
こんなコメントをいただきました。
「よくある「お金持ちの共通点」という記事ですが、ほとんど生存者バイアスだと思います。つまりそれをしたにもかかわらず、お金持ちになれなかった人も多くいるわけです。」
とのことです。
これは本当にそうですね。少数の成功者のうしろには、多数のシカバネがあるわけです。ところが成功者というごく少数の「生存した人」の意見だけがクローズアップされて、そのうしろにある死屍累々の失敗者がクローズアップされることがないのですね。
これは人間の脳が、「ある」ということには注目するのですが、「ない」ということには注目しないという性質があるからです。
たとえば、こんな数字を見せられたとします。
「犯罪者の95%は、パンを食べています」
これは「犯罪者」と「パンを食べている」ことの間に、相関関係があるという話ですね。
そうなると、スーパーは、危険な物を堂々と売っているわけです。パン屋さんにいたっては、店中にパンを並べています。
しかし、もちろん、パンを食べたから犯罪者になるわけではありません。
これが統計としておかしいのは、あと3つの組み合わせを用意して比較しないといけないわけです。
一つ目は、「犯罪者」で「パンを食べない人」。
2つ目は、「犯罪者じゃなくて」「パンを食べる人」。
3つ目は、「犯罪者でもなく」「パンも食べない人」。
つまり4つの組み合わせを用意して、そこから「犯罪者」で「パンを食べる人」が、他の組み合わせに比べて有意差があるかどうかを調べる必要があるわけです。
ところが、「犯罪者であり、パンを食べる人」だけを見せられると、ほかの組み合わせが見えなくなります。
そして、この消えた3つの枠を利用すると、嘘をつかなくても、人をかなり簡単に誘導できます。
「お金持ちの多くは投資をしている」
「成功者の多くは早起きをしている」
「FIREした人の多くは、若いころから節約している」
どれも、先ほどのパンと同じ構造で、「成功者」で「早起きしていない人」の割合など、抜け落ちている組み合わせの説明がされていないのですね。
そんなわけで、ようこそ、Q太郎のお金の哲学へ。お金に飲み込まれないための生存戦略を独自の視点で解説します。
今回は「お金持ちの共通点を信じてはいけない」を深掘りしていきます。
・三つの話
今日は大きく三つ話します。
一つ目、「犯罪者の95%はパンを食べる」のトリック。
二つ目、お金持ちの共通点から消えている人たち。
三つ目、数字を見たときに探したい3つの枠です。
最後に、数字で嘘をつかずに人をだます方法について、Q太郎なりの見立てを置いて終わります。
・一つ目・見せられた1つの枠
それでは一つ目、「犯罪者の95%はパンを食べる」のトリックについてです。
統計的に全体を考えるには、この一つだけを提示するのは不完全で、4つのグループへ分ける必要があります。
一つ目は、パンを食べる犯罪者。今回提示されたのはこれですね。
二つ目は、パンを食べない犯罪者。
三つ目は、パンを食べる、犯罪者ではない人。
四つ目は、パンを食べず、犯罪者でもない人です。
「犯罪者の95%はパンを食べる」という数字が教えてくれるのは、このうち一部の関係だけです。
問題はそれがすべての組み合わせに対して、有意差を持っているかですね。
「犯罪者ではない人の95%以上もパンを食べている」なら、「パンを食べることと犯罪」には特別な有意差がないわけです。
むしろ、「パンを食べなくて、犯罪者になる」割合が高い可能性すらあります。
残りの3つの枠を見ないかぎり、その組み合わせが特別なものなのかは、判断することはできないわけです。
それでも「犯罪者」「95%」「パン」という言葉を並べられると、何か重大な関係を発見したように感じます。
数字が具体的だからです。
「犯罪者にはパンを食べる人もいます」では、誰も驚きません。
しかし「95%」と付けるだけで、急に研究結果のような顔になります。
人は、示された数字が正しいかどうかを考えても、示されなかった数字が何かまでは、なかなか考えません。
嘘がないから、安心してしまうのですね。
ただ、嘘をついていないことと、正しい結論へ導いていることは別です。
1つの枠だけを正確に見せても、残りの3つを隠せば、全体とはまったく違う印象を作れます。
・二つ目・成功しなかった人が消える
二つ目、お金持ちの共通点から消えている人たちです。
「資産1億円を作った人の80%は、投資をしていた」
これも説明のために作った数字ですが、こう言われると、投資をすれば資産1億円へ近づけるように感じます。
しかし、ここでも4つの枠が必要です。
一つ目は、投資をして、お金持ちになった人。
2つ目は、投資をせず、お金持ちになった人。
3つ目は、投資をしても、お金持ちにならなかった人。
4つ目は、投資をせず、お金持ちにもならなかった人。
成功者だけに話を聞けば、最初の「投資をしてお金持ちになった」か、せいぜい「投資をしなくてお金持ちになった」かの、2つしか出てきません。
しかも「お金持ちの共通点」という企画では、投資をして成功した人が主役になります。
同じように投資をして、資産を減らした人は、最初から取材されません。
画面に登場しないので、視聴者の頭からも消えます。
早起きも同じです。
成功者10人へ話を聞き、8人が朝5時に起きていた。
そこで、「成功者の80%は早起きです」と言う。
しかし、「早起きしているのに、成功していない人」が、その何千倍もいるかもしれません。
