【新NISA】「バケツ戦略」で貯蓄・投資資金を最適化!【インデックス取り崩し投資】
新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。
今回は「子供の大学費用を、投資信託の取り崩しでまかなってよいのか」という質問についてです。これに絡めて、バケツ戦略についての解説をしていきます。
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バケツ戦略
さて、子供の大学費用を、投資信託の取り崩しでまかなっていいのかどうかについてです。
視聴者様からのご質問ですが、このような内容です。
「大学生の子の仕送り(毎月10万円)についてアドバイスをお願いします。
投資信託の定期売却等は利用しないで給料から10万円を送金する。
それとも、毎月10万円を積立中のSBI・V・米国高配当株式インデックス・ ファンド(特定口座 現在の評価額約200万円)から定額売却し送金するのがよいのでしょうか?
よろしくお願いします。」
とのことです。
わかりやすくまとめると、「子供の仕送りに10万円が必要」という状況において、「給料から10万円送る」か「投資信託を取り崩した10万円を送るか」のどちらがいいかという話ですね。
ここでは「仕送り」ですが、広い意味で「子供の学費」と考えます。
子供がすでに大学生なのかどうかがわからないのですが、結論から言えば、どちらもNGです。
セオリー通りでいくと「貯金から10万円」を送ってください。「給料」からではなく、「株式」からでもなく、「貯金」からです。
理由を段階的に説明していきます。
タイム・ホライズンとヘンリー
さて、ここで「投資のタイム・ホライズン」という概念を考えます。
「投資のタイム・ホライズン」とは、目的に応じた投資期間ですね。
株式の長期投資は、少なくとも10~15年先ぐらいのためのお金だと思ったほうがいいでしょう。
さらに言えば、インデックス投資などは老後のための積立金なので、基本的に現役時代に使うような性質のお金ではないのです。
アメリカでしたら全米株式インデックスのETF「VTI」を、アメリカ人は老後のための資金として積み立てています。働いて収入がある期間に使うための投資ではないのです。あくまで老後のための堅実な長期投資です。
それで子供の学費や車・家のローンなど、数年先に使うようなお金はあくまで短・中期で必要になる資金です。こういう期間に使うお金は、無リスク資産である現金、もしくはそれ相応のもので備えておかなければなりません。
株はズドンがあります。投資でなんとかしようというのはギャンブル要素が高いため、基本的には5~10年以内で使うまとまったお金は現金で用意しておくほうが安全でしょう。不確定要素の高い株式に頼るのはリスキーな行為と言えます。
Q太郎はドットコムバブルやリーマンショックを経験してきましたし、株は調子いいときは調子いいですが、ズドンするときは簡単にズドンしますしね。しかも上がるときはじわじわなのに、ズドンするときは一瞬です。本当にズドンは速度が速く、いつ回復するかも不明な感じになります。みんながバンバン売って、バンバン下がる感じですね。
たとえば子供があと何年かで大学に入るというケースであれば、これは当然現金で貯蓄しておかなくてはなりません。不確実性のある株式に頼るのはギャンブルになります。
多くの人がこのタイムホライズンを考慮せずにお金をつかってしまったり、投資計画を立ててしまったりします。
そこで「3つのバケツ戦略」、一般的に「バケツ戦略」と呼ばれるものを使います。
お金を稼いでも貯金ができない人たち
バケツ戦略を説明する前に、その懸念のもととなっている「お金を稼いでいるのに、全然貯金できない人たちが大勢いる」ことについてを話していきます。
具体的には、年間1000万円以上稼いでいるのに、貯金がほとんどできていない人たちですね。
とくに若いうちから大金を稼げている人たちにこの傾向があります。稼いだら稼いだだけ使ってしまう人たちです。
こういう人たちは、ヘンリーと呼ばれます。「High Earner, Not Rich Yet」、つまり「高給取りでもお金持ちになれない人」ですね。継続的に貯金ができない人たちを指す言葉です。
なぜ高給取りなのに貯金が下手なのかといえば、彼らのお金の使い方にあります。
「給料が入ったら、まず自分の使いたいことに使う。そのあとに残った金額を貯金する」という順序になっているからです。
貯金の基本は「まず給料から貯金額を引いて貯金し、残ったお金を使う」ですので、その逆をやっているわけです。これでは貯まるわけがありません。使ったあとの残ったお金では、毎月貯金額がばらつきますしね。
また、現金貯金だけでなく、投資にもお金を振り分けておく必要があります。
そこで「3つのバケツ戦略」です。
3つのバケツ戦略
ここで貯金・投資におけるバケツ戦略の話をしていきます。
