トランプ関税で世界株安!比較生産費説で見る“高関税のワナ”

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trump kabuyasu

新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。

今回は世界的な株安と、リカードの比較生産費説から見るトランプ大統領の高関税の経済的な不合理についてです。

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比較生産費説で見る“高関税のワナ”

こんなご質問をいただきました。

トランプの関税で世界株安が進行しています。

トランプは一時的なもので、今後は収益が増えて株価が上がるだろうなどとの戯言を抜かしていますが、実際問題ありえるのでしょうか?

そもそも高関税でアメリカの物価が上がれば、アメリカの消費が落ち込むだけです。

アメリカ国内に生産業が戻れば、高騰している人件費で製品価格も高くなり、むしろ売り上げが落ちてしまいます。アメリカの車が売れないのは関税のせいと勘違いしていますが、そもそもの商品に魅力が無く競争力が無いのが問題です。

しかも日本はアメリカの車に関税をかけていません。それなのにアメリカはこれまで日本車には2.5%、トラックについては25%もの関税をかけていました。これまでの状況でもすでにアメリカ有利の関税なのです。

その状況でさらに24%の関税をかけるなど、ジャイアニズムを通り越して頭がおかしいとしかいいようがありません。アメリカの車が売れないのは、魅力がないからです。関税の問題ではありません。

トランプを支持していたブルーカラー層はアメリカ国内の仕事が増えて雇用が守られると勘違いしていますが、景気が悪くなればむしろ自分たちのクビが斬られることになります。やつらは何を考えてトランプを支持しているのでしょうか?馬鹿なんでしょうか?

このままアメリカ経済が落ち込めば、次回トランプが勝つことはありえないとは思いますが、アメリカはこのまま4年間耐え抜くことができるのでしょうか?

トランプ政権でアメリカが経済的にもボロボロになってしまったら、次の民主党政権で回復することも困難になるのではないかと思います。

Q太郎様のご意見お聞かせ願えれば幸いです。

とのことです。

実際問題、日経平均やS&P500など、トランプ関税発動に合わせて大きな下げを見せている状況ですね。

昨夜もけっこうなズドンがあって、S&P500が5%近い下げを見せました。年初来では8%以上の落ち込みを見せており、調整局面に入ってきています。日本からの投資だとこれに円高が加わりますのでダブルパンチになりますね。

日経平均も今見たら3万3000円台に突っ込んでしまっていますね。日経平均が10万円行くとか景気のいいことを言っていた人もいましたが、4万円にいくと蹴落とされるあたり、いつもの日経平均という感じで今後もこんな感じでだらだらやっていくんじゃないかとは思います。ユニクロに頑張っていただきたいです。

TOPIXのほうは日経平均とは違い、3月中旬から3月末にかけては上昇していたのですが、ここ2日で大きなズドンになりました。ここから株式を手放す人が増えていくと、雪だるま式に下落が加速する恐れもあります。とくに個人投資家はこういう局面で、遅れて手放し始める人が増える傾向にありますので、長期投資家はそういうムーブをしないように注意する必要があります。

あとドル円ですね。一時1ドル145円台まで突っ込んでいましたが、現在は146円台に戻しています。円高・株安で、米国株投資家にとってはダブルパンチ状態になっていますね。安全資産の日本円買いというか、ほかがヤバいので消去法的に日本円みたいな感じになっているとは思います。

それでこの高関税と株価下落について、昨日トランプ大統領は「手術は終了。アメリカ好景気になる」という発言をしています。「これから市場は活況となり、株価は上昇し、国は急成長するだろう」と、本当かよみたいな強気発言をしていましたね。

トランプの支持層であるブルーカラー層ですが、彼らがトランプを支持するのは安い中国製品やメキシコへの工場移転で、アメリカ国内の製造業が衰退したと思っていることにあります。

それに中南米からの移民が増加したことで、低賃金労働市場で競争が激化してしまっているので、ブルーカラー層にとっては「移民が仕事を奪っている」と思ってしまうのですね。民主党政権はそういうのに対応してくれないため、メキシコ側に壁を作ったりなどするトランプ大統領に魅力を感じてしまうわけです。

高関税も、安い中国製品によって自分たちの仕事がおびやかされていることへの不満です。実際のところ、車などはとくにそうなのですが、製品を組み立てる部品は海外から調達しないといけないものが多いので、単純に関税をかければ解決という話にはなりません。

自分たちのつくっているものも高コスト化してしまう可能性があるので、結局のところ売れなくなって、自分で自分の首を絞めてしまうという結果にもなりかねないわけです。そうなると企業は規模縮小のために首切りを始めますので、むしろ自分たちの仕事を減らす結果にもなりかねませんね。

イギリスの経済学者であるデヴィッド・リカードが唱えた有名な理論に「比較生産費説」というのがあります。

簡単に言うと、生産費が低い商品を輸出して、それ以外の商品を輸入する方が、双方の国が利益を得ることができるという考え方ですね。

例えば、アメリカでは1労働力でパン4個か米2袋を生産できるとします。

日本では1労働力でパン2個か米4袋を生産できるとしたら、アメリカは1労働力でパン4個を生産して日本に輸出し、日本は1労働量で米4袋を生産してアメリカに輸出した方が、労働力から考えれば双方が得をするという話ですね。

