【出口戦略】「バケツ戦略」の取り崩し【新NISA】

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torikuzushi

新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。

前回はバケツ戦略での貯蓄・投資方法についての話をしました。

今回はその逆で、老後やFIRE後など、バケツ戦略での取り崩しについてです。

本記事をYouTube動画で観たい方はこちらのリンクから。

 

バケツ戦略での取り崩し

さて、バケツ戦略での取り崩しについてです。

視聴者様からこのような質問がありました。

資産2億円でオルカン1億円、現金(国債)1億円で基本現金から取り崩す。

年285万を35年現金から取り崩してそのあいだにオルカン1億円を育てる。

20~25年くらいで現金が減ってきたらオルカン売却で現金に補填。あとはそれの繰り返し このプランはうまくいきそうですか?

ちゃんと現金管理さえできればよほどのインフレがないかぎり大丈夫とはおもうんですが。

あと、このプランならNISA口座いらないですかね?たぶん取り崩すのは1回だけだと思うんで

とのことです。

ちょっと意味がわかりづらい部分もあるので、Q太郎的に解釈していくと、

まず資産2億円あったばあい、オルカンに1億円、現金(もしくは国債)に1億円とわけます。

そして基本、現金から取り崩していきます。

取り崩す金額は年間285万円です。これを35年続けます。285万円×35=9975万円なので、だいたい1億円ですね。

この取り崩し期間の35年で、オルカンに投資した1億円を育てていきます。ようするに現金取り崩し期間は、オルカンを取り崩さないということですね。

ここがちょっとわかりにくい部分なのですが、35年後まで待つことなく、20~25年くらいで現金が減ってきたら、オルカンを売却で現金に補填するということだと思います。

「取り崩すのが1回だけ」と書いているので、どこかのタイミングで一括売却してぜんぶ現金化するということとは思います。

まとめると、株式1億円・キャッシュ1億円で、現金から毎年285万円ずつ使っていきます。計算上は35年で現金部分は尽きてしまいますね。

また35年後のタイミングで株式がズドンしてしまう可能性もあります。

そのため、20~25年あたりで、いい感じに株価が上がっていたらオルカンを一括売却して現金化するといったことかと思います。

順序的には、まず1億円をつかって、後半あたりのいい感じのところでオルカン1億円を売却して現金化。それで余生を過ごすということでしょう。2億円で年間285万円つかえば70年持ちます。オルカンが膨らんでいれば、それ以上の年月を過ごすことができるでしょう。

「よほどのインフレがないかぎりは大丈夫とはおもうんですが」とありますが、たしかによほどのインフレがないかぎりは、毎年285万円を70年間使えるなら、人間の寿命を考えれば十分とは思います。

それで、「このプランはうまくいきそうですか」とのことですが、結論から言えば、資産管理の面からすると「リスクが高い」とは思います。

投資に絶対はない

投資をするにあたって、まず考えておかなければならないのは「投資に絶対はない」ということです。

まず「よほどのインフレがないかぎりは大丈夫」や、「株式が30年以上でかならず右肩上がりに膨らんでいる」ことを決め打ちして資産運用するのは危険といえます。

最近投資をはじめた方にとっては、いま株式は好調なので、これが未来永劫つづいていくと錯覚してしまうかもしれません。

ただQ太郎はネットバブルやリーマンショックなどを経験してきたので、いくら調子がよいとはいえ、手放しで株式全力はできません。そこまで株式を信用できないからです。

たとえばインデックス投資ですが、よくいわれている「20~30年ホールドしていれば複利で増えていく」というのは、あくまでこれまでがそうだったというだけであって、「これからもそうだ」という保証は、当然ながらどこにもありません。

こういう想像していなかった不測の事態を、「ブラックスワン」という言い方をします。黒い白鳥を見たことがないからといって、黒い白鳥が存在しないわけではありません。

インデックス投資は、長期で増える確率は高いですが、その一方で「ズドンの可能性」「ズドンしたあとに長期的に回復しない」可能性も多少は警戒しておかなくてはなりません。

