PPIについてわかりやすく解説ー6月PPIも予想越えの11.3%!1%利上げ観測後退でS&P500下げ幅縮小
QYLD全力太郎ことQ太郎です。
毎日午後9時更新ができるかをチャレンジして、一カ月ほどが経ちました。案外できるものですね。最近は市場の変動が大きいというか、市場にとっては激変の時代なので、今後も毎日更新(午後9時)を続けていく予定です。お付き合いいただければ幸いです。
6月米消費者物価指数CPIに続いて、米生産者物価指数(PPI)も発表があり、予想を上回る前年同月比+11.3%となりました。
市場では、次の利上げが1%になるとの予測が多数派になっていましたが、ウォラーFRB理事などが0.75%を支持したことから積極利上げ懸念が緩和し、S&P500の下げ幅縮小になりました。
S&P500は昨日同様、寄り付きで大きく落としましたが、そのあとは上昇傾向となりました。ただ前日の終値には届かない結果になってしまいました。
今回は米生産者物価指数PPIとは何かについてと、ウォラー理事の発言後の2年債利回りの急落、今後の米国市場の動きについて見ていきます。本記事をYouTube動画で観たい方はこちらのリンクから。
米生産者物価指数(PPI)とは?
さて、米生産者物価指数(PPI)についてです。
「Producer price index」、ようするに消費者物価指数CPIの生産者バージョンです。CPIについてはこちらを参照してください。
PPIは国内の企業向けの商品を対象とした物価指数です。日本の「企業物価指数」にあたるものです。
CPIのほうは、食料品やガソリン、住宅費、アパレルなど、消費者の購入品価格を指数化したものです。これが高くなることは、ようするに物価が高くなっているということになります。
PPIのほうは、企業の商品価格を指数化したものですね。企業が出荷した製品や原材料の販売価格を対象に、企業間で取引されている価格を指数化したものです。
PPIが高くなっているということは、企業間で取引されている商品が高くなっているということでもあります。
PPIが川の上流だとすれば、CPIは下流になります。
上流の企業間取引で値上がりが起これば、当然それは下流にいる消費者の購入価格にも影響してきます。
日本の場合、企業努力というか人件費削減とかで、上流が値上がりしているのに、下流はそんなに値上がりしていないみたいな現象もあります。企業が商品の値上げをしないように頑張っているので、消費者は物価高を感じないみたいな状況ですね。安く買えるのはいいのですが、働いている側からすると給料が上がらないのでどうなんだろうという気もします。こうやってデフレに進んでいったのですね。
実際、日本では2020年のコロナショックによって落ち込んでいたPPIが、2021年には生産活動の急激な回復によって、素材を中心に物価上昇が起こりました。上流のPPIは上がったのですが、それが消費者向けの価格には転嫁されにくいという状況でした。ようするにPPIが上がったのに、CPIは大して上がらないという状況ですね。日本は値上げに対しては敏感ですしね。
2017年に鳥貴族が全品280円均一を298円に値上げしたところ、客が前年に比べて15%も減ってしまい、売上金額も前年から減少してしまうという結果になりました。
売上は、単純計算で「客単価」×「客数」です
値上げで客単価は上がりましたが、それを上回る勢いで客が減ってしまったのです。
280円から298円って、たった18円なのですが、それでこれだけ客足が遠のくという状況。日本人の安さへのこだわりが半端ないです。
店がかわいそうなレベルです。
アメリカの場合は、原材料が上がったら、そのまま消費者向けの商品も平気で値上げしていきます。日本と違ってCPIが爆上がりするのもこれが理由です。お客様は神様ですみたいな発想はあまりないですね。
10年ぐらい前に、ニューヨークのマンハッタンにしばらく住んでいたことがありましたが、その当時で、近くの雑貨屋のトイレットペーパーが1個1ドルとかでしたし、店員の態度もあまりよろしくはなかったです。
今は円安もあいまって、気軽に遊びに行けるようなところじゃなくなっていますね。具を適当に挟んだ超適当なサンドイッチだけで10ドル以上とか当たり前の世界ですしね。
そんな状況で向こうの人は生活できるのかと言えば、向こうは給料もしっかり高くなっています。いまファーストフード店のアルバイトの時給でも15ドルとか20ドルみたいになっているようですしね。日本だと時給2000円以上とかですね。
PPIの予想と実際
話を戻しまして、6月のCPIは前年同月比+9.1%でしたが、PPIは+11.3%でした。
3月は+11.2%、4月は+11.0%、5月は+10.8%と、おさまってきたかと思ったところでまた跳ね上がりましたね。
予想では5月10.8%だったので、6月はさらに下がって10.7%と低めの数字を出していたところ、大きく裏切られた形になっています。
PPIではやはりエネルギーの伸びが顕著で、前月比の上昇率が10%になっています。特にガソリンは18.5%と大きく跳ね上がりました。
一方で食品は+0.1%と、年初来で最小になっています。
ちなみに、変動の大きいエネルギーと食品を抜かしたコアPPIは、前年同月比+8.2%と、年初来でもっとも低い数字になっています。
エネルギー問題の解決とともに、インフレ懸念は鈍化していくとは思いますね。
それでPPIが高かったにもかかわらず、S&P500が下げ渋った理由ですが、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が、0.75%利上げを支持し、「行き過ぎた利上げはしないほうがいい」と述べたことで、1%利上げ観測が後退しました。
この発言によって2年債利回りが低下。しかし10年債との逆イールドを解消するほどにはなりませんでした。リセッション的中率100%の3カ月物利回りはまだまだ下ですね。逆イールドが何かについてはこちらを参照してください。
まとめとQ太郎の見解
インフレが収まったかどうかは、やはり来月・再来月のCPIを見ない限りは判断できないとは思います。石油価格が落ちているので、7月のCPIは落ちそうな気もしますが、それが8月・9月と続いて落ちていくかという問題もありますね。連続で落ちていかないと意味がありませんしね。
ちなみにトルコリラで有名なトルコですが、ジェトロの発表だと、6月のCPIが前年度比+78.62%というすさまじい数字を叩き出しました。昨年から物価が8割増しになっているということです。アメリカの+9.1%なんかどうでもいいレベルのインフレですね。
しかも分野別でみると、交通運賃や食料品は昨年の約2倍と、確実に市民生活にダメージをあたえるインフレの仕方です。
この状態でトルコのエルドアン大統領はなにをしているかと言えば、利上げではなくて、利下げです。
イスラム教的に「高利貸しは悪徳」なので、宗教的理由からの利下げのようです。エルドアン大統領は「金利が下がればインフレは落ち着く」という、一般とは真逆の謎理論で低金利を推し進めています。
しかし昨年と比べて物価が2倍とか、かなりやばいレベルですね。国民の不満から、そのうちクーデターが起こりそうな気もします。
ただこのトルコリラ安によって、近辺の国からトルコへ買い出しにくる人たちもいて、経済自体はまわっているようですね。
日本は企業努力でCPIの上昇がおさえられてきましたが、今後どうなるかといったところです。低金利政策によって、トルコみたいな状況にならないようにしてほしいとは思いますね。