日本は1労働力を使って生産性の低いパン2個を作るより、生産性の高いコメ4袋を作った方が労働力の無駄になりません。

日本とアメリカ全体で見れば、2労働力でパン4個と米4袋が生産できることになり、生産を最大化できていることになるわけです。

ようするに生産コストの低い商品(比較優位という言い方をしますが)、これを輸出して、それ以外の商品を輸入した方が双方に利益があるという話ですね。国際分業と自由貿易の基礎となる経済理論です。

自分の国で生産性の低いものを作るより、生産性の高い物に特化してそれを輸出し、それ以外のものを輸入した方がいいいという話です。

日本もアメリカもこれまでそうやってきたのですが、トランプ大統領のやろうとしていることは、これから生産性の低いものまでアメリカ国内で作ろうとしているわけです。

先ほども言いましたが、自動車などは多数の部品の組み合わせから成り立っているものなので、単純に「自動車」という製品が輸出入されているわけではありません。他の商品もそうで、いろいろな部品が国際間を行ったり来たりしているわけです。そんなものに国同士がいちいち高い関税をかけあっていたらひたすら高コスト化してしまい、つまるところ生産性が落ちてしまう訳です。誰も勝者になれない状態になってしまうのですね。

比較生産費説で考えれば、各国が生産性の高い物に特化して、それ以外を輸入するという方が労働力の無駄を防いで経済が回りやすくなります。

中国憎しで中国製品を締め出そうみたいな考え方をしている人もいますが、品質自体が悪いならともかく、そうでない場合は、生産性の低いものは中国の労働力で生産してもらって、それを輸入し、生産性の高い物は自国で生産してそれを輸出した方が労働力の無駄にならず、全体的な生産性も上がります。自国の労働力で生産性の低い物をひたすら作り続けてももうかりませんし、ひたすら衰退していくだけになります。

国防の観点から、非生産的でも食料やエネルギーの一部を自国で生産した方が良いという話もありますし、それはそれで別枠として税金使ってやればいいのですが、民間企業は国営企業ではないので、利益を追求するためにはやはり生産性の高いことをやらないといけないのですね。

車を作るにしても部品まで自分で生産する必要はなくて、そういうものに特化して作っているところから買い取ればいいわけです。自分でつくったら生産性が低くなってしまいます。

そうやって国際間で分業することで全体の生産性が上がるのですが、関税は国の都合でこういうのをぶち壊す行為にもなってしまうのですね。

そんなわけで、そりゃ非効率な状態になったら、企業の株価が下がるのは当たり前なわけです。「アメリカで自動車を作る」と簡単にいっても、その部品は結局海外から調達しないといけないわけで、そんなものまでアメリカで作ってたらひたすら高い労働力を消費して生産性の低い物を作り続けることになります。企業側からすればあり得ない話なわけです。

昔の中国やソ連の、何でも国内でやろうとして生産性が落ちて貧乏になっていく旧共産主義国家的な状態になるのですね。

関税が高くなったら企業がアメリカで生産して、アメリカの雇用が増えてハッピーなんてそんな単純な話ではないのです。そもそも製造業はすでにオールドエコノミーになっていますので、いまその分野で出来ることと言えば生産性を上げることぐらいです。

生産性が低くなれば企業の収益が減りますので、結果的に従業員の首切りという話になってしまいます。最終的には生産性の低下により、自分で自分の首を絞める結果になるのですね。

それでも労働者を守ろうとすれば、アメリカは社会主義化して旧共産圏のように貧乏な国家になっていかなくてはなりません。小さな政府を目指した結果、社会主義化するというのは皮肉もいいところです。

そうなるとS&P500とかもはや別の何かになっているわけで、長期投資して成功するという話も全然崩れてしまうわけです。

まとめ

そんなわけでまとめると、

・市場は高関税を嫌悪し、下落トレンドへ。

・ブルーカラー層がトランプ政権を支持するのは、安い中国製品やメキシコへの工場移転で、アメリカ国内の製造業が衰退したと思っていることによる反発。

・ただ高関税でアメリカの産業が衰退することで大量解雇が起こり、自分自身の首を絞めかねない。

・リカードの比較生産費説で考えれば、国や企業は生産性の高い物に特化し、それ以外を輸入した方が、全体的な生産性は上がる。

・車など多数の部品で作られているものは、それら部品が国際間を行き来して取引されている。高関税は複合的なコストアップになる。

それら部品のような生産性の低いものまでアメリカ国内で作ろうとすれば、企業の生産性低下を招く。

・企業の生産性が落ちれば、当然収益も落ちる。収益が落ちる以上、株価下落は当たり前。

・すべてをアメリカ国内での生産という発想になれば、生産性と収益が落ちて労働者の首が切られることになる。

・その状態で労働者を守ろうとすれば、かつての旧共産圏のようなひたすら低い生産性の貧乏国家に成り下がってしまう可能性もある。

・そうなるとS&P500がそもそも別物化するので、アメリカに長期投資すればいいという前提は崩れる。(アメリカが、「アメリカのような何か」に変わってしまうのですね)

となります。

そんなわけで小さな政府を目指すわりにブロック経済のようなことを始めたりと、矛盾だらけなことをやっているトランプ政権ですが、社会実験としては興味があるのでどうなるのかは見てみたいというのはあります。

しかしこの状況が続くと、次の選挙で共和党が勝つのは厳しくなりそうな気がします。ブルーカラーの人も、物価が上がりまくったうえに、自分のクビが切られたらさすがに事態に気づくとは思いますしね。

そんなわけで社会実験としては面白いですが、株式投資としてはあまり面白くない状況になってきましたので、今後も見守っていきたいとは思います。