「インデックス投資は長期的に増えるかもしれないけど、あなたが生きているあいだ、あなたがお金を必要とするタイミングには増えないかもしれない」という可能性ですね。

逆に現金だけもっていればいいかと言われれば、これもリスクがあります。「よほどのインフレがないかぎりは大丈夫」とのことですが、「よほどのインフレ」が起こるかもしれませんので、やはりインフレ対策のリスク資産は持っておいたほうがいいでしょう。

そんなわけで、株式や現金など、なにかに依存する生き方には本当に注意したほうがいいとは思います。インデックス投資に関しても、「増える確率は高いかもしれないけど、タイミング次第ではそうじゃない可能性もある」ぐらいのスタンスでやったほうがいいでしょう。信じつつ疑うという感じですね。

とにかく株式だけとか現金だけとかのように、なにか一つに依存するのは、リスク分散の意味でも避けるべきとは思います。

資産がまだ数百万円ぐらいで、これからそれを膨らませる段階であれば株式全力でも、失敗してもまだ取り返せます。現役世代で数百万円程度の損失なら、働いてカバーできますしね。

ただ数千万円や数億円ともなると、働いて簡単にカバーできる金額ではありません。とくに定年間近や老後は、そもそも労働から得られる収入が激減します。大金を失ったら人生詰むことにもなりかねません。

老後資金はしゃれにならないので、しっかり考えたほうがいいとは思います。そのため、若いころのように株式全力・レバレッジ全力・イケイケドンドンみたいなやり方ではなく、いかに減らさないですむかという「資産防衛」の考え方も取り入れていく必要があります。

「いかに減らさないか」というのは、現在の2億円の資産価値を、インフレも加味してその価値を保持するということです。そうなると現金だけではだめですし、ブラックスワンの発生に備えて株式などのリスク資産だけでもだめです。

つねにどちらも持って、どう転んでもいいように補う形にしておくのが重要なのですね。

インデックス投資を開発して投資商品化した「インデックスファンドの父」ことバンガード社の創業者ジャック・ボーグル氏は、アセットアロケーションを債券5:株式5の割合で保持していました。これも、どう転んでもいいようにです。

インデックス投資をつくった人ですが、インデックス投資全力とはならないのです。

投資歴が長く、資産が大きい人ほど、どう転んでもいいようにいろいろなアセットに資産を分散させておきます。

それとウォーレン・バフェット氏が遺言に、債券1:インデックス9で運用するように伝えたという話は有名ですが、これは次の代のためではなく、子々孫々伝えていく財産なので超長期運用の株式を中心にしていいということです。次の一代だけの財産の話ではありません。

超長期という投資スパンを考えたアセット配分です。超長期では株式が有利なので、株式が9なのです。

ただし人間の一生はそんなに長くはありません。そのため、なにかあったときに対応するため、短期で強いアセットである現金も必要なのです。

バケツ戦略

さて、バケツ戦略に話を戻します。前回はバケツ戦略を使った貯蓄・投資方法でしたが、今回はその取り崩しです。

簡単に説明しますと、貯蓄・投資の段階において、3つのバケツを用意します。短期バケツ・中期バケツ・長期バケツの3つですね。

まずまっさきに貯蓄しなければならないのは、短期バケツの生活防衛資金です。これは何かあったときにすぐに使えるお金なので、銀行の普通預金などに現金で置いておくといいでしょう。

生活防衛資金は人にもよりますが、会社づとめなら半年分の生活費があればいいと言われています。一か月20万円使う人なら、120万円を投資よりもまっさきに貯めるのがいいでしょう。個人事業主や自営業などは収入が不安定なので、もっとあったほうがいいとは思います。

その次に中期バケツですが、これは子供の学費や家・車の頭金など、数年後に確実に発生する支出への貯金です。現金でもいいですし、定期預金や国債で運用してもいいでしょう。低リスクで元本が保証される形のものがいいですね。

この中期という期間は人それぞれですが、たとえば子供が高校生になって、あと3年で大学生というタイミングであれば、Q太郎であれば大学費用は現金で用意します。あと3年ぐらいしかありませんし、株式だとそのタイミングでズドンするかもしれませんしね。そうなったらお金が無くて計画が狂ってしまいますので、確実にするためにも数年先のことは現金で用意したほうがいいでしょう。