その人たちは本を出しませんし、成功者インタビューにも呼ばれません。
生存者バイアスとして、早起きした人だけがクローズアップされるわけです。
FIREした人の節約習慣もそうです。
FIREした人に聞けば、若いころから支出を抑え、投資へ回していた人が多いでしょう。
ただ、「節約した人が、全員FIREできた」わけではありません。
収入が増えなかった人もいます。家族の事情でお金が必要になった人もいます。投資で損をした人もいます。節約しすぎて、途中で嫌になった人もいます。
成功者の側から過去を眺めると、成功へ続く一本道に見えます。
しかし出発地点には、同じ道を歩き始めて、別の場所へ着いた人がたくさんいます。
成功者の共通点が、まったく無意味という話ではありません。
投資も、早起きも、節約も、役に立つ場合があります。
問題は、成功者がそれをしていたというだけで、それが成功の原因だと思ってしまうことです。
成功者の95%は、水を飲んでいます。
おそらく、かなり正しいでしょう。
だからといって、水を飲めば成功するわけではありません。
成功者の共通点には、成功と関係のないものも、大量に混ざっているわけです。しかし統計的な比較に必要な残りの3つのデータを消しているわけです。
・三つ目・消えた3つの枠を探す
三つ目、数字を見たときに探したい3つの枠です。
健康食品の広告で、「愛用者の90%が、毎日を元気に過ごしています」と言われたとします。
ここで、「すごい、90%もいる」と終わらない。ここまで聞いた人なら、あと3つ、なにを比較しなければならないかわかると思いますが、
まずは「愛用者」で「元気じゃない人」。
つぎに「愛用者じゃなくて」「元気な人」。
最後に「愛用者じゃないし、元気でもない人」。
この消えた3つの枠を、同時に考えないといけないわけです。
商品を飲んでいない人の90%も元気なら、その健康食品による差はないかもしれません。
投資商品で、「利用者の多くが利益を実感」と言われた場合も同じです。
利用しなかった人が、別の方法でどのくらい利益を得たのか。
利用しても損をした人は、どれぐらいいるのか。
損をして途中でやめた人は、利用者にカウントされていないのではないのか。
最初に見せられた1つの数字から、いったん目を離します。
そして、比較されていない相手を探すのですね。
ここで、難しい統計計算をする必要はありません。
Q太郎なら、まずこう考えます。
「それをやって、うまくいかなかった人はどれぐらいいるのか」
成功者の習慣を聞いたら、同じ習慣を続けても成功しなかった人を考える。
投資で儲かった人を見たら、同じ時期に同じ商品を買い、売る時期が違って損をした人を考える。
健康になった人を見たら、同じ物を食べても病気になった人を考える。
この一言だけでも、かなり違います。
数字に反対する必要はありません。
「その95%は嘘だ」と決めつける必要もありません。
示された数字は正しいかもしれない。
ただ、残りの3つの枠が分からないので、まだ結論は出せない。
それで止まればよいのです。
人は、すぐに結論へ行きたがります。
パンは危険だ。投資をすれば金持ちになれる。早起きすれば成功する。この健康食品を飲めば元気になる。
しかし4つの枠が埋まっていないなら、その結論は、まだかなり早いのですね。
・まとめ・数字ではなく空白を見る
最後に、数字で嘘をつかずに人をだます方法について、Q太郎なりの見立てを置きます。
数字で人をだますために、嘘の数字を作る必要はありません。
都合のよい1つの枠だけを見せ、残りの3つを隠せばよいのです。嘘は必要ないわけです。
「犯罪者の95%はパンを食べる」
この数字が本当だったとしても、パンが危険だという結論にはなりません。
犯罪者ではない人が、どのくらいパンを食べているのかが消えているからです。
「成功者は早起きしている」
これも本当かもしれません。
ただ、早起きしても、成功しなかった人が消えています。
成功者の話には、成功しなかった人の声が入りません。
そのため、成功した人がやったことは、すべて成功の原因に見えます。
朝5時に起きた。冷たいシャワーを浴びた。毎日日記を書いた。靴をきれいに磨いた。
成功者がパンを食べていたら、パンまで成功の秘訣になります。
ちなみに、Q太郎が一番意味がわからんのは、「成功者は長財布を使っている」というやつですね。ベースの部分から意味がわかりません。なんでやねん、と。
そんな感じで、Q太郎は、数字を見るとき、書かれている数字より、書かれていない数字のほうが重要な場合があると思います。
何%だったのかではなく、誰が数えられていないのか。
何をした人が成功したのかではなく、同じことをして失敗した人はどれだけいるのか。
目の前の1つの枠が、きれいな数字で埋められているほど、残りの3つを見たほうがよいでしょう。
パンを食べる前に悩む必要はありません。
ただ、「犯罪者の95%」を見てパンを捨てる前に、犯罪者ではない大勢の朝食も思い出したほうがよいと思います。
皆さんは、「成功者の共通点」をまねしたけれど、特に何も起こらなかった経験はありますか。また、数字を見て信じたあと、比較対象がないことに気づいた経験はあるでしょうか。よろしければコメント欄で教えてください。全部読ませていただいています。
数字を味方に。そして、誰の欲望でもない自分の人生を、自分の手で耕していきましょう。
ではまた、Q太郎でした。この動画を気に入っていただけましたら、高評価・チャンネル登録をよろしくお願いいたします。
