新NISAの損切り、メリットはあるの?

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nisa songiri

新NISA一括投資→即毎月定率取り崩し運用中のQ太郎です。

今回は新NISAにおける損切りに意味があるのかどうかについてです。

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新NISA損切り

こんなご質問をいただきました。

質問させていただきます。

以前「新NISA損切り」というパワーワードが流行していました。

笑いの対象になっていましたが、実際のところ新NISAで損切りをすることには意味があるのでしょうか。

たとえば新NISAで買っていたものが半額になった場合、塩漬けにするよりは、それを売却して別のものに乗り換えるといったことをした方が資金効率が高くなります。

しかしその場合、損失分を計上できないことから、損失分を損しているとも言えます。

新NISAで損切りすることでこういう使い方がある、こういうメリットがあるなどありましたら教えてください。

とのことです。

「新NISA損切り」というパワーワードは、確かに一時期流行っていましたね。

新NISAは利益が出ても非課税というメリットがある一方で、損失が出た場合にその損失を利用できないというデメリットもあります。

たとえば、特定口座にあるA社の1000円の株式が1400円に上がったときに売却すれば、400円の利益になります。そうなると税金は約20%の80円取られることになります。

ここで、1000円で買ったB社の株式が800円に下落した場合、これを売却すれば200円分の損失が出ます。

そうなると、全体としては400円-200円=200円の利益になりますから、税金はその20%の40円となります。

ところがB社の株を新NISAで買ってしまった場合、損失の200円は利用できません。A社の株が特定口座だったら、利益400円に対する80円の税金を払わなくてはならなくなります。

当然、A社も新NISAで買っていれば非課税ですので、A社の税金は0になります。

そのため、新NISA口座しか利用していない人は、損失の利用は気にしなくてもいいとは思います。そもそも損失も利益も計算されません。

新NISAでの損切り

ここで新NISAでの損切りというか、「損切り」と「損出し」について考えていきます。

「損切り」というのは、もう手元においておきたくない株式を捨ててしまうことですね。いわゆる「ごみの処理」になります。

いったん手元のごみを捨てて、それで得た資金で有望な新しい株を買うというのが損切りの正統派な使い方になります。中・長期投資はこのタイプの損切になります。決算とかむちゃくちゃでだめな会社は、将来にも期待できないのでさっさと捨てます。

もしくは自分の予想と違った方向にいったときに、さっさと負けを認めて処分するというのも損切りの使い方ですね。短期トレードをやっている人はこのタイプです。

例えば「上がる」と思っていた株が、買ったあとどんどん下がっていった場合、これはもう予想が外れていますので、さっさと処分したほうがいいとは思います。

売ったあとで上がるということも結構ありますが、そもそも上がると思って買ったのに下がった時点で予想が外れているわけです。その時点で負けてますので、「売ったあとに上がった」はもはや関係ないわけです。「売った後に上がった」の時点は、あなたの予想とは関係のない部分です。さっさと負けを認め、予想の当たったものを伸ばしていくのがよいでしょう。

個人的にやっちゃいけないと思う損切りは、「〇%下がったら損切り」というパーセントルールです。たとえば5%下がったら損切りとか、逆指値を使って機械的におこなう方法ですね。

まずそもそも5%の根拠がありません。何をするにもある程度は根拠が必要なわけで、それが説明できて自分でも納得しているのならいいのですが、まったくそうでなくて「なんとなく」ならやる意味はないとは思います。

たとえば短期取引で、上がると思って買ったものが下がった場合、これはこの時点で「自分の予想が外れた」ということなので、できるだけ早く切ってしまったほうがいいです。「下がった、切る」ぐらいのスピードですね。それを-5%まで引き延ばす意味はあまりありません。予想していた最初の波が来なかった時点で負けです。予想は外れているのです。

そんなわけで基本的に損切りは、別の株式に乗り換えをする場合と、短期の予想が外れた場合におこなうものになります。

それ以外の理由、たとえば「株式相場が落ちてて怖いから」とか感情的な理由での損切りはやめたほうがいいでしょう。たんに損切りしただけ、損失を出しただけになってしまいます。

それでこういう短期取引的な損切りをしたい場合は、年間で使える枠の量が決まっている新NISAでやるよりも、特定口座でやったほうがいいでしょう。損失のほうが利益よりも多くなる可能性がありますし、その場合は確定申告で3年間損失を繰り越せる特定口座の方が有利です。

それと頻繁な売り買いをすれば、成長投資枠の年間240万円の枠なんて一瞬でなくなりますので、短期取引に使うこと自体がそもそもの間違いとも言えます。

それで新NISAでの、株式乗り換えですが、これは個人個人の判断になってしまうとは思います。ただ損失が利用できないので、損失が大きければ大きいほど損している感も大きくなりますね。