貯金をおこなう3つのバケツは、大きくわけて「短期バケツ」「中期バケツ」「長期バケツ」があります。
「短期バケツ」は、すぐに使うための無リスクな資金を入れておく場所ですね。何かあったときのための生活費など、生活防衛資金がこれにあたります。なにかあったときにすぐ引き出せるよう、銀行に入っている普通預金とかがこれにあたりますね。
「中期バケツ」は、子供への資金やマイホーム・マイカーの頭金など、近い将来に使うためのまとまった資金です。中期目標への貯金ですね。
現金でもよいのですが、中期目標の貯金なので、銀行の定期預金や債券など、基本的に元本が保証されたリスクの低い運用先に置いておくのもいいでしょう。変動の大きな株式は不確実性があるため、ここに当てるのはNGと言えます。
あと債券ですが、社債はリターンに対してリスクがけっこうあるので、リスク・リターンのバランス面であまりすすめできません。仕組債などはもってのほかですので、絶対に投資しないでください。利回りが低くても国債がいいでしょう。「現金に毛が生えたていどのもの」で十分です。なんなら現金でもOKです。
「長期バケツ」には、退職後の生活資金を入れておきます。まだ働いているのであれば、老後まであと何十年かはあるでしょうから、当然ここは株式を使って長期運用します。堅実にやるならS&P500や全米株式、オルカンなどのインデックス投資信託ですね。
そして重要なのは、長期バケツは退職後になるまではいっさい取り崩さないことです。こうして時間を利用して複利を利かせ、老後まで財産を大きく膨らませていきます。
質問のあった「子供の仕送り10万円」については、この3つのバケツのどれにあたるかといえば、基本的には2番目の「中期バケツ」ですね。ここでは中期的な目的のための貯金がつかわれます。
「給料から直接子供に10万円仕送り」というのは、毎月給料から10万円はけっこうな額だと思いますし、もしお子様がまだ大学生でないのならば中期バケツへの貯金を殖やしたほうがいいでしょう。
また「株式を10万円分取り崩して使う」となると、3番目の「長期バケツ」からとってきたお金を使うことになります。
株式を取り崩すと複利が利きにくくなり、資産拡大速度は遅くなります。資産を膨らませることが目標でしたら、基本的には老後まで取り崩さないことが重要です。
バケツの使い方
ここでバケツを使ったお金の貯め方について、もう少し具体的に話をしていきます。
まず計画しなければならないのは、「短期と中期のバケツ」にどれだけお金を入れるかです。これが決まれば、残ったお金を3番目の「長期バケツ」に入れて株式を買います。
まずは1番目の短期バケツに生活防衛資金を入れます。
一般的には、会社勤めで独り身なら生活費の半年分、夫婦で共働きの場合はその半分の3ヶ月分があればいいと言われています。1か月で20万円使っているのでしたら、半年分で120万円ですね。これを現金で貯めてください。
ただこれは人それぞれなので、自営業など「2年分ないと安心できない」という方は2年分を貯めればいいでしょう。自分の状況によって決めてください。
とにかく投資するよりも、この生活防衛資金を作ることが先です。これをまず貯金してください。
それで生活防衛資金が貯まったら、次に2番目の中期バケツを満たしていきます。
家や車を買う予定なら、その頭金。子供がいるのであれば、直近数年で必要な学費など、だいたいでいいのでその費用を現金で貯めていきます。この資金を定期預金にあずけたり、国債を買ったりしてもいいでしょう。ただ直近数年で必要なお金なので、株式などリスク資産に突っ込むことは避けてください。
2番目の中期バケツの貯金がだいたい完了してから、残ったお金を3番目の長期バケツに入れて、株式などリスク資産を購入します。
1番目と2番目が満たされていれば、完全に余裕資産でやっていることになるので、その安心感は半端ないとは思います。
そして3番目のバケツのお金は、基本的には退職後まで引き出さないようにします。
「投資は余裕資金で」というのも、「短期バケツ」と「中期バケツ」を満たしたあとでなければ、「長期バケツ」に資金を突っ込むことができないという考えからです。
はやく投資がしたい人
ここで、「2番目のバケツが埋まるまで待ちきれない。さっさと3番目に入れない」と思うかもしれません。
とくにいまは株価も上がっていますし、新NISAなどもありますしで、投資したい欲求が高まっている状態でしょう。
投資は時間を活かしたほうがいいので、1番目のバケツの生活防衛資金は最優先でかならず埋めなければならないにしても、2番目と3番目のバケツは同時に進めていってもかまいません。
ただし優先度としては、当然2番目のバケツのほうがかなり上です。直近で使うお金なので、それを貯めなければなりません。
そこでどうするかといえば、短期バケツの生活防衛資金の貯金が終わっている状態だとして、給料が入ったら、まず一定額を中期バケツに貯金します。残りは生活費になります。
