
こんなご質問をいただきました。
「いつも動画を参考にさせていただいています。
インデックス投資、オルカンなどの仕組みについて、どうしても自分の中で引っかかっているモヤモヤがあり、Q太郎さんの視点から解説していただきたく質問しました。
よく、インデックス投資の積立は、長期で複利が効くから誰でも勝てると言われますが、実際に毎月自分の生きた現金を削って積み立てていると、どうしても以下の点に強い違和感と不公平感を覚えてしまいます。
最初のほうに安く買った人たちは大きな利益を享受しているのに、後から参戦する自分たちは、すでに企業が稼いだ利益や成長が乗っかって、高くなったプライスタグ、基準価額のものを、毎月自分の新しい現金を使って買い足さされているようにしか見えません。
これって、後から買う人間が先人の利益の分まで高いお金を払わされて損している、割高な山を登らされているようにならないのでしょうか?」
とのことです。ありがとうございます。
このあとに、まだ二つ質問がありますが、まずこの質問からいきます。
ちなみに、「長期で複利が効くから誰でも勝てる」という言い方は正しくありません。
長期投資にも損失はありますし、複利は利益を保証する魔法ではありません。ここは注意してください。インデックス投資だからといって、絶対に勝てるわけではありません。長期的に勝てるかもしれませんが、自分の生きている間に勝てるかどうかはまた別の話なのです。
あと2050年から2060年あたり、地球の人口が減少に転じるとも言われていますので、そこから世界経済が長期の下り坂に転じる可能性もあります。オルカンを買ったからといって、長期で必ず勝てるとはかぎりません。投資に必ずは無いのです。「必ず勝てる」とか言ってるのは、詐欺師だと思ったほうがいいです。
ただ、ここまで扱うと別の話になりますので、今回は、上がった基準価額を後から買うのは不利なのか、という一点に絞ります。
この違和感は、よく分かります。
たとえば、投資信託の基準価額が一万円だったころに買った人がいる。
現在は三万円になっている。
先に買った人は、すでに三倍です。
そこへ自分が働いて得た一万円を持っていくと、同じ一万円なのに、昔の三分の一しか買えません。
何だか、先に山へ登った人の含み益まで、後から来た人が支払っているように見えます。
これは投資信託だけでなく、株式に対してもおなじことが言えます。Appleの株とか、10年前の十倍以上になってますしね。今買えば、10年前の十倍以上の値段で買わされるわけです。
ただ、ここには、「基準価額、もしくは株価が高い」と「投資先が割高」という、二つのまったく違う話が混ざっています。
そんなわけで、ようこそ、Q太郎のお金の哲学へ。お金に飲み込まれないための生存戦略を独自の視点で解説します。
今回は「基準価額が上がったオルカンは高値づかみなのか」を深掘りしていきます。
・三つの論点
今日は大きく三つ話します。
一つ目、そもそも投資信託の基準価額は、何の値段なのか。
二つ目、後から買う人は、本当に先に買った人の利益まで支払っているのか。
三つ目、基準価額の高さとは別に、実際に警戒すべき「割高」とは何なのかです。
最後に、後から投資する人が、過去の値段とどう向き合えばよいのか、Q太郎なりの見立てを置いて終わります。
・一つ目・基準価額はプライスタグではない
それでは一つ目、そもそも投資信託の基準価額は、何の値段なのかです。
ファンドが持っている株式や現金などを合計したものを「純資産」と言います。個人で言えば、自分の持っている全財産だと思ってください。あなたの持っている株式や現金を全部足したものですね。
それで投資信託の基準価額は、この純資産を口数で割って表示したものです。あなたの全財産を、自分で設定した口数で分割するというものですね。あなたが一億円持っていて、一万口に分割したら、ひと口1万円ということですね。
日本の投資信託では、一般に一万口あたりの値段として表示されます。
ここで大切なのは、一万口という区切り自体に、特別な意味はないことです。
あなたが一億円持っていて、それを一万口に分割するか、十万口に分割するかは、あなたの自由なわけです。あなたの資産一億円自体は変わらないわけです。
同じ中身のジュースを、大きな瓶へ入れるか、小さな瓶へ入れるか。その違いに近いんですね。ジュースの総量は変わらない。
たとえば、まったく同じ世界株へ投資する二つのファンドがあるとします。
古いファンドは長年値上がりして、基準価額が三万円です。
もう一つは今日できたばかりで、基準価額が一万円です。
数字だけを見ると、一万円のほうが安く、三万円のほうが高く見えます。
しかし、二つのファンドが同じ株を同じ割合で持ち、費用も同じなら、どちらが割安ということはありません。
古いファンドを一万円買えば、三分の一万口ほど買えます。
新しいファンドを一万円買えば、一万口買えます。
口数は違います。
でも、どちらも一万円分の世界株を持つことに変わりはありません。
