遺産相続で株・投資信託は迷惑?【老後/新NISA/FIRE】
新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。
今回は、遺産相続における株式や投資信託にかかる税金についてです。
本記事をYouTube動画で観たい方はこちらのリンクから。
遺産相続で株・投資信託は迷惑?
こんなご質問をいただきました。
「現在60代です。遺産相続での株・投資信託についてですが、不動産と同様、遺族に迷惑がかかるとも言われています。
私の現在の財産として持ち家以外に、新NISAと特定口座で株・投資信託の資産運用分があります。
持ち家については、私が先に亡くなれば妻が住むので売ることはしませんが、株・投資信託についてはどうしようか迷っています。
妻は投資は詳しくなく、娘らも投資に興味が無いため、その時になったら現金化してしまった方がいいとも考えています。
遺産として株・投資信託を残すことをどうお考えでしょうか?今すぐどうこうするような事態では無いのですが、今後の為にお聞かせくだされば幸いです。」
とのことです。
株・投資信託をそのまま遺産相続させるか、それとも現金化してしまったほうがいいのかについてですが、これは人それぞれ考え方がありますし、損するか得するかは相続タイミングによっても変わってきますので、どちらがベストとは言い切れない部分があります。
また相続の遺産総額が基礎控除を越えないかぎりは、相続税は発生しませんので、どの程度の資産があるかにもよってきます。ぎりぎり超えそうなら現金化して固定させてしまうというせこい方法もありますが、何にしろ売却時には、含み益であれば金融所得課税の20.315%はかかっていますね。
それで注意していただきたいのは、含み損の場合です。株式で含み損だろうと、相続のときは株式全体に対して税金が発生します。生前いくらで買ったとか、全然関係ないのですね。
たとえば100万円で買って、50万円になったとしても、この株式を相続した場合は「50万円を受け取った」ということになるので、50万円に対して税金がかかってきます。いくらで買ったとか、含み損とかはいっさい考慮されません。いくらを受け取ったかだけです。
ただ株価は急激な変動があるため、一日ずれただけでめっちゃ上がったとかめっちゃ下がったとかで不公平感があるため、死亡日の終値以外に、3つの基準で一番安い金額を選んでいいことになっています。
・当月の終値の平均値
・前月の終値の平均値
・前々月終値の平均値
と前々月の平均値まで使っていいことになっているのですね。そのため前々月で株価がズドンしていたら、そのときの平均値を使うことでちょっとお得になったりするわけです。
ただ相続するご家族が株式に詳しくないとこういうのは難しいかもしれません。このあたりは税理士さんとかに相談した方が良いでしょう。
それでこの株をどうやって受け取るかですが、まず名義変更が必要になります。そのため、ご家族の誰かが証券会社に口座を持っていないと受け取りようがないのですね。ご家族が株式に興味がないということは口座を持っていない可能性もあるため、受け取るにはまず証券会社で口座をつくる必要があります。
それで「口座開設とか名義変更が面倒だから株は相続しない」というようなこともできません。不動産とおなじで、相続するなら不動産・リスク資産・借金も含めて全部相続しないといけませんし、放棄するなら全部放棄しないといけなくなります。ピンポイントでなにか一つを相続しないというのは無理です。他の物も相続するということであれば、証券会社の口座はつくる必要があります。
相続手続きは3か月以内にやらないといけませんので、ご心配でしたら、生前にご家族の証券口座を準備しておくという方法もありますね。
それで相続するご家族が複数人の場合、どうやって株をわけるかですが、不動産とおなじやり方で、いったん誰か一人が名義変更をしてまとめて受け取って、そのあとに売却してみんなに現金を配るという方法があります。
不動産と違うところは、株式は分けることができるので、全員が証券口座を開設して、株式を均等に分けるという方法も取ることができます。
ただここで、相続税を払った上に、売却時に金融所得課税も払うとなると、二重課税の問題が発生します。
このことについては、特例として、支払った株の相続税を、株の取得費用として換算していいというのがあります。ただこの特例の利用には確定申告が必要になってくるので、株式に詳しくないのであれば税理士さんを挟んだ方がいいとは思います。
とにかくこういう不動産とか株式とかゴールドとかのリスク資産関係は処理が複雑なので、家族仲が悪いと高確率で揉める原因になってきたりします。
不動産だと、さっさと現金化したいご家族と、今後も住みたいというご家族で意見がわかれて揉めたりとかありますね。評価額4,000万円の家にそのまま住み続けたいなら、半分の2000万円の現金をよこせとか、実際こんな中古物件4000万円なんかで売れないから、2000万円は取りすぎだろとかそんな感じで揉めたりしますね。
それでだいたいこういう状況のとき、生前に「俺、べつに金に困ってないから、相続は放棄するよ」とか言っているやつにかぎって、いざ相続になると一番口を挟んできたりするという、いわゆる「相続あるある」が発生したりします。
そのため、リスク資産の相続はいろいろもめ事が起こりやすいので、出来る限り家族仲はよくしておいたほうがいいでしょう。
なんにしろ、株式売却での特例を受けるには確定申告も必要になるので、税理士さんなどを通してやった方が良いとは思います。
まとめ
そんなわけでまとめると、
・株・投資信託(以下「株式」でまとめます)を生前に現金化するかどうかは個人の考え方による。基礎控除内に抑えたければ現金化のほうがコントロールしやすい。
・株式の相続は、含み損だろうが株式全体の評価額が税金の対象になる。
・相続時の株価は、死亡日の終値以外に、当月終値の平均、前月終値の平均、前々月終値の平均から一番低い物を選ぶことができる。
・株式の相続には、株式の名義変更と合わせて、受け取るための証券口座が必要。相続手続きは3か月以内なので、不安であれば生前にご家族分の口座開設をしておくという手も。
・株式の場合、だれか一人がまとめて受け取って、売却して現金化して全員に配るという方法と、全員が証券口座をつくって、株数を均等に分ける方法がある。
・株式は相続時に相続税を払い、さらに売却時にも金融所得課税を払う。特例として、払った相続税を株式取得費用とすることができるが、確定申告が必要。税理士さんに相談したほうがいいかと。
・不動産やリスク資産の分配は揉めやすいので、家族仲がいいに越したことはない。(生前に「べつに金に困ってないから、相続は放棄するよ」と言っているやつほど要注意だったりしますね。いざそのときになるとすごい口を出してきたりします)。
となります。
そんなわけで、リスク資産の分配は本当に面倒ですし、もめ事の原因にもなりますので、家族仲がいいに越したことはないとは思います。
こういうのは面倒であれば、現金化してしまうのも一つの手とは思いますが、自分がいつ亡くなるかなんてタイミングがわかりませんし、難しいところがありますね。
そんなわけで、家族仲さえよければあとのことはなんとでもなりますので、家族仲をよくして楽しい毎日を暮らしていくのがいいとは思いますね。