
こんなご質問をいただきました。
「銀行口座や証券口座をいくつか持っていますが、家族には詳しい資産額を伝えていません。
知られるとお金を当てにされそうですし、自分のお金なので、自分で管理できていれば問題ないと思っています。
ただ、自分に何かあったとき、家族が困るのではないかという心配もあります。口座について家族に伝えておくべきでしょうか?」
とのことです。ありがとうございます。
自分の資産額を、家族へ全部伝えたくないという気持ちは分かります。
お金があると知られれば、頼られるかもしれない。相続を期待されるかもしれない。使い道へ口を出されるかもしれない。
自分が元気で、すべての口座を管理できているあいだは、誰にも言わなくても困りません。
しかし老後資金には、少しやっかいな問題があります。
老後資金が必要になる時期と、自分でお金を管理する能力が低下する時期が、重なる可能性があることです。
入院して銀行へ行けない。認知判断能力が低下して、証券口座を操作できない。介護費用が必要なのに、家族はどこにお金があるのか分からない。
資産はあるのに、必要なときに誰も使えない。
そうなれば、そのお金は家族から見て、存在しないのとあまり変わりません。
資産形成では、いくら増やすかばかりを考えます。
しかし老後には、自分が管理できなくなったあとも、自分の意思に沿って使える状態を作る必要があります。
そんなわけで、ようこそ、Q太郎のお金の哲学へ。お金に飲み込まれないための生存戦略を独自の視点で解説します。
今回は「老後資金を家族に隠す人」を深掘りしていきます。
・三つの話
今日は大きく三つ話します。
一つ目、資産を見つけられる状態にすること。
二つ目、資産の地図と鍵を分けること。
三つ目、相続より前に、生きているあいだの管理不能へ備えることです。
最後に、老後資金の管理はどこまでできれば完成なのか、Q太郎なりの見立てを置いて終わります。
・一つ目・資産を見つけられる状態にする
それでは一つ目、資産を見つけられる状態にすることです。
本人に何かあったとき、家族が最初に困るのは、正確な資産額が分からないことではありません。
どこの金融機関に、何があるのか分からないことです。資産額自体はどうでもいいのですね。
昔の銀行口座なら、家に通帳や銀行からの郵便物がありました。
しかし現在は、通帳のないネット銀行やネット証券もあります。Q太郎も通帳は使っていません。
本人しか口座の存在を知らなければ、家族が部屋を探しても何も出てこない場合があります。
日本証券業協会では、本人や相続人が、口座を開設している証券会社を有料で照会できる制度を案内しています。
しかし最初から一覧があれば、その手間は大きく減ります。
そこで作っておきたいのが、銀行口座や証券口座などの一覧です。
金融機関名、支店名、預金や証券などの種類、口座番号を確認できる書類の保管場所、その口座の大まかな目的、問い合わせ窓口などを書きます。
残高を毎回細かく更新する必要はありません。
重要なのは、家族がその金融機関へ問い合わせられることです。
また、資産だけでなく、負債や継続契約も必要です。
住宅ローンやその他の借入、クレジットカード、民間保険、サブスクリプション、貸金庫、不動産関係の書類などです。
毎月どの口座から、電気代や通信費が引き落とされているのか。年金や配当は、どの口座へ入っているのか。
こうしたお金の流れも簡単に残しておけば、本人が入院したときにも役立ちます。
一覧は年に1回程度確認し、最後に更新した日を書いておくとよいでしょう。
資産額を家族へ常時公開しなくてもかまいません。
ただ、信頼できる1人には、「一覧を作ってある」「何かあったら、ここを見てほしい」と、保管場所だけは伝えておいたほうがよいと思います。
ちなみにQ太郎は家族共用のドロップボックスに、口座の一覧を書いたテキストファイルを入れています。何かあった時にそれを見てもらえばいいだけですね。資産額を伝える必要はまったくないわけです。
・二つ目・資産の地図と鍵を分ける
それでは二つ目、資産の地図と鍵を分けることです。
口座一覧を作るとき、ログインID、パスワード、暗証番号、秘密の質問まで、全部同じ紙に書きたくなります。
当然、これは危険です。
一覧表を盗まれれば、どこに資産があるかだけでなく、それを動かす情報まで一度に渡してしまいます。
また、本人のログイン情報を知っていることと、家族に正式な代理権があることは別です。
本人の代わりに家族が勝手にログインして取引すればよい、という話ではありません。
一覧表は、資産の地図です。
どこへ行けば、何が見つかるのかを示します。
一方で、暗証番号や代理権は、資産を動かす鍵です。
地図と鍵は分けて管理する必要があります。
一覧表には、金融機関と口座の存在、必要書類の場所、問い合わせ先を書く。