子供が幼児で、大学までまだ10年以上もあるなら株式の運用でもかまいませんが、ただあと数年まで近づいてきたら、その時期までに必要な現金を用意しておくほうが安全とは思います。

さすがに自分の親が、

「高校入学おめでとう!おまえはあと3年で大学に入る。その資金を株式運用で工面してやろう。株式は変動が激しいし、3年後に株式がズドンしてたら大学に行けなくなるかもしれないけど、そこは運しだいだ」

とかいってきたら、さすがにこんな親は嫌すぎます。大学費用を宝くじやパチンコ、競馬の利益に頼っている感がありますし、場合によっては大学行けなくなってしまいます。運なんかに頼らないで、3年先の資金ぐらい現金で用意しとけとは思いますね。大学費用が運任せとか最悪です。

そんなわけで、短期・中期バケツは、使う予定のある支出を確実に支払えように、現金や定期預金などの無リスク資産で備えておきます。

この短期・中期バケツを満たして余ったお金を、長期バケツに入れます。長期バケツでは株式などのリスク資産を買い、退職後まで長期運用します。現役時代で給料をもらっているうちは、できるだけ手を付けないでおくお金ですね。

短期・中期バケツが埋まっていれば生活方面でのお金の心配はなくなるので、むしろ投資に力を入れやすくなるとは思います。そのため、投資に集中するためにも、Q太郎的には短期・中期バケツをしっかり埋めることをおすすめします。

またアセットアロケーションも、短期・中期バケツとは別に、この長期バケツで組むのが理想的です。Q太郎のキャッシュ3:株式7というアセットアロケーションも、短期・中期バケツに置いてある現金とは別の、長期バケツ内にあるキャッシュです。長期バケツ内で、キャッシュ3:株式7という意味ですね。

逆に短期・中期バケツが埋まっていないと、なにかあるたびに長期バケツから取り崩しみたいになってしまい、複利が利きにくい状況になるでしょう。タイミングが悪かったら下がった状態での取り崩しになったりしますしね。

そんなわけで、短期・中期バケツを用意しておくと、株式投資も余裕資金でおこなうことになりますので、ズドンがあってもじっくり待つことができる環境が構築されます。

投資では、この「じっくり待つ」ができる資金があるかが重要になってきます。

バケツ戦略の取り崩し

それで退職後になったとして、この短期・中期・長期のバケツからどうやって取り崩していくかについてです。

基本的には短期バケツの生活防衛資金はつねに用意しておく必要があるため、ここはつねにお金が入っている状態にします。収入がなくなるか減りますので、生活防衛資金は現役時代より多めにしておいたほうがいいとは思います。

たとえば現役時代は生活費の半年分だったら、引退後は生活費の1年分など、2倍するとかですね。ここは自分の安心できる金額にしておくといいでしょう。

問題は中期バケツですね。60歳で退職する場合、基本的に65歳までは年金をもらえませんので、この5年間を乗り切るための資金を中期バケツにため込んでおきます。

年間240万円使いたいのであれば、それが5年ですから1200万円を用意しておく必要があります。退職金やIDECOがあればそれを当てるのもよいでしょう。足りなければ長期バケツの株式を取り崩してここに当てるもいいとは思います。

逆に、60歳を超えても働き続けるのであればそんなにいらないかもしれません。ここは人それぞれです。5年間あるので、定期預金や国債で運用しておいてもいいでしょう。

短期・中期バケツを埋めてお金が残っていれば、ぜんぶ長期バケツに入れて株式などリスク資産を購入します。

さて、それで65歳の年金受給年齢になったとします。たとえば毎月15万円受け取れるとします。毎月20万円を使いたいのであれば、5万円足りないことになりますね。

そうなった場合、この5万円を短期バケツの現金から取り崩します。短期バケツに一年分の生活防衛資金240万円が入っていたとしたら、5万円マイナスで235万円になります。

そうなると、この5万円を中期バケツから補填します。たとえば中期バケツの定期預金を5万円解約して、短期バケツの普通預金に入れるということですね。

そうなると中期バケツは-5万円になりますので、この5万円を補填するために長期バケツから5万円分を取り崩します。たとえば投資信託を5万円分売却して、定期預金に入れるという形ですね。

