S&P500クオリティ高配当ETF「QDIV」とは?SPYD/VOO/VYM/HDVとの比較、メリット・デメリットも
QYLD全力太郎ことQ太郎です。
前回、SPYDの落ち込みについての動画をアップしました。
SPYDの問題点は銘柄選別の方法ですが、動画の中でS&P500のパフォーマンスを上回る「S&P500クオリティ高配当指数」の話をしました。
今回は、この指数をつかったグローバルX社のS&P500クオリティ高配当ETF「QDIV」についてです。SPYDやS&P500との比較や、メリット・デメリットについて見ていきます。
本記事をYouTube動画で観たい方はこちらのリンクから。
QDIVとは?
S&P500クオリティ高配当指数とは?
さて、前回のSPYDの動画で話した「S&P500クオリティ高配当指数」です。
SPYDは「S&P500高配当指数」を参照してポートフォリオを組んでいます。
これはS&P500の中から高配当80銘柄を選択し、それをほぼ均等にポートフォリオに組み込むというものです。詳しくは前回の動画を参照してください。
これの問題点は、そもそも高配当化している株というのは、株価が落ちて相対的に高配当化してしまっているものも多く、ようするに弱い銘柄ばかりが集まってしまう危険性があるということです。
そうなるとSPYDのように、景気後退期には株価がどんどん落ちてしまう、そしてポートフォリオの割合を保つために弱い銘柄に対して無限ナンピンコースに入るという負のスパイラルが起こってしまいます。
そこで、「高配当かつ質の高い銘柄を選ぼう」ということで出てきた指数が「S&P500クオリティ高配当指数」です。
これはまずS&P500から高配当200銘柄を選出し、そこからさらに質の高い80銘柄を選出するというものです。
SPYDのようにとにかく高配当80銘柄ではなく、質の選別もおこなわれますので、ポートフォリオの安全性は高まります。マネックス証券にあるS&P500との比較グラフでは、1994年スタートで見るとS&P500を上回るパフォーマンスを出しています。
こういうパフォーマンスグラフは切り取る期間で変わってしまったりしますので注意が必要ですが(業者が商品を売るために、都合のいい期間で切り取ったりすることもありますが)、いちおう30年スパンの長期グラフですし、昔からよく言われていた「高配当ポートフォリオのほうが(ちゃんと組んだものであれば)、長期的にはインデックスよりパフォーマンスが良い」というのをある程度は証明しているとは思います。
QDIVの銘柄選別方法
QDIVではこの「S&P500クオリティ高配当指数」を採用していますが、資料を見たところ完全におなじではなく、グローバルX社のアレンジが加えられています。
選出方法ですが、まずS&P500から「高配当の200銘柄」ではなく、「時価総額61億米ドル以上、年間浮動株売買回転率1以上」の条件のものをすべて抜き出します。ある程度の企業規模があり、かつ出来高があるものですね。
そこからさらに「クオリティ」「高配当」でスコアリングをおこない、それぞれ200銘柄ずつ選出します。
この200銘柄のうち、「クオリティ」「高配当」のどちらの条件も満たしている銘柄を採用するということですね。
最初にS&P500から、高配当問わずにまず優良企業を抽出して、そこから選別をかけているので、クオリティはあるていど保証されることになります。
それと、さらに採用された銘柄をセクター別に分け、各セクターの比率が25%を超えないようにします。セクターが偏っていたら分散ポートフォリオの意味がないですしね。
リバランスは年2回で、6月と12月に行われます。
設定日・純資産総額
QDIVの設定日は2018年7月13日です。なんとか4年超えて運用が続いていますね。
純資産総額は0.7億ドルと、SPYDの68億ドルと比べればかなり規模が小さいです。個人的に米国ETFは10億ドルぐらいないと流動性が担保されにくいと思うので、ちょっと不安はありますね。
経費率・分配金
経費率は0.20%と、グローバルX社の中では安い方ですね。QYLDとか0.6%しますしね。
ただSPYDと比べると、向こうは0.07%と安いので、ちょっと高めに感じるかもしれません。
