分前に現れたのだから、昔の責任は自分と関係ない、という話ではありません。
借金も、契約も、人へ与えた損害も、現在のセーブデータに記録されています。
他人から買った恨みもすべて、今コントローラーを持っている自分が引き継ぎます。
過去の判断には従わない。
しかし、過去が残した現実と責任は引き継ぐ。
この二つを分けます。
そしてそこをどう立ち回るかが、これから始めるゲームの面白さとも言えます。困難だらけのセーブデータも、「よっしゃ、なかなか面白そうな設定やないか」と楽しめるわけです。
・三つ目・現在から選び直す
三つ目、買い物、投資、失言の後悔を、現在からどう選び直すかの実例です。
まず、無駄な買い物をしてしまったときです。
高い物を買ったのに、ほとんど使っていない。
普通に考えると、せっかく買ったのだから使わなければならないと思います。
捨てたり売ったりすれば、買ったことが完全な失敗になるような気もします。
ここで5分前仮説を使います。なんか最近、「異世界転生」みたいな小説が流行っていますが、そのノリで考えればいいでしょう。知らない人に自分が転生したという話ですね。
5分前に登場した自分の部屋に、知らない物が置いてあった。この「知らない物」というのがポイントです。
記憶によれば、前のプレイヤーが高いお金を出して買ったらしい。
しかし今の自分は、その買い物をしていません。
考えるのは、現在この物を持っていることが、自分の生活に必要かどうかだけです。
使いたいなら使う。
使わないなら売る。
売れないなら処分する。
購入価格を取り戻すために、さらに時間や場所まで差し出す必要はありません。他人の持ち物だと思って、「今の時点」から必要かどうかを考えるのですね。
次に、投資で判断を間違えたときです。
買ったあとに値下がりして、大きな含み損が出ている。
買った株価に戻るまでは売れないと思うかもしれません。
でも、5分前に登場した自分にとって、その買値は、植え付けられた記憶の中にある数字です。
今目の前にあるのは、現在価格の金融商品です。
「よくこんなダメ会社の株を買ったな」と鼻で笑いながらさっさと損切りするかもしれませんし、「会社自体は悪くないから、今後持ち直すかも」とホールドするかもしれません。
過去の買値ではなく、今から先の期待とリスクで判断します。思い入れがないので、逆に正しい判断ができるのですね。
最後に、昨日間違ったことを言ってしまい、思い悩んでいる場合です。
5分前に登場した自分は、その言葉を言っていません。
ただし、この身体と名前を使っていた前のプレイヤーが誰かを傷つけ、その履歴を自分が引き継いでいます。
言った事実は変えられません。
相手が傷ついたことも、なかったことにはできません。
しかし、なぜあんなことを言ったのかと、存在しない過去の自分を何時間も責め続ける必要はありません。
今のプレイヤーにできることは何か。
謝るのか。
説明するのか。
相手の話を聞くのか。
次に同じ選択肢を選ばないため、何を変えるのか。
後悔を繰り返すのではなく、現在から修復を始めます。
買い物も、投資も、失言も、過去の結果は残ります。
ただ、過去の自分を守ったり、罰したりするために、未来の判断まで曲げる必要はありません。
5分前に初めてこのセーブデータを渡された自分なら、ここから何をするか。
Q太郎は、その問いで一度リセットをかけます。
・まとめ
最後に、過去の責任を引き受けながら、過去の自分から自由になることはできるのか。Q太郎なりの見立てを置いて終わります。
後悔しているとき、私たちは過去の自分と現在の自分を、強く結び付けています。
自分が買った。
自分が選んだ。
自分が言った。
だから、その判断を正当化するか、もしくは後悔して自分を責め続けなければならない。その二択になりがちです。
でも、世界が5分前に作られ、自分も5分前に登場したと考えれば、その結び目を一度ほどくことができます。
過去は、他人が残したセーブデータです。
内容は変えられません。
良い能力も、悪い評判も、資産も、借金も、すべて引き継ぎます。
しかし、ここから先の操作は、自分に渡されています。
Q太郎は、5分前仮説は、過去の責任を消す方法ではないと思っています。
過去の自分への執着を消し、残された責任を、今の自分が合理的に引き受け直す方法です。
過去の判断は引き継がない。
過去が残した現実だけを引き継ぐ。
そして、そのセーブデータから、次の合理的な一手を考える。
ひどいデータを渡されたとしても、ゲームが終わったわけではありません。
むしろ、そこからどう立て直すかが、プレイヤーの腕の見せ所です。
過去の自分を責めても、セーブデータは書き換わりません。
Q太郎が考えたいのは、なぜこんなセーブデータになったのかではなく、このセーブデータで次の一手をどう打つかです。ゲームをこれから遊ぶ気持ちで考えるのですね。
能力値も、所持金も、借金も、評判も選べません。
ただし、5分前からコントローラーを握っているのは自分です。
皆さんが今、他人のセーブデータを突然渡されたとしたら、最初に何を変えるでしょうか。持ち続けるのをやめる物、撤退する投資、修復したい関係はありますか。よければコメントで教えてください。全部読ませていただいています。
数字を味方に。そして、誰の欲望でもない自分の人生を、自分の手で耕していきましょう。
ではまた、Q太郎でした。この動画を気に入っていただけましたら、高評価・チャンネル登録をよろしくお願いいたします。