その後、世界株が10%上がれば、どちらも原則として一万一千円ほどになります。
三万円の基準価額が三万三千円になるのも、別のファンドの一万円が一万一千円になるのも、上昇率は同じ10%です。
口数が多いから得をするわけでも、基準価額が低いから上がりやすいわけでもありません。
お店で一個三万円の商品を買うような感覚で見るから、高いプライスタグに見えるんですね。
実際には、一万円を入れれば、一万円分の口数が自動的に割り当てられます。
基準価額は、買えるか買えないかを決める商品の値札というより、ファンドの中身を口数へ換算するための物差しです。
金融庁も、投資信託が割安なのか割高なのかは、基準価額だけでは分からず、その先にある投資対象を見なければ分からないと説明しています。
投資信託は、口数を分割することもあります。例えば基準価額が三万円まで上がったら、口数を三倍に増やして、基準価額を一万円に下げることもあります。
つまり基準価額だけ見ても、割高かどうかはわからないわけです。
基準価額が三万円だから割高。
一万円だから割安。
この判断はできません。ここは注意してください。あくまで純資産の増減を見る必要があります。さらに言えば、その資産がどういう構成になっているかですね。
・二つ目・先人の利益を買うのではない
二つ目、後から買う人は、本当に先に買った人の利益まで支払っているのかです。
先ほどのファンドが、一万円から三万円になったとします。
最初に買った人には、二万円の含み益があります。
後から買う人は、三万円の基準価額から始まります。
過去の二万円分の値上がりには参加できません。
ここは、質問者さんの言うとおりです。
過去の利益は、過去にお金を投じ、値下がりするかもしれない時間を引き受けた人のものです。
後から来た人が、その利益をさかのぼって受け取ることはできません。
これは競争原理からしても当たり前です。上がるかどうかわからない時期に、リスクを取って投資をしていたのですから、そのぶんの利益を受け取るのは当然の権利です。あとから来た人もその利益を取れたら、それこそ不公平です。
質問者さんは「あとから来た人が損する」という表現をしていましたが、もしこの競争原理がなかったら、リスクを取って先に投資した人が損することになります。
運動会の日まで毎日特訓して、本番でトップを独走していたのに、「最後はみんなでおててつないでゴールしましょう」とか言われたら、腹立つわけですね。一見公平なようで、不公平感がヤバいわけです。こんなことが実現されたら、本当に損するのは先に投資した人です。なんのために時間をかけてきたんだという話ですね。
ただし、基準価額が一万円から三万円になったとして、後から来た人が、先に買った人へ二万円の利益を支払っているわけでは無いことも、同時に理解しておいてください。
株式もそうですが、価格というのは、あくまで「今の時点の価値」なのです。我々は今の時点での価値を買っているに過ぎないのです。昔がいくらかとかは関係ないのです。
昔は卵が一パック100円でしたが、今は一パック300円ぐらいになっています。だからと言って、我々は昔の人に200円を払っているわけではないのです。あくまで今の価値が300円で、それを払って卵を受け取っているだけなのです。
三万円を払って受け取るのは、現在三万円の価値があるファンドの持ち分です。
ファンドの中には、現在の時価で評価された世界中の株があります。
昔一万円だったという履歴を買うのではありません。
今日の株式を、今日の価格で買っています。昔、卵が一パック100円でも、今日、スーパーで卵が一パック300円なら、300円で買うしかないわけです。それが物の価値なのです。
少し見方を変えてみます。
一万円で買った人は、現在三万円のファンドを持っています。
その人は、今すぐ売れば三万円を現金にできます。言い換えれば、昔の価値を、今の価値に変換しているわけですね。
卵が一パック100円の時に買って、その卵が腐らないとしたら、今300円で売ることができます。昔の価値を、今の価値に変換しているだけです。卵自体は変わらない。腐らない前提ですけどね。
話を戻しまして、投資信託を売らずに持ち続けるなら、現在の三万円の価値を、そのファンドへ置き続ける選択をしていることになります。将来の価値がどうなるかはわかりません。あくまで今の価値が三万円というだけの話です。
新しく三万円を入れる人と、売れば三万円が手に入る人。
お金がそこへ来た経路は違います。しかし現在の価値は三万円なのです。
しかし明日10%下がれば、先に買った人の三万円も、後から買った人の三万円も、同じように二万七千円になります。
反対に10%上がれば、どちらも三万三千円です。
先に買った人の利益を、後から来た人が肩代わりしているのではありません。あくまで今の価値が三万円というだけの話で、明日それが三万三千円になるかもしれませんし、二万七千円になるかもしれないというだけの話です。