実際に家族が資産を管理する必要があるなら、金融機関の代理人制度、任意後見、家族信託など、正式な方法を検討します。
例えば日本証券業協会は、将来の認知判断能力の低下に備え、本人と家族代理人があらかじめ任意代理契約を結ぶ「家族サポート証券口座」を案内しています。
対応している証券会社や利用条件は限られるため、自分が使っている金融機関へ確認する必要があります。楽天証券はまだ無いようですが、SBI証券は今月開始したようですね。
銀行にも、代理人届や財産管理に関するサービスがありますが、内容は金融機関によって異なりますので、調べてみるといいとは思います。
・三つ目・相続より前の管理不能へ備える
それでは三つ目、相続より前に、生きているあいだの管理不能へ備えることです。
老後資金の引き継ぎというと、多くの人は相続を考えます。
自分が亡くなったあと、誰にいくら残すか。遺言書を作るか。相続税はいくらになるか。
もちろん、それも重要です。
しかし現実には、亡くなる前に、自分で資産を管理できない期間が生まれる可能性があります。
体は生きている。しかし、銀行へ行けない。契約内容を理解できない。株を売る判断ができない。
その時期に、介護費用、医療費、施設の入居費などが必要になります。
一覧表があれば、家族は資産の存在を知ることができます。
しかし一覧表だけで、家族に代理権が生まれるわけではありません。
ここを混同しないほうがよいでしょう。
金融庁も、認知判断能力が低下したとき、本人の意向に沿って資産を管理するためには、判断能力があるうちに、本人や家族が方針や制度を確認しておくことが重要だとしています。
準備には、三つの段階があります。
一つ目は、見つけられる状態です。
これは先ほど言ったように、銀行、証券、保険、負債、継続契約の一覧を作っておくことです。
二つ目は、意思が分かる状態です。
生活費として残したお金なのか、介護へ使ってほしいのか、長期保有を続けたいのか。困ったときは誰へ相談してほしいのか。
簡単でも、自分の考えを残します。文章化しておいたほうがいいでしょう。
三つ目は、正式に動かせる状態です。
必要に応じて、金融機関の代理人制度や任意後見などを検討します。
制度には費用や制約があり、家族構成や資産内容によって向き不向きがあります。
一覧を作ればすべて解決するわけではありません。
しかし、どこに何があるのかさえ分からない状態からは、確実に前へ進めます。
一番厄介なのは、どこに何があるかわからない状態ですね。とくに本人がいなくなる相続のときに、かなりややこしいことになります。相続税も払いようがないですしね。
これであとで口座が見つかって、申告期限が過ぎていた場合、追加徴税が発生したり、場合によっては故意に隠したとかで脱税を疑われたりなど、ろくなことがなかったりします。
・Q太郎の見立て・自分しか使えない資産は未完成
ここからは、Q太郎なりの見立てです。
Q太郎は、自分しか分からないお金は、老後資金として未完成だと思っています。
元気なうちは、自分だけで管理することが独立に見えます。
誰にも口を出されず、自分の判断で運用し、自分の好きなように使える。
しかし本人が倒れたあと、家族が口座を探し、契約先へ問い合わせ、介護費用を立て替えるなら、その秘密の後始末を家族へ押しつけています。
家族へ頼らないために秘密にしていたはずが、最後には家族へ大きな手間を頼むことになるのですね。
だからといって、資産額を家族全員へ知らせる必要はありません。
お金を当てにされたくないなら、残高は伏せてもよいと思います。
重要なのは、信頼できる人が資産の存在を見つけられ、自分の意思を確認でき、必要なときには正式な手続きを始められることです。
資産管理の完成とは、自分だけが使える状態ではありません。
自分が使えなくなっても、自分の意思に沿って使える状態にすることです。
資産形成の出口は、すべて使い切ることや、誰かへ相続することだけではありません。
自分が判断できなくなったときにも、自分の生活を支えられるようにしておくことです。
口座一覧は、そのための最初の一歩です。
ただし一覧表は、資産の地図であって、鍵ではありません。
地図を残し、意思を残し、必要なら正式な鍵も準備する。
せめて口座一覧ぐらいはつくっておいたほうが、家族も困らなくて済むとは思います。
皆さんは、自分の銀行口座や証券口座を一覧にしていますか。
また、家族へどこまで伝えているか、差し支えない範囲でコメント欄から教えてください。全部読ませていただいています。
数字を味方に。そして、誰の欲望でもない自分の人生を、自分の手で耕していきましょう。
ではまた、Q太郎でした。この動画を気に入っていただけましたら、高評価・チャンネル登録をよろしくお願いいたします。