ここまでの話は個別株の話ですが、S&P500やオルカンなどのインデックスに関しては、基本的に長期投資なので、損切りなどせずにそのまま持っておけばいいでしょう。

これはあくまで株式市場全体を買っているので、これを損切りするということはそもそもの株式市場を信用できないということにもなります。

もちろん特定の市場のインデックスを買って、「やっぱり中国市場が信じられない」「インド市場が信じられない」などであれば乗り換えても構いませんが、オルカンみたいに全世界を買っているなら乗り換えてどこへ行くんだという話になってきます。「世界の株式市場はもう戻らない」と言っているようなものですから、それだったら株をやめて、不動産とか債券とかの別のアセットに変えた方がいいでしょう。

損出しについて

これまでの話は「損切り」についてでしたが、次に「損出し」について述べていきます。

損出しは損切りと違って、あえて損失を出すことで、利益を相殺させます。

たとえば配当金の利益が100万円だった場合、税金を約20%の20万円払わなければなりません。けっこうでかいですね。

そこで、含み損になっている株式やETF、投資信託をいったん売却し、翌日に買いなおすことでポートフォリオを崩すことなく、損失を利用できます。

たとえば含み損が50万円になっている投資信託があったら、これをいったん売却します。そうすると-50万円が利用できますので、配当での利益は100万円-50万円で実質50万円になります。税金は半分の10万円になりますので、10万円もうけたことになりますね。

それで翌日に売却した投資信託を買い戻せば、ポートフォリオも維持されます。

損出しは年末におこなうことが多いですね。買い戻しもあるので、やるのであれば12月に入ってからなど早めにやったほうがいいです。

それでこの損出しを新NISAでやれば、当然損失の計上はできません。そうなると無意味なのではないかと思いますが、「枠をあける」という意味では意味があります。とくに長期投資のインデックスですね。

たとえば新NISAの5年目で240万円のオルカンを買って1200万円の枠いっぱい使い切ったのち、オルカンが年末に半額の120万円になってしまったとします。そうしたら年末にいったん全部売却することによって、翌年には240万円分の枠があくことになります。

ここで年初にすぐまた240万円買いなおせば、最初にエントリーしたときの2倍の口数を買えることになります。損失計上はできませんが、口数を増やすということができます。損出しというよりは「枠増やし」といった感じですね。

それとQ太郎はいま取り崩し投資をやっていますが、取り崩すたびに枠があきますので、5年後以降にもあいた分だけ追加投資をすることができるようになります。5年後以降、ズドンするタイミングがあれば、追加投資していくのにも使えますね。

ただ何にしろ、枠がぜんぶ埋まる5年後までは、空いた枠をつかえるわけでもないため、損切りしても意味のある行為にはならないとは思います。

 

まとめ

そんなわけでまとめると、

・新NISAで損切りしても、損失計上ができない。

・損切りには、中・長期投資の「乗り換えるための損切り」と、短期投資の「予想が外れたときの損切り」がある。

・根拠なしにパーセントで損切りをしない。

・新NISAには年間金額上限があるので、そもそも短期取引に向いてない(短期取引だと240万円はあっという間ですね。40万円の売り買いだと6回転しかできません。デイトレだったらあっという間です)。

・インデックスの損切りは「市場に見切りをつける」ことになる(中国とかインドとか特定の市場が信用できないので見限るのならわかりますが、オルカンなど全世界の株式市場を見限ることは株式から手を引くことでもあるので、不動産など別のアセットへの乗り換えを考える必要があります)。

・新NISA枠が埋まった場合、年末に損出しをすることによって、枠を開けて口数を増やすことができる。(損失計上はできませんが、翌年に口数は増やせますね)。

・新NISAの枠が埋まる5年後までは、空いた枠をつかえるわけでもないので、損切り自体にはあまり意味がない。

となります。

そんなわけで「新NISA損切り」のパワーワードですが、損失計上ができない以上、乗り換え目的か、枠をあける目的ぐらいしかつかいどころがないとは思います。枠をあけるにしても、少なくとも5年後の話ですしね。

そんなわけで、インデックス投資している人は、乗り換え目的でもないかぎりは、損切りしてもあまり意味はないかなとは思います。やるにしても開けた枠が利用できる5年後ですね。

5年もあると株価回復してたりしますので、結局何もしないのが正解みたいな感じになったりします。

そんなわけで、乗り換え目的以外は、いまのところそこまで損切りメリットはないかなといったところです。