腐らないことが前提ですが、卵一パック100円のときに買っていた人が、食べないでとっておいたら、現在300円払って卵を買うよりも200円得しているねというだけの話です。現在一パック300円の卵を買った人が損したという話にはならないわけです。いまの価値は300円なので、卵が食べたかったら300円払うしかないのです。
もちろん、昔、卵を一パック100円で買って取っておいたら、現在、卵が一パック50円になっている可能性もあります。「じゃあ、今買ったほうが安いじゃん」という話になります。それが「リスク」なのです。
先に買った人は、過去のリスクの結果を持っている。
後から買った人は、今日から先のリスクを引き受ける。
時間の入口が違うだけです。
・三つ目・本当に見るべき割高
三つ目、基準価額の高さとは別に、実際に警戒すべき「割高」とは何なのかです。
ここまで聞くと、では価格は一切気にしなくてよいのか、と思うかもしれません。
もちろん、そういう話ではありません。
基準価額が高いことと、投資先の株が割高であることは別です。
世界中の企業の株価が、その企業の利益や資産、将来の成長期待に比べて高く買われているなら、その後の収益率が低くなる可能性はあります。
期待が大きすぎれば、企業が成長しても、期待ほどではなかったという理由で株価が下がることもあります。
こちらは、本当に考えるべき価格の問題です。
ただし、それはオルカンの基準価額が一万円か、三万円かという話ではありません。
ファンドが持っている企業に、現在どれほどの期待が織り込まれているかという話です。
しかも、将来になって初めて、あの時は割高だったと分かることも多い。いわゆるバブル状態ですね。
現在の価格が高く見えても、その後に企業利益が大きく伸びれば、さらに上がるかもしれません。
反対に、安く見えても、企業の利益が崩れれば下がります。
だから何百という企業の集合体であるインデックス積立では、価格を完全に見抜くことはほぼ不可能なので、毎月一定額を買う方法が使われます。
高いときにも買います。
安いときにも買います。
これは高値づかみを避ける方法ではありません。将来の高値と安値を、自分には判定できないと認める方法です。
そして、もし現在の世界株が本当に割高なら、その影響を受けるのは新しく買う人だけではありません。
すでに持っている人も、売らずに保有を続ける限り、その価格から先の値動きを引き受けます。先に買った人も、買ったときの価格を割り込んでしまうかもしれません。
新規投資家だけが、特別に不利な山を登らされているわけではありません。
市場にいる全員が、今日という同じ地点から同じリスクを引き受けて、次の一歩を踏み出します。
・まとめ
最後に、後から投資する人が、過去の値段とどう向き合えばよいのか。Q太郎なりの見立てを置いて終わります。
基準価額が一万円だったものが、三万円になっている。
そこへ新しい一万円を入れると、昔より少ない口数しか買えません。
損をしているように感じるのは、自然なことです。
ただ、口数は、富そのものではありません。
大切なのは、自分がいくら分の資産を持ち、それが何%動くかです。
昔一万円だったファンドも、今日三万円なら、それが今の価値なのです。「卵は昔、一パック100円だった」とスーパーでわめいても、卵が買いたければ一パック300円という現在の価値を受け入れるしかありません。
後から買う人は、先人の利益を買わされているのではありません。
今日の企業価値を、今日の値段で買っています。あくまで「今の価値」を買っているのです。
将来の価値がどうなるかはわかりません。今日の企業価値に対して、その値段が高すぎる可能性はあります。
未来の収益は保証されません。それが引き受けなければならない「リスク」です。
しかし、それは基準価額の桁を見ても分かりません。
Q太郎は、過去の安値を見て、現在の自分が損をしたと考えないほうがいいと思っています。
過去の安値は、いま目の前にある選択肢ではないからです。
オルカンを十年前の価格で買うことはできません。現在、卵一パック100円で買えないのとおなじことです。買いたければ300円払う必要があります。
選べるのは、今日の価格で買うか、買わないかだけです。
先に登った人の利益まで背負わされているのではありません。
自分の登山口が、今日ここにあるだけです。
そして今日から先は、先に来た人も、後から来た人も、同じ市場を歩きます。
今回のご質問には、配当の再投資と、一括投資と積立投資の違いについてのモヤモヤも続いています。
この話は説明を始めると、それぞれ別の問いになりますので、次回以降に一つずつ取り上げたいと思います。
皆さんは、基準価額が上がった投資信託を見て、今から買うのは遅いと感じたことがありますか。そのとき、買ったでしょうか。それとも見送ったでしょうか。よければコメントで教えてください。全部読ませていただいています。
数字を味方に。そして、誰の欲望でもない自分の人生を、自分の手で耕していきましょう。
ではまた、Q太郎でした。この動画を気に入っていただけましたら、高評価・チャンネル登録をよろしくお願いいたします。