分配金のほうですが、だいたい3.2%ぐらいですね。クオリティの高い銘柄というのは相対的に配当金は低くなりますので、こんなものとは思います。S&P500ETFのVOOが2%ぐらいですしね。
ちなみに毎月分配になっています。
上位銘柄
上位銘柄ですが、1位はSPYDのほうと同じく映画事業で有名なパラマウントピクチャーズの親会社パラマウントグローバルですね。SPYDの構成銘柄も前回の動画を参照してください。
2位以下からはだいぶ違った感じになってきて、2位は広告事業のオムニコム、3位はケミカル企業のライオンデルベーゼル、4位が通信事業のブロードコム、5位がヘルスケアのメドトロニックとなっています。
公共事業やエネルギーといった古いタイプの業種ではなくなっていますね。利益の得られる銘柄がちゃんと選ばれている感じはあります。
パフォーマンス比較
グラフは上からVOO(赤)、QDIV(青)、SPYD(黄色)になっています。再投資有りのグラフなので、分配金も含まれた状態のものと考えてください。
SPYDよりは終始パフォーマンスは好く、VOOに肉薄する場面も見られます。ただ高配当である以上、景気敏感系であることは避けられないので、景気後退時はVOOより大きく落ちますね。
ばらつきを見てみますと、VOOが18.95%に対して、QDIVは21.34%、SPYDは23.45%とけっこうボラティリティがあります。VYMは同期間で17.54%なので、ボラティリティをおさえたければVYMのほうがいいですね。
リスクに対するリターンをあらわすシャープレシオは、VOOが0.73に対して、QDIVは0.59と0.5以上は保っています。VYMが0.6なので、QDIVとだいたいおなじですね。
一方、SPYDは0.35と0.5以下になっており、取っているリスクに対してリターンが見合っていないのがわかるかと思います。時間分散で買うより底で拾ったほうがいいタイプの投資ですね。
ついでにVYM、HDVとも比較してみましょう。上からQDIV(青)、VYM(赤)、HDV(黄色)で、ぱっと見はQDIVが一番パフォーマンスが良いですね。SPYDの代わりというか、VYMの代わりとしての選択肢にはなりそうです。
HDVはSPYDよりましというぐらいで、そこまでパフォーマンスはよくありませんね。シャープレシオは0.47と0.5を割ってしまっています。SPYDの0.35よりましみたいな感じです。
QDIVのメリット・デメリット
QDIVのメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
メリットその1ですが、優良かつ高配当な銘柄を選出しているので、長期投資としては安心できます。高配当だけどボロ株みたいな状況だと、ひたすら株価が落ちていきますしね。
メリットその2は、優良銘柄であることから、将来的なトータルリターンや増配が期待できることです。またこの手のものはタイミングを気にせず時間分散投資もしやすいですね。
メリットその3は、いちおう運用が4年以上続いているということです。まともに運用されているようではあります。
デメリット
デメリットその1ですが、経費率は高めです。0.2%と、他の0.1%以下のインデックスETFよりは高額ですね。
デメリットその2は、流動性リスクがあります。純資産総額が0.7億ドルと、10億ドルどころか1億ドルにも満たない状況なので、売りたいときに売れない可能性や、大口が資金を引き揚げて早期償還みたいな可能性も出てきますね。
デメリットその3は、そこそこボラティリティが高いことです。VOOが18.95%に対して、QDIVは21.34%あるので、景気後退局面でのズドンの怖さはあります。
まとめ
そんなわけでQDIVのメリットは、
・優良かつ高配当な銘柄
・将来的なトータルリターン・増配期待
・4年以上の運用
デメリットは
・経費率高め(0.2%)
・流動性リスク
・高ボラティリティ
となっています。
QDIVのライバルとしては、SPYDではなくて、VYMがライバルになりますね。
コンセプト的には毎月積み立て・長期投資しやすいETFですが、純資産総額が少なすぎるのがネックです。QDIVが0.7億ドルに対して、VYMは498億ドルほどと、比べ物になりませんしね。
しばらくは少額投資で様子見という感じにはなるとは思います。