つまり足りない分を短期バケツの現金から使い、短期バケツの減った分を中期バケツから補填、中期バケツの減った分を長期バケツから補填という形になります。

こうすることで短期バケツの生活防衛資金や中期バケツの資金を保持しつつ、長期バケツからの取り崩しをおこなうことができます。

実際には長期バケツで取り崩したものをそのまま使うとは思いますが、イメージ的には短期バケツから崩し、それを上位バケツから補填していく形ですね。

年金をもらうころになれば、そんなに大きな支出はなくなるとは思いますので、中期バケツの額も少なくなっているとは思います。家を持っているならリフォーム代の積立とか、車なら車検の費用ぐらいでしょうか。

「老後思ったよりお金がいらない」といわれるのも、この中期バケツに必要な金額がどんどん少なくなっていくからです。

このフローを守って、短期・中期バケツを維持していけば、比較的安全に老後が過ごせるとは思います。

長期バケツからの取り崩し金額も、「短期・中期バケツを埋める分だけ」とわかりやすくなっています。

たとえば毎月20万円必要で、年金が15万円だとしたら、仮にある月に15万円以内で過ごせたばあい、短期バケツから取り崩す必要はありません。そうなると中期・長期バケツからも取り崩さなくてすむので、長期バケツの株式を取り崩さなくてもすみます。効率的に運用を続けていくことができるのですね。

そんなわけで、老後資金をわかりやすく運用するのに、バケツ戦略はけっこう適しているとは思います。

現金は短期の盾

ここまでの話の中で理解してほしいのは、アセットごとの役割です。

現金と株式とでは、目的や使う期間が違うということです。そのため、どちらか一方だけではなく、つねにどちらも持っておく必要があります。

現金は短期においては価値を固定化できるので、生活を守るための重要な盾になります。これはつねにあるていど持っていなくてはなりません。

また株式や金、不動産などのリスク資産は、長期的にインフレ対策の役割を果たしてくれます。これも余剰資金があるのであれば、ある程度は持っておく必要があるでしょう。余剰資金を現金でそのまま何十年も置いてたら目減りしてしまいますしね。

そのため、「現金=短期の盾」「リスク資産(株式・金・不動産など)=長期の盾」と、2種類をべつべつのものとして認識し、どちらも持っておく必要があります。

この割合を決めたものがアセットアロケーションです。キャッシュと株式をどれぐらいの割合で持つかですね。

Q太郎は現在、長期バケツをキャッシュ3:株式7の割合にしています。前回も言ったように、短期バケツの生活防衛資金や、中期バケツの資金はこれ以外に現金で用意しているので、ここのキャッシュはあくまで「長期バケツにある投資用の現金」です。「現金に投資している」と考えたらいいでしょう。

 

まとめ

そんなわけでまとめると、退職後におけるバケツ戦略の取り崩しは、

・毎月の不足分を短期バケツから取り崩す。

・短期バケツで取り崩した分を、中期バケツから補填する。

・中期バケツで取り崩した分を、長期バケツから補填する。

の流れになります。現実的には中期バケツを経由するのは手間なので、必要な分を長期バケツから取り崩して短期バケツに移すことになります。

これのメリットですが、年金だけで足りる月は、取り崩しは必要ないので、長期バケツの運用は取り崩しなしで続けられます。

自分の状況で柔軟に対応できるので、4%ルールのような毎年きっかり4%取り崩さなければならないということもないので、長期バケツの投資効率はよくなるでしょう。

「毎月や毎年に決まった額を取り崩すやり方は、複利の恩恵が受けにくくなる」と感じる人は、バケツ戦略をおこなうのもよいでしょう。

ただQ太郎としては、自動売却機能で定期的に取り崩しをしたほうが面倒が少ないというのがあるので、定期取り崩しをおこなっています。一度自動売却をセットすれば一生取り崩してくれますし、やることといえば年に一度リバランスするぐらいですしね。

このあたりは人それぞれで、自分の環境に合った、柔軟な取り崩しで老後を乗り切っていくのがいいのではないかと思います。

物事は0か100かでやる必要はないので、自分の環境に合わせていろいろ組み合わせつつ、退職後の生活を柔軟に過ごしていくのがいいでしょう。

月々のキャッシュフローも、老後に働くことで増やせないことはありませんしね。