それで月の終わりでもしお金が残っていたら、それを長期バケツに入れるという方法をとります。
株を買いたければ、月の終わりにお金を残さなければなりません。自然と節約にも力が入るでしょう。
そして3番目のバケツに突っ込んだ資金、ようは株式は「退職後まで取り崩さない」ということも、資産を膨らませるのが目的であれば重要です。とにかく買い続ける、「Just Keep Buying」ですね。
子供がすでに大学生
ここで、すでに子供が大学生で、貯金している時間がないケースを考えます。
バケツ戦略を知らなくて、短期・中期のバケツにお金が入っていない状況ですね。なのに株式への投資はおこなっているという状況です。バケツ戦略的にはあまりよろしくない状況です。
この場合、子供の仕送り10万円をまかなうためには、「株式を10万円分取り崩すか」「給料から10万円を捻出するか」の2択になってしまいます。
給料から毎月10万円捻出するのがあまりよろしくない理由として、給料が途切れたら対処できなくてなってしまうからです。
公務員とか安定した収入の入る職業ならまだいいのですが、たとえばQ太郎のような個人事業主だと毎月の収入は変動します。そこから安定的に10万円というのは、保証されるものではないのですね。
かといって、株式から毎月10万円の取り崩しも、ズドンがあったら成り立たなくなる場合もあるため、信用できません。
このケースだと、まず3つのバケツを作ることを考えます。
株式に全振りしていた資金を、生活防衛資金分取り崩し、それを短期バケツに入れます。生活防衛資金が120万円なら120万円分を一括売却します。
さらに子供の学費など、今後数年で必要な金額分を取り崩して中期バケツに入れます。10万円が一年間分なら120万円なので、その分株式を一括売却して中期バケツに入れます。これで1年間分の120万円は確保されたので、かならず支出できることになります。毎月10万円だと、株式のズドンがあった場合に立ちいかなくなりますしね。
長期バケツはその残った分になります。
これらを確保したうえで、給料からまた貯金していきます。短期・中期は確保できたので、給料は長期バケツの株式投資に利用できますね。
これは貯金がまったくないという極端な例ですが、もし貯金があったら、この短期・中期・長期のバケツを意識し、割り振ってみてください。貯金額の大きい人は、長期バケツに多く入れられることになるでしょう。
それとQ太郎は、キャッシュ3:株式7のアセットアロケーションですが、このキャッシュ部分は生活資金などは含まれていません。ようするに短期・中期のバケツの資金は考慮していないのですね。
あくまで長期バケツ全体が10としたら、そのうちの現金が3で、株式が7ということです。フル株式にはしていません。
短期・中期のバケツには、それぞれに現金があり、これは投資用ではないのです。
いま投資ブームで、生活資金も株式も一緒くたにして論じてしまうことが多くなっています。
投資家の中には「現金嫌い」とかいって株式フルベットの人もいますが、実のところ、短期・中期のバケツに入れる現金はしっかり用意していたりします。
あくまで長期バケツのところが株式フルベットなのですね。Q太郎はその部分を現金3:株式7にしているという話です。
そんなわけで、短期・中期バケツに入れる現金は重要です。ここを投資でまかなおうと考えると、立ちいかなくなる危険性があります。
まとめ
そんなわけでバケツ戦略をまとめると、
・バケツには短期・中期・長期がある。基本的には短期バケツから埋めていく。長期バケツは一番最後。
・短期バケツには、なにかあったときにすぐに使えるお金を入れる。具体的には生活防衛資金です。生活費の半年分なら半年分を入れてください。
・中期バケツには直近数年で使う予定のまとまった金額を貯金する。たとえば子供の学費やマイホーム・マイカーの頭金などですね。子供の仕送りもここになります。運用は現金のままでもいいですが、銀行の定期預金や国債などの低リスクなもので運用してもよいでしょう。解約も簡単で、あくまで「現金に毛が生えた程度」のものが望ましいです。日本国債の10年変動でしたら、1年間ホールドすればいつでも元本保証で解約できますしね。社債・仕組債は元本保証が不確実なので避けたほうがいいでしょう。
・長期バケツには、あまったお金を入れて株式を買う。基本的には老後まで取り崩さない。
となります。
短期バケツの貯金は終わって、中期バケツと長期バケツを同時に貯めていきたい方は、給料を受け取ったらまず中期バケツに入れて、残りを生活費にします。
そして月の終わりに生活費があまっていたら、それを長期バケツに入れて投資をします。こうすることによって、節約にも力が入るとは思います。
そんなわけでいままとまった額の貯金がある方は、この3つのバケツに資金を割り振ってみてください。「意識した貯金」ができるようになるとは思います。
次回はこのバケツ戦略の取り崩し方について述べていきたいと思います。