外国債券はポートフォリオにいらない?【TLT/AGG/BND】
新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。
今回は外国債券を持つ必要性がないかどうかについてです。
本記事をYouTube動画で観たい方はこちらのリンクから。
外国債券はいらない?
こんなご質問をいただきました。
「バケツ戦略で、外国債権はリスク資産だから長期バケツに入れなければならないという話には自分も同意です。日本人にとっての無リスク資産は、現在のところは預金と日本国債ぐらいだとは思います。
それで外国債券自体が、個人のポートフォリオには不要という意見もよく聞きます。為替リスクを負って投資をするぐらいなら、株式を買った方がまだましだという考えです。実際、債権をポートフォリオに入れない投資家も多くいます。
Q太郎さんは取り崩し投資で先進国債券の投資信託を買っていますが、やはり外国債券は必要ということでしょうか。
自分はいまAGGとTLTを持っていますが、最近これらへの投資をやめようかとも思っています。来年あたりに売って新NISAの資金にしようとも考えています。これについてどうお思いでしょうか。アドバイスをいただければ幸いです」
とのことです。
外国債券が必要かどうかについてですが、正直なところ「無くてもいいかな」という感じはありますね。優先順位的にはやはりオルカンやS&P500などのインデックス投資のほうで、お金があまってほかに投資したいという場合にちょっと振り分けておくぐらいのものとは思います。メインにはなりにくいですね。
債券は、自国通貨であれば無リスク資産になりますが、外国債券の場合は為替リスクが発生します。しかも近年の為替のボラティリティは高いので、場合によっては債券の利益を簡単に吹き飛ばしてしまうのですね。これはあきらかに株式などとおなじようなリスク資産といえます。
債券自体はそんなに増えませんし、債券の利益が増えるぶん以上に為替変動が激しいので、基本的に外国債券の利益は為替にひきずられる形になります。こういうリスクを負うぐらいだったら、米国株式とかに投資したほうがまだましだと考える人も少なくありません。リスクに対するリターンの割が合わないということですね。それだったら、どうせリスクを負うのだったら、リターンの小さな債券より、リターンの大きな株式にした方がいいという話です。
外国債券でよくある考え方として、「為替リスクはあるけど、海外は金利が高いのでべつによくね?」というのがありますが、そうやってトルコリラ預金で失敗した人たちをたくさん知っています。そのときのトルコリラ預金で金利20%ぐらいあったと思いますが、それでも損したのですね。
そもそも高金利の債券というのはそのぶんリスクも高くなっているので、そこに為替リスクも加えればさらにリスクが高まるわけです。ジャンク債とか見ればわかりますが、リスクが高いものほど金利は高くなります。この時点ですでにある程度のリスクは抱えているわけです。そこに、さらに為替リスクをくっつけていこうという話になります。
「円高になったら損するけど、円安になればもうかるじゃん」という人もいますが、それだったら米国株式でも円安だったら儲かるわけです。どうせ円安でもうかるんだったら、あえてリターンの少ない債券を取りに行くのは非合理的だという考えもできるわけです。
それと生債券ではなく、債券ETFのAGGやBND、長期債ETFのTLTなどは株価の上下もあります。気軽に売り買いできるので流動性の高さは魅力的ですが、為替との連動を考えると、円安のときというのはアメリカ側の金利が上がっているということでもあるので、債券の価格は下落します。逆に円高のときにはアメリカ側の金利が下がっているので、債券の価格は上昇しますので、けっきょくのところプラマイゼロ的になって、金利の恩恵はそこまで受けられないのではないかとも考えられます。
これはTLTとドル円のチャートを年初からパーセントで比較したものです。黄色がドル円、青がTLTですが、今年7月に向かってドル円が1ドル160円に向かうと、TLTのほうは価格がどんどん下がっていくのがわかるかと思います。
逆に7月にドル円が160円から一気に円高にズドンしたあとは、TLTのほうは価格を上げていっています。
現在は円安に向かっているので、ドル円は上がり、TLTは下がっていくという動きをしていますね。これは前述したように、為替は二国間の金利差が大きな要因になるので、円安のときはアメリカ側の金利が高い=債券価格低下、円高のときはアメリカ側の金利が低い=債券価格上昇ということになります。
そんなわけで債券というのは、基本的には為替と逆相関に動く形になります。円安になればTLTの株価は下がりますので、基本的には為替の利益を打ち消されることになります。逆に円高になればTLTの価格は上がりますので、TLTの利益を為替に打ち消されることになります。ズレはありますが為替に連動するので、米国株のように円安かつ株高みたいな動きにはなりづらいのですね。
すると債券から実際に得られる利益は、円換算にするとそこまで大きくならないのではないかとも考えられます。それどころか、為替リスクを負う分、リターンが見合わないということにもなるでしょう。
売却時にドルで受け取って、為替レートのよいときに円に戻すというテクニックも使えますが、うまくいくかどうかは為替次第となります。
自国債券のよいところはこういう為替リスクが無いことですね。とくに日本国債の10年変動は最低金利保証もありますし、金利が上がれば上がったぶんだけ利息が増えるので、投資家有利な商品と言えます。問題は金利が低いので、長期的にはインフレに勝てないということですね。
そんなわけで、外国債券はそれなりの為替リスクもあり、円安になれば下落方向へと進む動きにもなります。円安へのリスクヘッジとしてはそこまでリスクヘッジにはなっておらず、それだったら円安のときに上がる株式を買っておいた方がまだヘッジになるわけです。
ちなみにQ太郎は先進国債券インデックスの投資信託を持っていますが、あくまで取り崩し投資の実験用としてなので、これで儲けようみたいなのはありません。
まとめ
そんなわけでまとめると、
・外国債券はリスク資産。
・為替は二国間の金利差でもある。
・円安時はアメリカの金利は上がっているので債券価格は下落。円高時にはアメリカの金利が下がっている価格が上昇するという傾向がある。そのため円換算だと利益を打ち消し合い、リスクに対するリターンが出づらい。
・円安への備えとしては、円安時(アメリカの金利上昇時)に価格下落する米国債券よりも、米国株式のほうがヘッジになる。
となります。
そんなわけで為替の影響を考えると、金利の問題で逆相関になりやすいため、海外債券は円換算で利益が出づらい構造になっています。そのため、為替リスクをわざわざ取りにいくのであれば、債券より株式のほうがいいとも考えられますね。
日本国債が、日銀によって無理やり利回りを抑え込まれた状態でなければ、もっと利回りが高くて投資商品としては魅力的になるのですが、そうじゃないのが現状ですね。
ただ為替リスクを考えると、けっきょく外国債券よりも日本国債に投資していたほうがましだったのではないかという事態にもなる場合があります。少なくとも日本国債は、1年以上ホールドすれば元本保証ですしね。